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Future  作者: 神山 備
第一部 2人の未来(みく)
13/55

泣き虫になった訳 1 M-6

 夢の中の私が風邪を引いていて熱を出したのは、私の調子が悪かったからなのかな。

そう思うくらい、私はその日気分が悪かった。とくにその日は悪かったけど、実のところその前からずっと調子は良くない。

 だからと言って、お医者さんに行く気にはなれなかった。お医者さんに行くには健康保険証を提示しなければならない。私の健康保険証はまだ有効なのだろうか……そんなことも分からない状態で、迂闊にかかれないというのが本当のところだ。


 だからって、市販薬を飲む気にもなれなかった。空腹時には気分が悪いんだけど、それでも何かをたべてしまうと結構何とかなっていたからだ。

 でも、その日はさすがに朝から何も食べる気になれず、そのままバイト先の喫茶店「ドルチェ」に向かった。


 それにしても……あの夢、どんどんとリアルさを増していく。ママのママ倉本のお祖母ちゃんまで出てくるなんて思わなかったし。

 私はますます、あれが夢だなんて思えなくなっていた。なら……なんなんだろう。もしかしたら「もう一人の私」がいるのかもしれないなんて……馬鹿げた発想だとは思うんだけど。

 そんなことを考えながら歩いて、私はドルチェのドアに手をかけた。

「おはようございます」

「おはよ、未来ちゃん」

私が挨拶すると、マスターの菊池さんは、アイスコーヒーの仕込みをしながら私に挨拶を返してくれた。

「未来ちゃん、大丈夫?」

そのあと、菊池さんにいきなりそう聞かれた。

「何か?」

「顔色悪いよ、今日」

「……そうですか?別に、普通ですよ。」

私はしらばっくれてそう答えた。少々気分が悪いからって休んではいられない。時給だから休めばそのままバイト料に影響するし、板倉さんたちにも申し訳ない。働かないと。

 それに、この私の気分の悪さはここのコーヒーには反応していないみたいだいし……そう思いながらPOPを書く。日替わりランチならぬ日替わりモーニングの文字。

 名古屋エリアではほかの地方ではおまけ程度しかないモーニングが、そうではないのだ。2品3品は当たり前、喫茶店でがっつりとした朝食を済ませることができることが多い。

 菊池さんは料理の腕も一級品。だから、毎日通常のトーストにプラスして、ちょっとした朝のメニューが付く。それが日替わりモーニングの中身。だけど、

「喫茶店じゃなくて、レストランでも充分やってけるんじゃないんですか?」

って私が言った時、

「それじゃぁ、俺のこのおいしいコーヒーが脇役になる。俺はホントはコーヒーで勝負したいんだよ。コーヒー飲まない奴には、飯は作んない」

と笑う。

そう、ここドルチェはそんなマスター菊池さんの大好きが詰まったお店。そういう空間はいるだけで心地いい。だから、なおさらいい加減な事をして辞めたくない。そのためにはできる限り迷惑をかけちゃいけない。

「未来ちゃん、一度も休んだことないでしょ」

「別に休むことないじゃないですか。ここにいるとホントに落ち着くんです」

「そんなこと言っても、何も出ないよ。まかないにプリンでも付けるくらいかな」

「やった! プリン付けてくれるんですね」

「しまった! ま、良いよ。ああ、タケさんいらっしゃい」

菊池さんはそう言うと、折から入ってきたお客さんに挨拶した。


 だけど、お昼前になって、今度はランチのためのご飯を炊飯器が湯気をあげて炊き始めた時、私はものすごい吐き気に襲われて、朝何も食べていないのに吐いてしまった。真っ蒼な顔をした私に菊池さんは、

「未来ちゃん、ホントに今日は帰んな」

と、言った。

「そんな、今からランチの時間なのに……」

「だからだ。そんな時間に倒れられても、フォローもできないし、お客様にも迷惑がかかる。それに、今ならまだ午前中の診察に間に合う。帰り道に医者に寄って、今日はゆっくり休むんだ」

時間は11時をすこし過ぎたところ。今なら、近くのお医者さんで滑り込みで診てもらえるに違いない。


 少しの押し問答の末、私はとりあえずドルチェを出た。そして、医者には寄らずそのままアパートに戻った。

アパートについた私は、膝を抱えて自分の部屋のラグに座り込んだ。

私……何か病気なんだろうか……涙がまた出てきた。私は本当に泣き虫になったみたいだ。

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