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カラダがどんどん改造されるわけ  作者: 739t5378
第2章 カラダが改造されたあと
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第15話 加奈子編その4

「じゃさ、奥に部屋あるからそっち行こっか」



『アキバ屋いや~ん』の袋を嬉しそうに抱えて、加奈子が提案してきた。


奥の部屋って要するに、



「お前の部屋ってことか?」


「そそ、加奈子の部屋。てかさ、ここ一人で住んでっから全部加奈子の部屋なんだけど」



当たり前じゃん――と書いてある顔で普通に答えてくる。


中二の女子が一人暮らしだと?


可笑しいだろ、そんなの。



「親はどうした、親は」


「あー親ね、わけあって一緒には暮らせてない」



含みある言い回しをする加奈子。


まあ、その辺は深くはツッコまねーよ。



「山崎こっちこっち」



チョイチョイと振り向きながら手招きする加奈子に、「神崎だ」と一応訂正してついて行くと10畳はあるちょっと広めの部屋に案内された。



「にひひ、ここ加奈子の寝室。特別に入室を許可しよー」



じゃーんと紹介されたその部屋は、物でいっぱいだった。


まずは大きなマガジンラックがドーンと側面にあり、これでもかって言うくらいマンガ本が並んでいる。


そしてその横には、100インチはあろうかと思われる大画面テレビ。


ステレオも充実。


そんでその奥にもまた棚があり、そこには大量のゲーム機とソフトが。


更にまだある。


反対側の壁には勉強机と思われる物があるが、既にそこはパソコンデスクと化してしていた。



「なにキョロキョロしてんのさ」


「あーいや、女の子の部屋ってどんなかなあって」


「む、この部屋に下着はないかんね」


「バカにすんなっ、そんなもんに興味あるか!!」



まあ、あるんだけど。



「そっかなぁ~? 神崎って変態じゃん」



ジト目で睨まれる。


そうなるよな。


きっと、昨日のことを言っているんだろう。


早く忘れろってんだよ。


しかしだな、女の子っぽくねえ部屋だな。


あまりに充実しすぎて、俺が住みたいくらいだわ。


唯一女の子っぽいと言えば、ピンクで統一されたベッドぐらいか。


元々小さいのか、この部屋が大きいからか、そのベッドは子供用かと見間違うくらいのサイズに見えた。


俺は迷わずそのベッドにドカッと腰掛けると、すぐに加奈子が抗議してくる。



「キミさ、いきなりベッドに腰掛けるなんてずーずーしくない?」


「他に座るトコねーじゃん」


「床があるでしょ、床が」


「フローリングじゃねーか、やだよ固いし。お前はいつもどこに座ってんだよ?」


「べ、ベッドだけど‥‥」



ならお前も来いよと、ポンポン隣を叩いてやる。


何故か遠慮して座る加奈子。


俺からは、だいぶ離れて座っている。



「もっとこっちこいよ」


「なんで」


「さっきの本、見るんだろ?」


「あー、そだった」



ズリズリと横移動をした加奈子が、例の本を取り出す。



「じゃじゃーん、ゾンビ、ゾンビ、ゾンビ――♪」



嬉しそうに、『ゾンビ』を連発するコスプレ美少女。


動画をネットにUPしてやろうか。


結構なアクセス数になると思うぞ。



「簡単に出来るゾンビの作り方―――って、なんなんだよ」


「いいからいいから、開いてみよーよ早く」



ペリペリとビニールを外し、ページを開く。


ゾンビってんだから、超キモい絵を写真とかを期待してたんだが‥‥。


最初のページには、アニメ調で書かれたゾンビのイラストが掲載されていた。



「うわぁ可愛い~」



確かに可愛い感じのゾンビだった。


デフォルメされていて、マリオに出てきても不思議ではないくらいの。


そしてパラパラとページをめくったが、ひたすらイラストだった。


ページをめくる度に「あ~ん可愛いぃ」と、加奈子は満足そうである。



「どこに載ってんだよ」


「え、なに?」


「ゾンビの作り方」


「ん~、最後の方じゃん」



ゾンビのアニメ絵なんか見て、何が楽しいかっての。


僅かに興味があるのは、その作り方とやらだ。


本当に書いてあんのかよ、騙されてんじゃねーの?


どんどん先をめくっていくと、カラーページからいきなり白黒ページに切り替わる。


紙質も落ちて、ザラザラした感じ。


週刊誌みたいな作りだな、おい。


別に期待してたわけじゃないからどうでもいいけど。


一応目を通してみると、ゾンビとはどんなものかが書かれていた。



『ゾンビとは、死体のまま蘇った生物である――』



ふむふむ、まあそうだろ。



『ゾンビを見た、あるいは捕獲した――等という例は数多く報告されているが、どれも信憑性のないものである』



まあそんなもんだろ。



『詰まる所、ゾンビとは映画やファンタジーの世界の者であり、現実には存在しない、ある意味妄想からの産物である』



って、おーい!!



「ダメだこれ、ゾンビ全否定してんじゃねえかよっ!!」



所詮こんなもんか、創刊号980円。


次号は出ないな、間違いなく。


続きを見るのも面倒になり、加奈子に本を手渡した。



「読み終わったら教えてくれ」



女の子の寝床だというのに、俺はずうずうしくも横になり寝転ぶ。


加奈子から突っ込まれるかと思ったが、ゾンビ本の続きを真剣に読みふけっていた。


何が面白いのやら‥‥。


そんな加奈子を横目に、無意識に枕に顔を埋ずめる。


あ、やっべ、なにこの枕。


超いい匂いするんだけど。


そんな気は全くなかったんだが、ついスーハーしてしまう。


嗚呼‥‥この枕持って帰りたい。



「なあ加奈子?」


「んー?」


「まだ読んでんのか」


「うん」


「そうか」



‥‥‥‥。


‥‥‥‥。


‥‥‥‥。



「なあ加奈子」


「ん?」


「この枕、俺にくんない?」


「‥‥‥‥なんで?」



クンクン匂いを嗅ぎながら、



「超いい匂いすんだよ」



言った瞬間、加奈子はスックと立ち上がり、俺から枕を奪う。



「おわっ、なにすんだよっ」


「死ねっ!!!」



ボフンッとその枕で顔面を強打される。


そしてそのまま部屋を立ち去る加奈子。


イッテーな、なんだよあいつ。


その後1分程で、加奈子が同じ枕を持って戻ってきて、「はいっ」と俺に枕をぶん投げてくる。



「お、なんだ? 貰っていいのか?」


「やるか、この変態!」


「は? なんで変態なんだよ‥‥」



ぶつぶつ文句言いながらも、渡された枕の匂いを嗅いでみる。


洗濯したての匂いがした。



「おい、なんだこの匂いは」


「なにが?」


「洗濯の匂いしかしないぞ。さっきのはどうした」


「‥‥‥‥」



無視された。


俺そんなに変なこと言ったか?


う~む、中二の俺には分からん。


まだまだ子供だな。


つまんねーな。


俺は再び横になる。


加奈子のお尻が目の前にある。


どうせ暇だし気付かないだろうから、スカートの中身でも見てやるか。


後ろからヒラヒラのスカートを摘んでみる。


そのまま持ち上げると、真っ白いごく普通のパンツが現れる。


ゴクリ――。


ヤバイ、こんなに近くでパンツを見たのは初めてだ。


ずっと見てたいなー。


そう思い、少しいじると上手い具合に服の間でスカートが挟まり、丸見え状態のままになった。


うっし、俺グッジョブ。


パンツ補完計画大成功。


そしてまた、ひたすら眺める―――。


と、そんな事をしていたら、加奈子がいきなり立ち上がった。



「おお! 最後のページでキターーー!!」


「ぬおっ! こっちもキターーーーー!!!」



下からのパンツアングルの、なんと絶景やらっ!!!


お、お尻がまん丸だ! そして割れてる!!(当たり前)


と思ったら、クルッと一回転して俺に向けて本を突き出してくる加奈子。


その拍子に捲れ上がってたスカートが元に戻る。



「ちょいちょい、見てみコレコレ」



嬉しそうにゾンビ本を見せる加奈子。



「嗚呼‥‥俺の神セッティングが‥‥」


「え~っと、なんでヘコんでんの?」


「なんでもねーよ‥‥」



変なの――と、小首を傾げる加奈子。


っふ、まあいいさ、



「後でもっと凄いことしてやっからなーーーーっ!!!」



スパーーーン!!!



スリッパで頭を叩かれた。



「なにすんだよっ!」


「うっさいから叩いた」


「は、はい、ごめんなさい‥‥」



コホン‥‥‥‥。



言っておくが、俺は変態ではない。


純真な中学2年生の少年だ。


気を取り直して、



「で、なんだよ。作り方でも載ってたか?」


「うんうん、コレ見てよっ」



むふぅ~~と鼻息を吹きながら、そのページを見せてくる。


え~と、なになに‥‥。



『それでは最後に、ゾンビの作り方を解説しよう』



ほうほう。



『まずは新鮮な死体を用意します』



「却下だろっ!却下だっ!!」


「えーーー、なんでぇ~?」


「死体なんかそう簡単にあってたまるかっ!!」


「死体じゃなくてもいいんだって」



ほらコレ――と、続きを指差す。


んん?どれどれ‥‥‥。



『死体が準備出来ない場合は、死にそうな深手を負った若い少年(15歳前後が適当)が揃えば問題無い』



「何が問題無いだ! 問題ありありだろっコレ」


「15歳前後の少年って、目の前にいるんだけどぉ」



ツンツンと肩を小突かれる。



「じゃ、深手負ってきて」


「負えるかアホッ!!!」



ホントいい加減だなあ、この本。


でも、取り敢えず最後まで読んでみよう。



『深手を負ったら、そこにゾンビパウダーを塗り込みます』



「聞いたことない素材が出てきたんだけど!?」


「加奈子に言われても知らないよー」



なんだよ、ゾンビパウダーって‥‥‥‥。


お、まだ続きがあるぞ。



『次号はゾンビパウダーの生成方法を特集いたします』



「続くのかよっ、このくだらない本!!」


「やば、次号も買わなくちゃ‥‥」


「もう買うなっ!!!」



いや、ぶっちゃげ、最後の方はちょっと面白かった。


こうやって、ネタを小出しにして次々に買わせようという作戦なんだな。


恐るべし、出版業界。


と、バカな事を言ってる場合じゃない、今何時だ?


携帯で時間を確認すると、既に9時をまわっていた。



「俺帰るわ」



そう告げると、加奈子は『え?』ってな顔をして、



「もう帰んの? まだいっぱいあるのに――」



『アキバ屋いや~ん』の袋から、創刊号シリーズを次々に取り出す加奈子。



「お前どれだけ無駄遣いしてんだよっ!?」


「えぇ~~そんなの加奈子の勝手じゃん、キミだって楽しそうに読んでたくせにぃ」


「さ、最後のちょっとだけだよ‥‥」


「ふんっ、あっそ」



むく~っとほっぺたを膨らませて、不機嫌さをアピールする加奈子。


その仕草があまりにも子供っぽいから、ぷっと思わず吹き出してしまう。



「なに笑ってんのさ」


「あー、いや、違うんだ。俺さ、お前に伝えたいことがあるんだ」


「な、なにさ、改まって‥‥」



出会ってから初めて俺が真面目な顔をしたもんだから、加奈子が緊張して正座になる。


俺はそんな加奈子の両肩を優しく掴み、ジッと目を見て伝えた。



「俺さ、お前に最初にあったあの神社で、その‥‥」


「神社で――?」



ポカンと口を開けて俺を見上げる加奈子を見て、つい口ごもってしまう。


くっ、頑張れ俺!!



「えっと‥‥お、俺、お前のこと‥‥じゃなくて、お前に一目惚れしたんだっ!!!」


「―――!!!―――」



そう告げた瞬間、加奈子の目が大きく開いた―――ような気がした。


そして俺はもう、何言ってるか分からなかった。



「だからお前の事が好きで‥‥好きだからその――」



恥ずかしくなり、思わず立ち上がってしまう。


そしてあらぬ方向を見ながら話す。



「まだ知り合っったばっかだけど‥‥」



チラッと加奈子の方を見ると、さっきと同じようにポカンと口を開けてこっちをジーーーーっと見つめてくる。


うう‥‥やばい、緊張MAXだぜ‥‥。



「だ、だからまた、遊んでくれよ、な? 絶対だぞ!」



最後にそう言い放ち、恥ずかしくて居られなくなり小走りに部屋を出た。


出る瞬間に振り返って、「んじゃ俺帰るな!」と加奈子に言ったんだけど、その時も加奈子はこっちをひたすら見つめるだけだった。




◇◆◆◇




帰り道、俺はテンションMAXだった。



「おっしゃーーーーっ!!!」



思わず叫んで、空中に昇竜拳を放つ。


勢いで言ってやったぜ!


あ~~~初めて告白した初めて告白した初めて告白した初めて告白した。


こ、こんなに胸がドキドキするなんて‥‥マジやばい。


なんか、最後あいつ、可愛い顔してたよな~~。


あいつ俺の事好きかなあ?


どうかな~~。


嫌いじゃないよな、たぶん。


でも好きかってゆーと、全く自信ないよな。


あ~~~どうしようどうしよう‥‥‥‥。



「あっ! しまった!!」



次に会う約束すんの忘れたっ!


あいつ学校来るか分かんねえし‥‥。


失敗したなー。


携帯も聞いてないし‥‥ああ、ダメだ!ダメダメだっ!!


結局その日は、家に帰ってからもそんな感じで興奮おさまらず、朝まで騒いでいた俺だった。





16話に続く。

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