8話
2016/1/11 修正
「さてと、飯食って寝るかね………はぁ」
俺達はあの後寮に戻ってきて別れた
この学園の寮は、食堂で食べるか自炊するか選ぶことができる
食堂は基本バイキング形式だったな
自炊派の人間は、寮の隣にあるスーパーみたいなとこで材料買って作るみたいだが、値段が良心的で助かる
俺は時間があれば自炊するつもりだが、ただの気まぐれだから長く続くかは別問題
仁は食堂、楓は自炊だと言っていたな……
まぁ、なんにせよこれからこの学園での生活が始まるんだな
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side 三人称
時は深夜
学園の寮の屋上に1つの影が現れた
舞い降りた、等ではなく文字通り「現れた」
「ここに今回の標的がいるのか…」
影は懐から何かを取り出す
この写真の男を消せば百万ドル
与えられた情報によると身長は170㎝ほど、黒髪黒目のどこにでもいるような男だという事が分かる
「ホントにこの男があの…?」
いや、気にしたらダメか。報酬の分は働く、ただそれだけだ
そう考えて男は写真を懐にしまう
「これほど楽な仕事はないな」
「確かにその通りだな」
「っ!?」
そう呟いた影、それに対してあるはずの無い返事が来る
急な事で思わず声が漏れてしまうがはっきりとした音になる前に自制するところを見ればかなりの実力者だという事はわかる
(後ろを取られた……だと、この俺が?何の気配も感じなかったぞ!?)
「………どういう事だ?」
「おいおい、楽な仕事だと言ったのはそっちじゃないか。どういう事だってのは逆にどういう事だ?」
影は後ろを振り返ることなく言葉を紡ぐ。自身の敵察知能力には自信があったためこの状況から既に自分の危機的状況が理解できてしまっているからだ
「どうもこうも、その通りだと言ったのはお前だろう!?何が言いたいんだ!!」
要領を得ない謎の刺客、恐怖と緊張で声が荒ぶる
「あぁそうだな、その通りだ。まぁ、そんなこ事はどうでもいいが、1つ聞きたい。お前は、「闇の暗殺者」で間違いないな?」
その言葉に対する返答は無い。だが言葉が発せられた瞬間影が明らかにうごめき、男の姿が現れる
「ふっ、間違いないようだな。ならお前が受けた仕事は俺の暗殺、だな?」
「お前が……「44444」か!!」
元々影に身を隠していた男は振り向きつつ後ろに跳び距離をとる。そこにいる男が依頼を受けた標的、その写真の男と一致している事はすぐに分かった
「その名は好きじゃないが、間違っては無いな」
標的自ら現れた、この状況の中で落ち着いてはいられなかった
この状況はつまり、自身が生業として最も自信を持っていた暗殺、その失敗が確定したからに他ならない
「……なら、身辺の整理は終わらせてきたか?」
「何故そんなことをする必要がある?」
最大限の虚勢を張り睨みつけるが標的は口角を軽く上げて聞き返す、これだけで心的有利がどちらにあるかは明らかだった
「それは、今日がお前の命日だからだ!「闇門」!」
突如1つの影を闇が包み、もう標的の裏側に闇が出現、そこから男が現れる
(これで終わらせる!)
「死ねっ……!?」
男は確実に標的の裏をつき、確実に頸動脈を切り裂くコースにナイフを走らせた
が
「「闇門」、闇を媒介として空間を繋ぎ、そこを移動する術。闇の暗殺者の代名詞だな。だが残念、それを使えるのがお前1人のはずが無いだろう」
確実に切り裂いた、標的に触れる直前まではそう確信していた男もこうなってしまってはもう遅い
男が切り裂いたのは手応えの無い闇、そして背後を取られ背中に手を付けられたこの状況
「さて、確かどうしてこれが楽な仕事だということに同意したか、だったな」
(完全に、俺の上をいく使い手……万事休す、か)
「闇の暗殺者、お前が|生死問わず《dead or alive》の世界的犯罪者だという事だよ」
男はこの言葉の意味を直ぐには理解できなかった。別に慢心していた訳じゃない
ただ、今までの中で……自分が追い詰める状況はあっても、その逆、今自分が立たされている状況は初めてだった
「つまり、だ。俺がお前を殺しても…罪には問われないという事さ」
(畜生が、報酬の異常な高さで気が付くべきだったな……)
「アイ、殺るよ」「はい」「…「血桜」!!」
…
……
「ふぅ、とりあえず理事長に報告するか。お疲れさま、アイ、ミーヤ」
side out
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side 舞
これは……
「検死、及び調査の結果出ました」
「教えて」
「はっ。死体の状態ですが、冷凍されていて腐敗の心配はありません。死因ですが、腹や背を突き破られた痛みによるショック死、脳や心臓に血液が巡らなくなった事による失血死、全身を凍らされたことによる凍死のどれか、それか全てかでしょう。全身の血液が赤い氷となり、腹から真っ赤な桜が咲いたようになっていますので……まず間違いなく、あの男の仕業でしょう。何の理由があってこのような所に現れ、犯罪者の死体を放置したのかは不明ですが……」
その男は今もまだすぐ近くにいるんだけどね
「もういいわ、ありがと。痕跡を残さないようにキレイにしておいて、生徒達にいらぬ心配をかけたくないわ」
「はっ、失礼します」
……はぁ、まだあの子は命を狙われるのね…
あの子の為に、私に何ができる?
「……とりあえず学園の結界のレベルをあげましょうか」
side out
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side ???
「ふふふふふっ」
闇の暗殺者は死んだ……
彼はあれでも最上級魔導師だった、闇属性の扱いなら闇条家現当主とも渡り合うレベルのはず……
「ふふふふ、ふふふふふっ」
闇の暗殺者につけていた盗聴器によると、「彼」の実力は闇の暗殺者程度では足下にも及ばない
「ふふふふふっ、ふふふふふふふふふっ」
欲しいわ、「彼」は私の所有物、誰にも渡さない
「ふふふふふっ。ジョージ、「祭礼の魔女」に依頼を。言い値でいいと伝えなさい」
「かしこまりました」
「ふふふふふっ、待ってなさい。すぐに私の所有物にしてあげる。ふふふふ、ふふふふふっ」
side out