白い世界02
どのくらい時間が経ったのだろう。
5分?
30分?
とにかく、オレにとっては結構長い時間が過ぎた。
「……ここは、とても寒いところだね」
ふいに、相棒の声が聞こえてくる。
空気みたいに透き通った声。だけど、はっきり聞こえる。
「サム、イ?」
オレはオウム返しに訊く。
初めてこの風の音が邪魔だなと思った。
「サムイって……確か、カタナとか、チョンマゲとか、ハラキリとかの?」
以前、話をしてくれた老人を思い出し、カタナで物を切る動きを真似してみる。けれど、相棒は首を横に振って、ゆっくりと白い世界に手を伸ばす。相棒の腕は、あっという間に白く包まれてしまった。
「違うよ、シェタ。寒いっていうのは、気温がとても低いのを感じることさ」
ミストの言葉に、オレは首をかしげる。
「それが"サムイ"ってこと?」
相棒はこくん、と頷く。
「……オレにはよくわかんないけど……そうか、これがサムイってことなんだな!」
オレは両腕をいっぱい広げて、白い風をたくさん身体にぶつけさせた。とはいっても、今のオレはイメージ体だから、全部すり抜けていっちゃうけど。
相棒は、この白いのは『雪』だと教えてくれた。
一つ一つはすぐに消えてしまう小さな結晶で、だけど、たくさん集まれば、ふわふわの冷たい綿帽子になるって。
ついでに言えば、この雪のせいで道に迷ってしまったらしい。