†水面その7
『このままここで』
もう このまま
ここで柵という荷物を
下ろしてしまって
ふたりでいることだけで
埋もれてしまってもいいかな
守るべきものがあって
慈しむべきものがあって
それはあなたより
きっと私を必要で
わかってる
多分お互いが思うより
お互いがいなくても
私たちは生きていけるの
心のある部分を
葬ってしまえば
「でもしかたないでしょう。
忘れられないんだもの。
私だって言いたいよ。もう要らないって。
あなたを要らないって。
でも言えないよ。それだけは言えない。
どうにもならないよ。
どうしたらあなたにとって
一番都合いいの?
これ以上あなたに
捧げるものなど何もない。」
今日は星が出てるかな
あの寒い朝に見た月を
あなたも思い出すのかな
この星の中で
明日は風が吹くのかな
あの波間に見た夢を
あなたはもう忘れたかな
多忙という風の中で
わかってる
多分あなたが思うより
多分私が思うより
お互いは求め合ってる
私たちは惹かれあって
だからこそ離れたくて
それでも離れられなくて
愛する感情を
空に放ってしまえば
「お願いよ。このままここで
私を鎮めて。もう口もききたくないの。
あなたを好きな気持ちも、
あなたを責める思いも言いたくない。
あなたからの優しい言葉も
もう要らないわ。それよりも
この恋を下ろさせて。もうないの。
あなたに捧げるものはこれ以上ない。」
このままここで
ねえ
ふたりがまだ
お互いだけを見ている間に
他の大切なものを
思い出す前に