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Future  作者: 神山 備
第一部 2人の未来(みく)
3/55

あのひと M-3

 あの人の名前は結城秀一郎。


 彼に会うまでの私の彼に対する印象は悪いなんてもんじゃない、最悪だった。

パパの敵の息子-敵って言うと大げさに聞こえる?でも本気でそう思ってた。


 ママはパパと出会うずっと前にあの人のパパと付き合っていて別れた。

そんなのなんでどこにでもあることだけど、ママはその人のことをパパと結婚して17年経ったその時でも、ううん、26年経った今でも忘れてはいない。

 あの人のパパのことが表面に出てくるまでのママは、パパ一筋って感じの娘から見ても恥ずかしくなるくらいで、修司さんと加奈子さんも真っ青なラブラブバカップルだった。

 ただ……あの人のパパ、結城龍太郎さんの話を初めて聞く半年ほど前、ウチにヤスフミさんって人からも電話があった。その人もママの元カレで、龍太郎さん(うちのパパと混同しそうなので、名前で呼ぶことにするけど)と別れた後付き合っていたらしい。その人のことは今ではいい思い出になっているって笑っていた。


 そして、あの日…ママは朝から浮かない顔をしていた。

『変な夢を見ちゃったの。』

そう言ってた矢先だった。

 朝のニュースで、龍太郎さんの訃報が流れた。自宅マンションの8階階からの転落死だった。

確かに、昔の恋人がそんなことになったと知ればショックなのには違いないけど、ママの反応はそれどころではなかった。完全に自分を見失っていると言うのが正しかった。


 そう……それはそれまでママが被っていたラブラブの仮面がひび割れて崩れた瞬間だった。

 完全に自分を見失っていたママは、あろうことかパパと龍太郎さんとを間違えた。龍太郎さんはあの人とよく似た顔をした(写真も見せてもらったけど、本当によく似ている)細身。背はママよりちょっと高いだけの小柄。そんな龍太郎さんを、身長182cmで、がっちりした体型のパパとを見間違うなんて、絶対にあり得ない。

それほど、混乱していたという事なのだ。

 そして、ママは龍太郎さんの名を呼びながら泣き崩れた。

 それでも、元カレの突然の訃報だからと、パパは何とか耐えた。でも、その何日か後、夕食後電話が鳴って……その電話が終わった後、パパは大声でママを罵った。パパは自分でも『俺の趣味は夏海だ』って豪語するくらいにママにべた惚れで、それまでそんな風に声を荒げたことなんて無かった。

そのまま2人は全く口を利かなくなってしまった。


 でも、週末-2人はいつの間にか仲直りしていた。


 私が土曜の朝っぱらから明日香を連れ出して図書館に逃げ込んだのは、両親の放つ空気にいたたまれなかったからなんだけど、その間にどんな話し合いがなされたのかは分らない。でも、帰ると2人は会話していた。

 会話はしていたけど、それまでとは何となく違っていた。

 今までパパのほうが4つも年上なのに、パパはママに完全に尻に敷かれていて、それをパパ自身が楽しんでいるようなところがあった。

 でも、この後パパは時々高圧的な態度を取るようになった。ママもそれに対して今までみたいに声高に言い返したりしない。寂しい目をしてパパのいう事に従う。

 それと……偶然だけど気分が悪くて早退した日、私は2人のエッチシーンを見てしまって、ショックをうけた。ただでさえ両親のそんなモノはショックだけど、それだけではなく何だかパパがママを追い詰めているような気がしたから余計に。

 だけど、それだからって私はママをかわいそうだとは思えなかった。パパっ子だった私は、娘までだまし続けたママの仮面が許せなかったからだ。

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