第捌話 夜の闇と心の闇 =肆=
「・・・終わった。。。」
「早く帰って寝ようゼー」
「・・・」
欠伸をしながら帰路に着く高杉の後ろを恭夜がついて行こうとすると、百鬼が立ち止まっていることに気が付いた。
「百鬼?」
「・・・帰って寝る。」
何事もなかったかのように恭夜の横をすり抜け、百鬼は屯所へと向かう
「・・・どうしたんだ?百鬼の奴。」
「たまに、討伐後にあんなふうになるんですよ」
「討伐後に?何で?」
「知りませんよ・・・ただ、何か寂しいものを見たみたいな、悲しいみたいな、、、何ていうんだろ?ま、そんな表情するんですよ。あいつ」
百鬼side
子供の声が聞こえた。
おそらく、のっぺらぼうの中に取り込まれた肉塊の元の持ち主の声だろう。
魂ごと取り込まれて、あの中に閉じ込められていた子供の霊魂。
ちゃんと、上に逝けただろうか・・・
それにしても、また声を聞いたのは自分だけだったようだな
この世界に落ちて、早12年。
人間として生活し始めて、外見から年齢は15歳とされている。
実際はまったく違う。
ふと、昔の事を思い出した
最初の記憶は父と母の顔
全く楽しくも無く、ただ痛いだけだった覚えがある。
殴られて、蹴られて、責められて
何について責められたのかは全くわからない
次の記憶は仲間の顔
仲間と呼べる者を持って、ぎこちなくとも笑い合った覚えがある
楽しくて、色々な事をして、悪さもして
何をやったかも全部覚えてる
そして、今
俺の事を親友と呼んでくれる人間が初めてできた
怒ってくれて、殴り合ってくれて、冗談だって言ってくれる
でも、俺は秘密を抱えていて、それがバレたら居場所はなくなる。
寂しいな。。。俺
後ろから、恭夜と高杉の追いかけてくる声が聞こえ、意識が戻った
走ってきて、肩を組んでくる恭夜は凄い笑顔だ。イタズラに成功した子供みたいで、思わず笑う
高杉さんは俺達の後ろを茶化しながらついてくる。
恭夜がそれに反論し、高杉さんがまたいじる。
しばらく屯所への道を歩いていると、桂さん達と合流した。
桂さんをみた高杉さんは先に行くとか行って屯所の方へ逃げる。
いつも通りで、本当に平和だ。
「あんだけで、他は何もしねェのかよ・・・・つまんねェの。」
連れ立って屯所に帰る百鬼達を屋根の上から見ながら、尻尾を揺らす金髪の青年
頭に生えた二つの耳をピクピクとゆらし、九本の尻尾を撫でる
「んーっ・・・帰るかな。俺も、何も面白いことは今日無さそうだし」
ドロンッ
突然青年の周りを煙が囲み、青年の姿がかき消される
そして、煙が晴れたところには狐がチョコンっと座っており、もう一度公道を見たのちに屋根から飛び降りた