第弐話 頼まれごと
落ちて落ちて
俺は言った
これでいい
俺はこれでいいんだよ
また会える時まで待とう
「おっ、百鬼!!!おは・・・じゃなかった、おそよう!!!」
「おはようございます。百鬼」
「おせェよ」
上から藤堂さん(?)、斉藤さん、土方さん・・・
「会議、もう始まってんぞー」
「原田・・・」
「なんで、俺だけ呼び捨て!?」
無視だ
「おせェよ、百鬼」
「百鬼、おはよう」
「おはようございます。近藤さん」
一番前に並んで座っている土方さんと近藤さんの横に座るために隊士達の真ん中を旗を担いで通る
隊士達にあいさつされるのに少しずつ返しながら所定の場所である土方さんの横に座る
「眠いな・・・」
「お前、さっきまで寝てただろうが」
「百鬼はよく寝るよなー、そのうち起きなくなっちまうんじゃねェの?」
近藤さんの隣に座った沖田に少しちゃかされた
何で、離れてるのに聞こえんだよ
ボソッと言ったのに聞こえていたようだ
「よし、じゃぁ、全員揃ったところで会議を始めよう」
その後、約40分間会議で今日の見回り担当区や予定を説明した後に局長の一言で解散となった
「よっ、百鬼!!」
会議室から出てすぐに黒い髪に前髪のところを青く染めた長身の男に肩を組まれた
「高杉・・・何?」
「素気ねェなぁー」
髪の毛をぐちゃぐちゃにかき回される・・・ゆるく結っていたために髪くくりがほどけて落ちる
また結いなおさねェとなんねェし・・・
「用がないなら、もう行ってもいいですか?」
「まぁ、まぁ、待てってー、なぁ、お前今日もどうせどっかで寝るんだろ、だったらよ、少し頼まれてくれないか?」
「・・・頼み・・・・・?」
「そ、簡単だぜ?三条通沿いにある『金文字』つぅ茶屋のおやっさんにこの手紙届けてほしいんだ、届けるだけでいいし、んの後はテキトーな場所で寝ててくれて構わない」
笑いながら言うその顔に曇りはない
届けるだけ、、、大体ここから三条通までは本当に目と鼻の先だ
ま、そんなことはどうでもいい
俺は京まで行けと言われりゃ京まで行くし
江戸の幕府の高官宅へ忍び込めといわれりゃ、相手の今日の晩飯から今までの悪行まで調べに行く
・・・・・・あれ次第だがな
「見返りは?」
「金平糖15粒」
「手紙と金平糖くれ」
「んーやっぱお前は話が早いな!」
そういうと高杉は百鬼の肩に掛けていた腕をはずし、着物の袖元から和紙の包みと封書を渡した
「頼んだぜー」
受け取り歩き出すと同時に背後から高杉の控え目な声が聞こえた
百鬼は和紙の包みを開けると中から金平糖を取り出し、口に放り込んだ
上手い・・・
隊旗を持ち直し、朝飯がわりの金平糖を食べながら、百鬼は屯所を出た
我名を知る者は居らぬ
目を閉じ思えば夢
感じるは現
あの世は幻
この世は・・・・
一体何であろうか
それを知るはまだまだ先の事と
我はまだ知りはしぬ