表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Future  作者: 神山 備
第一部 2人の未来(みく)
7/55

秀一郎さんのお家 1 C-2

 1年半後、私は無事大学に入学できた。

 無事大学生になってからも、秀一郎さんとは時々会っていた。ただ、喫茶店なんかで近況を話すだけなんだけどね。友達の桜木清華なんかは、

「それ、絶対ミクすけに気があるって。でなきゃ、カテキョの期間が終わった後に会おうなんて言わないよ」

って言ってくれたけど、それっぽい話は全くないから、ホントのとこはどうなんだろうと思ってた。


-9月-

「ウチに、来てくれないかな」

ある日、何気ない調子で、秀一郎さんにそう言われた。

「へっ?」

「彼女として、両親に紹介したいと思ってるんだけど……ダメかな?」

か、彼女!?

「あ、いえ……あの……」

私は突然の事にどぎまぎして、上手く返事できなかった。

「もしかして、迷惑なのかな」

すると、秀一郎さんは悲しそうな顔になってそう言った。

「いいえ! いいえ!! あの……急だったから……ええ、嬉しいです」

「良かった! 断られるかと思ってヒヤヒヤしてたんだ」

私が慌てて迷惑じゃないと首を振りながら言うと、秀一郎さんはホッとした表情になり、そう言うと、どこまでもさわやかな笑顔を私に向けた。

「これから卒論に本格的に取り組みたいから、あんまり今までのようには会えないから、それまでに形にしたいんだ」

えっ?形にしたいって……それって何??

「じゃぁ、日曜日に。ここで待ってるよ」

秀一郎さんは、そう言って話題を変えた。


 そして、日曜日の朝、待ち合わせの喫茶店から、秀一郎さんのお家に向かった。

その時、私はちょっと前から気になっていたことを聞いてみた。

「秀一郎さんって、就職の話しないですよね。大学院に行くんですか?」

「えっ? 大学院? 違うよ、父が手薬煉引いて待ってるのに。家業を継ぐっていうか……就職するよ。子供の頃からそのつもりだったから、まさかそんな質問されるとも思ってなかった。そうだよね、普通は就職活動ってするもんだよね」

私がそう言うと、秀一郎さんは本当にバツが悪そうにそう返した。それがどういう事なのか、私にはまだ解っていなかった。そうなのか、家業を継ぐのかぐらいにしか思っていなかった。私がその時想像していたのは、小さな町工場で父子で頑張る秀一郎さんの姿だった。


 やがて、秀一郎さんの自宅に到着した。私の想像に反してそこは、新宿の一等地にある高級マンション-いわゆる億ションという奴だった。概観もオシャレ。彼は徐にエントランスで8階の自分ち(マンションでそういう言い方は適切なのかどうかは分んないだけどね)インターフォンを押してこう言った。

「母様、秀一郎です。ただいま戻りました」

と…

か、母様ぁ!? ママ相手にただいま戻りましたぁ!!?

秀一郎さんって、実は何者……?

 どこか異世界に紛れ込んだ気になった私は、緊張をピークにさせて、秀一郎さんとエレベーターで8階に昇った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ