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Future  作者: 神山 備
第二部 それぞれの未来(みらい)
31/55

お義母様 2 C-12 

「お義母様だいじょうぶですか!」

「え……ええ……大丈夫よ……こうしてればすぐ良くなるわ」

思わず安否を尋ねてしまった私に、お義母様はこう答えたけど、どう見たって大丈夫という感じではなかった。

「お義父様に連絡! それとも救急車!」

そう叫んだ私に、お義母様は弱々しく手を振りながら答えた。

「良いわよ……大げさにしないで……」

「じゃぁ、秀一郎さんに……」

「ねぇ、本当に大丈夫だから、ねっ。もう痛みも治まったわ」

そう言ってムリに立ち上がったお義母様はまだ肩で息をしていた。

「お義母様!」

「お部屋で少し横になるわ。そしたら、もう本当に大丈夫。心配しないで」

そして、よろよろと寝室に向かって歩き始めたお義母様を支えて、私はお義母様たちの寝室のベッドに彼女を寝かせた。

「ウチの母に今から連絡して、龍也と穂波を迎えに行ってもらってここに残ります」

「そんなことをしたら、志穂さんにもあの子たちにも心配かけちゃうわ。大丈夫よ、少し寝るから。あなたは龍也くんと穂波ちゃんを迎えに行って」

お義母様はそういうと、目を瞑った。

「じゃぁ、私帰ります。本当にそれで宜しいんですか」

「お願い、そうして。それから、お肉も適当なものに入れて持って帰ってね」

「はい、解りました」

私は、それで渋々寝室を出た。

 そして、お義母様のそばを離れた私は、すぐにお義父様に電話を入れた。秘書課に電話を入れて、お義父様に取り次ぎを頼む。しばらくして、お義父様が電話に出た。

「海、こんな時間に電話なんて何の用?」

私は、秘書の人に『結城です、社長をお願いします』と言っただけだった。普段、お義母様もそんな言い方で電話されているのだろうか、その人はお義母様と言って取り次いだようだった。

「いえ、未来です」 

「えっ、未来さん?どうしたの一体。」

「あの……告げ口するみたいで心苦しいんですけど、今お義母様が真っ蒼なお顔でお腹を押さえてらしたもんですから。救急車を呼ぼうとしたんですが、そのまま寝てれば良いっておっしゃって聞かないんです。何だか、本当にお具合悪そうだし……一応お義父様のお耳に入れておいた方が良いと思いまして」

「解った、私が何とかして病院に連れていくようにするよ。昔から彼女は少々辛くても我慢してしまう性質なんだ。ありがとう、知らせてくれて良かったよ」

「じゃぁ、お願いします」

私はそう言って電話を切った。気は重かったけど、検査をして何もなければそれで『良かったね』で終わる……そう思っていたのだ。


 でも、何日かして、今度はお義父様から電話がかかってきた。

「未来さん、この前はありがとう」

「いいえ、とんでもない。わざわざお礼なんて良いですよ。それより、お義母様はどうでした?」

わざわざ電話をもらったことに一抹の不安を感じながら、わたしはそう訪ねた。

「そのことなんだけど……今日、入院させたよ」

「えっ? 入院ですか?」

私はお義母様が入院したと聞いてびっくりした。

「ああ……彼女は嫌がったけどね。もっとよく検査しようって言ってね」

「お義母様そんなにお悪いんですか?」

私がそう言うと、お義父様は少しの間の後、徐に辛そうに切り出した。

「秀一郎にはさっき電話で話したんだけど、あの子から君に伝えさせるのはかわいそうだと思ってね。……海は……彼女はもう長くないよ」

私は一瞬、息が止まった。

「がんが見つかったんだ。それももう、転移している……長くて後3ヶ月だそうだ」

続けてお義父様はそう言った。でも何だか、お義父様のその台詞はテレビドラマを見ているみたいで、私にはちっとも現実感がなかった。


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