第4.5話 白河真琴ファンディスク~朝の悲劇~
「ん・・・あ・・さ?」
カーテンの隙間から入る日差しにあてられ、私は目を覚ます。
「眩しい・・」
目の前には、すーすー寝息を立てる、彩乃ちゃんの顔。
鼻先がつんつん触れ合う程に、近い距離。
寝息が顔にかかる度、くすぐったくなる。
彩乃ちゃんの甘い息の匂い・・・。
なんだかとても、愛おしくて、母性本能が湧き上がる。
しかも長く一人暮らしだったので、寝起きで人の温もりを感じられて嬉しい。
「うーん・・・むにゃむにゃ・・ん」
身体をぎゅう~っとされる。
良く見ると、私を抱き枕の代わりにしているようだ。
手を背中にまわし、足は私の股の間に挟み、絡めている。
うふ、赤ちゃんみたいで可愛い・・・。
初夏の朝日が指すなか、二人は抱き合い、汗でびっしょり濡れていた。
なんだかちょっと汗臭い・・・。
起きたらシャワー貸してもらわなきゃ。
まだ、目覚ましが鳴るまで、時間がある。
「お、おにぃ・・ちゃ・・・」
あ、起きたかな。
・・ちがう、寝言みたい。
「おにぃちゃ・・ん・・すき」
さらにぎゅ~っとされる。
そんなにお兄ちゃんが好きなんだ・・。
ちょっと微笑ましい。
「ん、ごにょごにょ・・おかあさ~ん・・・おっぱい」
ゴソゴソ・・・
え、・・ちょっと
開いたパジャマの胸元に顔を埋められ、どうしたものかと考える。
寝る時は、ブラは外している為、直接吐息が肌にかかる。
うふふ、まだ子供だね。
「ひゃっ!」
鼻先で敏感な部分をつんつんされ、刺激にビクッとした。
兄妹揃って、エッチなんだから・・・。
「ん~~・・・もっと・・たべるぅ・・」
敏感な部分を、はむはむと甘噛みされる。
!!!!!!!!!!!!
(う、うそでしょ!?)
や、やだ、ちょっと・・・!!声がでちゃう・・。
「ハ・・ハァ・・あん・・」
さすがに起こそうかと思ったけど、幸せそうな寝顔を見てためらう。
「おいしい・・の・・これ・・」
はむはむ・・・もぞもぞ・・。
ま、また!!!!!!!!
「やん・・あ・・ハァ・・ダメ・・」
甘噛みの刺激と、股の間をグイグイしてくる足で、え~と、そのぅ、すりすりされて・・・。
変な気分になってしまう。
もぉ、この子は・・・・・・。
もう時間だしそろそろ起こそうと思っていたら、
「気持ち良くなってきたかい?」
ドキッ。
思わず赤面。
周りを見渡しても誰もいない。
「こうするの、好きだろ?」
な、ななななに!?
「ああ、いいわとっても。」
「じゃあもっとしてあげるよ。」
「あっ、そこ、そこもっと強く!」
「まったく君って欲張りだね。」
「もっと激しく揉んで!」
「こうかい?」
え?え? やだぁ。
「だいぶこってるねえ」
「ええ、仕事が忙しくて」
は?
声の方を捜すと、目覚まし時計が赤く点滅している。
「これね・・」腕を伸ばし手に取ると、
「そんな疲れた君も好きさ」
「ええ!わたしもよ!」
ピッと、アラーム?を止める。
「はあ~。いったいなんなの、この目覚まし」
裏面を見ると、「二人の愛の形~肩揉み編」にセットされている・・・。
私はガクッとうなだれた。
「彩乃ちゃんって、変わった趣味してるのね」と思いつつ、身体を揺さぶる。
「起きて、彩乃ちゃん。朝だよぉ」
「う、むにゃ?」
「ほらっ、朝よ」
「う、う~ん・・おはやおございはう・・むにゃ・・」
あくびだか、あいさつだか分からない返事をして、もぞもぞする彩乃ちゃん。
「おはよう、彩乃ちゃん。起きた?」
「おはようございまふぅ、しらかわさん」
目をすりすりしながら起き上がり、女の子座りをする彩乃ちゃん。
上目使いが可愛らしい。
「ハァ~ハフゥ、すみません、もう起きましたぁ」
大あくびしながら両手を広げ、伸びをしている。
「彩乃ちゃん、私に抱きついて寝てたんだよ。可愛かった~」
頭をさすってあげる。
「えっ! うそっ、ほんとですか」
「フフ、ほんと」
「ご、ごめんなさいっ、彩乃いつも抱き枕、抱いてるから・・」
「でね、お母さ~んって、私のおっぱい吸ってたよ」
と、冗談っぽく言ってみる。
「!? し、ししししてないですぅ、うそですぅ、そんなのっ」
フフフフ、可愛い。
さらに頭をなでなで。
「や、やめてください、恥ずかしいですよぉ」
その後もジタバタする彩乃ちゃんをからかいつつ、二人で朝の準備を始めた――――――
キッチンで、仲良くご飯を作る二人。
「いいの彩乃ちゃん? 私の分もお弁当作っちゃって」
「もちろんですよぉ、こっちは朝食の準備をしますからぁ、白河さんはおにぎり握ってくださいね」
「う、うん、まかせてっ」
とは言うものの、形がいびつに・・・。
お料理はあんまり・・・いえ、全くしないのよ・・。
でも、こういうのは、気持ちよ! 料理は愛情って言うでしょ。
気持ちをこめるべく、二人の兄妹を思い浮かべ・・・
ニヤけた変態の顔を思い出す。
あいつのは適当でいいわっ。ふんっ。
怒りがこみ上げ、握る手に力が入る。
「もぉっ、あの変態っ!」と言いながら、ギュッギュとおにぎりを握る。
中の具を入れ忘れたので、その辺の食材を手に取り、「これでいいわよね、エコだし。」ふふーんと鼻で笑い、硬くなったおにぎりにねじ込む。
後は定番のウィンナーやら卵焼きやら、簡単なものを仕上げる。
「うん、初めてのお弁当にしてはまあまあね。さすが私。」
いつもはコンビニで済ませてしまうので、こういった朝の風景が楽しい。
やっぱり家族っていいよね。
「そうだ♪」折角初めて作ったお弁当。ブログに乗せておこう。
携帯を取り出し、写メる。
「後で電車でUPしょっと」
ふふ~ん♪
「白河さん、そろそろ兄さんを起こしてきてくれますか?」
「え、あいつぅ?」
「そろそろ起こさないと。兄さんは、いつも彩乃が起こさないと起きないんですよぉ」
「あ、じゃあ、私がこっちを代わりに・・・」
そう言って綾乃ちゃんが掴んでいたフライパンを取ろうとし、逃げられ、
「ああ、ダメです。今、大事なところなんです。大丈夫ですから、お願いします」
「あっそう・・分かった。じゃ、行ってくるね」
隠れてニヤリとする彩乃―――――
強引に頼まれた感があるけど、結局ここまで来ちゃった・・。
あいつの部屋の前。
できれば男の子の部屋へは、あまり入りたくない。
エッチだし・・・。
ちょっと優しいところもあったんだけどな・・・。
昨日の事を思い出す。
思い出すけど、脳裏に浮かぶのは、結局いじわるな事ばっかり。
「ふんっ、やっぱり嫌いっ」
言い放ち、ドアをこんこんとノックする。
「起きてるー。朝ごはん出来るよぉー」
・・・・・・・・。
返事が無い。
「しょうがないよね」とドアを開け入ると、案の定まだ爆睡みたい。
近寄り、頭まで被った夏用の薄い布団をふわりとめくって、
「もぉ、早く起きなさ・・・キャっ!!」
な、なんでパンツ一枚で寝てるのよ~~~~~。
その場にへたり込む。
なんてもの見せるのっ!
もぉ~やだぁ~。
そろそろと顔を上げ、ちらちら見る。
「早く起きてよぉ~~~~」
直接触りたくないから、布団をたぐり寄せ、それごしに揺する。
そして、彼の下半身のある部分の違和感ある膨らみ・・・に気付く。
!!!!!!!!!!!!
(声にならない叫び)
「な、なななななな、なんで!?」
じーーーーーーーーーーと、つい見てしまう。
あ、やだ私・・・。
下を向き赤面してしまう。
なんで寝てるのにああなるの?
ちら。
キャァ!
自分で見たのに驚いて下を向いてしまう。
昨日は分からなかったけど、あんなに・・・。
じーーーーーーーーーー。
エッチな夢でも見てるのかなぁ。
あいつ変態だし。
すると突然、大声で
「危ないっ!!! 伏せろおおおおおおおお!!!!」
「キャア!!! な、なに、なによっ!」
辺りをキョロキョロする。
なにもない・・。
「早く伏せろっ!!!!!!!!」
二度目の声にビクッとして、「わっ!!」と慌ててその場に伏せて、頭を抱える。
やだ、怖い、なんなのぉ~?
涙目で堪える。
「お前、何やってんの?」
声に反応して恐る恐る見上げると、上体を起こし無表情で見つめるあいつ。
「危なかったな」
「助かったぜ、相棒」
「敵は5人、こっちは二人だ。油断するな」
「分かってるさ」
ぽか~んとする私。
「ったく、うるせーなこの目覚まし」
ピッとアラーム?を彼が止めると、
「ええと、なになに朝日のガンマン? これもいまいちだな」
おもむろに時計を投げ捨てる。
「で、何やってんの、お前?」
カァ~っと顔が赤くなるのが分かる。
「べ、別になんでもないわよっ!! バ、バカじゃないのっ!?」
「は? 意味分かんねーし」
「は、はは早く、下、降りてきなさいよねっ!!」
バタン――――――――
逃げるようにドアを閉め部屋を出る。
そして、ドアにもたれつつ「はあ~」と溜息。
その場にへたり込む。
もうほんとにやだ・・・。
そして急にドアが開いたもんだから、
ガンッ
と頭を打たれる。
「痛ったぁ~~~」頭をさする。
「お、わりい。いたの?ごめん」
「なにすんのよっ! おもいっきり頭ぶつけたじゃないっ!!」
「知らねえよ、開けたらお前がいたんだし」
もぉ最悪っ!!
・・・・・・。
しかも良く見ると、シャツは着ているものの、下はまだ一枚じゃない!
この変態!
抱えた頭を振っていると、
「おい、大丈夫か? そんなに痛かったのか?」
と、心配そうに近づき顔を覗きこむ彼。
すると、ふたりの間につーんと漂う汗の匂い。
え、やだ汗臭い。
あ、そういえば、私寝てる間にいっぱい汗かいちゃって・・。
や、やだ私・・・?
頭がもうグルグルしている。
「なあ、さっきから変だぞ、平気か?」
彼が心配して手を伸ばす・・・。
「あ、ダ、ダメーーーー、近寄らないでーーーーーっ!!」
どんっと突き飛ばし、タッタッタッと逃げるように下のリビングへ走る。
そして、彩乃ちゃんを見つけて、
「彩乃ちゃん! シャワー借りるねっ!!」
シャワーを浴びて、やっと自分を取り戻した私・・・。
はぁ~、朝から疲れちゃったよ―――――――――
第4.5話 完