表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カラダがどんどん改造されるわけ  作者: 739t5378
第1章 カラダが改造されるまで
3/45

第3話 白河真琴と筋肉で科学する人

昨日約束したとおり、この後、研究所に向かうはずだった。



しかし、



俺は今、一人で駅前のショッピングビルの中にいる。




行けるわけないだろ。



白河と一緒だぜ?



研究所(というよりは、ただの地下室)は、駅を通って反対側。


だから、この駅前のショッピング街を抜けて、さらに駅の人通りを抜けなきゃならん。



自殺行為でしょ。



彼女は、ここ数ヶ月で一躍トップアイドルになった、白河真琴だぜ。


それこそ、敵陣営に単騎で乗り込むようなもんだ。


もちろん、一般の方々に注目を集めてしまうのもまずいが、ここは学園の最寄り駅、最も警戒すべきことは、顔見知り。




学園で噂にでもなってみろ、大変なことになるぞ。



・・・・・・・・・・。



まあだから、彼女の変装グッズをだな、探しに来たってわけ。


当然、彼女は一緒にきていない。


近くのしなびた、人気の無い喫茶店に置いてきている。


あそこなら客もこないし、落ち着けるだろ。



しかし…なぜ俺が買い出しせにゃならん?


そもそもあいつは、何で俺に着いて来る…。


解せない気持ちで心がいっぱいなんだが……まあいいか。


あいつ可愛いし。



・・さて、どうするか。


とりあえず、定番の帽子とメガネってところだろう。



ええと、売り場は5階か。



エスカレーターに乗る。


周りを見渡すと、うちの制服を着た女子がいっぱい・・。



き、危険だ・・・・。



5階で降り、辺りをキョロキョロとしていると、ふとCD屋の店先から、最近、よく聞くメロディーが流れてきた。



今まではそんなに気にもしなかったが、やけに気になる・・・。



俺は立ち止まり、店頭を覗くと、デモ用の大型モニターが見える。



「画面には、本日発売!!」のテロップが流れ、女の子が映し出される。




白河真琴だ。




さっきまで一緒にいた、あいつだ。


どうやら、新曲のPVらしい。


パステルピンクの衣装をまとい、軽快でポップなリズムに合わせ、踊り、歌う。


アイドルとは思えない、激しく、大胆な踊り。



ただ、そのアクションの一つ一つがとても可愛い動作で、時折見せるカメラ目線の笑顔に、恐ろしい破壊力を感じる。



・・・・・・・。



か、可愛い・・・・・・。



完成度も、相当高い。


なるほど、人気が出るわけだ。



・・・・俺はしばらく釘付けになった。



俺は、彼女が歌うのを見るのは初めてだったのだ。



というのも、曲自体は耳にするものの、アイドルなんかに興味は無かったからだ。




そのまま動けないでいると、Aメロ~Bメロが終わり、間奏部分へ。



リズムが増し、踊りも激しくなる。


連続スピンターン、片手の側転……え? 側転?


その側転に違和感を感じていたが、さらに彼女が動く動く。


そしてさらに後方へ華麗に舞う。



嘘だろ・・?




彼女が高く舞い上がったそのとき、一瞬、時が止まったようだった。




ふわりとポーズを決めながら着地する。



再び、歌い始める・・・。



なんだったんだ、今の?


CGなのか?




そう思わせるほど、滞空時間の長い舞いだった。




いや、そんな事もちっぽけに感じる位の大きな謎がある。




男として、大事な話しだ。




心して聞いてくれ。




なぜ、あんなに激しく動いているのに、スカートの中が見えない!?


今なら分かる、側転の時にも感じた違和感。




・・・・・・・・・・。




だって、ひらひらのミニスカートだぜ?


可笑しいだろ?




教えて下さい、どんな仕掛け何ですか?




・・・・・・・・・・・・・・・・。



結局CD買ってしまった・・・。


PV付きの初回盤。





・・・・・言っておくが、決してファンになったからじゃないからな。






さっさと用事を済ませるべく、店内をさまよっていると、程なくして望みの店が見つかった。



さて、どんな帽子がいいんだ?


品揃えは、これからの季節を意識してか、夏物のキャップタイプが多く展示してある。



俺が被るならこれだが・・・。


ブラックに、スケルトンデザインのキャップを手に取り、鏡の前で被る。


うむ、カッコイイ。



・・・・・・いやいやそうじゃない。


ったく、女の子はどんな帽子を被るんだ?



周りを見渡す・・・・。


女子が多い。


帽子被ってる子を探してみる・・・。



いた。


お、黒いキャップじゃん。


どれどれ・・・、さりげなく前を通り過ぎ確認すると、ジャイアンツのマーク・・。



なぜに・・?



結構可愛い子なのに・・・。



まさか、流行ってるのか?



・・・・・は!



つくづく何やってんだ俺。


どうせ変装用だ、プレゼントじゃねえんだ、とりあえず被れればよしだ。



突然面倒になった俺は、女性の店員に話しかけ、直球勝負にでた。


「すみません、可愛い系の女の子が、変装をするのに最適な帽子、ありますか?」


「あ、はい。いらっしゃいませ。・・変装です・・か? え~と、お年頃はおいくつ位でしょうか?」



直球すぎたかと思ったが、思いのほか店員さんは落ち着いて答えてくれた。



「高校生です」と伝えると、


店員さんは、「変装用、変装用」と、何やら真面目に探してくれてる様子。



無理言って申し訳ない。



結局、なかなか決まらないので、とりあえず店員さんの個人的なおすすめを聞いてみると、


「夏場の基本はこれですよ」と、赤いリボンの着いた麦わら帽子を取り出した。



なるほど、定番だな・・。



しかも、普通のUFO型じゃなく、カウボーイハットのような形をしている。


なんとなく彼女に似合う気がして、俺はそれを買うことにした。



「6800円です。」



は?



た、高い!



・・・ま、まあいいか、どうせバイト代入るしな。


とりあえず購入し、さっさと店を出る。



・・・しまった、メガネも買わなきゃ。



余計な買い物をしたのもあるが、財布の中身は500円。




・・・・・・・・すまん、白河。




俺は迷わず100円ショップに飛び込むと、メガネを物色・・。


そこでいい物を見つけた。


牛乳瓶の底のようなグルグルメガネ。しかも伊達。



見た目最悪だが、でかいしいい感じかも。



「どうせ100円だし」速攻買って喫茶店へ向かう。



だいぶ一人にしちまったから、ご機嫌斜めじゃなきゃいいが・・。



・・・・・・・・・・・・・。




大通りから2本入った人気の少ない通りに出ると、「喫茶 青春の味」の看板が見えた。


甘酸っぱいコーヒーをイメージしつつ、店内にはいると、なにやら上機嫌の白河が待っていた。



「おっかえり~~~♪」


楽しそうにフォークを持ちながら手を振る彼女の前には、様々なケーキやらパフェやら紅茶やら、店のスィーツを全て頼んだらこうなる、といった感じで埋め尽くされている。



「・・・お前、何やってんの?」



「へ、へ~~、凄いでしょぉー。あ、店長さん、この苺のミルフィーユとっても美味しいです!!」


「ああ?そうだろそうだろー。なんたって、全部わしの手作りだからな。味わって食えよ。」


白河の隣に立ち、仁王立ちで「がはははあ」と笑う、豪快な店長さん。



なんだ、この活きのいいおっさん。



「今度はこれ、食ってみろ。」


「キャァ~~~、これもたまんない! もう最高ぉ~~~。」


「だろう?分かってんじゃねーか嬢ちゃん。」


可愛いねえ、よしよしと、頭を撫でる店長さん。



なにやら意気投合しているご様子。



非常に楽しそうだが、俺の脳裏に一抹の不安がよぎった。



「お前、こんなに頼んで、金持ってんのか?」

「え?持ってないけど。」



ガクッ


どうすんだよ、これ。


俺ががっつりうなだれていると、「野暮なこと言うんじゃねえ、兄ちゃん。」と、活きのいい店長さんが俺の背中をバシッと叩いた。


「うわっ」


「今をときめくスーパーアイドルの真琴ちゃんから、金なんか取るわけねえだろってんだ!」


「がははははあ」とまた豪快に笑う店長さん。



ああ、なるほどそういう事ねと、既に飾ってある「青春の味さんへ」と書かれた白河のサインを横目で確認した。



「真琴ちゃんが来てくれるなんてなー、こりゃ自慢しないとなあ。」


「がはははあ」と奥に引っ込む店長さん。



芸能人の威力を感じた瞬間だった・・。



・・・・・・・・・・・・。



「ほれ、買ってきたから、これで頼む。」


と、ぶっきらぼうに紙袋を渡す。



「何買ってきたの~」と、白河は紙袋を受け取ると、早速ガサガサと物色を始めた。


「へ~、麦わら帽子かぁ。夏っぽいねっ」


「被ってみろよ。」


「うん。形が変わってて、なんかいいかも。」


似合うかなーと、ちょっと嬉しそうに被る姿が可愛らしい。



「ちょっと大きいかな?」



確かに大きめだが、目深に被れてちょうど良いだろう。



「私、麦わら帽子って、初めて被ったよ。あ~~麦の香りがするぅ。」



「似合う、似合う?」「変じゃない?」「どうなのよっ!」としつこく聞いてくる。



すげー似合ってます。


正直、可愛いと思った。しかし、そう素直に言うのも照れくさい。


だから「いいんじゃないか。」と無難に答えておく。



しかし、さすがに制服にはミスマッチかと思ってたんだが、美形には何でもありって感じだ。


しかも、ボーイッシュな雰囲気が出て、彼女のイメージに合っている。


なんて言うの、カワカッコイイって言えばいいかな。




「じゃ、それ貰ってくれ?」


「え? いいの? だってこれ、結構高そうだし・・。」と、値札を見ながら、たかっ!とつぶやく。


「貰っちゃっていいの?」


「ああ、構わない。似合ってるしな。」


「ほんと? 嬉しいかも~。」



鏡ありますか~~と、店内をうろうろする白河。



最初の趣旨とは違うが、彼女が喜んでくれて、俺もまんざらではなかった。


なるほど、世の男性が、必死になって女にみつぐ気持ちがちょっとだけ分かった気がした。




・・・・・・・・・・・・。




「後は、何が入ってるの?」と、ガサゴソするのを横目に、「百円メガネですけど、何か?」と心の中で突っ込む俺。


そして、ブルーのビニールで包装された物を、興味深く取り出す白河。



え?



「あ、バ、バカ、それは!」


慌てて手を伸ばすが、時既に遅し。



「あ、私のCD。」

「そっか、今日発売日だもんね。買ってくれたんだ、ありがと~。」



ぎゃあああああああああ!!


NOおおおおおおおおおお!!



しまった!


こんな展開、簡単に予想出来たのに!


しかも、ビニールで包装されてたはずなのに、なに開けてまで確認してんだよ!



俺の動揺など知らず、

ふ~んと、人差し指を口元にあて、疑問系でこちらを見る白河さん。。



え~と、なんでしょうかその目は?



まずった~~~。


動揺せず、妹がファンでとか、誤魔化しようがあっただろう・・・。


なんなんだ?このこっぱずかしい感じ・・。



いや、まだ間に合う! こいつは、微妙に天然系のはず。



「ああー、なんつうの? 妹がファンでさ、頼まれたんだよね~~。」


ふっ、このさりげなさ、神だなっ。



「へー、神崎君って、私のファンだったんだ。」



だから人の話しを聞けよっ!!



「私には、てっきり興味ないのかと思ってた。」



な、なんですかその、実は私に気があるのね、的な言い回しは・・・。



「ば、馬鹿じゃねーの? お前なんかに興味ねーし。まあ、クラスメートだし、歌ってるとこ見たことねーからだな、義理で買ってやったんだよ、義理っ。」


「な、なによ、そんな、言い方しなくってもいいじゃない。」

 

ひどぉーいと、むくれてそっぽを向く白河。



ああ、機嫌悪くしちまった。


まあとりあえずは良しとする。俺の中の男気を守る為には仕方がない。



「あと、メガネ入ってっから、頼むな。」



「メガネ?」と、取り出したるは、ぐるぐるメガネ。


案の定、


「な、なによこれ!気持ち悪いメガネ!」


汚いものを触るように、つまみ上げつつ「見えるの?」とレンズを覗きこむ。



「文句を言うな、変装だって言ったろうが。いいからかけてみ、伊達だから。」


「ええ~、なんでこんなのしないとダメなのー?」


と文句たらたら。でも、一応メガネをかけて、「絶対変だよ」としかめっ面の彼女。



「ぷっ」

さすがに似合わねえ。



「ああっ、笑ったな! しかも、普通に笑えばいいのに、ぷってなによ、ぷって!」



「ごめんごめん。 さすがのお前でも似合わねーな。 でもバッチシだよ、全然別人に見えるよ。それしてれば白河だって、誰も気づかないだろ。」


「そうなの?」


さすがに気が乗らないご様子。


しょうがない。


「ま、お前一人に恥ずかしいメガネかけさせるつもりはねーよ。ほら、もう一個入ってるだろ? 俺もかけっから。貸して。」


「あ、ほんとだ」と、メガネを取り出し、それを受け取る。



「どうだっ」

迷いなく装着し、胸を張る。




「ぷっ」




「な、そうなるだろう?」


笑いを堪える感じが、俺と全く一緒だった。



「ぷっ、く・・・う、ダ、ダメ・・くっ」


そんな、口を押さえてまで我慢しなくても・・・。



「普通に笑えばいいさ。別に笑ったって怒りゃしないし。」


そう言って、何気にメガネを指で吊り上げると、その動作がつぼにはまったのか、



「ぶっ、キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ダ、ダメ、お、おかしいい、だ、だって、ププ、い、今の、な、なんかガリ勉、ア、アハハハハハハハハハハハハハハ、ハ、ハ・・」


お腹痛い~~と、ゴンゴン、テーブルを叩く白河。



そ、そこまで笑うか・・・・。



「ハ~、ハ~、ハ~。ご、ごめんなさい、とっても似合ってる・・・よ・・・プッ」



一度つぼにはまると、なかなか収まらない彼女だった・・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





さて、駅を無事抜けて、反対口までたどり着いた。


気づかれるんじゃないかと、ドキドキしたが、問題無かった。


逆に人が多くて、カモフラージュされたのかも知れないな。



そんな事を思いつつ、目的地に到着。



「え?ここなの?バイトって、パチンコ屋さん?」



「今の、パを抜いて、もっかい言ってくれる?」



「 ? ・・パ、・・・パ・・?・・」


キョトンとした顔で、なに?と聞いてくる。



「いや、何でもない。ここの地下に研究所があるんだ。」

「ふ~ん。」



聞きたかっただろ?


アイドルの「パ」抜きのパチンコ。



階段を下りて、その先を進むと、壁にぶつかる。


俺は手を振って、何かにアピールする。


しばらくすると、壁がスライドし、中の部屋に入れるようになる。


どういう仕組みかは知らんが、この壁(ドア?)には、ノブもなければ鍵も無い。


如月さんいわく、防犯の為だとか。


中に入ると、ジメッとした空気が肌にまとわりつく。



「如月さん、来ましたよー。」



「待ってたぞ。」


ごつい顕微鏡を覗きながら、こちらを見ずに話しかける如月さん。



「すみません、遅くなって。で、俺、なにやればいいんですか?」


ねぇねぇと、なにやら横から裾を引っ張られているが、無視する。



「ふむ、君に出来ることなど何もない。」



じゃあどうしたらと、困惑していると、


「すまんが、少し待ってくれるか、今は、間が悪くてな。」



「分かりました待ってます」入り口付近のソファーに腰掛ける。


「ねぇ、ねぇってば。」

袖を引っ張られる。


「ちょっと、なんで無視するのよ。」


だって、説明が難しいんだよ。



「まあ白河も座れよ。」

ポンポンと、隣を叩く。


「座るけど、なんで私が空気みたいになってんのっ? とりあえず、紹介ぐらいしてくれったっていいじゃない。」


「なによっ」と、隣に腰掛ける。



はあー、しょうがない。


「分かった、説明しよう。え~と、彼女は如月さん。マッドサイエンティストだ。」


「まっどさいえん?」


首をかしげて頭の上に ? マークが見える。


こういう時の仕草は、妙に子供っぽい。


妹がよくやる仕草に似ている感じだ。


どうせ待ち時間だ。


暇だし、こいつでも、いじってやるか。



「サイエンティストは、分かるだろ?」


「え、あ~~。ど、ど忘れかな…でも聞いた事ある単語だよね」


あははーと頭をかく。


「ああ、あれでしょ? セラフィストやピアニストみたいな感じでぇ・・・」


おお、近づいたじゃないか。


「サイエンスは、科学って意味だ。」


「そうそう、そうだよねっ。だから、科学する人ってことでしょ?」


「すばらしい、正解です。」


「でマッドだからぁ、ん~と、マッド、マッド・・・マッドマン」


「分かったっ、筋肉で科学する人。」



ブ、ブーー不正解です。

勝手に造語しないで下さい。


それ、マッドじゃなくてマッチョだろ。


てか、マッチョって英語か?


坂崎が言ってたっけ…アイドルはおバカが多いんだと。


でもそこが可愛いんだとか何とか。


ま、どうでもいいけど…。



少し回想に浸っていると、当の本人白河も大して興味なさげに呟いた。



「筋肉で科学するなんて、ざんしんだね~聞いたことないよ。」



確かに斬新だ、お前がな。



「・・・・お前もしかして、頭弱い?」


「よ、弱いってなによ!弱いって!そこはせめて悪い?でしょっ!」



「悪いの?」



「わ、悪くないわよ!失礼ね。成績だって、今回は赤点ないんだからねっ!」


なるほど、今回はか・・。



だいだい分かった。

「若干悪いってことか・・・。」



「聞こえてるんですけどっ。」


しまった、口に出てしまったようだ。



「あのねー、今は忙しくってあんまり学校来れないの! だからしょうがないじゃない!! 言っておくけど、小学校の時は成績良かったんだからね!」



自信ありげに過去の栄光を熱く語る白河さん。


こんな言い訳する人多いよね、勉強についていけなくなった時に。



「だいたい、なんで君はさぁ、私に対して上から目線なのかなー。」


腕と足を組みながら、睨んでくる。


大きな目が、結構怖い。


「ああ、そっか、そうだったかもなー。何て言うの? 俺、妹いるからさ、同年代以下の女の子って、妹みたいな感じなんだ。別にお前が子供っぽいとか、そういうんじゃねえから、気にするな」


「私が気にするんですけどっ」



へーへーそうですか…。



「そりゃ悪かった」


「あ…なによそれ。全然悪く思ってないよね、その態度」



つい面倒臭そうに答えた俺に対して、すぐさまツッコミを入れてくる白河。



そして続けざまに、


「坂崎君ってさー、女の子にモテないでしょ?」



ん? 坂崎?


確かにあいつはモテるわけないが…。



「あ~~っと…俺…」



話しの流れ的に、『俺、神崎なんだけど』って訂正しようかと思ったがやめる。


あ~あ…所詮、名前間違えて呼んじゃう位の印象なのかい…。


ちぇっ、なんだか面白く無くなってきた。



「あれ…怒った? ね、ねぇ神崎君…」



普通にムッツリとして、機嫌悪そうな俺に対して若干心配顔の白河。


意外と心弱いらしい。


そして名前が元に戻った。


何となく面白いんで、しばし黙っていると、



「ちょ…ちょっとゴメンって……ねぇ聞いてるの?」



ねぇねぇと、執拗に俺の腕を掴んで引っ張る白河。


あ~なんか妹を思い出すぜ。




そんな感じで白河をからかっていると、奥から如月さんが近づいてきて一言。



「全く、さわがしいな、君達は。」



はあー、と溜息をつきながら、如月さんがタバコに火を点け、対面のソファーに腰掛けた。



研究の邪魔しちゃったかな、申し訳ない。




「で、どうして君が白河真琴を連れている。」


「え、彼女のこと、知ってるんですか?」


「ああ、娘が君のファンでね。」


如月だ宜しくと、白河と握手をする。



娘がいたのか、意外だな。


この人から、家庭の匂いがするなんて。



「なるほど、その制服、三坂だな。同級生って訳か。」


「は、はい、そうなんです。神崎君とは、同じクラスメートで・・。」


「ほう、好きなのか?」


「はい? え、あの、えっと・・・か、神崎君っ。」



な、何を赤くなって俺に助け求めてんだ。



「白河とは、そんな関係じゃないです。こいつはアイドルだし、俺のことなんか、好きじゃないですよ。」


「アイドルは、関係ないでしょっ。」キッと睨む。


なぜそこで、突っ込む。



「ふっ、仲が良いな。」

ふ~っと煙を吐く。



仲が良く見えるのか? 昨日までは、まともに話もしてなかったのに?。



「如月さんは、何のお仕事されてらっしゃるんですか?」


お、それは俺の聞きたかったこと、ナンバー1の質問じゃないか。


「仕事か、私は科学者だが、医療に関しても精通している。それらにおける、実験や研究をするのが、私の仕事・・・・、いや趣味みたいなものだな。」



「へ~凄いですねぇ」と、白河は関心して、


「てことは、神崎君は助手なの?」


「すごーい」羨望のまなざしを俺に向ける。



そんなわけないだろ・・・。



「そうじゃない。彼には、被験体のバイトを頼んである。」


「ひけんたい?」


「ああ。私の研究の成果を、彼に実践してもらう。」



その後も、「どうやってするんですか?」「痛くないんですか?」「基本的に身体に負担を与えるような事はしない」など、話しがすすんでいる。



ふと、携帯を見る。


着信2件、メール8件。


彩乃か・・・・。


「ちょっと俺、電話してきます。」


話が盛り上がってるみたいで、「いってらっしゃい」と素っ気ない態度で返される。


結構、意気投合してるなこの二人。


と思いつつ、一旦地下から地上に出て、携帯を操作する。


プルルル・・


「兄さん?」


「おう、ごめんな、出れなくて。」


「兄さん、今日も遅いんですかぁ?」


「ああ、バイトでな。」


「はぁ、なんのですかぁ?」


「え~とだなー。」


なんて説明すりゃいいんだ?


「俺も今日初めてだから、良く分かってないんだよ。」


「でもぉ、実験がなんとかって・・。」


「あー、ちょっと知り合いに、たぶん偉大な科学者がいてな、その人の実験を手伝うんだよ。」


よし。嘘はついてないな。


「ふ~ん。危ない事、しちゃダメですよぉ。でもなんで、急にバイトなんか始めたんですかぁ?」


「ん?まあ事情があってな。詳しい事は帰ってから話すから、また後でな。」


「あ、ちょっと待って、終わったら電話・・・・


ピっと。


ま、こんなもんだろ。




地下に戻ると、なにやら如月さんが、端末を操作している。


白河がいないな・・・。


帰ったのか?


「白河、帰ったんですか?」


「そこの装置の中にいるぞ。」


端末の横にある、日焼けマシーンのような装置を指差す。



は?


いったいどうして?



「是非とも実験の手伝いをしたいと言うからな、とりあえず、身体データを取っているところだ。」



「えっ、本当ですか?」


無理強いしたんじゃないかと、疑念の目を向けると、



「本当だ。私の天才ぶりに感服したみたいでな。まあ、本心は、神崎君、君がいるからじゃないか?」



え? 俺がいるから?



「なんでそうなるんですか?」



「さあ、なんでかな。」



確かに、バイトしたいと言っていたような気がするが、よりによってここは、まずいだろ。



「でもこいつ、アイドルの仕事、あるじゃないですか。」


「ああ、だから週に1回しか来れないと言っていたが、問題ない。」



まあ、本人が良いならいいか。



「君だって、嬉しいのだろう? 彼女と一緒に居たくはないのか?」



はあ、そうですねと、曖昧に応えはしたが、確かにちょっと嬉しいのが本音。


あいつは可愛いし、いじると面白いしなっ。



その後、俺の身体データ取りも済ませると、筋肉のチェックをしたいと言い出し、白河をベッドに寝かせると、なにやら俺に耳打ちし、


「君のおかげで、貴重な被験者が手に入った。お礼と個人的な趣味も兼ねて、少しサービスタイムだ。」

ニヤっと不適に笑う、マッドサイエンティスト。



な、何をする気だ・・・?



「ちょっとじっとしていてくれ。」


「は、はい。」


「まずは足だ」と両手でマッサージのような事を始める。


「ふむ、ヒラメ筋が引き締まっているな、下腿三頭筋はどうだ。」


さわさわ、すりすり・・・・・・。



な、何をしてるんだ・・・・・。



「素晴らしい。何か運動をしているか?」


「あ、はい、毎日ダンスの稽古を。あと、中学では、機械体操をしていました。」


「なるほど、そうか、それで大腿筋膜張筋がこんなに張っているのか・・・。」


太ももをすりすり、さわさわ・・・。


「やんっ、あ、ちょっと、くすぐったいです。」



うお!


そ、そんなところを・・・。


既に手は、スカートの中に入ったり、出たりしている。



「大腿二頭筋も充分だな。人の筋肉は、普段あまり使われないものもある、バランス良く鍛えないと、偏った筋肉が形成されてしまう。では内側はどうかな、伸筋をみてやろう・・・・」



内ももをモミモミ・・・さわさわ・・・すりすり・・


「ひゃんっ、あ、きゃ、ははは、くすぐったい! あ、あははははは」



我慢できなくなり、身体をくねらせる白河。



その度に、スカートの中がちらちらと・・・・・・。



うおおおおおおおおおおおおおおお!!!

(口に出せない叫び)



し、白い、白い、ぬ、布地がああああああああああああああああ!!



「ふむ、ちょっと硬いな。ほぐしておくぞ。」


片足を少し上げ、内ももをモミモミ・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・。


基本、制服のスカートって、短いじゃないですか。


この角度からは既に、丸見えです・・・・。



しかも、薄いピンクの花柄が入っていたのか・・・・。



って、ちがうっ!!!!!



さすがにこれはまずいと思い、目を逸らす。


でも気になって、ちらちら横目で見てしまう。


ああ、男って・・・・。


と、とりあえず、後ろを向いておこう・・。




「白河君、大胸筋は鍛えてるか?」



え、大胸筋?



「あ、はい。腕立て伏せしてます。」


「成程、効果があるか確認してやろう。単に腕立てといっても、その角度、沈み込み量によって、鍛えられる筋肉が変わってしまう。適切な方法で鍛えなければ、効果は無いのだよ。」



「え、ちょっと、そこはダメ、ダメですっ!」


モミモミ・・さわさわ・・・・


「あ、いや、ダメ・・・や、あんっ・・ハァ」


「ふむ。大きくて張りがある。弾力も中々だ。」



い、一体、なにがどうなってる?



「き、如月さ、さん・・もうやめ・・あっ・・」



き、気になる・・・。


ちょっとだけなら・・・。


我慢できず、振り向く。



!!!!!!!!!!!


やばい! 白河と目が合った!!



「やっ、か、神崎君が、見てるっ、ダメ~~~~~~~~」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




その後、なぜか「最低!」と突き飛ばされ、ベッドの柱に、本日3度目の後頭部を強打しました。



そして、白河は「やっぱり、筋肉で科学する人だったんじゃない」と呟いていた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





「では、今日はこの液体を注入させてもらう。」


取り出したのは、フラスコに入った緑色の液体。


不適な笑みの如月さん。



「はいっ質問です!」


「なんだね、白河君。」


「それは、どんな効果がありますか?」


「良い質問だ、白河君。これには、細胞を活性化させる効果があってだな、細胞分裂の速度を爆発的に上げるちからがある。簡単に説明すると、治癒力が極端に増す。と考えてくれれば良い。」




物凄く胡散臭い。




「ほんとですか!凄いです!」


素直に受け止めるやつがいるし・・・。




「では、始めたいと思うが、神崎君、うつ伏せになってくれ。」


こうですかと、ベッドに寝る。



「すまんが、ベルトを緩めてくれ。これは直接血管からは流せないのだ。」


バッとズボンとパンツを同時にずらされる。



お、おい・・・ちょっと・・。


半ケツ状態、というより、全ケツ状態なんですけど。


しかも、白河見てるし!


なに真剣な顔で見てんだよっ。



「筋肉注射だ、痛いぞ。」


ケツに針が刺さる。


「痛ええええええええ!!」



「終了だ。」



「では、神崎君、君は外に出てもらえるか?」


「え、何でですか?」


「白河君のお尻が見たいのか?」


・・・・・・・・・・・・・。


見たいです。


とは言えず、俺は外に出た。



ちぇっ。


流れ的に、真面目な顔で見てればOKかと思ったのに。




いててて・・・



ケツが痛い。



白河、大丈夫かな。



如月さんいわく、女の子の方が筋肉が柔らかいので、そんなに痛くないそうだ。



・・・・・・・・・・。



いかんいかん。



どうしても、白河が注射されるところを想像してしまう・・・。



なんか俺、発情期なのかな?


俺、変態だよね。


昨日までの自分は、もっとまともだったはず・・。



しかし、なんだかんだ言っても、今日は役得だったような気がする。



一日、あいつに振り回されてたなあ。



色々思い出し、ついニヤけてしまう。



「なにニヤニヤしてんの? 気持ち悪い。」


「おわっ!!何でいるんだよっ白河!!」


「えー?終わったから呼びに来たんじゃない。」



「早くもどろっ」と腕をひかれる。





・・・・・・・・・・・・・・・・。




「では、神崎君。宜しく頼む。」


「分かりました。」


ナイフを腕に軽くさす。


皮膚が裂け、血が・・・流れない。



嘘だろ?



「良し、効果は出ているな。」

「毛細血管程度なら、切ったと同時に治癒が進み、血も流れる事はあるまい。」


傷口が既に塞ぎかけている。



マジかよ・・・。



白河も俺と同様、血は流れず、あっという間に傷口が塞がった。



「効果の持続は、1週間だ。白河君は、来週来てくれ。神崎君、君はまた明日、来てくれるか?」


「ああ、補足だが、細胞が活性化される影響で、テロメアが急速に減少する。まあ、そのうち補充してやるから安心しろ。以上だ。」




思いっきり後遺症、残るじゃねーか・・・。






・・・・・・・・・・・・・・・・・。





やっと生体実験バイトが終わり、帰路の途中・・・。



しかし、あのマッドサイエンティスト、本物なんだな。



腕を見る。


傷は無く、痕も何も残っていない。



もしかして、ピッコロなみの再生能力があったりして。


腕が無くなっても、ニュルンとかいって、すぐに生えてきたり・・・・。


・・・・・。


うげ、何だか、気持ち悪い光景が脳裏に浮かんでしまった・・・。



しかし、あいつも変な事に巻き込んじまった。



「白河のやつ、大丈夫かなあ。」


「え? 私ならなんともないけどぉ?」


・・・・・・・・・・。



そうだ、バイト代、貰ったんだっけ。


どうすっか。


胸ポケットから封筒を取り出し、中を見る。


「絶対、100万以上はあるよ。これ。」


「うん。ありそう。私も、来週くれるって言ってたけど、ほんとに貰っていいのかなぁ。」


・・・・・・・・・・・。



そういえば、あいつ、小学校も中学も女子校だって話しだよな。


小学校で女子校って、そんなのある?


普通じゃないよね。


「白河って、お嬢様なのか?」


「え?私?ちがうちがう、そんなんじゃないって、お嬢様とかやめてよぉ」


・・・・・・・。

・・・・・・・。


「ね、ねぇ、なんで無視するのよぉ。」



はい?



振り返り、目が合う・・・・。



「またお前かっ!!!」


「な、なによっ!? い、いちゃいけないっていうのっ!!」


「さっき、またね~って、手ぇ振って別れたじゃねーかお前とはっ!!」


「おまえって言うのやめてって言ったでしょっ!!なんで分かんないのっ!?」



・・・・・・・・・・。



「で、どうして着いてくるんだよ。」


「わ、私も、こっちなだけよっ。」


「本当か?」


「ほんとですっ。」



足早に歩くと、「ちょ、ちょっと待ってよぉ」と追いかけてくる。



「な、なんで逃げるのよぉ?」


「だってお前、メガネかけてねーじゃん。」


「もう夜だから、平気よっ」



・・・・・・・・・・・。



「あ、俺んちここだから。」


「そ、そうなんだ・・・。」


「じゃ、気をつけて帰れよ。じゃあな。」


・・・・・・・・・・・・。


あれ? あいつ一歩も動いてないな。


家の前で固まられてもなあ。



「・・ぐすっ・・う・・」



え?



「・・・う、うえ・ぐすっ・・」



お、おい・・・・。



「ぐすっ・・・う・しくしく・・」




本当に泣いてんのか!?




「おい、どうしたんだよ。」


どうしていいか分からず、手を差し延べると、バシッと払いのけられた。


「さわんないでっ・・・ぐすっ」



いや、触るなっていうけどさ・・・。


とりあえず、家の前で泣かれちゃたまんねーぞ。



俺は意を決して、彼女を家に引っ張り込もうとした。


「頼むからこっち来てくれ」


「さわるなって、言ってんでしょっ!!」


全然言う事を聞いてくれない彼女に、それでもしつこくせまる。


彼女の手を引っ張る俺。


踏ん張る彼女。


引いては返され、引いては返されの繰り返し。


どうすりゃいいんだっ!!


もう我慢出来ないっ!!!


最終手段!!とばかりに強引に彼女を抱え、玄関へ向かう。


途中、「降ろしてっ」「やだやだっ」「だいっきらい」とジタバタされる。


構わず、玄関の前まで来ると、勝手にドアが開いた。



「兄さーん、帰ってきたんですかぁ~~~~?」



げっ彩乃!



「に、兄さん、なにやって・・・・・」



彩乃の前で、白河をお姫様だっこする俺・・・。



最初は驚いたのか、キョトンとする彩乃だったが、だんだん雲行きが怪しくなって、



「に~い~さ~んっ!! 誰なんですかっ、その女の子はっ!!」









4話へ続く・・・・・・。





















































































評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ