†軌跡その18
『車窓にて』
アクセルを思い切り踏んでカーブを昇って
ふと車窓に映るほのかの花色
所どころの山桜
おおい茂るみどりの波間に春を告げる
花が開かなければ
そこに春がいることさえ気づかれないままの
それは私の耳に目に繰り返す
大丈夫だよ
大丈夫だよ
まだ間に合う
大丈夫だよ
大丈夫だよ
もう少し踏みしめていこう
アクセルを緩めスピードを落とす
そんなに急がなくても答えはやってくる
求めていたらきっと報われると言い聞かせて
あの桜はきっと今まで忘れられて
そして憶えていてもらう日は来ない
それでも咲く
私たちになぐさめと勇気を与えながら
私もあんな風に
誰からも知られなくても
小さな花のように生きていきたい
あなたから忘れられても仕方ないけど
もう少し春を憂いでいたいの
私があなたを忘れることがないから
大丈夫だよ
大丈夫だよ
ちゃんと独りでも歩いてゆくよ
大丈夫だよ
大丈夫だよ
だからまたあの色をきっと見せて
誰かがいる為の私でなくて
ただ私がここにいる為の為に
『憧れ』
その手も声も
本当に大好きだけど
きっとそれは永遠の憧れだからだと思う
だから本当は
こんな風にならない方が良かったのかもしれない
その歩き方が好きだったんだ
その歩幅をとても愛しくて
でも今はこんな風に並んで歩くようになったから
そのことに慣れてしまっている自分がいて
それは少し淋しい
贅沢だとわかっていても
もうあんな風に憧れ焦がれていたものが
手に入ってしまうと