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カラダがどんどん改造されるわけ  作者: 739t5378
第1章 カラダが改造されるまで
16/45

第13話 真琴の逆ハラと地デジ化

小さいテーブルの前で、彼女がお茶を淹れてくるのを待っている。


何だか緊張して硬直状態の俺は、その真っ白い、小さいながらもセンスの良いテーブルを眺める。


丸みのあるデザインで、若い女の子の部屋にピッタリな感じだ。


周りを見渡すと―――まあ見渡す程の広さじゃないが、


白い3段の本棚があり、そこには少女漫画がびっしり―――で、俺の後ろにはベッドがあり、


ピンクのシーツにピンクの掛け布団、そしてピンクの枕とピンクの大きなクマのぬいぐるみ……文字通りピンク一色だった。


「居辛い……」


正座のまんま固まってる俺は、俯いて落ち着きを取り戻そうとするが、ピンク色のカーペットを見てさらに冷や汗まで噴出してしまう。


安らぎを求め、視線を宙に彷徨わせてみるが、その先―――窓際に掛けてある洗濯物が目に入ってしまい、彼女の無防備さにゲンナリとする。


「まあいい加減慣れてきたげどさ……なんでパンティーが何枚も干してあんだよ……」


迂闊にそっち見れねーだろうが。


奥からは、コポコポとお湯を注ぐ音が聞こえて―――「お砂糖入れる人~?」と彼女が返事を待っている。


「いらねー」


と速攻で硬派ぶって返答する俺だが、こんな女の子っぽい部屋で可愛い彼女と二人きりだなんて、さすがに理性が吹っ飛ばないかそっちの方が心配だ―――いや深刻だぞ、これは。



「ごめん待ったぁ~?」



お盆に乗せた食器を片手に、ニコニコしながらやってくる―――白河。


その身体は、既に完全体へと成長を遂げていた。


まだロリ河だったら、こんなに焦る必要もなかったんだが……。



そう。俺はなにを隠そう、白河の自宅マンションへと招待されたのだった。


突然の場面で、みなさんも混乱されていると思う。



では……時間をさかのぼることにしよう……



◇◆◆◇



遊園地に遊びに行ってから、二日が経った日の午後―――


俺は自分の部屋でまったりと―――ていうか引きこもっていた。



あれから…白河には会っていないし、実は俺、学校にすら行ってないんだよ。


て言うのもさ、身体が縮んだ事が結構突っ込まれちまってだな、苦し紛れに「ちょっとやっかいな病気でな」って話しで誤魔化しちまったのが原因。


「そりゃどんな病気なんだ」と色々聞かれたよ?


そういう人の不幸な話しの匂いを嗅ぎつけて、わらわらと集まってくんだよ、女子どもが……。


ちくしょ~こういう時だけよー。


だけど具体的になんか説明出来ないし、とりあえず「テロメアが関係する珍しい病気」って事でお茶を濁して逃げ出したって訳だ。


だから学校行き辛くってさー。


まあそれは別にいいんだけど、如月さんから電話かかってきてな、


「しばらく来なくても良い。いや、むしろ来るな」


なんて突っぱねられたもんだから、俺が唯一白河と楽しく過ごせる場所にも行けないってわけ。


「あーあ~、暇だな~。ゲームでもやっかなー」


もちろん彩乃もまだ部活中だろうし、家には誰もいないが、一人呟きX箱の電源を入れる。


机の上にある20インチワイドの――――テレビ兼パソコン用モニターの電源も当然オン。


いつものソフト、『ファンタシーモンスター』をセットしてゴー。


タイトルが現れ、すぐにオンライン接続する。


画面には、オンライン中のフレンドの名前が、次々に表示される。


「TK…ババ…ケンガイ…」


まだ3時だってのに、結構いるもんだ。


なにやってんだこいつら……まあネット限定の付き合いだから、お互い学生なのか社会人なのか、それともニートなのか知る由も無いし、知る必要も無い。


ゲームの中で楽しくやれれば、それで充分なんだよ。


中には、知り合った同士でオフ会だのコンパだのして、リアルフレになったり、恋人になったりする奴もいるみてーだが、俺はそんなものに興味は無い。


ただ、「ゲームを楽しみたい」だけ。


しかし……立ち上げたものの、いまいち気乗りしない。


と言うか、やる気が出ない。



「はあ~、白河に会いてーな……ちくしょー」



この前の一件―――ゴンドラでのあいつの生い立ち……そして、軽く流されちまったが、俺はあいつに告白した―――。



そりゃもう、白河の事ばっかり考えてるんですよ。


ええ、一昨日の晩から……。


俺はおもむろに一番下の引き出しの奥から、さらに色々物が詰まったさらに下―――ビニールに包装された物を取り出した。


一応隠してるつもりの写真集……『白河真琴15歳』


なんとこれはだな、あいつがアイドルデビューする前に出版された、貴重なファースト写真集なのだよ……ふっふっふ……。


先日、古本屋で見つけたんだが、実はプレミアがついててな?


なんと8000円もしたんだが、ふところの温かさにものを言わせて大人買いしちゃったんだよね~~♪


ペラ~~っと水着のページを開く……ちょっと布の範囲が広いのが気に入らないけど、ビキニ姿の白河が、可愛く砂浜に座ってニッコリと手を振っている写真……。


「堪んね~~。」


今より若干小さいその特盛りは、それでも大盛りサイズ。


俺は思わずニヤケてしまい、砲台に血が注がれるのが分かる……。


どうせ妹もいない事だし、この切ない気持ちを形―――いや液状にして発散させちまおうか。


色々と理由をつけつつ、ズボンのチャックを開けたその時―――唐突に背後から声を掛けられた。



「ふ~~ん…男の子ってぇ、ほんとにそういうの見てニヤニヤするんだね」



どっきーーーーーーーーーん!!!!!



突然、女の子に話し掛けられ慌てて振り向くと―――そこには白河が。


そこ(・・)というよりも、すぐ斜め後ろから写真集を覗きこまれている……。



「あ……あの……そのさ、えっと…これはだな……」



咄嗟に言い訳を考えるが、あまりに突然すぎて何も浮かばない。


対する白河は、呆ける俺を見て「やっほ♪」とニッコリ手を振っている……。


その姿が、写真集の砂浜でのスナップとフィードバックして、俺はさらに動揺させられた。



「その写真集を持ってるなんて、君ってかなりコアなファンなんだねっ。知人として嬉しいぞ、うん。でもそんなニヤニヤされると、ちょっと恥ずかしいじゃないさぁ~~」



両腕を腰に当てて胸を張る、えっへんなポーズを取る白河は、元の姿に戻っていた。


そのパツンパツンに張ったシャツの胸元……ミニスカートから伸びる肉感的な太もも―――それはまさに完全体。


つ…遂に戻ってきた……俺のEの70……。



いやいや、そうじゃないだろっ!!



若干トリップ状態だった俺は我に返り、一息に告げる。



「ちょっとまて!! お前……いったい、いつからここに居たっ!?」


「え? う~~ん確かぁ~『白河に会いてーな……ちくしょー』からっだったかな?……あ……じゃなかった、『ゲームでもやっかなー』のあたりからだよ」



なんだって!?


そんな前からかよっ!!


しかも、なに当たり前みたいな顔で言ってんだ、このアマっ!!


一番見られたくない奴に写真集の事、バレちまったじゃねーかっ!!!


しかも……危ねえ~~。もうちょっとで本気マジでやばい行為を見られるとこだったじゃね~か……。


危機一髪とはまさにこの事……。


呆けて言葉が出ない俺に構わず、白河がしゃべり出す。



「そんなにさぁ~、必死に写真集見ちゃう程、私に会いたかったの?」


「バ―――バカ言ってんじゃねえよっ……お、おまっ―――コ、コノヤロー……」



ク、クソ~~さすがに一部始終見られてたら、言い訳出来ねえじゃねーか!!


な、なんなんだ……この敗北感……。



「素直じゃないなぁ君はぁ――――」


つんつんと肩を突かれる。可愛い顔してんじゃねーぞコノヤロー。


「――――そんなに私の事好きだったなんてさぁ~~」



うう……一体なんだよ!? この辱め!!! なんでこいつ、こんなにニヤニヤしてるわけ!?


しかも、「私がきて嬉しい?」とか言って「うりうり~~」って肘で小突いてくんだけど……。



「神崎君、そんな事より――――」


そんな事(・・・・)で片付けてんじゃねーよ!! この不法侵入者!!


「――――早くそのゲームやってよぉ~~」


「へ?」


「ん~~なんか面白そう~~ねぇねぇ~~」



人差し指を口元に当てながら、空いた手で俺の服を「ねぇねぇ」引っ張る白河。


栗色のサラサラヘアーからは、甘い柑橘系の匂いが漂ってくる―――程の至近距離。


想像してみて下さい……この破壊力バツグンのおねだりポーズ……。


大体だな、顔が近いんだって……近視の彩乃じゃあるまいし……なんなのこいつ?


こうやってさ、大概の男が誘惑されそうな仕草を普通に()でやるんですよ、この子は。


ゲームどころじゃねーよ、その姿に釘付けだっちゅーの……俺は……。



「ねぇ~~聞いてるぅ?」


いかんいかん、トリップするとこだった。


「おういいぜ、やるから見てろ」


とりあえず、ドッキドキハートを隠しつつ、ぶっきら棒に答えゲームを始める。



どうすっかな……とりあえず、フレンドのステージにでも乱入してみっか……。


俺はフレンド『ケンガイ』のステージを選ぶと、既に何人かでプレイしてるようで、その他にもキャラ名が表示される……。


「知らねー奴いるけど、まいっか」


そいつらに混じって戦闘に参加、モンスターをバシバシと倒しまくる。


横では白河が、興味津々のご様子。


「うわぁ~あのキャラ可愛い~~。わっ! 痛そう…死んだの? キャッ! なに今の爆発!?」


んで、攻撃や魔法を打つ度に説明を求めてくるもんだから、一度手を止めて説明タイムとしよう。


着けていないヘッドセットの奥から、なにやらフレの声―――「なんかしゃべれよお前~~」的なが聞こえるが、まあいいだろ。


みなさんは知ってると思うが、一応説明しておく。


このゲームはオンラインRPGだ。


ネット上の友達と協力して、モンスターを倒していくゲーム。


当然、仲間のキャラはネットの向こう側の人―――いわゆるリアルな人間同士で操作してるってこと。


だから、一人用のRPGよりも臨場感たっぷりだし、色々話し合って作戦も練られる。


そりゃもう奥が深くて止められない―――。


てなわけで、世の中の廃人を増やしてしまう、ダメな遊びなのです。



「―――ってゲームなんだけど、解った?」


「う、うん……てことはぁ、あの人も、あっちの人も、誰かが動かしてるんでしょ……」



「凄いねネットゲームって」と感心顔で画面に張り付いているアイドル白河。


そんな彼女にコントローラーを手渡し―――


「やってみれば?」


と興味本位で進めてみる。


たぶん、ゲームでも天然っぷりを発揮して笑わしてくれるに違いない。


「え? いいの?」と言いつつ、すんなりコントローラーを受け取り、「ど、どうしよ」と固まる白河。


俺はヘッドセットをもう一個取り出し、ハブを繋いでセットする。


簡単に操作を教えて、白河にもヘッドセットを着けさせると―――



「わっ! なんか声が聞こえるぅ~~な、なに!? なにこれ、神崎君っ」


おいおい、実名を言うんじゃねー。


ネット上で本名言っちゃだめでしょ!



「な、なんだ今の可愛い声!」

「女の子の声だぞっ」

「キングの声じゃねーぞ」



俺の本名暴露は軽くスルーされ、白河の声に過剰に反応する、野郎ども。


あ、ちなみに『キング』って俺の事な。



「わりいわりい~。今ちょっと知り合いの子がやってっからさ、初心者なんでフォロー頼む」



そう告げて、また元の傍観スタイルへと戻る。


初心者でいきなり大丈夫かって?


仲間が居るからたぶん平気だ。


恐らく、絶対死なないと思う。まあ見てな。


白河には必殺技のボタンだけ、教えてあるから。



「え? え? どうすればいいの? や、やだ~~死んじゃう!!」



「死んじゃう」とか言いつつ、必殺技連発でガンガンとモンスターを倒しまくってる白河。


まあHPヒットポイントSPスキルポイントの事は教えてないから、常に死と隣り合わせ&超燃費悪い攻撃を繰り返してるけどな。


でも大丈夫! 女の子の声に騙されて、野郎どもが一所懸命フォローしてくれるからっ。


この協力プレイこそが、オンラインゲーの一番の魅力――である。



「き、君、だだ大丈夫かい?」

「僕の魔法で回復してあげるからねっ」

「あ……あの……フレンド登録、お…お願いしてもいいですか?」



野郎どもから執拗に声を掛けられているが、操作に夢中で一切ガン無視の白河。ナイスだぞ。


しかも、なんか物凄い真剣な顔で「いけっ、このっ……あ~んいやぁ~だぁ~~」と無駄に可愛い声を発しながら、身体ごと動かしている。無駄な動きの多いやつだな……。


そして―――


「あ~~んもぉ~~やりづらいぃ~~ちょっとどいてっ」


そう言って白河は、椅子に座っている俺と机との間に割って入ってくる。


なんだよ、狭いとこ入ってきやがって……。


後ろがベッドでつかえてるから、俺がどけば良かったんだが……こいつが前で身体を動かす度に、スカートがヒラヒラしてさ、別に見えるわけじゃないんだけど……その……こいつが足を曲げたりすると、たまに裏ももが俺の膝に当たるんだよ、しかも俺、今短パンだから生で……。


そんなに騒ぐ程の事じゃないんだけどさ、何となく離れたくないって言うの?


スカートの裾が、膝にちょこちょこ当たってなんだかくすぐったいって言うか…。



「あぁ~もぉーー上手くいかないぃ~~」



ドサッ、ムニッ



なっ!!! なにいいいいいいいいっ!?


今の擬音、なんだと思いますか皆さん!?


この現状―――どう説明すればいいんだ!?


いやいや説明は簡単だ……こいつ自然に俺の膝の上に座ったんですけど!?


え、え、嘘でしょ!? 何者!? こいつ!?


まさに『ムニッ』ですよ、『ムニッ』!!


しかもだな、話したと思うが今は短パンなんですよ。


じ…直に…白河の太ももと、お尻の柔らかい感触が……。


や、ヤバすぎるだろ……。


あと……パンティーの布が擦れる感じが……す、素晴らしい……。


俺が『時を止められた』かの如く固まっていると、再びもぞもぞと動き出す白河。


も、もう勘弁してくれ……いやそう言いつつ、もっと凄いイベントを期待してしまう、ダメな俺。



「あーーーーーー!! 死んだーーーー!! うそぉ~~~やだぁ~なんでぇ―――あ、生き返った」



もぞもぞ…………



うっ!!!!



あ、ええと……なんか一回死んだみたいなんだけど、仲間がすぐに復活させたみたい。


いやそんな事はどうだっていい。


こいつ、体勢かえて更にどっぷり俺の上に座り直したもんだから……お尻が……その……股間の上なんですけど……。


しかも俺、さっき…チャック開けちゃったじゃん?


ど、どおしましょ!?


ヘ…ヘタに動けない……だって、硬くなってるんだもん♪


いやいや、そこ嬉しい場面じゃないからっ。かなりピンチで、今後の白河との関係を大きく左右する大事なイベント―――ていうか、マジやばい。なんとかバッドエンドを回避しなければ…。



「えっ、なんか凄いの出てきた! え? え? ボスってやつ!? えぇ~~うそっ!?」



グイグイ…ムニムニ…



げえええええええ!!!!!


なんかボスの登場でテンション上がって、超押し付けてくんですけどっ!!


もちろんケツだよっ、ケツ!!


や、やばいぜっ!! き、気持ちい……じゃねえっ、マジ俺殺されっかも!?


えと、説明するとさ……トランクスのさ、フロントの隙間から……たぶん…顔出しちゃってるんだよね~~。


なんつーの? 生で擦られてるってゆーか……これ、バレたら大変な事になるよな? どお思う!?


え? 擦られてる感じを楽しめって!? そんな余裕あるかっボケッ!!



「や~~やだやだやだっ!! ダメダメこっちこないでっ!! あ、あんっ……あんっ……いや……」



依然、ボス戦継続中の白河は更に大興奮。時折やばい声を織り交ぜながら、俺の股間を執拗に攻めてくる。


俺、女子高生―――いやアイドルになにされてんだ……。


状況打開策として考えたのはさ、無理やり押しのける―――でも、その瞬間に振り向かれたら俺の先っちょが見られてしまうかも……いや恥ずかしいとかじゃなくてね? もっと深刻だろ?


でもな、このまま刺激を受け続けるとさ、やばい事になりそうなんだよ……。


聡明な皆さんなら、共感していただけますよね!?


……だって俺、チェリーだもん……許してくれよ……。



俺のピンチが続き、なんの解決策も講じれないまま、遂にその時がやってきた。



「やったーーーー!! キャァ~~~~~ボス死んだよ~~~~」



恐れていたこの瞬間―――この後、正気に戻った真のボス『白河』と俺の戦いが幕を開け……



シュッ



おわっ!!


消えたよっ! あいつ消えたっ!!


た……助かった~~~マジ一戦覚悟してたんだけど……おっとそんな事してる場合じゃない。


身なりを整えないとな! 主に下半身のなっ!


急いでチャックを上げ―――



「たっだいまぁ~~~。ごめんごめんつい、興奮しちゃってどっか飛んじゃった……テヘッ♪」


「ぬわあああああああああああ!!!!!」



突然目の前に舞戻ってくるからっ!! 思わず挟んじまったじゃねえかっ!?


「痛ええええええええ…………」


その場にうずくまる俺。もちろん、隠す目的もある。しかも…食い込んじまったじゃねーかよっ!!



「あ、あれ? どうしたのかなぁ? 大丈夫ぅ?」


「…な…なんでもねえよ……」


「…あ…そ、じゃあさぁ~もうちょっと遊んでもいい?」


「ああ、好きにしろ」



結局、またゲームを始めて騒ぎだしたから、その隙に部屋を脱出。


なんとか体制を立て直すことに成功した俺は―――まあ…トイレにも行ったけど、内緒だぞ? その後いつもの硬派な俺に戻り、生温かく白河を見守っていた。



んでだな、これは余談になるんだけど……『白河パワー』は凄まじかった……。


ケツのパワーじゃねえぞ。その事はもう忘れてくれ。


こいつの可愛い声に騙され―――いや、リアルも超可愛いが―――野郎どもが寄ってたかってレアアイテムを次々に貢いできてさ、俺のキャラなのにさ。


いや~~得した得した。


しかも「真琴ちゃんに声そっくりだね!」とか始まっちゃってな、「え? 私…真琴だけど?」とか本人が言うもんだから、ゲーム内が大混乱、一同騒然。ぷぷ…マジウケるんですけど。


ま、すぐに俺と交代したけどな、フレにはブーブー文句言われて質問攻めにあったけどさ。


面白いからいいだろ。クク。


んでもって、まだ遊び足りない白河嬢には、オフラインでプレイしてもらってるってわけ。



「さあそろそろゲームは止めて、本題に入りますか」


「なぁに、急に改まって本題とかって……?」



楽しそうな白河には悪いが、一旦コントローラーを置いてもらう。



「お前さ、俺になんの用?」


勝手に不法侵入して、俺にセクハラ行為を連発しやがったんだ。いい加減、その犯罪理由を聞かせてもらおうか。


「ん? 遊びにきたんだけど?」


へ? 俺んちに? お前が? なぜに!?


大きく口を開けて呆ける俺。恐らく、ハニワみたいな顔になってるかも。


「な、なによ……その顔。お、可笑しいの? 私が遊びにきたら……」



なんだか、不機嫌だか照れてるんだか分からない顔してるけどさ~、可笑しいだろ。こんな可愛い子が無防備にも男の部屋に突然遊びにくるって。


だってさ、俺達って別に恋人でも、エロい関係でもないんだぜ?


ヘタレな俺じゃなかったら、既に食われてるっつーの。


その辺をじっくり説明してやらんといかん。



「あのな~~。だめだろ? 男子の部屋に若い女の子が遊びにきちゃさ―――」



当然とも言える男女関係の『いろは』。それを未経験ながらも、なんとか説明する俺。


ていうかお前、なんで分からないわけ!?


そんな俺の頑張りもいまいち伝わってるんだか、なんだか。



「ん~~言いたい事は解った。でもぉ~私がきて嬉しかったんでしょ?」



そりゃめちゃくちゃ嬉しいけど、面と向かって言うなっ。恥ずかしい。


ほんとこいつは、思ったことズバズバ言うんだよね。



「だから、俺が襲ったらどうすんだよ」


「ええ!? 襲うつもりなの!? 『襲わねえよっ!!』 …じゃあ平気じゃない。」



こいつ、俺が男だって意識あんまねーな。


軽くヘコむんですけど……。


その後も、いまいち噛み合わない会話が続き、話しは最初の話題に戻る。



「だからぁ~~私身体が戻ったからね、明日からまた忙しくなるの! 学校もしばらく行けないと思うし……だから遊びにきたのにぃ……」



う……そんなモジモジしながらこっち見んなよ~~。


しかし……そっか……芸能活動始まったら、会えなくなるのか……。


そりゃそうだな、俺とは所詮、住む世界が違う。


こいつはアイドル。俺は一般人でただのファンってことか……。


寂しくなるな……あ……でも、こいつも俺に会いたかったって事なのか?


どうなんだ?


白河をじっと見る。



じーーーーーーーーーー。



「な、なによ急に見つめて……」



う~む、分からん。



そんな俺の視線には、既に無関心状態の白河は、なにやらモニターを見て考えているようだ。


またゲームでもしたいのか?


そう思った俺の心とは、全く違う言葉が返ってくる――――



「あのさぁ~~お願いがあるんだけどぉ―――――」



◇◆◆◇



とまあ回想が長かったが、そのお願いとやらを聞き入れた俺は、電車に乗って―――もちろん俺だけな。3駅離れた白河のマンションまできた訳。


そして俺は白河の買い物に付き合わされた。


まあその買い物が、そのお願いだったわけだが……。


何を買ったかって? そのうち分かるよ。


で、買った物を運び込んだ―――いや量が多かったもんでな、近くの量販店だったんだが台車で運んでさ。


部屋に運び込んだ俺は、まずはその疲れを癒すべく、白河のお茶を遠慮なく待ってたのさ。


というわけで、冒頭のシーンに繋がるわけだ。いいかな?



「ありがとね。色々してもらっちゃって……。はい、お茶どうぞ」



申し訳なさそうに、お茶を出してくる白河。


なぜか、たかがお茶――(酸っぱいレモンの香りがするからレモンティーだろう)を淹れるのに、わざわざエプロンを着けている。しかもこいつの代名詞ともいえる、花柄の可愛らしいもの。


いちいち無駄な演出で俺のテンションを上げてきやがる。


紅茶をすする。……うん旨い。


しばらく無言で紅茶をすする二人……。


はあーー、そろそろやるか……。



「さて、ちょっと元気回復したし、やっかな」


「あ、ほんと? ご、ごめんね…面倒かけて…じゃ私はどうしよっかなぁ」


「それより、お前はあれを片付けてくれっ」



そう言って、そっちを見もしないで指だけ差してお願いする。


もちろんあれだ。冒頭にもあったあれだよ、洗濯物だって。


あんな物が干してあったんじゃ、俺の理性がもたん。


俺だって男なんだよ?


すぐ横にはベッドだってあんだぜ。たぶん俺じゃなければ、何度も言うが既に食われてるよ?


皆さんだったらどうよ。


とっくに事を進めてるだろ?



「……ぁ……み、見たの?」


「見たのじゃねえよ! あんなカラフルな物が視界に入らないわけねえだろっ!!」


「な――なんで君は!!…いつもいつも…私にセクハラするの!?」


「これはちげえよっ!! 俺のせいじゃねえし!! しかも今回はどう考えても逆ハラじゃねえか!?」


「……うぅ~……へんたいっ……」



「見ないでっ」と言いつつ、それを片付ける白河。


なにが「見ないで」だコノヤロー。


被害者みたいな顔しやがって。


お前に関わると、常にエロいイベントが盛り沢山なんだよっ。


俺がどんだけ楽しんだ……じゃなくて迷惑だか分かってねーな。


ま…まあいいさ、トラブルの原因は排除されたんで、やりますかね。


俺が買ってきた、数々のダンボールから中の物を取り出す。


テレビに掃除機、Ipodステーション型コンポと電子レンジ、おまけにゲーム機まである。


そう、こいつの部屋には電化製品と呼べるものは数少なく、あったとしても古い物ばかり。


今日は如月さんからもらったバイト代(大した事はまだしてない気がするが)で一気に電化製品を大人買いしたってわけ。



「嬉しいぃ~~これでやっと、掃除機でお部屋のお掃除ができるよ~~」



掃除機に頬をすりすりしている白河。


てか、お前今までどうやって部屋のカーペット掃除してたんだよ。絶対手動じゃ無理だろ。


さて、一々こいつにマジ突っ込みなんかしねえよ。


とりあえず、一番あいつじゃ無理っぽい、テレビの接続をしてやるか。


と言ってもこの部屋、光回線きてんだよね。ぶっちゃけ差すだけ。


それなのにこいつさ、「うぅ~地デジ分かんない、どのテレビが地デジなのぉ~?」とか言ってテレビコーナーでキョロキョロするし……おかげでこっちが恥ずい思いしたわっ! 全部地デジだっつーの。


あと、コンポが欲しいからってステレオ見てたらな? 「ラジカセが売ってない」とか珍妙な事口走り出して、店員さんに含み笑いされるしだな……いつの時代の人なんだよ。



「ちょ…ちょっと! なにニヤニヤしてるのよぉ~、さっきの事は忘れて! お願いだからぁ~」


「だってお前…ラジカセって……ぷぷ……」


「…や…やだぁもぉ~~。だってしょうがないでしょ!? 孤児院にはそれしかなかったんだからっ」



真っ赤になって言い訳する白河。


まあ機械の弱い女の子ってちょっと可愛いけどな。こいつの場合、度が過ぎる。


見てくれ、このテレビ。


すげーぞ、14型アナログブラウン管。しかもリモコン無し。


嘘だろ? どっから拾ってきたの?


骨董品屋にでも持ってくか、これ。


あーでもな、それ言うと怒るんだよ。


てか怒られた。


入れ替えた電化製品は、孤児院に持って行くんだと。優しいじゃないか。


でもな、もうすぐ放送終了しちゃうんだぞ? 分かってる?


持ってってやろーか? って聞いたんだけどさ、「テレポートで持って行くからいい」だってさ。


こいつ、自分以外もテレポート出来んのか? まあいいけど。


おっと回想してる場合じゃねえな、テレビを出す……液晶20インチ型。



「お前、ほんとにこれで良かったのか? もうちょっと大きくても……」


「いいってそれで…充分だもん。部屋狭いしぃ……わぁおっきいい♪ 楽しみだなぁテレビ観るの」



へいへい、なかなか安上がりな女ですな~~。金ならもっと持ってんだろうに。


それよりも、


「『わぁ~おっきいい』ってもっかい言ってくれる?」


「え? なんで? 」


「…や、やっぱいい…」



でもな、なんとか言い聞かせてハードディスク内蔵型のテレビにしたから。


だってさ、もう無理でしょ。VHSビデオデッキ。


はあ~~録画の仕方まで、教えなきゃダメなんだろうか……。



さっさとテレビをセットする。BCASカードとか、絶対説明しても無駄だから省略。


案の定、スィッチを入れたとたん大喜びの白河。


「うはっ♪ 凄いきれいぃ~~ありがとぉ~神崎君っ!!」


こんなんでテンションアゲアゲだかんね。


庶民的つーか、なんつーか。これが人気の秘訣だったりして。



んでもって、これな、ゲーム機。


これはさ「神崎君とおんなじゲームがしたいっ」って言うからさ、買ってきたんだけど……。


結構高かったのに、あいつ迷わず買ってたな。


まいっか。セッティングしてやるとすっか。


それから、丁寧に一通りの操作やらなにやら説明してやる。


いや簡単に言ったけど、説明に大体90分かかったからね。


俺の苦労と努力を良く分かってくれ。


こんな事、下心がなきゃ……ゴホン……え~と可愛い白河じゃなきゃしねーぞ!?


とりあえずやる事終ってまったりモードの俺に、またお茶を出してくれる白河。


そして満面の笑みで、



「ほんと助かったぁ~~神崎君って、やっぱり優しいよねっ♪」



ドキッ!!



物凄い可愛い笑顔なんですけどっ。しかも「優しい」とか言われちった……。


もしかしてフラグ立ったんでしょうか……?


こいつは超難敵キャラ『アイドル白河真琴』だぞ!?


もしギャルゲーだったとしても、落とすの難しいよ?


隣に住んでる、幼馴染的なキャラとは訳が違うぜ。


いや実際に、家の隣にそんな子いねーから! 唯一いるのは義妹だけだかんな。


こ…ここはもしかして、雰囲気作ればキスぐらいできっかも……ドキドキ。


女の子に優しい言われて、完全に俺舞い上がってんな。


そうだ…まて、早まるな。


とりあえず、探り入れてみようぜ。



「あのさー白河。ちょっと聞いていい?」


「うん? なぁに?」



……う……目を反らしてたんで気付かなかったけど、こいつさ……ベッドに腰掛けつつ、片足抱えてやがる。


そんな事したら、み…見えるでしょ、普通に。


一応片手で押さえてるから、本人は見えてないって思ってるだろうけど……。


ちょうど見えてんだよ、土手の丸みを帯びた部分が……。


みんなの為に説明するが、薄いピンクで淵にフリルの着いた、いかにも可愛い系の女の子が履きそうなパンティーな。



「ねぇ、聞きたい事ってなぁに?」


「あ、いやちょっと待て。今、とても大事なとこなんだ」


「ん、そうなの? 意味わかんない」



そう言って身体を前後に揺らす白河……。


ぬおっ!! こ……これは――その土手の部分がなんだかプニプニしてるような……。


や…柔らかそうだな……う~む、しかし、そろそろチラ見すんのも限界か…?


でも気になるだろ?


あの土手の部分は、パンツのなかでもパンツofパンツ。いやtheパンツ。


最近、写真集とか見てるからさ、余計になんつーか…あいつの全てが見たいってゆーか……。



ダメだ!! 押し倒してえええええええええ!!!

 


……でも我慢する俺。いや、実際…押し倒す勇気がない、ダメダメ男再び。


はあ~、聞いてみっか……。



「お前さ、俺の事どう思ってんの? 俺とお前ってどういう関係?」



直球で聞いてみた。どうだ俺の男らしさ。


だってさ、思い返せば心臓マッサージして命救った事もあるし、この前だって一応デートしたしさ……恋人握りもあいつの方からだったしな。


ひょっとして俺いけんじゃね? 的な?



「あ…あはははは。な、なによ突然……わ、私は……その…えと…と…友達?」



……う!!……


い、いやその……こいつ友達って言ってんだけど、物凄い照れてんだよ。


顔真っ赤にして、俯き加減で上目使いして……。



「ね、ねぇ……友達でしょ?」



うっ!!!!! か――可愛い……しかも、遂に両足抱えちまったよ!!!


こ、コノヤロー……そんな照れた表情で、パンツ全開にしやがって……!!


しかも「友達でしょ?」とか言われたら、手ぇ出せねえだろがっ!!!



皆さんならどうしますか?



はあ~しかしなんか言った方がいいな。


う~む。



「あのな? 俺は……その…友達以上だから……」



精一杯の告白をしたつもりだった。


白河も、猫目を真ん丸にしてパチクリしている。



「や、やだぁ~……恥ずかしいなぁ君ってぇ……いきなり親友・・だなんて……わ、私も好きだから……彩乃ちゃんも含めて、神崎君のこと……」



「キャッ」と膝で顔を隠す白河……そんなに照れて言われた関係が親友だなんて……一番恋愛に発展しないパターンのような気がする……。


俺、泣いていいですかね?




そんなこんなで、まだまだピンク的な展開には程遠い俺達だった……




第14話へ続く……

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