雨街道
「『この先、雨の道』……なんだこりゃ?」
ミストとオレ、シェタは『雨街道』と書かれた道案内を見つめる。
「すげえなミスト。この道、別名『涙の集う道』だってさ」
オレの横で仏頂面している相棒、ミスト。いつも何考えてるかわかんないけど、でも、ほかの誰よりもオレの方が理解はある。その自信もある。根拠は……ない。
で、その相棒は、どうやらこの雨街道に興味が出てきたみたいだ。
「何かおもしろそうだな。
乗りなよミスト。行ってみようぜ!」
「……ああ」
オレたちは、看板の示す道を走り出した。
しとしと雨が降り止まない道はぬかるんでいて、オレにとっては最悪の道だ。
適当な道の脇に停まってしばらく、雨が止まないか待ってみた。
でも、ここは雨街道。期待するだけ無駄だった。
するとミストは、急にエンジンを止めて外に出る。
「おい、濡れるぞ」
オレは傘を見つけて渡そうとするが、ミストは受け付けない。
「?」
「この雨に触れると、涙の理由がよくわかる」
「???」
「涙は悲しい時だけのものではないんだ……ここにきて改めてわかったよ」
天を仰ぐミストは、雨に濡れてキラキラして、少し、オレにも少しだけ、胸のあたりがあったかくなるのがわかった。
「オレも!」
オレとミストは、やさしい雨にしとしとと濡れていくのを、ゆっくりと感じることにした。
このまま、ミストとずっと雨を感じるのもいいなと思った。