†水面その8
『海に沈んで』
ふたりで
広い広い海を泳ぐ
私は時々
不安に押し潰されそうになって
あなたの腕を
必要以上に握りしめる
そのたびに
大丈夫だと言わんばかりに
あなたは微笑むけれど
…知らないの?
何よりその笑顔が
何よりあなた自身が
不安にさせるのよ
この広い海が
いつか枯れて
干上がってしまう日が
必ずくる
だからもがいているのに
だから泣いているのに
何よりあなたが
この涙に気づかない・・
きっと海の水と思って
見て見ぬふりしてるのね
酷いひと
あなたなんか海に沈んでよ
そしたら私だけの
あなたになるかもしれない
そしたら迷わずに
私も海に沈んでゆくのに
『雨音』
夜 その音に眼が覚めた
地面を叩きつける雨
誰が泣いてるの?
誰の為にそんなに?
そういえば
あなたがあの日
私を抱いた時も
こんな風にやり場のない
雨の日だった
振りほどければ
その手を
振りほどければ
その勝手さを
私は楽になるのだろうけど
朝 灰色の空しかなかった
静かに降りてゆく雨
でも音がするね
ちゃんと雨音がするね
初めてあなたが
私を恋しがった夜も
雨だったかもしれない
泣けなかった私の代わりに
空が泣いてくれてると思った
届いても届かなくても泣いていた
その想い
振りほどければ
あなたを
振りほどければ
私から
振りほどければ
もう泣かなくていいのに
でも結局泣くのだろうけど
でも楽になる為に
人を愛したりしないから
せめて
私の代わりに
やり場のない心を
雨よ 叩きつけて
あの胸に一度も
泣きつけない私の代わりに