9話
2016/3/13 修正
カーテンの隙間から陽が射し込むのが見える、もう朝か…
「……まだかかりそうだな、する事やって学校行くか」
side out
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side 楓
十和家の中で一番仲の良い菫さんと学校に向かうため寮を出る
同じ立場で同じ年、これ程気が許し安い人もいないと思う
「……で、十和家とか気にしないで接してくれる人なんです」
「ふぅん、で、その人の名前は?」
「六郎坂勇人さんっていうの」
あれ、顔が曇った……?何かあったんでしょうか…
むしろ、知り合いなんですかね
「どうかしました?」
「え!?あ、ううん…なんでもない。ただその人の名前が探し人と同じ名前だったから。でも名字が違うもんね…」
あぁ、そういうことでしたか…
「お兄さん、でしたっけ?その探し人は」
「うん…」
「見つかると良いですね」
「ありがと、楓ちゃん」
ホントにどこにいったんでしょう、その「お兄さん」は
あ、噂をすればなんとやらですね
「勇人さーん、今から学校ですよね?ご一緒しませんか?」
「ん?楓か。別にいいがそっちは………!?」
「にい、さん?」
え?
side out
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side 菫
「見つかると良いですね」
「ありがと、楓ちゃん」
……はぁ
探し初めてもう5年、兄さんがいなくなってからは9年経ったのか…
分かったことは名字が最初は多田、その次から順に須藤、槐島、天堂…
それぞれ2年ずつ名乗り、最後に去年終「おわり」と名乗っているのが確認できた。まあ裏の筋の情報屋からしか手に入らないような情報、一体どこで何してるかなんてわからない
同じパターンなら今は終のはず……六郎坂は外れかな
ま、これだけ探して見つからない人が学生やってるとも思えないし
「勇人さーん…」
噂をすればなんとやら、本人が出てくるのはなんというか、奇遇?
話を聞いた限りではいい人っぽいけど腹の中で何考えてるのか分かるまでは距離をおいとかないと…
兄さんを探し初めてから嫌というほど味わった人間の愚かさ
皆私達を手伝うふりをしながら内心見つからないことを望み、嘘の情報しか貰えなかった。
兄さんが居なくなってから分家の方から有能なのが入ってきて、次期跡継ぎとか言われてるから、兄さんが戻ってきて候補が増えるのが嫌だったみたい。
それに気付いてからは姉さんと2人で、信頼できる人を厳選して、調べた。といっても味方はメイド1人しか居なくてかなり大変だったけど…
闇条の名と金の力を使わざる終えないのは悔しい
……はぁ、内心毒づいたって何も変わらない。
ひとまず楓ちゃんご執心の彼でも拝みますか
え?なんで……
でも
「にい、さん?」
side out
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「勇人さーん…」
「ん?楓か。別にいいがそっちは………!?」
まさか、闇条か?
楓と一緒にいるし、何より入学式で見た
間違いないか……
まぁ、菫の方で良かったか
分家すじの裕也とかいうのじゃなくて助かったな
そいつからしてみれば俺は邪魔物でしかない…
まぁ、戻る気など更々ないから関係ないか
「にい、さん?」
…ばれたか
誤魔化すか?まだ信じられないって顔してるし…
いや、意味がない
この状況は予想していたが、こんなにも早いとはな
少しは心の準備をする猶予をくれても良いと思うんだがね
「……あぁそうだよ、菫」
「っ……ど、どうして?今は終のはずじゃ」
やっぱそこまで調べられてたか…
「終は一年、その予定だったからな」
「ど、どうして何も連絡してくれなかったの!?今の反応私達が兄さんの事調べてるのわかってたってことでしょ!?この学園にいるってことはもう奴隷じゃなくなったんでしょ、なら!」
胸元つかんで詰め寄ってくる菫
「わ、悪い。連絡しなかったのはお前達をいつも闇条家の人間が監視していたせいで出来なかったから。お前たちが俺の事を調べてるって知ってお前達に会おうとして気付いた。俺の今の身分は自由民だ。学園内は闇条家の監視は無くなっていた、俺は魔法がまともに使えなかったから入れないと思ったんだろう。ここに来てすぐ会いに行かなかったのは気持ちの整理がついてなくてどんな面して会えばいいのかわからなかったからだ…ひとまず落ち着け」
「ご、ごめんなさい…でもこれで昔みたいに戻れる」
安堵したように胸をなで下ろす
「いや、昔みたいには無理だ。俺は闇条家に戻るつもりはないし、俺はもう昔の俺じゃない」
「え、戻ってきてくれないの?ど、どうして……」
「お前は、自分を売った家に戻れるか?」
「!……ごめんなさい」
「まず無理だろ?それに……」
「あ、あの……感動の再開?の邪魔して悪いんですけど、もうすぐ始業の鐘鳴るんですが」
菫に説明してると空気と化した楓に声をかけられて時計を見る
「えっ……ほんとだ。でも…」
「十和家が早々に遅刻なんてまずいだろ。クラスどこだ?昼休みにまた話そう。迎えにいくから」
「…わかった。クラスは3組、それじゃ」
おー速い、流石十和家だな。身体強化の魔力の練り方が上手いな……
「…で、楓はどうした?」
「え、えっと…身体強化は苦手でして、急いでも間に合わないかなと」
はぁ、そういうことね
「なら仕方ないか…ミーヤ、おいで」
「は~い」
「え、精霊!?勇人さん精霊持ちだったんですか!?」
「まあな。今なら昇降口にもう人いないだろうし大丈夫だろ。飛ぶぞ、「闇門」」
「へええっ!!?」
なんて声上げてんだか
「ついたぞ、いつまで目つむってるつもりだ?」
「え、あ…あぁ、すいません」
「謝ることはないが……ミーヤ、ありがとな。それから、これからは魔力抑えて下級サイズで出てくるように皆に言っといて」
「はーい、りょうかーい」
「あ、あの、ゆ、勇人さんって」
「え?兄さん?楓ちゃん?どうして私よりはやいの!?」
「そんなことより急げ、間に合わなくなるぞ。それから楓、別に俺はお前が思ってるみたいに闇の暗殺者なんてものじゃないから安心しろ?」
聞いてるかは分からないけど一応弁明しておく
……まだ遅刻はしたくないし急ぐか