少年(3)
少年を救出した二人は、そのまま誰も起こさないよう、静かに街道はずれの森へと移動していた。
レシーリアとしては、寝ている間に野盗を縛っておきたいところだったが、今は少年の安全を優先することにした。
とりあえず野盗が見えなくなる距離まで離れ、おぶっていた少年を寝かせる。
ここまでくれば、見つかることもないはずだ。
そして、おもむろに少年の持ち物を探り始めた。
「あのぅ、レシーリア?」
「う〜ん、冒険者タグはなし。旅人の装備ではあるけど、どれも真新しい。冒険者になりたくて、レーナに向かっているところだった?」
「ねぇ、レシーリア」
「それにしても、若すぎるわよね。まだ、十二歳くらいでしょ?」
「レシーリアってば」
「となると……やっぱり、その大剣が狙われたのかしらね」
勝手に持ち物を調べるレシーリアに、ルーが呆れてため息をひとつする。
「ちょっと、ルー。それ見せて」
そう言って今度は、ルーが両手で抱える少年の荷物に、手を伸ばしてきた。
「ダメだよ。これは、その子の持ち物だよ。それも、相当大事な!」
ルーが持たされていた物は、少年が大事そうに抱えていた長い棒状の荷物だ。
それは少年の身長と同じくらいの、巨大な大剣だった。
「自分で振れない大剣を持ち歩いているなんて、明らかにおかしいでしょ。調べられることは、出来るうちに調べておくの。これも自衛の手段として、大事なことよ?」
レシーリアに真剣な目を向けられ、ルーも言葉をのみ込んでしまう。
ユーンを亡くした自分たちにとって、慎重になることは最も大事なルールとなっていた。
それ故、ルーには反論する余地がなくなり、素直に渡すしかなかった。
「重っ! こんなもの、カーリャでも振れないわ。持ち歩くだけでも、戦闘の邪魔よ」
レシーリアが大剣を引き摺るようにしながら、鞘から抜く。
これを振り回せるのは、飛び抜けた筋力を持つ巨躯の戦士だけだ。
この少年には、一生かかっても振れないだろう。
いったい何故こんな邪魔な物を……と、大剣に視線を向ける。
その刀身は、白い光を帯びていた。
「魔剣ね……それも、相当強いわね、これ」
「鑑定してみる?」
「ん、お願い」
レシーリアが大剣を地面に突きつけ、両手で押さえつけると、ルーが刀身に顔を近づけて注視し始めた。
「古代ルーン文字が刻まれてる……それも高位の……えっと、彷魔が刻に光を照らす剣……かな……たぶんだけど」
「なによ、随分と自信なさげじゃない」
「高位の古代ルーン文字って、すっごく難しいんだよ〜」
「ふぅん。で、意味は?」
「意味なんてわからないけど、これ……」
ルーが、ごくりと唾を飲み込む。
「ランク4の魔法剣だよ」
その言葉に、レシーリアが目を見開いて驚いた。
現在確認されている魔法の武具は、ランク5が最高位だ。
ランク5は国宝級であり、一国に一本あるかどうかの代物である。
そして、ランク4。
これも一国に五本とない希少品で、普通の冒険者には一生お目にかかれない代物だ。
「どうするの、レシーリア」
ルーが、不安そうに聞いてくる。
どうするの……とは、間違いなく面倒事になると予感しての言葉だ。
そしてそれは、レシーリアも同じだった。
「このまま置いていくわけにも、いかないでしょ。とりあえず、レーナまで護衛してあげるか……」
そう話しながらも、この選択肢は危険なのではと、レシーリアは感じ始めていた。




