†水面その6
『ふたつの舟』
あなたは舟に乗っている
私も舟に乗っている
二つの舟は同じ河の上
同じ方向に向かって
つまり
二人は同じ方向に
進んでいると
信じてはいなかったけど
疑ってもいなかった
時々あなたの舟は
河岸に立ち寄ったり
時々私の舟は
波にのまれそうになって
でも同じ方角を見ているものと
信じてはいなかったけど
疑ってもいなかった
二つの舟は
流れ流れて流れるまま
二つの舟は
流れに身を任せて
でも私は知っている
いつか二つの舟は
どちらからともなく
辿りつくべき所へ辿り
いつか二人は互いの為に
相手を手放すことを
だから
一つの舟に
二人一緒に
乗ることをしなかったのだと
どうしても
二人一緒に
同じ人生を
進めなかったのだと
『果実紅茶のように』
あなたにかけたい魔法は
あなたに永遠を想わせる
極上の安らぎ
あなたといる時の私が
そうであるように
時間の長さでなく
触れた唇の温かさでなく
あなたをいるという
この瞬間が
私をどこまでも倖せに導く
あなたからもらった
自然にこぼれた言葉を
何度も何度も
私は抱きしめた
本当に好きだから
誰よりも心を占める人だから
あなたにただひとつ
魔法をかけられるなら
ふたりでいることが
永遠に続くと想わせる
極上の安らぎ
果実紅茶のように