旅立ちの季 2 M-30
【お帰り、ミク】
【ただいま】
私にお帰りのキスをするジェラールに、私も首筋にキスを落として応えた。
【両親を一度になくしてしまうなんて、辛かったね。大変だったろ】
【ううん、ずっと離れてたから現実味なくてね……それに、大変なことはみんな明日香に任せちゃったから。】
【子供たちとも会ったの?】
それから彼は遠慮がちに私にそう聞いた。
【ええ、立派に憎まれ口を叩けるようになってたわ。私、嫌いだってはっきり言われた】
【そうか……テオと同い年だったっけ? でも、嫌われたって言う割には嬉しそうじゃないか】
【嫌いだって言われた後、産んでくれてありがとうって……】
【そりゃ、やられたな】
ジェラールはそれを聞いて笑った。
【ミク、良い子たちだね】
【そう、とっても良い子たちよ。でも、私じゃあの子たちをあんな風に育てられなかったわ。妹たちのおかげ】
【そうか、そんな良い子を振り切って君はここに戻ってきてくれた訳か。私はね、もうミクが戻ってこないんじゃないかと思ってた】
【どうして? 両親がいなくなった今、私はもうここしか戻る所はないわ。それとも私はここにいちゃダメなの?】
私がそう言うと、ジェラールは、
【まさか!? その反対だよ。だから、君にこれを……】
と、言って照れながら私に一枚の書類を取り出して渡した。その書類――結婚証明書の申請――の文字がみるみる涙で歪んでいく。
【ホントに……私なんかで良いの?】
【当たり前じゃないか。実を言うとね、ミクが日本から帰ってなかなか戻ってこないから、アンに責められてたんだ。『ママンは私たちのベビーシッター?いい加減きちんとしてなかったから、ママンはダディの許に戻ってこないのよ』ってね】
【そうなの? 私はそんなつもりで、日本にいた訳じゃないんだけど】
アンヌも私の事情を知ってるはずなんだから、これはたぶん、煮え切らない父親にわざと発破をかけていただけなのだろう。わたしは、いかにもアンヌらしいと思った。
【だから……改めて言っておくよ。私は子供のためじゃなく、私のためにミク……君が必要だ。これからも一緒にいてくれるかい】
【もちろんよ!というより、私がみんなと一緒に居させて、お願いします】
ジェラールは私の返事を聞くと、片手に私の荷物を持ち、反対の方で私の肩を抱いて……私たちは歩き出した。
――私たちのFuture、明日にむかって――
そして、その週が明けた日曜日、私とジェラールは子供たちや親しい人の前で、永遠の愛を誓い合った。