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カラダがどんどん改造されるわけ  作者: 739t5378
第1章 カラダが改造されるまで
20/45

第17話 最終話~~一つの区切り~~

ある日の夜――



「え? え? 兄さん、このチケット――どうやって手に入れたんですか!?」


「あ? 貰ったんだけど……一緒に行こうぜ」


「貰った!? あわわ……し、白河真琴のライブチケットって、今――超入手困難なんですよっ!?」



そう、白河に貰ったチケット。


『彩乃ちゃんと一緒に』って言ってた白河の言葉を思い出し、彩乃を誘ってるわけだけど……


ぶっちゃけ、妹を誘うのは抵抗があったんだよね。


だって、兄妹でライブだぜ?


思春期の男子が、妹をライブに誘うなんて……とか土壇場で考えちゃってな。


とは言え、アイドルのコンサートなんだけどさ……坂崎と行っても気持ち悪いだけだし。


で、やっぱり彩乃誘うしかねえし、連れて行かないと白河に何言われるか分かったもんじゃないし……。


仕方なく誘ってる訳なんだが……そんなに入手困難なのか?



「わわ!? し――しかも、プ、ププ……プレミアムシートじゃないですか!?」


「へーそうなのか? どれどれ……ほうほう……成程なー」


「成程なー…じゃないですよ! さっきテレビで言ってましたよ! プレミアムシートは数が少なくって、オークションで10万以上の高値で取引されてるって!!」



げ!? 10万って……そんなに人気あんのかあいつ。


しかも、2枚で20万は固いって事か……


売っちゃう?


いやいやそんな事したら、ガチで殺されるぞ。


そんな不埒な考えを巡らせていると、妹がその出所をしつこく聞いてくる。



「誰なんですか!? そんな…チケットを簡単に渡してしまう、奇特な方は――」


「何言ってんのお前。白河本人に決まってんだろ。折角知り合いなのに、他の人からわざわざ貰うか?」


「ほ――本人って……え? え? …………まさか…………」



その場にペタンと座り込んで目を泳がせている妹。


リビングを見渡しても、答えは見つからないだろ。


とりあえず妹を立たせて、ソファに座らせてやる。


でもなあ……まさか未だに白河の事に気付いてなかったとは…………ぷっ、超ウケる。



「――聞いてもいいですか、兄さん」


「なんだ」


「白河さんって、下の名前って――」


「真琴だぞ」


「――にゃぁぁああああ!!!!」



なぜか猫化して叫ぶ我が妹。


しっかり、頭に猫耳まで着けてやがる。


学校で流行ってるのか?


しゃーない、あれを見せて……って、あれじゃ完全体じゃないな。



「彩乃――前に白河と写メ撮ってただろ。あれ、メガネかけてもっかい見てみ」


「あ、はい、分かりましたぁ。え~っと……」



ポケットからメガネを取り出し、わざわざ後ろ向きになる妹。


そうまでして見られたくないのかよ。


別にいいけどさ…。



「にゃっ!? し――白河真琴ですぅ……」



一瞬驚いて、その後ガクっと落ち込む妹。



「お~~い彩乃さ~~ん」



返事が無い……


両手を付いて、うなだれている。


が、突然猫のポーズで振り向いたと思ったら――



「なんで教えてくれなかったにゃーーー!! 酷いですっ、酷いですよぉ~兄さんっ!!」



猫手で必死にポカポカしてくる我が妹。


さすがに怒ったのか、未だに気付けなかった事が恥ずかしいのか、マジ半切れ。


ま、叩かれても痛くないけど。


その後、落ち着いた頃に妹が言った一言――



「うう……サイン、貰っとけば良かったですぅ……。」



いつでも貰えるじゃねえか……。




◇◆◆◇




ファーストライブ当日――



俺達は、既に武道館の入り口まで来ていた。


周りには、物凄い人、人、人……。


付近では、コアなファンと思しき方達が円陣を組んで、



「我々は、全力で白河真琴を応援することを誓い――」



などと、リーダーらしき人物に続き、一斉に掛け声が上がる。


かなり暑苦しいが、中々活気があっていいじゃないか。


隅っこの方では、『チケットあります』の看板を掲げた、おじさん数名がうろうろしている。


あれって――もしかして『ダフ屋』ってやつですかね?


すげえ、始めて見た。てか本当にそんな人達って居たんだ。


そんな感じの物珍しさでキョロキョロしていると、妹が「兄さん兄さん」と服を引っ張ってくる。



「――みんなウチワ持ってますねぇ~兄さん」



む、確かに殆どの人が持ってるな……。


あれだよな。


こういうのは、周りに合わせた方がいいよな。


例えば、某歌手のコンサートなんかだと、全員でお揃いのタオルを振り回したりするだろ?


自分だけ持って無いのは、かなり切ないもんな。


買っとくか。


そう思い、妹を連れてグッズ売り場へ向かう。


しかし――そこは戦場だった。


マジかよ!? 入り口付近の混雑を遥かに凌ぐ人だかり。


こりゃいかんと、妹を端っこに待たせ、一人突入する俺。


順番なんて、あったもんじゃない。


人を掻き分け行くぜ! と思いきや……。


行けねえ……。


なんでかって?


以外にも、女子が多い……しかも妹ぐらいの年齢層。


無理に突入したら、痴漢で逮捕されそうだ。


一旦あきらめて退却。


何店舗かあるみたいなんで、他を見渡す。


すると、ちゃんと列になって順番待ちしている店舗を発見。


大分待ちそうだが、あそこなら平和そうだ。


妹を手招きして、一緒に並んで待つこと30分。


やっと俺達の番になり……なったんだが……。


たかがウチワに800円って……どういうこと!?


しかも白河の顔がでかでかと印刷してあってさー。


自称硬派な俺としては、かなりキツイ。


躊躇したが、結局購入。


そして、うっかりその横にあった『白河真琴――高校生になりました』ってタイトルの写真集も買っちゃったもんだから。



また(・・)買うんですかぁ兄さん?」



と、妹から冷たい視線を頂いてしまう。


――て、ちょっと待て。


また(・・)ってなんだよ、また(・・)って!?


くそ――やっぱりあの写真集『白河真琴 15歳』見つかってたのか……。


恐ろしいぜ、我が妹よ。


ていうか、家捜しするのは止めてくれ。マジでお願いします。




◇◆◆◇




聞いて驚け。


なんと俺達の席は、ど真ん中、前から3列目だ。


かつてこんな良い席で、ライブを見た事があったであろうか。


普段白河と会ってはいるが、生であいつの歌やダンスを見れるとなると、また別の興奮がある。


今日の為にアルバム買ってきて、彩乃と二人でたっぷり聞いてきたし。


あいつ、どんな表情で歌ってくれるんだろ。


あ~~マジでワクワクしてきた!


次第に館内の照明が暗くなり、会場が静まり返る。


そして――パッと中央のステージにライトが点灯した。


にわかにざわめく会場。


皆の視線がある一点にが注がれる――。


ステージから伸びたスロープの先……白河が登場するであろうその登場口。


皆が固唾を呑んで、再び静まり返る。


そして――軽快な音楽と共に、白河真琴登場―――。



「キャアーーーーーー真琴ぉ~~~~!!」

「真琴ぉぉぉぉぉおおおおーーーーーー!!」

「真琴ちゃ~~~~~~~~~んっ!!!」



凄い声!!


声援で歌が聞こえないじゃねえか!?


颯爽と、スロープを歩いて歌う白河。


曲はもちろん知ってるさ、『Real Love』あいつのデビュー曲。


ティーン女子の淡い恋心を歌った名曲。


切ない歌詞なのに、ダンスナンバーなところがナイスで斬新。


この曲は、キッズアニメの主題歌として歌われ大ヒット。


しかもそのアニメ、今時ゴールデンタイムに放送されて、一気に幅広い層のファンを獲得出来た。


偶然なのかは知らないが、まさに白河を売り出す為のアニメだったとも言える。


おっと、雑誌の受け売りの説明をしている場合じゃない。


集中しないと。


白河は、Aパートを歌った時点で走り出し、既に中央のステージに辿り着いている。


ち――近い……。


すげえ近いよ俺から。


マジ感動なんすけど!



――間奏中、激しく踊り出す白河――


次いで現れた、数人のバックダンサーグループの女の子達。


ステージは超華やか。


白河は、真っ白いミニのドレス姿。


ダンサーグループは真っ赤で統一されていて、紅一点ならぬ、白一点。


白河の可憐さが、際立つ感じで良い。


やがてBパートが始まり、再び可憐な天使ボイスが響きわたる。


か――感動だ―――超可愛い――。


Bパートが終わると、曲が激しくなる。


そして――どこからか飛んで来たバトンを、華麗にキャッチ!!――


ん? 何が始まるんだ?


バトン……というか、魔法の杖?


白河はその杖を構えて、前方でクルクル回転させる。


その勢いのまま、頭上へ高く飛ばした――


瞬間――ステージ周辺に設置されたライトが、フラッシュのように点灯!


――うお! 眩しくて何も見えない――。


そして目が慣れてきて、徐々にステージの様子が見えてくる。


ぼんやりと、白河のシルエットが浮かび上がる――。


あれ? さっきと衣装が違うような……。


その姿は――アニメに登場する主人公――魔法少女だった――。


杖を可愛く振り回し、華麗にダンスする白河。



「キャアーーーーーー真琴ぉ~~~~」

「やっべーーマジ可愛いーー!! 超似てるぞおおお!!」



それを見て、館内が更にヒートアップしていく。


特に野郎共の声援が凄い――というかうるさい。


アニメは妹がたまに観てたから知ってるが、結構似てるぞ。


全身がパープル系で統一されたデザイン。


超ハイパーフリフリのミニスカートで、肩の部分がちょこっと露出した可愛らしい上着。


手にはグローブ、足にはハイブーツ。


極めつけは、背中に生えた大きな妖精の羽。


その一つ一つが、物凄いクオリティーだった。


唯一、アニメと違う部分は――胸――。


キッズアニメでは皆無だった、プルップルなその部分。


これなら毎週観てたな、うん。


館内大興奮の中、『Real Love』を歌い終わる――


――衣装はそのままで、次の曲が始まった――


なんと、アニメのエンディング曲。


この曲は確か、来栖美月の曲だったはず……。



白河が歌い出す――と思いきや――



――まさかの来栖美月登場――



しかも、同じ主人公の格好――魔法少女で。



ワァァ――と、一気に湧き上がる館内。


出だしを来栖美月が歌い、途中から白河真琴へバトンタッチ。


Bパートからは一緒に歌い、綺麗なハモリを聞かせてくれた。



大歓声の中、曲が終わり――白河のトークというか、挨拶が始まった。



「みんなぁーーー!! 今日は来てくれて、ありがとぉ~~白河真琴でぇ~~~っす!!」



イエ~~~~ッス!!!


つい、彩乃とノリノリで返してしまう。


瞬間――白河が俺達を見つけ、視線が合い――ニコッとウィンクした。



ドッキーーーーン



鋭い矢に、胸が打たれたかのようだった。



「兄さん兄さん!! 今、白河さん気付いてくれましたねっ!!」



高まった妹が、俺のシャツをベロベロに伸びるくらい引っ張っていたが、当然相手にする余裕などない。


ライブで、女の子が気絶してしまう気持ちを理解出来そうな――そんな気分だった。



「じゃ~皆さんお待ちかねっ! 私の大切な友人であり、アイドルの先輩! 来栖美月ちゃんですっ!!」



一斉の大拍手が沸き起こり、自己紹介を始める。



「にゃははぁ~~美月でぇ~~っす!! 今日はなんとぉー!! 友情出演ってやつなのだっ!!」  



高々と腕を突き上げ、宣言する来栖先輩。



「ありがとぉ~~美月ちゃ~~ん」


「いいっていいてぇ~~。気になるなら金をくれ?」



どっ―と湧く館内。



「ご、ごめんね美月ちゃん!! …あ…えと、後で、マネージャーさんに頼んで……」


「ね、面白いでしょ~真琴ってぇ。いつもこうなんだよぉ、冗談通じないのっ。ニッヒッヒィ~」



笑い声と歓声が巻き起こる中、穏やかに、そして美月ちゃん電波でコミカルに進んでいくトーク。


二人の会話は学校でもよく聞くけど、この場で聞けるとなるとまた格別だ。


なんだか、凄く特した気分だな。



しばらく仲の良い二人のトークが進み、来栖先輩が退場する。


温かい拍手が、先輩に送られる。


館内がほんわかとした空気の中――



「それでは――君のために歌います――」



と白河が告げ――次の曲がスタートする。



しばらく、しっとりとしたナンバーが続いたんだけど……


俺の目は、白河から一度足りとも視線を外したりはしなかった。


それは――


あいつが、ずっと俺を見ながら歌っていたから――。


自意識過剰だって!?


いや……それが分かる程、お互いの距離は近い。


白河が何を想って歌っているかは知らないが、常に視線は俺に向けられていた。


そんな俺はあいつの虜……。


今なら――もしあいつが『私の為に死んで』と言うなら死ねるし、一生奴隷になったっていい。


もうそのくらい、俺の心は完全に魅了されていた。


つくづく、恐ろしいやつだ。


チャームの魔法でも使えるのか? って想うほどに……。




◇◆◆◇




コンサートは大成功だった。


今宵――この会場に居た全ての人達は、一生白河を応援してくれるだろう。


なんて事を考えずにはいられない、素晴らしいライブだった。


でも、途中、ヒヤリとする場面もあった。


全力を出しすぎた白河が、ガチで倒れてしまうというハプニング。


おかげで20分程ライブは中断してしまったが、元気に再登場した白河に超感動の嵐。


スタンディングオベーション&ウェーブ発生。


その後、館内は益々ヒートUP。


それからは、歌う曲全て皆で大合唱。


『真琴ちゃんは休んでて』と全員が言ってくれているようだった。


ラストでは、白河が感極まって涙を流し、つられて大勢のファンが泣いた――。


そしてアンコールが何度もされて、困り果てた末、スタッフが総出でファンに謝った。


俺がそうだったように、全員にとって夢のような空間だったに違いない。


本当にあいつ……特殊な能力でも使ったんじゃないだろうか――。



俺と彩乃は放心状態のまま、未だ館内に残りジュースで喉を潤している。



「凄かったですねぇ……兄さん……」


「ああ、コンサートでこんなに感動したの初めてだぜ……」



しかも、アイドルのコンサートだぜ?


もっと軽いノリだと思ってた。


そんな自分がちょっと恥ずかしい……。



「――あ、メールだ……」



妹が何やら携帯を弄っている。


全く興味はなかったが、次の瞬間俺は食いつく。



「白河さんからだ!」


「――なに!?」



うおおおおおおおおおおお!!!


会いたいぜえええええええええ!!!!


あ―――でも……なんだか次に会ったら緊張しちゃうな~。


大丈夫かなあ。



「係りの人に伝えてあるから、休憩室で待っててだって、兄さん」




◇◆◆◇




それから休憩室とやらへ移動した俺達。


――そして待つこと一時間。


その間、彩乃へメールが何度も送られてきた。



『ごめ~~ん、もうちょっと待っててくれる?』



アイドルスターのお願いだ、いくらだって待つさ。


だけど、なんだか落ち着かない俺は立ち上がり――



「飲み物買ってくるな」



と妹に告げ、部屋を出た。


確か、来る途中に自販機があったはず……。


とぼとぼ歩いていると、ふと白河を見つけた―――



一瞬、声を掛けようか迷ったんだけど……



「しら―――」


「真琴―――もう少し、休まなきゃダメだ。あ……ほら」



俺の声は、背の高いイケメン男に遮られた。



「――あ、黒田さん……あの……」


「おっと、大丈夫かい?」



白河が、その超カッコいい男に抱きしめられた。


男は腰に手を回し、白河を優しく抱き寄せている。


しかも、白河本人もうっとりしてるし……。


二人は、まさに恋人のようだった。



は、はははは……そうだよな……。


あいつに彼氏が居ないなんて、誰が言った?


あんな可愛いくて、凄いライブして……。


そもそも俺なんかとは、住む世界が違うって……。


今更だけど、気付けよ…………俺。



それでも、目が放せないでいると、二人は少し距離を開け見つめ合っている。


まさに、これからキスしそうな雰囲気―――。


彼の顔が近づく……



その時、思わず呟いちまったんだ。



「嘘だろ――」



声に気付き、顔を向ける白河。


立ち尽くす俺と目が合う。


白河は目を大きくして驚いた様子。



でも俺は、限界だった――。



パッと踵を返し、逃げるように走りだす。



「待って!! 神崎君!! ちが―――」



それを見て、白河が何か言ったみたいだけど最後まで聞こえなかった。


とにかくここから逃げ出したかった。


妹の事もすっかり忘れて、俺は走った。


息が切れても関係ない。


どこに向かってるのかも知らない。


武道館が見えなくなる所まで、一刻も早く辿り着きたかった。



「ハア、ハア、ハアーー……」



でかい交差点で信号につかまる。


少し待って青になった。



もっと遠くへ――――



再び走り出した瞬間―――



「待ってよっ!! 神崎君っ!!!」



横断歩道を渡る途中――振り向くと白河の姿。


息を切らせて「ハァハァ」言っている。


追いかけて……来た……?



「ちゃんと聞いてっ! さっきのは違うのっ!! あの人は―――」



そう言いながら、走ってくる白河――。



そこからは、まるでスローモーションだった……。



その白河に、猛スピードで迫ってくる大型のトラック―――



声を掛ければ良かったのかも知れない。



でも、言葉を発する余裕すらなかった……。



俺は全力で走り、白河を突き飛ばし――――



その瞬間―――――――――――――



俺はトラックに跳ね飛ばされた…………。



ドン――――――――――――――



という音だけが聞こえて、俺は意識を失った。




◇◆◆◇




俺は死んだのか……?



何も聞こえない。何も匂わない。何も感じない。



ただ分かる感覚は、全身が燃えるように熱い……。



このまま死ぬんだ――とあきらめかけた頃、身体に電気が走った。



「一時的だと思うが、意識が戻ったぞ。」



如月さんの声だ。



「か、神崎君っ!? 聞こえる!?」



白河の声が聞こえる……。


そうか、こいつがここまで飛ばしてくれたのかな……はは……助かるかな、俺。



でも――直感で分かった。俺は死ぬ。



だってさ、ほんと、何も感じないんだ。


もしかしたら、身体はぐちゃぐちゃなのかもな……。


なら死ぬさ……このまま生きてたってしょうがないだろ?



でも、最後に少しだけ……白河と話しだけでも――。



俺はなんとか力を振り絞り、口を動かした。



「し――白河……。」


「!? なにっ、神崎君!! 私ならここだよっ!!」


もしかしたら、手を握ってくれたりしてるのかもな。


だけど感じない。


白河との距離感も全く分からない。



「しら……か…わ、ごめん……俺……死ぬよ……」



「や――やだっ!! 何言ってるの!? し……死なないでよぉ……神崎…くん……グスッ……ウェッ……うぅ……やだぁ! 絶対やだぁ!!」



泣いてくれてんのか……嬉しいな……こんな最後も悪くねえ……。



「……グスッ……ヒッ……好き……うぅ……好きなの……神崎君……大好きなの……だ……から……」



「お願いっ!! 死なないでぇぇ!!!」



嘘みてえ……聞いたか? 俺の事好きだって……。


嬉しいな。


俺も……伝えたい。



「お……れも……だいす……き……だ…」


「ほんとぉ?」


「……ああ……」


「じゃ……じゃあ、元気になって、私を彼女にして? ね? ほらぁ……い……いくらでも……わ…私の胸とか触っても……いいか…グスッ…ら…あ、あああああ――うわああぁぁぁん!!! 神崎君! 神崎君! 神崎君! ―――――!!!」



白河の泣き崩れる声が聞こえる……見た目でも、助からないって分かるんだな。


でもありがとうな。



「や……くそく……だぞ……」


「――う、うん!! 約束!! ……グスッ……だから……。」




そして俺は死んだ……。





◇◆◆◇ ~~エピローグ~~





数ヵ月後―――




俺は生き返った。



「久しぶり――だな、神崎君」



目を開けると、如月さんが居た。



「君を復活させるのには、本当、苦労したもんだ」


「そうすか……」



お、普通に喋れる。



「白河君が泣いて頼むもんだからな。彼女には、ちゃんと感謝するのだぞ」


「あ――はい」



身体を見る。


ちゃんと五体満足揃ってる……。


俺……完全復活?


手足を動かしてみる……特に違和感は無い。



「ふむ。擬似生態組織に問題は無いようだな」


「え? ぎじせい……」


「ああ、君の身体は殆ど潰されてしまったからな。身体の52%は擬似生態組織――つまりは――サイボーグ……とでも言えば解り易いか」



サ、サイボーグだって!?


俺は飛び起きて、速攻で下半身を確認した――。



「安心しろ、その辺は無事だった」



……よ、良かった~~~。ちゃんとあった……。


まさか、チェリーのまま無くなったかと思った……。


ふう~一安心。



「ふむ。折角だ、リハビリも兼ねて、白河君と彩乃君に会って来い。あの二人は、毎日ここに足を運んでいたのだぞ」



そっか……そうだな、彩乃も白河も、心配してくれたのか。


なんとか、生き返らせてもらえたんだし、会いにいかなきゃな。


まあ、半分以上、人間じゃないらしいが……。



そして俺は、歩き出した。



愛する人に会う為に―――





――――完――――











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