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私は至ってまともな生活をしていました。
恵まれた環境とは言えませんが、ある程度普通の家庭で育ちました。
元々は運動が苦手でインドア派だったのですが、中学校に入ってから始めたソフトテニスは努力して続けました。
決して上手くはないけど、仲間と共に楽しい日々を過ごしました。
高校進学はソフトテニスが出来る学校で調べました。
部長の子と二人で、いろんな高校を調べて偏差値もそこそこ高めな高校を見つけ、無事一緒に入学しました。
順調に過ごしていた高校生活。
ですが、高校2年になってから、私は次第に学校に行けなくなりました。
そして高校3年では一度しか学校に行きませんでした。
短編「No More Cry.」1
ギィ…ばたん。
家のドアが閉まりガチャガチャと鍵を閉める音が聞こえる。
遠ざかっていく足音を確認してから、ゆっくり布団から這い出る。
だるい。そしてあつい。
季節はもう夏だった。
まだ朝方だったから布団をかぶっていても耐えられたけど、もう限界を感じる。
フラフラしながらキッチンへ。
冷たいお茶を飲もうと冷蔵庫を開けると、ママが作ったグラタンが入っている。
正直、ママは料理が上手くない。見るだけで食欲が減衰したのでお茶だけとって閉じる。
ここ数年は、暑い夏でも練習をしに外へ出ていたのに。今ではもうあまり出歩けないほど体力は減った。
筋肉は脂肪に変わり体重が増えた。
焼けた肌は程遠い真っ白な肌。
我ながら半年でかなり様変わりしてしまった。
でもあまり悲しみは感じない。
太ったのは、気になりはするけど。
お茶を飲んだ後、テレビを見ながらぼーっとする。
世間一般ではまだ夏休みが始まる一週間前。でも私は違う。
学校を辞めたわけではないけれど、もう行く気はあまり起きない。
もう高校3年だから、どうせ勉強は進んで追いつかないだろうし。
諦めというよりは他人事のように感じていた。
自分はもう関係ない、そんな気持ちで。
後に母はこのころの私を「抜け殻のようだった」と話す。
私も納得した。
実際、そのころは何も考えていなかった。
過去のことも、将来のことも。
何も。
2へ続く。