第13話 真琴の逆ハラと地デジ化
小さいテーブルの前で、彼女がお茶を淹れてくるのを待っている。
何だか緊張して硬直状態の俺は、その真っ白い、小さいながらもセンスの良いテーブルを眺める。
丸みのあるデザインで、若い女の子の部屋にピッタリな感じだ。
周りを見渡すと―――まあ見渡す程の広さじゃないが、
白い3段の本棚があり、そこには少女漫画がびっしり―――で、俺の後ろにはベッドがあり、
ピンクのシーツにピンクの掛け布団、そしてピンクの枕とピンクの大きなクマのぬいぐるみ……文字通りピンク一色だった。
「居辛い……」
正座のまんま固まってる俺は、俯いて落ち着きを取り戻そうとするが、ピンク色のカーペットを見てさらに冷や汗まで噴出してしまう。
安らぎを求め、視線を宙に彷徨わせてみるが、その先―――窓際に掛けてある洗濯物が目に入ってしまい、彼女の無防備さにゲンナリとする。
「まあいい加減慣れてきたげどさ……なんでパンティーが何枚も干してあんだよ……」
迂闊にそっち見れねーだろうが。
奥からは、コポコポとお湯を注ぐ音が聞こえて―――「お砂糖入れる人~?」と彼女が返事を待っている。
「いらねー」
と速攻で硬派ぶって返答する俺だが、こんな女の子っぽい部屋で可愛い彼女と二人きりだなんて、さすがに理性が吹っ飛ばないかそっちの方が心配だ―――いや深刻だぞ、これは。
「ごめん待ったぁ~?」
お盆に乗せた食器を片手に、ニコニコしながらやってくる―――白河。
その身体は、既に完全体へと成長を遂げていた。
まだロリ河だったら、こんなに焦る必要もなかったんだが……。
そう。俺はなにを隠そう、白河の自宅マンションへと招待されたのだった。
突然の場面で、みなさんも混乱されていると思う。
では……時間を遡ることにしよう……
◇◆◆◇
遊園地に遊びに行ってから、二日が経った日の午後―――
俺は自分の部屋でまったりと―――ていうか引きこもっていた。
あれから…白河には会っていないし、実は俺、学校にすら行ってないんだよ。
て言うのもさ、身体が縮んだ事が結構突っ込まれちまってだな、苦し紛れに「ちょっとやっかいな病気でな」って話しで誤魔化しちまったのが原因。
「そりゃどんな病気なんだ」と色々聞かれたよ?
そういう人の不幸な話しの匂いを嗅ぎつけて、わらわらと集まってくんだよ、女子どもが……。
ちくしょ~こういう時だけよー。
だけど具体的になんか説明出来ないし、とりあえず「テロメアが関係する珍しい病気」って事でお茶を濁して逃げ出したって訳だ。
だから学校行き辛くってさー。
まあそれは別にいいんだけど、如月さんから電話かかってきてな、
「しばらく来なくても良い。いや、むしろ来るな」
なんて突っぱねられたもんだから、俺が唯一白河と楽しく過ごせる場所にも行けないってわけ。
「あーあ~、暇だな~。ゲームでもやっかなー」
もちろん彩乃もまだ部活中だろうし、家には誰もいないが、一人呟きX箱の電源を入れる。
机の上にある20インチワイドの――――テレビ兼パソコン用モニターの電源も当然オン。
いつものソフト、『ファンタシーモンスター』をセットしてゴー。
タイトルが現れ、すぐにオンライン接続する。
画面には、オンライン中のフレンドの名前が、次々に表示される。
「TK…ババ…ケンガイ…」
まだ3時だってのに、結構いるもんだ。
なにやってんだこいつら……まあネット限定の付き合いだから、お互い学生なのか社会人なのか、それともニートなのか知る由も無いし、知る必要も無い。
ゲームの中で楽しくやれれば、それで充分なんだよ。
中には、知り合った同士でオフ会だのコンパだのして、リアルフレになったり、恋人になったりする奴もいるみてーだが、俺はそんなものに興味は無い。
ただ、「ゲームを楽しみたい」だけ。
しかし……立ち上げたものの、いまいち気乗りしない。
と言うか、やる気が出ない。
「はあ~、白河に会いてーな……ちくしょー」
この前の一件―――ゴンドラでのあいつの生い立ち……そして、軽く流されちまったが、俺はあいつに告白した―――。
そりゃもう、白河の事ばっかり考えてるんですよ。
ええ、一昨日の晩から……。
俺はおもむろに一番下の引き出しの奥から、さらに色々物が詰まったさらに下―――ビニールに包装された物を取り出した。
一応隠してるつもりの写真集……『白河真琴15歳』
なんとこれはだな、あいつがアイドルデビューする前に出版された、貴重なファースト写真集なのだよ……ふっふっふ……。
先日、古本屋で見つけたんだが、実はプレミアがついててな?
なんと8000円もしたんだが、懐の温かさにものを言わせて大人買いしちゃったんだよね~~♪
ペラ~~っと水着のページを開く……ちょっと布の範囲が広いのが気に入らないけど、ビキニ姿の白河が、可愛く砂浜に座ってニッコリと手を振っている写真……。
「堪んね~~。」
今より若干小さいその特盛りは、それでも大盛りサイズ。
俺は思わずニヤケてしまい、砲台に血が注がれるのが分かる……。
どうせ妹もいない事だし、この切ない気持ちを形―――いや液状にして発散させちまおうか。
色々と理由をつけつつ、ズボンのチャックを開けたその時―――唐突に背後から声を掛けられた。
「ふ~~ん…男の子ってぇ、ほんとにそういうの見てニヤニヤするんだね」
どっきーーーーーーーーーん!!!!!
突然、女の子に話し掛けられ慌てて振り向くと―――そこには白河が。
そこというよりも、すぐ斜め後ろから写真集を覗きこまれている……。
「あ……あの……そのさ、えっと…これはだな……」
咄嗟に言い訳を考えるが、あまりに突然すぎて何も浮かばない。
対する白河は、呆ける俺を見て「やっほ♪」とニッコリ手を振っている……。
その姿が、写真集の砂浜でのスナップとフィードバックして、俺はさらに動揺させられた。
「その写真集を持ってるなんて、君ってかなりコアなファンなんだねっ。知人として嬉しいぞ、うん。でもそんなニヤニヤされると、ちょっと恥ずかしいじゃないさぁ~~」
両腕を腰に当てて胸を張る、えっへんなポーズを取る白河は、元の姿に戻っていた。
そのパツンパツンに張ったシャツの胸元……ミニスカートから伸びる肉感的な太もも―――それはまさに完全体。
つ…遂に戻ってきた……俺のEの70……。
いやいや、そうじゃないだろっ!!
若干トリップ状態だった俺は我に返り、一息に告げる。
「ちょっとまて!! お前……いったい、いつからここに居たっ!?」
「え? う~~ん確かぁ~『白河に会いてーな……ちくしょー』からっだったかな?……あ……じゃなかった、『ゲームでもやっかなー』のあたりからだよ」
なんだって!?
そんな前からかよっ!!
しかも、なに当たり前みたいな顔で言ってんだ、このアマっ!!
一番見られたくない奴に写真集の事、バレちまったじゃねーかっ!!!
しかも……危ねえ~~。もうちょっとで本気でやばい行為を見られるとこだったじゃね~か……。
危機一髪とはまさにこの事……。
呆けて言葉が出ない俺に構わず、白河がしゃべり出す。
「そんなにさぁ~、必死に写真集見ちゃう程、私に会いたかったの?」
「バ―――バカ言ってんじゃねえよっ……お、おまっ―――コ、コノヤロー……」
ク、クソ~~さすがに一部始終見られてたら、言い訳出来ねえじゃねーか!!
な、なんなんだ……この敗北感……。
「素直じゃないなぁ君はぁ――――」
つんつんと肩を突かれる。可愛い顔してんじゃねーぞコノヤロー。
「――――そんなに私の事好きだったなんてさぁ~~」
うう……一体なんだよ!? この辱め!!! なんでこいつ、こんなにニヤニヤしてるわけ!?
しかも、「私がきて嬉しい?」とか言って「うりうり~~」って肘で小突いてくんだけど……。
「神崎君、そんな事より――――」
そんな事で片付けてんじゃねーよ!! この不法侵入者!!
「――――早くそのゲームやってよぉ~~」
「へ?」
「ん~~なんか面白そう~~ねぇねぇ~~」
人差し指を口元に当てながら、空いた手で俺の服を「ねぇねぇ」引っ張る白河。
栗色のサラサラヘアーからは、甘い柑橘系の匂いが漂ってくる―――程の至近距離。
想像してみて下さい……この破壊力バツグンのおねだりポーズ……。
大体だな、顔が近いんだって……近視の彩乃じゃあるまいし……なんなのこいつ?
こうやってさ、大概の男が誘惑されそうな仕草を普通に素でやるんですよ、この子は。
ゲームどころじゃねーよ、その姿に釘付けだっちゅーの……俺は……。
「ねぇ~~聞いてるぅ?」
いかんいかん、トリップするとこだった。
「おういいぜ、やるから見てろ」
とりあえず、ドッキドキハートを隠しつつ、ぶっきら棒に答えゲームを始める。
どうすっかな……とりあえず、フレンドのステージにでも乱入してみっか……。
俺はフレンド『ケンガイ』のステージを選ぶと、既に何人かでプレイしてるようで、その他にもキャラ名が表示される……。
「知らねー奴いるけど、まいっか」
そいつらに混じって戦闘に参加、モンスターをバシバシと倒しまくる。
横では白河が、興味津々のご様子。
「うわぁ~あのキャラ可愛い~~。わっ! 痛そう…死んだの? キャッ! なに今の爆発!?」
んで、攻撃や魔法を打つ度に説明を求めてくるもんだから、一度手を止めて説明タイムとしよう。
着けていないヘッドセットの奥から、なにやらフレの声―――「なんかしゃべれよお前~~」的なが聞こえるが、まあいいだろ。
みなさんは知ってると思うが、一応説明しておく。
このゲームはオンラインRPGだ。
ネット上の友達と協力して、モンスターを倒していくゲーム。
当然、仲間のキャラはネットの向こう側の人―――いわゆるリアルな人間同士で操作してるってこと。
だから、一人用のRPGよりも臨場感たっぷりだし、色々話し合って作戦も練られる。
そりゃもう奥が深くて止められない―――。
てなわけで、世の中の廃人を増やしてしまう、ダメな遊びなのです。
「―――ってゲームなんだけど、解った?」
「う、うん……てことはぁ、あの人も、あっちの人も、誰かが動かしてるんでしょ……」
「凄いねネットゲームって」と感心顔で画面に張り付いているアイドル白河。
そんな彼女にコントローラーを手渡し―――
「やってみれば?」
と興味本位で進めてみる。
たぶん、ゲームでも天然っぷりを発揮して笑わしてくれるに違いない。
「え? いいの?」と言いつつ、すんなりコントローラーを受け取り、「ど、どうしよ」と固まる白河。
俺はヘッドセットをもう一個取り出し、ハブを繋いでセットする。
簡単に操作を教えて、白河にもヘッドセットを着けさせると―――
「わっ! なんか声が聞こえるぅ~~な、なに!? なにこれ、神崎君っ」
おいおい、実名を言うんじゃねー。
ネット上で本名言っちゃだめでしょ!
「な、なんだ今の可愛い声!」
「女の子の声だぞっ」
「キングの声じゃねーぞ」
俺の本名暴露は軽くスルーされ、白河の声に過剰に反応する、野郎ども。
あ、ちなみに『キング』って俺の事な。
「わりいわりい~。今ちょっと知り合いの子がやってっからさ、初心者なんでフォロー頼む」
そう告げて、また元の傍観スタイルへと戻る。
初心者でいきなり大丈夫かって?
仲間が居るからたぶん平気だ。
恐らく、絶対死なないと思う。まあ見てな。
白河には必殺技のボタンだけ、教えてあるから。
「え? え? どうすればいいの? や、やだ~~死んじゃう!!」
「死んじゃう」とか言いつつ、必殺技連発でガンガンとモンスターを倒しまくってる白河。
まあHPとSPの事は教えてないから、常に死と隣り合わせ&超燃費悪い攻撃を繰り返してるけどな。
でも大丈夫! 女の子の声に騙されて、野郎どもが一所懸命フォローしてくれるからっ。
この協力プレイこそが、オンラインゲーの一番の魅力――である。
「き、君、だだ大丈夫かい?」
「僕の魔法で回復してあげるからねっ」
「あ……あの……フレンド登録、お…お願いしてもいいですか?」
野郎どもから執拗に声を掛けられているが、操作に夢中で一切ガン無視の白河。ナイスだぞ。
しかも、なんか物凄い真剣な顔で「いけっ、このっ……あ~んいやぁ~だぁ~~」と無駄に可愛い声を発しながら、身体ごと動かしている。無駄な動きの多いやつだな……。
そして―――
「あ~~んもぉ~~やりづらいぃ~~ちょっとどいてっ」
そう言って白河は、椅子に座っている俺と机との間に割って入ってくる。
なんだよ、狭いとこ入ってきやがって……。
後ろがベッドでつかえてるから、俺がどけば良かったんだが……こいつが前で身体を動かす度に、スカートがヒラヒラしてさ、別に見えるわけじゃないんだけど……その……こいつが足を曲げたりすると、たまに裏ももが俺の膝に当たるんだよ、しかも俺、今短パンだから生で……。
そんなに騒ぐ程の事じゃないんだけどさ、何となく離れたくないって言うの?
スカートの裾が、膝にちょこちょこ当たってなんだかくすぐったいって言うか…。
「あぁ~もぉーー上手くいかないぃ~~」
ドサッ、ムニッ
なっ!!! なにいいいいいいいいっ!?
今の擬音、なんだと思いますか皆さん!?
この現状―――どう説明すればいいんだ!?
いやいや説明は簡単だ……こいつ自然に俺の膝の上に座ったんですけど!?
え、え、嘘でしょ!? 何者!? こいつ!?
まさに『ムニッ』ですよ、『ムニッ』!!
しかもだな、話したと思うが今は短パンなんですよ。
じ…直に…白河の太ももと、お尻の柔らかい感触が……。
や、ヤバすぎるだろ……。
あと……パンティーの布が擦れる感じが……す、素晴らしい……。
俺が『時を止められた』かの如く固まっていると、再びもぞもぞと動き出す白河。
も、もう勘弁してくれ……いやそう言いつつ、もっと凄いイベントを期待してしまう、ダメな俺。
「あーーーーーー!! 死んだーーーー!! うそぉ~~~やだぁ~なんでぇ―――あ、生き返った」
もぞもぞ…………
うっ!!!!
あ、ええと……なんか一回死んだみたいなんだけど、仲間がすぐに復活させたみたい。
いやそんな事はどうだっていい。
こいつ、体勢かえて更にどっぷり俺の上に座り直したもんだから……お尻が……その……股間の上なんですけど……。
しかも俺、さっき…チャック開けちゃったじゃん?
ど、どおしましょ!?
ヘ…ヘタに動けない……だって、硬くなってるんだもん♪
いやいや、そこ嬉しい場面じゃないからっ。かなりピンチで、今後の白河との関係を大きく左右する大事なイベント―――ていうか、マジやばい。なんとかバッドエンドを回避しなければ…。
「えっ、なんか凄いの出てきた! え? え? ボスってやつ!? えぇ~~うそっ!?」
グイグイ…ムニムニ…
げえええええええ!!!!!
なんかボスの登場でテンション上がって、超押し付けてくんですけどっ!!
もちろんケツだよっ、ケツ!!
や、やばいぜっ!! き、気持ちい……じゃねえっ、マジ俺殺されっかも!?
えと、説明するとさ……トランクスのさ、フロントの隙間から……たぶん…顔出しちゃってるんだよね~~。
なんつーの? 生で擦られてるってゆーか……これ、バレたら大変な事になるよな? どお思う!?
え? 擦られてる感じを楽しめって!? そんな余裕あるかっボケッ!!
「や~~やだやだやだっ!! ダメダメこっちこないでっ!! あ、あんっ……あんっ……いや……」
依然、ボス戦継続中の白河は更に大興奮。時折やばい声を織り交ぜながら、俺の股間を執拗に攻めてくる。
俺、女子高生―――いやアイドルになにされてんだ……。
状況打開策として考えたのはさ、無理やり押しのける―――でも、その瞬間に振り向かれたら俺の先っちょが見られてしまうかも……いや恥ずかしいとかじゃなくてね? もっと深刻だろ?
でもな、このまま刺激を受け続けるとさ、やばい事になりそうなんだよ……。
聡明な皆さんなら、共感していただけますよね!?
……だって俺、チェリーだもん……許してくれよ……。
俺のピンチが続き、なんの解決策も講じれないまま、遂にその時がやってきた。
「やったーーーー!! キャァ~~~~~ボス死んだよ~~~~」
恐れていたこの瞬間―――この後、正気に戻った真のボス『白河』と俺の戦いが幕を開け……
シュッ
おわっ!!
消えたよっ! あいつ消えたっ!!
た……助かった~~~マジ一戦覚悟してたんだけど……おっとそんな事してる場合じゃない。
身なりを整えないとな! 主に下半身のなっ!
急いでチャックを上げ―――
「たっだいまぁ~~~。ごめんごめんつい、興奮しちゃってどっか飛んじゃった……テヘッ♪」
「ぬわあああああああああああ!!!!!」
突然目の前に舞戻ってくるからっ!! 思わず挟んじまったじゃねえかっ!?
「痛ええええええええ…………」
その場にうずくまる俺。もちろん、隠す目的もある。しかも…食い込んじまったじゃねーかよっ!!
「あ、あれ? どうしたのかなぁ? 大丈夫ぅ?」
「…な…なんでもねえよ……」
「…あ…そ、じゃあさぁ~もうちょっと遊んでもいい?」
「ああ、好きにしろ」
結局、またゲームを始めて騒ぎだしたから、その隙に部屋を脱出。
なんとか体制を立て直すことに成功した俺は―――まあ…トイレにも行ったけど、内緒だぞ? その後いつもの硬派な俺に戻り、生温かく白河を見守っていた。
んでだな、これは余談になるんだけど……『白河パワー』は凄まじかった……。
ケツのパワーじゃねえぞ。その事はもう忘れてくれ。
こいつの可愛い声に騙され―――いや、リアルも超可愛いが―――野郎どもが寄って集ってレアアイテムを次々に貢いできてさ、俺のキャラなのにさ。
いや~~得した得した。
しかも「真琴ちゃんに声そっくりだね!」とか始まっちゃってな、「え? 私…真琴だけど?」とか本人が言うもんだから、ゲーム内が大混乱、一同騒然。ぷぷ…マジウケるんですけど。
ま、すぐに俺と交代したけどな、フレにはブーブー文句言われて質問攻めにあったけどさ。
面白いからいいだろ。クク。
んでもって、まだ遊び足りない白河嬢には、オフラインでプレイしてもらってるってわけ。
「さあそろそろゲームは止めて、本題に入りますか」
「なぁに、急に改まって本題とかって……?」
楽しそうな白河には悪いが、一旦コントローラーを置いてもらう。
「お前さ、俺になんの用?」
勝手に不法侵入して、俺にセクハラ行為を連発しやがったんだ。いい加減、その犯罪理由を聞かせてもらおうか。
「ん? 遊びにきたんだけど?」
へ? 俺んちに? お前が? なぜに!?
大きく口を開けて呆ける俺。恐らく、ハニワみたいな顔になってるかも。
「な、なによ……その顔。お、可笑しいの? 私が遊びにきたら……」
なんだか、不機嫌だか照れてるんだか分からない顔してるけどさ~、可笑しいだろ。こんな可愛い子が無防備にも男の部屋に突然遊びにくるって。
だってさ、俺達って別に恋人でも、エロい関係でもないんだぜ?
ヘタレな俺じゃなかったら、既に食われてるっつーの。
その辺をじっくり説明してやらんといかん。
「あのな~~。だめだろ? 男子の部屋に若い女の子が遊びにきちゃさ―――」
当然とも言える男女関係の『いろは』。それを未経験ながらも、なんとか説明する俺。
ていうかお前、なんで分からないわけ!?
そんな俺の頑張りもいまいち伝わってるんだか、なんだか。
「ん~~言いたい事は解った。でもぉ~私がきて嬉しかったんでしょ?」
そりゃめちゃくちゃ嬉しいけど、面と向かって言うなっ。恥ずかしい。
ほんとこいつは、思ったことズバズバ言うんだよね。
「だから、俺が襲ったらどうすんだよ」
「ええ!? 襲うつもりなの!? 『襲わねえよっ!!』 …じゃあ平気じゃない。」
こいつ、俺が男だって意識あんまねーな。
軽くヘコむんですけど……。
その後も、いまいち噛み合わない会話が続き、話しは最初の話題に戻る。
「だからぁ~~私身体が戻ったからね、明日からまた忙しくなるの! 学校もしばらく行けないと思うし……だから遊びにきたのにぃ……」
う……そんなモジモジしながらこっち見んなよ~~。
しかし……そっか……芸能活動始まったら、会えなくなるのか……。
そりゃそうだな、俺とは所詮、住む世界が違う。
こいつはアイドル。俺は一般人でただのファンってことか……。
寂しくなるな……あ……でも、こいつも俺に会いたかったって事なのか?
どうなんだ?
白河をじっと見る。
じーーーーーーーーーー。
「な、なによ急に見つめて……」
う~む、分からん。
そんな俺の視線には、既に無関心状態の白河は、なにやらモニターを見て考えているようだ。
またゲームでもしたいのか?
そう思った俺の心とは、全く違う言葉が返ってくる――――
「あのさぁ~~お願いがあるんだけどぉ―――――」
◇◆◆◇
とまあ回想が長かったが、そのお願いとやらを聞き入れた俺は、電車に乗って―――もちろん俺だけな。3駅離れた白河のマンションまできた訳。
そして俺は白河の買い物に付き合わされた。
まあその買い物が、そのお願いだったわけだが……。
何を買ったかって? そのうち分かるよ。
で、買った物を運び込んだ―――いや量が多かったもんでな、近くの量販店だったんだが台車で運んでさ。
部屋に運び込んだ俺は、まずはその疲れを癒すべく、白河のお茶を遠慮なく待ってたのさ。
というわけで、冒頭のシーンに繋がるわけだ。いいかな?
「ありがとね。色々してもらっちゃって……。はい、お茶どうぞ」
申し訳なさそうに、お茶を出してくる白河。
なぜか、たかがお茶――(酸っぱいレモンの香りがするからレモンティーだろう)を淹れるのに、わざわざエプロンを着けている。しかもこいつの代名詞ともいえる、花柄の可愛らしいもの。
いちいち無駄な演出で俺のテンションを上げてきやがる。
紅茶をすする。……うん旨い。
しばらく無言で紅茶をすする二人……。
はあーー、そろそろやるか……。
「さて、ちょっと元気回復したし、やっかな」
「あ、ほんと? ご、ごめんね…面倒かけて…じゃ私はどうしよっかなぁ」
「それより、お前はあれを片付けてくれっ」
そう言って、そっちを見もしないで指だけ差してお願いする。
もちろんあれだ。冒頭にもあったあれだよ、洗濯物だって。
あんな物が干してあったんじゃ、俺の理性がもたん。
俺だって男なんだよ?
すぐ横にはベッドだってあんだぜ。たぶん俺じゃなければ、何度も言うが既に食われてるよ?
皆さんだったらどうよ。
とっくに事を進めてるだろ?
「……ぁ……み、見たの?」
「見たのじゃねえよ! あんなカラフルな物が視界に入らないわけねえだろっ!!」
「な――なんで君は!!…いつもいつも…私にセクハラするの!?」
「これはちげえよっ!! 俺のせいじゃねえし!! しかも今回はどう考えても逆ハラじゃねえか!?」
「……うぅ~……へんたいっ……」
「見ないでっ」と言いつつ、それを片付ける白河。
なにが「見ないで」だコノヤロー。
被害者みたいな顔しやがって。
お前に関わると、常にエロいイベントが盛り沢山なんだよっ。
俺がどんだけ楽しんだ……じゃなくて迷惑だか分かってねーな。
ま…まあいいさ、トラブルの原因は排除されたんで、やりますかね。
俺が買ってきた、数々のダンボールから中の物を取り出す。
テレビに掃除機、Ipodステーション型コンポと電子レンジ、おまけにゲーム機まである。
そう、こいつの部屋には電化製品と呼べるものは数少なく、あったとしても古い物ばかり。
今日は如月さんからもらったバイト代(大した事はまだしてない気がするが)で一気に電化製品を大人買いしたってわけ。
「嬉しいぃ~~これでやっと、掃除機でお部屋のお掃除ができるよ~~」
掃除機に頬をすりすりしている白河。
てか、お前今までどうやって部屋のカーペット掃除してたんだよ。絶対手動じゃ無理だろ。
さて、一々こいつにマジ突っ込みなんかしねえよ。
とりあえず、一番あいつじゃ無理っぽい、テレビの接続をしてやるか。
と言ってもこの部屋、光回線きてんだよね。ぶっちゃけ差すだけ。
それなのにこいつさ、「うぅ~地デジ分かんない、どのテレビが地デジなのぉ~?」とか言ってテレビコーナーでキョロキョロするし……おかげでこっちが恥ずい思いしたわっ! 全部地デジだっつーの。
あと、コンポが欲しいからってステレオ見てたらな? 「ラジカセが売ってない」とか珍妙な事口走り出して、店員さんに含み笑いされるしだな……いつの時代の人なんだよ。
「ちょ…ちょっと! なにニヤニヤしてるのよぉ~、さっきの事は忘れて! お願いだからぁ~」
「だってお前…ラジカセって……ぷぷ……」
「…や…やだぁもぉ~~。だってしょうがないでしょ!? 孤児院にはそれしかなかったんだからっ」
真っ赤になって言い訳する白河。
まあ機械の弱い女の子ってちょっと可愛いけどな。こいつの場合、度が過ぎる。
見てくれ、このテレビ。
すげーぞ、14型アナログブラウン管。しかもリモコン無し。
嘘だろ? どっから拾ってきたの?
骨董品屋にでも持ってくか、これ。
あーでもな、それ言うと怒るんだよ。
てか怒られた。
入れ替えた電化製品は、孤児院に持って行くんだと。優しいじゃないか。
でもな、もうすぐ放送終了しちゃうんだぞ? 分かってる?
持ってってやろーか? って聞いたんだけどさ、「テレポートで持って行くからいい」だってさ。
こいつ、自分以外もテレポート出来んのか? まあいいけど。
おっと回想してる場合じゃねえな、テレビを出す……液晶20インチ型。
「お前、ほんとにこれで良かったのか? もうちょっと大きくても……」
「いいってそれで…充分だもん。部屋狭いしぃ……わぁおっきいい♪ 楽しみだなぁテレビ観るの」
へいへい、なかなか安上がりな女ですな~~。金ならもっと持ってんだろうに。
それよりも、
「『わぁ~おっきいい』ってもっかい言ってくれる?」
「え? なんで? 」
「…や、やっぱいい…」
でもな、なんとか言い聞かせてハードディスク内蔵型のテレビにしたから。
だってさ、もう無理でしょ。VHSビデオデッキ。
はあ~~録画の仕方まで、教えなきゃダメなんだろうか……。
さっさとテレビをセットする。BCASカードとか、絶対説明しても無駄だから省略。
案の定、スィッチを入れたとたん大喜びの白河。
「うはっ♪ 凄いきれいぃ~~ありがとぉ~神崎君っ!!」
こんなんでテンションアゲアゲだかんね。
庶民的つーか、なんつーか。これが人気の秘訣だったりして。
んでもって、これな、ゲーム機。
これはさ「神崎君とおんなじゲームがしたいっ」って言うからさ、買ってきたんだけど……。
結構高かったのに、あいつ迷わず買ってたな。
まいっか。セッティングしてやるとすっか。
それから、丁寧に一通りの操作やらなにやら説明してやる。
いや簡単に言ったけど、説明に大体90分かかったからね。
俺の苦労と努力を良く分かってくれ。
こんな事、下心がなきゃ……ゴホン……え~と可愛い白河じゃなきゃしねーぞ!?
とりあえずやる事終ってまったりモードの俺に、またお茶を出してくれる白河。
そして満面の笑みで、
「ほんと助かったぁ~~神崎君って、やっぱり優しいよねっ♪」
ドキッ!!
物凄い可愛い笑顔なんですけどっ。しかも「優しい」とか言われちった……。
もしかしてフラグ立ったんでしょうか……?
こいつは超難敵キャラ『アイドル白河真琴』だぞ!?
もしギャルゲーだったとしても、落とすの難しいよ?
隣に住んでる、幼馴染的なキャラとは訳が違うぜ。
いや実際に、家の隣にそんな子いねーから! 唯一いるのは義妹だけだかんな。
こ…ここはもしかして、雰囲気作ればキスぐらいできっかも……ドキドキ。
女の子に優しい言われて、完全に俺舞い上がってんな。
そうだ…まて、早まるな。
とりあえず、探り入れてみようぜ。
「あのさー白河。ちょっと聞いていい?」
「うん? なぁに?」
……う……目を反らしてたんで気付かなかったけど、こいつさ……ベッドに腰掛けつつ、片足抱えてやがる。
そんな事したら、み…見えるでしょ、普通に。
一応片手で押さえてるから、本人は見えてないって思ってるだろうけど……。
ちょうど見えてんだよ、土手の丸みを帯びた部分が……。
みんなの為に説明するが、薄いピンクで淵にフリルの着いた、いかにも可愛い系の女の子が履きそうなパンティーな。
「ねぇ、聞きたい事ってなぁに?」
「あ、いやちょっと待て。今、とても大事なとこなんだ」
「ん、そうなの? 意味わかんない」
そう言って身体を前後に揺らす白河……。
ぬおっ!! こ……これは――その土手の部分がなんだかプニプニしてるような……。
や…柔らかそうだな……う~む、しかし、そろそろチラ見すんのも限界か…?
でも気になるだろ?
あの土手の部分は、パンツのなかでもパンツofパンツ。いやtheパンツ。
最近、写真集とか見てるからさ、余計になんつーか…あいつの全てが見たいってゆーか……。
ダメだ!! 押し倒してえええええええええ!!!
……でも我慢する俺。いや、実際…押し倒す勇気がない、ダメダメ男再び。
はあ~、聞いてみっか……。
「お前さ、俺の事どう思ってんの? 俺とお前ってどういう関係?」
直球で聞いてみた。どうだ俺の男らしさ。
だってさ、思い返せば心臓マッサージして命救った事もあるし、この前だって一応デートしたしさ……恋人握りもあいつの方からだったしな。
ひょっとして俺いけんじゃね? 的な?
「あ…あはははは。な、なによ突然……わ、私は……その…えと…と…友達?」
……う!!……
い、いやその……こいつ友達って言ってんだけど、物凄い照れてんだよ。
顔真っ赤にして、俯き加減で上目使いして……。
「ね、ねぇ……友達でしょ?」
うっ!!!!! か――可愛い……しかも、遂に両足抱えちまったよ!!!
こ、コノヤロー……そんな照れた表情で、パンツ全開にしやがって……!!
しかも「友達でしょ?」とか言われたら、手ぇ出せねえだろがっ!!!
皆さんならどうしますか?
はあ~しかしなんか言った方がいいな。
う~む。
「あのな? 俺は……その…友達以上だから……」
精一杯の告白をしたつもりだった。
白河も、猫目を真ん丸にしてパチクリしている。
「や、やだぁ~……恥ずかしいなぁ君ってぇ……いきなり親友だなんて……わ、私も好きだから……彩乃ちゃんも含めて、神崎君のこと……」
「キャッ」と膝で顔を隠す白河……そんなに照れて言われた関係が親友だなんて……一番恋愛に発展しないパターンのような気がする……。
俺、泣いていいですかね?
そんなこんなで、まだまだピンク的な展開には程遠い俺達だった……
第14話へ続く……