オトウサマ 1 C-4
「げっ、いきなり結婚!? すごっ……ま、あっちのほうが3つ年上だけどさ。でも、あっちだってまだ大学生でしょ? そっかぁ、やっぱ結城さんミクすけに惚れてたか。ねっ、言った通りだったでしょ」
翌日それを清華に言ったら、清華は飲みかけの缶のミルクティーを少し吹いた。
「汚ったないなぁ。いきなりって私も思ったわよ。でも、何でも秀一郎さんのお父様とお母様って、高校時代の同級生…うちらの先輩なんだよね」
「へぇ、そうなんだ」
「でさぁ、お互い学生の頃は良かったんだけど仕事を始めてからすれ違いでさ、些細な事でケンカばっかするようになって、一度別れたんだって。でも、その時秀一郎さんがお腹にいたらしいのよ。それが分かって、急遽結婚ってことになったんだって」
「へぇ、デキ婚なんだ。ドラマだねぇ」
清華はそれを聞くとニヤニヤしながらそう言った。ねぇ、変なこと想像してるんじゃないでしょうね!
「それで、秀一郎さん、お父様の会社に入るんだけど、お父様の方も『入社したら容赦なくこきつかうつもりだから』って言ってらして。『そうなると僕たちの二の舞になりかねないからさ、形だけちゃんとつけといたほうが良い』ってことらしいわ。私、どうしたら良い?」
ため息交じりの私の言葉に清華はニヤニヤの顔のままこう返した。
「ミクすけ、好きなんでしょ、結城さんの事。じゃぁ、突き進みゃいいじゃん。もう、答えは出てんでしょ?あんた何気に嫁目線じゃんか」
「嫁…目線?」
そんな目線で私、見てませんけど。
「あれ、自分で気付いてないんだ。お義父様・お義母様ってさっきから言ってんじゃん」
「あ、それは秀一郎さんが父様母様って呼んでるから……」
文字で書けば分かるんだけど、音にするとお父様もお義父様も『オトウサマ』だもんね。
「今時男が父様に母様? どこのお坊っちゃんなのさ、結城さんって。カテキョでしょ?あり得ねぇ~。」
で、私の返事に清華は眼をまん丸にして馬鹿笑いした。
「うん……私も最初そう思ってたんだけど、お祖父様がYUUKIの社長なんだって。もうすぐ、お父様がそれを継がれるらしいよ」
それに対して私は首を少しすくめながらそう返した。
「げっ? マジ!?」
「うん、マジ。お家に昨日うかがったんだけど、マンションなのに中に階段があってさぁ……しかもそれが新宿なの」
「そりゃ、マジみたいだね。にしても新宿でメゾネットタイプのマンションかぁ」
私は驚いている清華に肯いた。でも、中に階段があるようなのをメゾネットタイプっていうんだ……初めて知ったけど。
「でもさ、良いんじゃない? お互い好きなんだから。玉の輿に乗っちゃいな! 頑張れ未来の社長婦人!!」
清華は咳払いをしてから、にっと笑ってそう言った。
友人の清華でもこうだったんだから、私の両親――特にパパの反応はすごかった。