表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Future  作者: 神山 備
第二部 それぞれの未来(みらい)
32/55

似た者同士 C-13 

 翌々日、子供たちを送り出した後病院に行った私は、病室の前で立ち尽くすお祖母様を見た。

「お祖母様、入られないんですか」

良く見るとお祖母様は泣いていた。

「涙が止まらないとあの子に気づかれると思うんだけど、なかなか止まらなくて……」

「じゃぁ、少しお話しません。」

私がそう言って誘うと、お祖母様はびっくりした顔をされたが、こくりと頷いた。


私とお祖母様は、病院内のコーヒーラウンジに出かけた。

「ねぇ未来さん、こんなことをあなたに聞くのは何なんだけど……私、反対した方が良かったのかしら」

「何がですか?」

「あの子の……夏海ちゃんの結婚」

お祖母様は苦悩の表情を浮かべながらそう言った。

「私、結城君があの子をもらいに来た時、一切反対しないでお嫁に行かせたの。でもね、私があの時あの結婚に異を唱えていたら、あの子は結城の家で苦労なんかせずに、こんなことにもならなかったんじゃないかと思ってしまうのよね」

事情を知るはずもない孫の嫁の私に、細かいことを言うこともできず、歯切れの悪い言い方でお祖母様は私にそう言った。

 たぶん、お祖母様は秀一郎さんが本当はお義父様の子供ではなく、遭難して亡くなった梁原さんとの子供だということを、状況からなのかはたまた女性独特のカンでなのかはわからないけれど、それを悟っているに違いない。そして、そんな中で結城の嫁として生きなければならなかったことが娘のどれだけ心身の負担となって、この病となってしまったのかもと思ってしまっているのかもしれなかった。

「でも、だったら秀一郎さんは生まれてませんし、そうなれば私も結城に嫁ぐこともありませんでしたわ」

私も何も知らないフリでそう答えた。でも私は、お義母様がお義父様と結ばれなかった世界も知っている。それを見比べたとしても、どちらが本当に幸せなのかは、私には計れない。それは、当のお義母様でさえそうではないだろうか。

「そ、そうね。あなたには失礼な話だったかしらね、ごめんなさい」

「いいえ、とんでもない」

「こんなだから、あの子にも嫌われるのよね」

そして、お祖母さまはため息を吐きながらそう言った。

「いいえ、お義母様はお祖母さまを嫌ってなんかおられませんよ」

「えっ?」

それに対して私がそう言うと、お祖母様は心底びっくりしたという表情をした。

「お義母様はお祖母様に甘えたいと思ってられますよ、きっと」

 お義母様とお祖母様はご自分ではそうは思ってないみたいだけどよく似ているのだ。だから、お互い反発してしまう。だけど、本当は一番お互いを欲しているのだ。

「そうなのかしら」

首を傾げていうおばあさまに私は、

「絶対にそうですよ。私がお義母様なら一度でいいから、1日中甘えていたいと思いますよ。一度、思いっきり抱きしめて差し上げたらどうですか」

そして、そう出来るチャンスはあと少ししか残されていないのだから。今の内に歩み寄らないと、お祖母様はご自分が死んでも後悔されることになるのではないかと私は思った。私の気持ちが通じたのだろうか、お祖母様は、私の言葉に頷いてこう言った。

「そ、そうね。じゃぁ、思い切って嫌がられてもそうしてしまおうかしら」

「はい、そうなさってください。でも、お義母様はたぶん嫌がられないと、私は思いますよ」

私は笑顔でそう答えた。


 そうして、お祖母様は一足先にコーヒーラウンジを出た。私は、しばらくの間、病室には戻らず院内の売店で買うでもなく物を見続けた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ