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カラダがどんどん改造されるわけ  作者: 739t5378
第2章 カラダが改造されたあと
26/45

第6話 修羅場る予感

清々しい朝だった。


カーテンの隙間から注いだ朝日が俺の顔を照らして、土曜の朝の始まりを教えてくれる。


あー、しかし、なんだか面白い夢を見たなぁ。


俺と白河と彩乃の身体が入れ替わるっていう……そんな事あるわけないっちゅーねん。


でもなんか…超リアルで楽しかったんだよなー。


…………ムフッ、思い出すとついニヤけちまう。


くそ~~憧れちゃうなー、白河の……コホン、いかんいかん朝っぱらから何考えてんだ。


…………。


ふ~朝一での雑念はダメでしょ―――と、ふと寝返りを打つ―――。


横には、ス~ス~と寝息を立てる我が義妹の姿。


―――ったく、こいつ俺のベッドに入り込んできたのか……。


たまにこういう事がある。


こいつはさ、兄である俺のベッドに侵入して、いつの間にか寝てるんだよな。


ん~でも、中学生になってからは初めてか?


まったく可愛いやつだぜ―――などと思いつつ、スヤスヤと眠る妹の頭を撫でてやる…。


―――とその時、ふと自分の手がやけに小さくて違和感を感じる。


おや―――?


妹の頭に伸ばした手を引っ込め、まじまじと手を見つめる…。


なんだこの可愛い手は……。


慌てて起き上がり、自分の身体をチェック。


はれ? なにこの可愛いパジャマ…。


まさに女物。黄色い生地に水玉模様。


え?え? 軽くパニックの俺。


そして最大の違和感―――それは、毎朝ギンギンの息子が―――



ないっ!!!



慌てて股間をまさぐる俺。



「何でだっ!! 何でチンコがねーんだよっ!!!」



―――その時、激しい鈍痛が頭を襲った。



ゴツッ――――。



「朝からどこ触ってんのよっ!!!」



◇◆◆◇



「え~っと…うちの朝はパンなんだけど…いい?」


「いらない」


「ま、まあまあそんな事言わずにさ、今目玉焼き作ってっから」


「つーん」



『つーん』って口に出すものか? いやいやそうじゃなくて。


完全にご立腹な白河。


よそよそと朝食を作る俺なんぞガン無視で、リビングでテレビを見ている。


足を組み尊大な態度である。


まあ要するにだ、てっきり夢オチだと思ったんだが…現実だったらしい。


そしてさっきの股間まさぐり事件から、あまり口を聞いてくれません。


不思議だよね。寝る前は手足を紐で縛られてたんだけど、朝にはすっかり自由の身。


まあ、女子が縛ったんだから緩かったんだろ。



そうこうしている間に朝飯が完成する。


ジュ~っと焼き上がった目玉焼きにソーセージ。


それらを皿に盛り付けて軽くサラダを加える。


うーん、ヘルシー。


そしてチン――という音ともに飛び上がったトースト。


苺ジャムとマーマレードどっちがいい?と聞いてみるが音沙汰ないので適当に塗る。


そしてそそくさとテーブルに準備をして、楽しげに呼びかけてみる。



「へいっおまたせ! 神崎家の朝食だよっ」



一緒に食べようと、相変わらずテレビを無言で見つめる白河を手招きする。


ハァ~と溜息をつきながら立ち上がり、とぼとぼ近寄ってくる白河をキッチンのテーブルに着かせ、食べようぜと声をかける。


俺も向かい側に座り、わざとらしく『いただきます』と手を合わせ食べ始める。


俺しかまだ食べてないんで、ゆっくりと食べていると不思議そうな顔で見つめてくる白河。



「……君って料理出来るんだ」


「ま、まあな…って、これが限界だけどな」



ふーんと、聞いておいて興味ない感じの白河。


でもやっと食べてくれたんで一安心。


このまま機嫌直ってくれるといいけど。


今日は学校休みだぜ?この調子じゃさすがに辛い。



しばし無言のまま食す俺達―――。



しかし――残念ながらその時はやってきた。


実はこんな雰囲気だからさ、行けてないんだよね。


え?何がって?


朝起きたらさ、皆行くよね、トイレ?


さすがにもう限界なんだよ。


だから俺はさりげなく立ち上がり、おもむろに言った。



「ちょっとトイレ―――」



あわよくば一人で――と思ったんだが…結局俺は廊下でガシッと腕をつかまれ、また二人で排泄。


あーこんなにトイレが嫌で嫌でたまらない日がやって来るなんて…。


自分の身体じゃないとはいえ、彼女同伴じゃないとトイレ行けないなんて…恥ずかしすぎる…。


別に不自由じゃないのに、介護されてる気分なんだよ。


え?楽しそうだって?


バカ言うな、期待値を込めて楽しかったのは一回目だけだ。



――ま、そんな感じでスキンシップもとれてだ、その後やっと普通に戻った白河とリビングでまったりティータイム。


白河には妹がいつも飲んでいるハーブティー。


そしてもちろん俺は水分補給したくないんで、飲みません。


白河の機嫌が直り、回復した空気の中、俺は普通にテレビを見る。


そんな俺を横目に、ボソッと呟く白河。



「神崎君ってさ、絶対彼女を大事にしないタイプだよね」



何を言い出すかと思えば、その後も私にいやらしい事ばっかりするだの、変態だのと最後には「私って君のことホントに好きなのかなぁ?」などと、危険なセリフが聞こえてくる。


やばい空気を察した俺は必死にフォローにまわる。



「お、お前がどう思ってよーがだ…お、俺はお前の事が…好きなんだよっ、好きな子にエッチな感情もつのは普通だろっ!」



なんだかフラレそうな空気なんで、そりゃもう必死な俺。


なんだが…必死すぎたのか、俺の顔を見てプっと噴出す白河。



「あはははっ、自分の顔した人にそんなこと言われても~~」



クスクスと笑い出す。


くそ~~真剣だっただけに、ちょっと腹立つじゃねーか…。


ま、おかげで場が和み、しばしだべってまったりする事が出来た。



◇◆◆◇



「う~~彩乃ちゃんのパジャマきつ~~い」



俺もきつい。


しかしだ、そんな事はどうだっていい。


俺の興味と視線は白河に釘付けだ。


彩乃と白河じゃ胸のサイズの次元が違う。


そりゃきつかろう。



「あ…やだ…ホック外れた」



ぶっ! ホックが外れただと!?


一瞬たゆんと胸が弾み、慌てて手で押さえる白河。


へ?何があったのかって?


そりゃあれだよ、元の身体に戻ったに決まってるだろ。


さっきな、また身体が緑色に光ってだな―――



「ねぇ、ちょっと私着替えてくる…」



パッツパッツの胸を両手で押さえながら、上向き加減な白河。


恥じらう感じがたまらん!


思わず前屈みで、ぶっきら棒に「おう」とだけしか答えられない俺。



「すぐ戻って来るから、じゃ行って来るね」



シュッと消える白河。


ああそっか、自宅に戻ったのか。


う~むしかし……何故戻る時は服がそのままなんだ?


いやいや、そんな事が問題じゃない。


取り敢えず元に戻って良かったんだが、いったいどうやって!?


何がどうして!?


ブチッ


あ――パジャマのボタン飛んだ。


ま、まずは俺も着替えっか。


そう思い立ち上がった瞬間―――。



ピンポーン♪



おや? 誰か来た?


響いてくる呼び鈴に反応して、慌てて玄関へと向かう。


もう白河戻ってきたのか?


って、早すぎるだろ。


あー彩乃か。


あいつもきっと元に戻ったんじゃないか。


でも自宅でピンポンって可笑しくないか?


などと考えながら玄関のドアを開ける。



ガチャ―――。



「あ、お、おはよう…」


「お、おう…おはよう」



なんだか礼儀正しく挨拶してしまったが、そこには一条が立っていた。



「あ…その神崎君、突然来て…ご、ごめんね」



最後にてへっとハニカム一条。


う…ちょっと…いやだいぶ可愛い。


突然の来訪者にびっくりの俺。



「ど、どうしたの突然」


「え…えと、あ、遊びにきました…」



俯き加減で目を反らしながら、恥ずかしそうにする一条。


遊びに来ただと!?


俺んちに!? しかも女の子が!?


こ、こんな事が今まであっただろうかっ!


そ、それに…なんだか今日の一条はいつもと違うぞ。


髪は俺の大好きなツインテール。


え?初めて聞いたって?


だよなー、だから彩乃はいつもツインテなんだよ。うん。


いやいや、今の発言はかなりのシスコンだぞ。


ち、違うからな、あいつが勝手にしてるだけで…。



「あの…神崎君? 迷惑…ですか?」



うおっ、いかん、トリップしてた。


すぐさま「どうぞどうぞ」と一条を家の中へ促す。



「ちょ、ちょっと待って下さい…」



ファーの付いた長めのブーツを立ったまま、んしょんしょと脱ぐ一条。


う~む、生足にブーツいいね。


しかもヒラヒラの超ミニスカートで、見えそうで見え―――ぬおっ見えた!


チラッと白っぽいのが…イッツァファンタジー。



「お邪魔します…」



思わず目が合う。


当然良からぬ所を見ていた俺は、無意識に目を反らしながら「遠慮しないでいいよ」と優しい声音でリビングへと案内した。


その僅かな道中。



「あの、神崎君。可愛いパジャマ着るんですね」


「へ?」



言われて気付く、白河のパジャマを着たままの俺。


しかも、中にはブラとパンティーを装着。



「ぶーーーっ!!」



思わず吹き出してしまったではないか!


リビングに一条を置いて、慌てて自室に戻った俺はもちろん速効で着替えたさ。


普通にジーパンに長Tシャツ姿になり、リビングへと向かう。


やばい、もしかして俺…変な誤解されるかも。


そしてリビングでは、ソファーにちょこんと座る一条が当然の如く言った。



「あ、あの…私、口は硬いほうですから…」



っておーいっ!


やっぱり誤解してるじゃねーか!



「いや…だから、あれは妹のパジャマで…って! 妹に変な事をしているわけじゃないぞ! だから、たまたま俺のが洗濯していてだな…」



苦しい言い訳を長々としてしまう。


しょうがねーだろ。


それなのに、結局「だ、誰にも言いません、本当ですっ」と、誤解が解けてない様子の一条さん。


はあ~いいぜ、別に…。


おっと、一条にお茶でも入れてやるか―――と、テーブルの上に残っているハーブティーに気付く俺。


やばい。


こんな事をしている場合じゃないだろ、俺。


そろそろ、あのお方が戻られるではないか。


天然のくせに沸点が低く、最近知ったが嫉妬深いあのお方が…。


いや、そろそろじゃない。


いつ一瞬で目の前に現れるか…。


そんな事になったら絶対にやばい。


間違いなく修羅場るとみた。



「オッケー、一条。ここじゃなんだから俺の部屋に行こう、うんそうしよう」


「え…? 神崎君の部屋に…」


「そうそう、俺の部屋。ゲームとかあるし。あ~~その、なんだ、もうすぐ妹が帰ってくるし」


「妹さん? なら私、妹さんに挨拶したいです」


「まあまあそんなのいつでも出来るし」



そう言いつつ、強引に一条の腕を掴んで2階へと向かう。



「あんっ、ちょっ…神崎君! 私、男の人の部屋にいきなりは―――」



なんか言ってるが無視。


事態は急に迫られているのだ!


「や、待って…そんな引っ張らないで下さい」と嫌がる一条を半ば無理やりに俺の部屋へと連れ込む。



「わ、あぶねっ、おっとっと…」


「キャッ! ―――わっ!!」


ドサッ―――――。



入り口で足がもつれた俺達は、そのままベッドに倒れこんだ。



「わ、わりぃ…だ、大丈夫…?」


「う…うん、平気…」



顔と顔が近い。


倒れこんだと言うより押し倒した感じで、俺が一条の上に乗っかってます…。


完全に体重を一条の身体に預けてしまっていて、柔らかい感触を全身に感じる。


触れ合う吐息…。


名残惜しくてなかなか離れられない。


思わず見つめ合い、固まってしまう二人…。


つい、柔らかそうな唇に目が行ってしまう。


スッと目を閉じる一条―――。


なにっ!? オッケーってこと!? オッケーなのかっ!?


急激に全身の血が一箇所に集まってくる。


やばい―――。


色んな意味でやばい。


一瞬、白河の恐い顔を思い出し、物凄い勢いで一条から離れる俺。


目を開けて、不思議そうに見つめる一条。


その一条の、捲くれて丸見えの白いパンツをガン見する俺―――。



だーーーっ!!!



潔く諦めろっ、俺っ!!



「と、取り敢えず…お茶入れっから、ちょっと待っててくれ」



そう言い残し、そそくさと退場する。



「嗚呼…俺の初体験の絶交のチャンスがああああああああっ!!!」



階段を下りてリビングに入った瞬間、小声で絶叫してみる。



「なに? 初体験って?」



って、白河居たし! あぶねー!


ホント、こいつのテレポはいつも突然だかんな~。


まあ、なんだか可愛い私服に着替えてきてくれたんで良しとしよう。


生足じゃなくて、黒いストッキングにミニスカートだが、これもまたイイ。



「ねぇ、なに? チャンスって?」


「ばっ――何でもねえよっ、それより早いな戻ってくんの」


「うん、着替えてきただけだし―――ってなによ、私が戻ってきたら何かまずいの?」


「べ、別にまずかねーよっ、お前が戻ってくるの俺待ってたし…」


「ふ~ん…ま、いいけどさ…」



ソファーに座って足を組んでいる白河。


ハーブティーを入れ直したのか、カップからは湯気が出ていてご丁寧に俺の分まである。


この一瞬でそこまでやるとは……かなり俺んちに馴染んでんな。



「紅茶入れたから飲んで」



白河に促されて俺もソファーに着く。


大丈夫。絶対にこの危機を乗り越えてみせる。


まずは考えろ。


二人を鉢合わせてはいけない。


修羅場る。確実に修羅場る。俺の本能がそう叫んでいる。



「ねぇ、私のパジャマ返してよ…あと、下着も…」


「おう…そうだよ…な。でも、下着は俺履いちゃったからなー。処分しとくよ」


「いいから返して」


「はい…」



チッ、やっぱ下着も返さなきゃダメだったかー。


ま、服は2階だ。ちょうどいい、紅茶でも持って一条の様子を見に行かなくては。


俺は白河の入れてくれたハーブティーを片手に立ち上がる。



「え、なんで紅茶持っていくの? 上で飲むの? じゃあ私も…」


「ってちょっと待て、お前はここでお茶してろ」


「なんでよ。話したいことあるのにー。私一人でここに居るのって可笑しくない?」


「いやだから、昨日からの出来事があまりに不可解で俺も動揺してんだよっ。だから2階で頭冷やしてくっから、ちょっと待っててくれよ、な?」


「あ…そう。早く戻ってきてよ」



「おう」と軽く返事をしていざ2階へ。


ふっ、いくら天然のあいつといえど、さすがに俺の行動は怪しい。気をつけねば。



トントン―――入るぞーと一応声をかけて自分の部屋へ入る。



「あ、神崎君…あの、これって…」



入るや否や俺ピンチ。


一条が手にしているのは白河のブラジャー(薄いピンク色)。



「あ、ちょ、そ、それはだな…」



慌てた俺は思わず手元がくるい―――ガチャン。



「アチーー!!」

「あっつい!!」



紅茶をモロに自分の足と一条の上半身にぶちまけた。



「ご、ごめん! 熱かった!? 今拭くからっ」


「え? いいです自分でやりますっ」


「いいからいいから」



焦って近くにあった布を手に取り、一条の服をふきふき……。



「じっとしてて」


「は、はい…」



胸の辺りをふきふき……。



ムニッ



「…ぁ…神崎君そこは…」



いや、わざとじゃないぞ。


本当にそこにこぼしたんだって!



「……ぁ……」


「あ、ごめん」


「い、いえ…」



参ったなー、思ったより一条の胸がでかくて柔らか……じゃなくて!



「後は自分でしますから…」



さすがに胸を触りすぎたのか、いや触っちゃいない、拭いたんだが…嫌がられました。


しかし、結構濡れちゃったなー。


シャツが透けてブラが透け透けに…。



「あの…これってパンツ…ですよね?」



今まで拭いていたものをヒラヒラさせる一条。


げっ、しまった。白河のパンツで吹いてしまったらしい。



「あ~参ったなー、妹のパンツじゃねーか…ったく、あいつ、こんな所に洗濯物置きやがって」



咄嗟に誤魔化そうと試みるが、



「でも、このブラジャーは妹さんのじゃないですよね? 彩乃さんでしたっけ? たまに教室に来るから私知ってますけど…」


「だーーー!! それ以上言うな! 分かった正直に言おう、それはある女性へのプレゼントでと思って買った物なんだっ!」



かなり苦しいが、嘘をついたら最後まで貫くのが男ってもんだ。



「白河さんに?」


「そう白河さん―――」



―――ってなんで知ってる!?



「でもこれって、絶対使用済みですよね?」


「あ、当たり前じゃねーか! あいつはな、今は古着に凝っていてだな…」


「下着に古着ってあるんですか?」


「いや~~あると思うぞ」



く、苦しい自分で言っていて苦しい…。


だがしかし! 俺は負けない! だって男の子だもん!


と、取り敢えず話題を代えてだな…。



「ところでさ、今日はなんか用事あったんじゃないか?」


「…は、はい…あ、あの…メール何度も送ったのに、返事がないから…その…」


「へ? メール?」



慌てて携帯を探す…。


―――が、無い。


どこいった…。


あ、そうか、あれからずっと彩乃が持ってたんだ。



「あの、わりぃ。妹が間違えて持って行ったまんまなんだ」


「え、ホントですか?」


「そうそう、だからメールも見てないし返事もだな―――」


「良かった~~私、無視されてるのかと思って―――」



急に笑顔になる一条。


成る程、そういえば最初からなんだか元気ない感じだった。


しかし、笑顔が破壊的に可愛いな。


白河がいなければ、間違いなく学年ナンバー1美少女決定だな。



「じゃ、じゃあその…明日の日曜日、一緒にお買い物に付き合ってくれます…クチュンッ!」


「お、おい、大丈夫か? 服が濡れて寒い?」


「は、はい…クチュンッ! ちょっとだけ…」



どうすっかな~、やっぱここはあれだよなー。


風邪引くとまずいもんな…しかし危険度が増すだろ…う~む。



「クチュンッ!」


「分かった! シャワー浴びてくれ」


「え? そんな…悪いです」


「気にすんな、俺のせいだし。着替え用意すっから」




◇◆◆◇




「遅ーい。もう私帰ろうかと思っちゃったじゃないっ」



さすがに待たせすぎたかと思えば、案の定ムクれている白河。



「わりぃ、ちょっと精神統一してた」



「何が精神統一よ」とご機嫌斜めな白河嬢なんだが…。


どうしよう。ここは適当に言ってこいつを帰すのが無難か。


でもなー、なんとか白河と久しぶりにイチャイチャしたいんだよなー。


いや? そもそもイチャイチャした事なんてあったのか?



「ちょっとぉ~、なんで黙ってるの?」



あー、ちなみに一条はシャワー中だ。


取り敢えず濡れたの上だけだから、俺のTシャツだけ着替えで渡してある。


え? 白河にバレないかって?


ああ、激しくやばい。


廊下に出られたらアウト。


だからだな、こいつは自宅に帰そう。うんそれがいい。



「ねぇってば! 聞いてるの!?」


「聞いてるって。取り敢えずだな、昨日からの事はあまりにもファンタジーすぎて、俺らにはさっぱり分からないよ」


「そ、そうだけど…彩乃ちゃん大丈夫かな?」


「大丈夫だろ?」


「…む、それなんか冷たくない? いつものシスコンな神崎君と違う」


「違くねーよ! 如月さんとこに居るんだから問題ねーだろ。心配だったらシュッと様子みてきたら?」


「な――なによそれ…変なの」



何が変なのか、さっきよかムクれっ面の白河。


何度も足を組み直しているのを見ると、まずまずご機嫌斜めってとこだな。



「なんか隠してる――?」



ぶーーっ!



「ゲホッゲホッ……なんだよ唐突に! 思わず紅茶吹いただろ!」


「やっぱり怪しい…」


「怪しくねーよ! だから言っただろ? 今回の事で俺は動揺してんだよ」



なんだ? 今日はやけに勘がするどいぞ。


いつもボケボケしてんのに、女の勘ってやつか?



「なんかさ、今日の神崎君っていつもより冷たくない?」


「え? そうかな…わりぃ。じゃあ頭冷やすから、今日は一人にしてくれない?」


「あーー!! 私を帰そうとしてる! 絶対可笑しいよ」



指を差してアピールする白河。


自然な流れのつもりだったんだけど…ちょっとわざとらしかったかな。



「帰そうなんてしてないって! 本当は俺、白河ともっと一緒に居たいんだって!」


「…そうだよねー、いつも私と…なんとか一緒に居ようとするもんねー…」



「だから可笑しいの、今の君の態度」と言いつつ、再び指を差される俺。


だいぶ上から目線でのご意見ありがとう。


そういうの、嫌いじゃないぜ。


ま、さっきから足を組む度に、ストッキング越しにパンツがチラチラしてるのを見逃してないけどな。


いやいやそうじゃなくて。



「まあ俺も、たまにはそういう時があるって。だから今日は別れて明日会おうぜ」


「やだ、帰んない」


「ど、どうして?」


「2階になんか隠してるでしょ」


「隠してねーし」


「ちょっと見てくる」


「話し聞けよっ」


「やだ」



立ち上がって2階へ向かおうとする白河。


その手をがっちり掴んで話さない俺。



「放してよっ」


「何も無いって、もう少しお茶してようぜ」


「いーやっ!」



シュッ―――。



目の前から消える白河。


あちゃ~やっちまった。


やばい。絶対2階は修羅場と化している。


あ~~浮気がバレた男の気持ちってこうなのか~~!!


しかも、突然白河がシュッ――とかいってあらわれたら…一条ビビるぞ。


などと言っている場合じゃない!


俺も2階へ行くべきか…。


いや、家から出ようかな…そもそもなんでこうなった…。


一人悶々としていると、目の前にシュッ――と白河が現れる。



「…………」



しばし無言の白河。


お、怒ってるのか……ドキドキ……。


すると、何故か照れてるのか怒ってるのか良く分からない表情になり、ボソッと呟いた。



「……なんにも無かった……」



「だろ~? 何も隠してないって!」


ホッとしてつい笑顔の俺。



「むぅ! やっぱり怪しい! もっかい見てくる」



再び消える白河。


ダメだ! 万事休すか!?


ど、どうするどうする?


あ! まずは玄関の一条のブーツを隠さねば…。


いそいそと廊下に出る。


そしてそこで一条とバッタリ。



「あ、勝手にバスタオル借りちゃった」


「お、おおおう、構わねーよ。取り敢えず今日は帰ろうか」


「はい?」



路線変更! 一条を直ちに帰宅させる!



「明日、なんだっけ? 買い物行こうぜ!」


「ほ、ホントですか!」


「ホントホント! 後でメールすっから、今日は帰って。早く早く」


「は、はい…わ、分かりました……あれ? 靴が無い」



NO!!! 何やってんだ俺!


さっき迅速にキッチンに持ってっちまった。



「ちょい待ち」と振り向いた瞬間。



―――冷たい視線を向ける白河と目が合った。





7話に続く

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