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カラダがどんどん改造されるわけ  作者: 739t5378
第2章 カラダが改造されたあと
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第24話 加奈子と如月さん

「薄暗いし汚いし、こんなトコ連れて来て加奈子をどうしたいの?」



答えはどうもしない。


俺&加奈子は如月研究所へと来ていた。


何の目的で来たかって言うと、先日の顔と右手だけが子供化して俺の見た目が酷い事になった件を説明する為である。


要するに、加奈子がしつこく聞いてきたからわざわざ連れて来た訳で。


まあこいつの性格上、既にその事はあまり気になってはいないように思うんだが。


しかしだ、加奈子が俺の周りに居る以上、如月さんを紹介しておいた方がいいと考えた。


まあ大前提としては、違う理由も含まれてはいるんだけど。


その理由はすぐに分かると思うんで割愛させていただくとする。


さて、加奈子と二人でソファーで待機する事数分。


カーテンで仕切られた部屋の奥から如月さんが現れた。


いつもの気怠そうな雰囲気そのままに、ジャージに白衣、メデューサ級のボサボサ頭。


そして極めつけの分厚い淵無しメガネ。


手にはカップが三つ乗ったお盆を持っていて、コーヒーの香りを漂わせている。


俺が来ても絶対お茶なんか出さないくせに。


明らかに加奈子を歓迎しているムードが漂ってるな。


ま、誰が見てもこいつは美少女枠だから。



「よく来たな。まずはお茶にするとしよう」



無表情で言った如月さんが、テーブルにカップを並べソファーの対面へと座った。


横を見ると、加奈子が緊張した面持ちでこの状況を説明しろという顔をしている。


まあそんな顔をされても説明なんてしないけどね。



「私は如月だ」



宜しくと右手を突き出し握手を求めてくる如月さん。


当然俺に向かってじゃない。


挨拶を求められたら返すのが礼儀。


そこは一応日本人、加奈子が強ばった表情で「あ、その‥‥あ、麻生です‥‥」と答えた。


流石の加奈子も如月さんのオーラには勝てなかったようで、かなり萎縮している。


それはそれで面白い。


そして俺の襟をグイっと掴んだ加奈子が小声で助けを求めてくる。



「ちょっと駿ちゃん! なんで黙ってんの!? この変な人誰!??」


「落ち着け、この人は俺のドラえもんだ。仲良くなっておくといいぞ」


「ドラえもん? 意味不明だし、只の小汚いおばさんじゃん!」


「バ、バカ!――」



相手に聞こえるトーンで言うな!


まあ見た目に関しては否定は出来ないが、



「一応俺の命の恩人なんだ」


「この人が‥‥? てかさ、駿ちゃんに命の危機が迫ったことあんの?」


「おう、最近ありまくりだったんだ」


「‥‥‥この前の顔とかキモくなったことに関係してる?」


「まあそうだな」



あれを『キモい』の一言で片付けられると俺の幼少期が残念な思い出に変わってしまうんだが‥‥そこは黙ってスルーしておく。


無言でゆったりとコーヒーを啜る如月さんと、俺の話しで俄然興味が湧いた加奈子がしばし見つめ合っている。


多分如月さんは趣味的な部分で見ているんだろうけど。



「コーヒーを飲むといい。挽きたてだから香りも――」


「――ちょっと待った!」



折角だから頂こうと俺がカップに手を差し伸べたその時、加奈子に止められる。



「状況がちょっと掴めないんだけど! あのさ、加奈子に何をさせたいわけ!? まさか『この人は命の恩人で~す』ってだけで連れてきたわけじゃないんでしょ? んまァ、駿ちゃんの大事な人を紹介してくれてるのは嬉しいんだけど、もっとなにかあるよね!?」



ん? あーそっかそっか、そうだよな。



「わりぃ、如月さん、こいつは俺の大事な友人で―――」


「―――彼女の麻生加奈子です!」



ちゃんと紹介しようと思ったのに、憮然とした加奈子に遮られる。


そしてそんな俺達を微笑を浮かべて温かく見守っていた感じの如月さんが一言。



「ふむ‥‥‥やはりモテるようだな、神崎君」



俺がモテる――?


この俺が?


やはり?



「思春期というのはやはり素晴らしいな。ところで、白河君とは別れたのか?」



ぶっ!


思わずコーヒーを吹き出す俺。


横では加奈子がフーフー言いながら啜っていたコーヒーをゴックンと飲み込んで、熱かったのか一人悶絶している。


そして喉を押さえる加奈子と咳き込む俺が同時に答える。



「別れてないですよ!」

「別れてますっ!」



ふざけんな!


誰が真琴と別れるかってんだよ!



「如月さん! 俺が付き合ってるのは白河です! こいつはその‥‥元カノっす!!」


「誰が元カノだっ!! 勝手に過去の女にすんなっ!!」


「過去じゃねーかよ!! 勝手とか言ってんな! そもそも2年も連絡不通だったのはどこのどいつだっ!!」


「うっさい死ね!!」



ゲシッと加奈子の全力の肘打ちが俺の脇腹に入る。


いや、脇腹というか肋骨に当たって‥‥ヤバイ、折れたかも‥‥。


ったく‥‥真琴といい加奈子といい、なんで俺の周りの女子は力加減ってものを知らないんだ?




◇◆◆◇




俺が落ち着きを取り戻し、場の空気が冷めた頃、真面目にここ最近の事を加奈子に話した。


真琴の事務所が嫌がらせにあったり、坂爪博士に誘拐されたりした事。


超能力の事や真琴のクローンである美琴の話し―――。


そして俺がトラックに吹っ飛ばされて死んだ事も―――。


自分で言ってなんだが、かなり嘘臭い話しである。


それでも真琴の瞬間移動を加奈子本人も体感しているからか、俺の話しを真面目に聞いてくれた加奈子が嬉しかった。


しかも如月さんにも話しに参加してもらったんで、信憑性は上がったと思う。



「信じるよ。かなり非現実的だけどさ。駿ちゃんが言うことだもん」



加奈子はそう言ってくれると思った。


やっぱりこいつとは気が合うな―――って改めて確認出来た気がした。



「でもさ、一つ聞いていい?」



真面目な顔を加奈子が向けてきて言った。



「白河真琴を助けて死んだんでしょ? もしそれが加奈子だったら、同じように助けてくれた?」



それは加奈子が死にそうになった時、俺が身代わりになるのかって意味だよな‥‥。


要するに、「私の為に死ねる?」って質問だろ‥‥‥?


しばし考える。



「あーやっぱいい、今の質問無し。駿ちゃんってそういうとこ真面目だよね」



なんだよ、ちゃんと考えてたってのに。


まあいいか。



「ところで麻生君。君も私の実験体にならないか?」



優雅にコーヒーブレイクしていた如月さんが本題を切り出してきた。


そう、実は如月さんから新たな実験体を連れてこいと念を押されてたんだ。


しかも美少女限定ってな。


そして丁度いい頃合で加奈子が現れた。


まあ如月さんと知り合っておくのは得することはあっても損することはないだろうから、軽く悩んだ挙句連れて来たってわけだ。


しかし加奈子の答えは即答で「イヤです」の一言だった。



「おいおい、断るの早くないか?」


「え? だって超怪しいじゃん。それに加奈子が実験体になって得することないじゃん」



まあそう思うよな。



「安心したまえ、報酬はきちんと払う。前払いでいいか?」



そう言うと、如月さんは胸元から封筒を取り出しスッと加奈子の前に突き出す。



「取り敢えず手持ちですまないが、その位で良いか?」



例の如くその封筒は分厚い。


軽く一般的なサラリーマンのボーナスを超えている額が予想出来る。


加奈子が俺に向かって「見てもいいのかな?」って顔をしているから、「大丈夫だ」と一言告げる。


そして手に取った加奈子が中身を確認すると予想通りの諭吉祭り。



「如月さんでしたっけ、話しを聞きましょう―――」




◇◆◆◇




「それでは服を脱いでくれ」


「え!? 脱ぐんですか!?」


「まずは身体データが必要だ――」



カーテンの奥で魅惑的な会話が繰り広げられている。


気になって仕方がない。



「下着もだ」


「下着も!?」



絶対その必要はないと思うんだが‥‥。


取り敢えず如月さんの趣味は加奈子には伝えてない。



「ふむ‥‥156の78、55、82か‥‥23.5――」



数字だけ聞こえてくるんだが‥‥何をしているのか明確に分かるな!


ナイスだ如月さん。



「続いて触診を始める」


「わっ、く、くすぐったい‥‥キャハッ!」


「僧帽筋が引き締まっているな。スポーツは何かやっていたのか?」


「あ、はい、バレーボールを小学校の時から――って、あん」


「成程‥‥大殿筋も肉付きが良く柔らかく理想的だ」


「あ、あの‥‥そんなに触る必要あるんですか‥‥?」


「胸鎖乳突筋に少し張りがあるな? 勉強などする時には、背筋をしっかり伸ばすことだ」


「え~と、わ、分かりました―――あ、ちょっとソコは――!!」


「大胸筋もなかなかだ、柔らかく弾力がある――」


「‥‥‥ぁ‥‥‥‥って! 絶対その手つき関係ないっしょ!? あっ‥‥‥止めて下さいっ、こ、声がで、出ちゃうっ‥‥駿ちゃんに聞こえちゃうよ‥‥ゃ‥‥」


「ふむ‥‥先端の感度も良いな。神経の伝達に問題はないようだ。Bの70――」



‥‥‥‥バッチリ聞こえてます。


如月さん、グッジョブすぎる‥‥。


連れてきて正解だったな!


もう今夜のおかずはいらないなっ!


‥‥‥‥。


等とはしゃいでる場合じゃない。


カーテンの向こうがやけに静かになった。


一体なにをしてるんだ?


しばらく沈黙が続き、シャーっとカーテンを開ける音共に如月さんが出てきた。



「麻生君は眠っている。後一時間程度で起きるだろうから、それまで留守を頼む。私はこの後打ち合わせがあって出かけるが、そのまま帰って構わない」



そう言って研究所を出ていこうとする。


いや、出て行くのは構わないんだけど‥‥。



「如月さんっ、加奈子に何かしました?」


「ん? ああ、ちょっとした薬剤を投与した。ある製薬会社から依頼があってな、丁度女性の被検体が必要だった。神崎君、非常に良いタイミングで彼女を連れて来てくれたな。体型も今回の実験には適していたと言えよう―――」



急いでいたのか、説明も程々に如月さんは出かけて行った。


最後に「彼女は何も着ていない。エアコンの温度は下げるなよ」と一言残して。


‥‥‥‥。


ちらりと加奈子の様子を伺う。


奥の診察台に寝かされ、身体には毛布が掛けられていた。


一時間‥‥寝ているだと?


俺はここで一体どうしてればいいんだ!?


研究所には誰も居ない。


そしてしばらく起きないであろう、素っ裸の美少女と二人っきり‥‥。


ぐおおおおおおおおおおお!!


捲っていいよね? 捲っていいよね? 捲っていいよねっ!?


毛布捲っちゃってもいいよねっ!?


心の中で叫びつつ、既に加奈子のすぐ傍までやってきた俺。


いや、だって見てもバレないし。


本人眠ってるし、起きても紳士な態度でいれば問題ないじゃん?


お前ならどうする?


見るよな。


僅かにミクロ単位で良心が痛む気がするが、これも勉強だ。


うむ、保健体育だ、仕方ないんだ。


許せ加奈子、いざ本番って時に失敗しないよう、色々と学ばせて貰う。


その時は頑張るからな!


手を伸ばす。


目を閉じてスースー寝息を立てる加奈子。


いつもは生意気だけど、こうして見ると加奈子の美少女さが際立って見える。


サラサラの綺麗な髪。


透き通る肌。


半開きの柔らかそうな唇に、思わずキスしたくなる。


別にしたっていいよな?


時間はある。


まずは内緒でチューだ。


こ、これも練習なんだ‥‥。


そう心に言い聞かせ、若干の罪悪感を制御しつつキスの態勢へ。


ゆっくりと加奈子の唇へと近づく。



ゴクリ―――。



「‥‥‥ん‥‥‥‥」



ぬおっ!


加奈子から吐息が漏れた。


いかんいかん。


第一の目的を優先しよう。


まずは女体の神秘の調査が先だ。


キスは後回しにし、加奈子に掛けられた毛布へと手を伸ばす。


まずは胸元からゆっくり捲っていく‥‥。


真琴と比べると貧相だが、それでも控えめな膨らみが可愛い。


もう少しで見えそうだ――。



またもやゴクリ―――。



ゆっくり静かに毛布をずらし、さあご対面―――!!



あれ? え? え? なんで?



嘘だろ?



ナニコレ?



何故か胸から下全体が見えない。


いや見えているんだが‥‥何故か俺にはモザイクが掛かっているように見える。


俺の目が可笑しいんだろうか。


ゴシゴシ擦ってみるが、変化は無い。


正にあの、エロビデオの局部に現れるようなモザイクが加奈子の身体にかかっている。



ガクッ。



なんて事してくれるんだよ如月さん‥‥。


てゆーか、どうやったらこんな事出来るんだよ!


チクショーー!!


18歳未満はお断りかっ!?


シクシク‥‥文句を言おうにも、見ようとした行為がバレるから言えない‥‥。


くっそ~~~こうなったら必殺のイリュージョンアイ!


いや、只の薄目なんだけど‥‥。


モザイク見る時、薄目にすると見えたような気にならなかった?


まあ見えるわけないんだけど‥‥。


ジト目で加奈子の肢体を眺める。


胸の辺りの頂点に、薄茶色なのか薄いピンクなのか何かが見える。


下腹部の下辺りには黒っぽいモヤがかかっていて、モザイク越しに何やら想像を掻き立てられるものが。


うう‥‥今はそれで我慢しろってことなのか‥‥?


とその時俺は閃いた。


そうだよ、ビデオではない。


これは現実だ。


画面の奥は触ることは出来ないが、このモザイクは触れる―――。


ふ、ふふふふ‥‥‥‥はーっはっはっは~~~。


勝ったな。



「では、触診を開始する」



思わず手術前のドクターの如く格好つける。


っふ、俺も男だ最初っからその黒いモヤの部分から責めさせてもらうぜっ!!


ゆっくりと手を伸ばす―――。


初めての感触に期待しているのか緊張しているのか、思わず手が震えてしまう。


そして指先にモシャっとした感触があったその瞬間―――。



「ぎゃあああああああああああああああああ!!!!!」



ビリッときた! ビリッときた! ビリッときた!!


身体が熱い! 身体が熱い! 身体が熱い~~~~!!!


ドサッとその場に崩れ落ちる俺。


か、身体が動かない‥‥‥‥そして燃えるように熱い‥‥‥‥。


俺の行動は全てお見通しってわけか‥‥。


ずるいぞ如月さん! 自分だけ楽しんでおいて!!




◇◆◆◇




結局加奈子には何も出来ず、そのまま一時間経過。


さっきのは電撃なんだが知らないが、復活するまでかなりの時間が経ってしまった。


それでも、何とか身体が動くようにはなって、せいぜい加奈子が起きる直前に毛布を掛け直せた事が唯一の救いだった。



「あれ? 駿ちゃーん、加奈子の服知らなーい?」



カーテンの奥から呑気な声が聞こえてくる。



「あー、あったあった、着替えるからこっちくんなよー」



ちっ、探すフリして行くのがバレたか。


鋭いやつめ。


ん?服?


もしかして生下着チャンスだったんじゃ‥‥。


くうぅ、俺としたことが‥‥何一つ成果が無かったなんて‥‥‥。


しばし落ち込んでいると、ちょんちょんと肩を叩かれる。



「やぁ、なに落ち込んでんのさ」



振り向くと、加奈子が昼寝してさっぱりした顔で戻ってきていた。



「あのさー、一応確認しておくけど‥‥見た?」


「何をだよ?」


「何をってナニをだよ」


「はんっ、お前の身体なんか興味ねーっつんだよ」


「うわ、ひどっ! そんな顔して言う事ないじゃん!」


「うっせーな、そんな貧相な胸に興味ないんだよ。俺は巨乳が好きなんだ」



ま、お前が巨乳だったら真琴と互角に渡り合えるかもしれないがな。



「あ、なにそれ‥‥分かった、今日の仕返しでしょ」


「何がだよ」


「加奈子がイケメンがいいって言ったから」


「ああ? 関係ねーよ」


「駿ちゃんって意外とねちっこいね」


「誰がチンコちっちゃいだ!!!」


「そ――そんなコト言ってないじゃん!!」



いかんいかん、例の真琴に見られた後遺症で完全にトラウマと化している。



「ま、まァいいや‥‥駿ちゃんって変態だけど、やっぱり紳士だよね」



ちょっと頬を染めて優しい笑顔を向けてくる加奈子。


裸を見なかった件の事を言ってるのか?


なんか罪悪感沸くな‥‥。


よしっ!


気を取り直して、



「加奈子、駅前で甘いもんでも食べて帰ろうぜ!」


「イイね! イイコト言うじゃん!」


「だろ? 俺おごっから行こうぜ」


「いいっていいって、加奈子のおごりで。さっき大金貰ったしィ」



ニシシと不敵な笑みを浮かべる加奈子と二人、研究所を出た俺達は加奈子に引っ張られてとある喫茶店を目指していた。


何でも、学校で噂になっている程、そこのスイーツは評判らしい。


駅前にそんな店あったかな?と思いつつ加奈子に着いていくと、大通りから2本入った人気の少ない通りに『喫茶 青春の味』という看板が見えた。


甘酸っぱいコーヒーをイメージしつつ、店内に入る。


すると、「へいらっしゃい!!」と活きのいいおっさんがカウンターに立っていた。



「空いてる席へどうぞ!」



気持ち良く案内されて席に着く。



「あの人が店長さんかな? なんかイメージ違うんだけど。てっきりイケメンパティシエが居ると思ったのに」



別に文句ではなく率直な意見を言う加奈子。


うむ、その意見には俺も同意する。


しかし‥‥なんかここ、前に来た気がするんだよな‥‥。


と思いつつ壁を見ると、真琴のポスターが店中に貼られていた。


入口付近には、『白河真琴も絶賛!当店のスイーツ!!』と書かれていた。


‥‥‥‥。


加奈子もそれを見て一言。



「この店、白河真琴押しなの?」



それを聞いた店長さんが嬉しそうに近づいてくる。



「そうなんだよ、ウチは真琴ちゃん爆押しだから。しかも週一回は本人も食べに来るからね!いや~芸能人お墨付きってやつ?嬉しいね~。ささ、ウチのオススメはケーキだよ、何がいいんだい?」



「へ~そうなんだ」と納得した加奈子がどれにしようか店長と仲良くメニューを見ている。


皆さんは思い出しただろうか。


言われて見れば、ここに真琴を連れてきたのは俺だった。


しかもあいつ、知らないうちに常連になってるなんて‥‥。


俺を誘えってんだよ‥‥。


思わず真琴が沢山のスイーツに囲まれて嬉しそうな姿を思い出していると、テーブルにどんどんケーキが運ばれてきていた。



「おいおい、お前いくつ頼んだんだよ‥‥」


「ん? 全部だけど」


「はあ!? 全部!?」


「うん。だって店長さんが全部オススメだって言うから」



沢山のケーキに囲まれてご満悦な加奈子。


ったく‥‥女子ってホント甘い物好きだよな。


全部食えんのか?


俺は3個目で多分気持ち悪いぞ‥‥。



「あ!ホントに美味しい!! 駿ちゃんも一口食べてみてっ!」



早速食べていたチョコレートケーキを一口サイズに分けて、俺にあーんしてくる加奈子。



「ほらァあーん―――」



何だか恥ずかしいが、パクリ。



「ね?美味しいでしょ?」


「お、おう‥‥美味いな」



うふっと加奈子が満足した顔をする。


その笑顔に思わずドキッとしてしまう。



「ところでさ、加奈子眠らされてたじゃん? 何かされたのかな? だって大金貰ったからさ、ちょっと心配な感じ? まあ駿ちゃん居たから大丈夫だと思うけど」



そう言えば如月さんの伝言があったんだった。



「え~っとだな、良く分からんが薬剤を投入されたらしい」


「え、薬剤? それってヤバいやつ?」


「いや、詳しくは聞いてないんだ」


「ちょ、ちょっと待って。加奈子凄い不安になってきた」


「ま、まあ大丈夫だと思うぞ。製薬会社から依頼があったっていってたから、多分まともな物だと思うし‥‥」


「そ、そうなんだ‥‥駿ちゃんがそう言うなら信じるけどォ‥‥」



そうは言ったものの、かなり心配だった。


あの如月さんが普通の薬品を使うわけがない。


今までの傾向からして明日には分かる筈‥‥いや、確実に身体に変化が起きているような気がする。


ま、考えても仕方ない。


如月さんが大好きな美少女に悪い事は絶対にしないだろ。


それは確定事項と言える。


そう心に念を押し、その後スイーツを楽しんだ俺達だった。





◇◆◆◇





翌日――。



学校へ来た俺は、普通に坂崎とノノに囲まれてだべっていた。



「しっかし、お前に彼女が出来るとはね」



相変わらず坂崎は上から目線だった。



「てかさ、白河さんのコトどうすんの? 誰と付き合おうがじーちゃんの勝手だけど、未来変えられるとノノが困るんだけど」


「ああノノちゃんその設定まだ続いてたんだ」


「お前は黙ってろ」


「うぅ‥‥相変わらず酷い扱い‥‥」



そうだった。


俺が真琴と付き合うのは規定事項。


そして結婚して子供を作る‥‥。


思わず、斜め前でクラスの女子に囲まれている真琴視線を向けてしまう。



「それだ。神崎さ、お前白河の事好きだろ?」



目聡く坂崎が突っ込んでくる。



「あ? 前にも言ったろ? 可愛いから見てるだけじゃねーか」


「いや、だからそれが好きって事じゃねーのかよ」



まあ図星なんだが。


そんなくだらない話しをしていると、教室の入口で突っ立っている加奈子を見つけた。


どうも教室に入るのをためらっているようで、様子が可笑しい。


キョロキョロと明らかに挙動不審だった。


それでも人気者の加奈子である、すぐにクラスの女子数名に見つかり手を引かれて教室内に入ってきた。


おはよーと皆が挨拶する。


対して加奈子は引きつった表情で軽く挨拶を返していた。


変だな‥‥。


しかもずっと胸の辺りを必死に押さえている。


どこか痛むんだろうか。


声をかけようにも俺とは目を合わせようとはしない。


一体どうした‥‥。





25話に続く。 

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