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カラダがどんどん改造されるわけ  作者: 739t5378
第1章 カラダが改造されるまで
15/45

第12話 休日はデート その③

「全く……遅いなあいつら」


俺は今、ベンチで一人黄昏ている。


何でかって言うとさ、思い切って彩乃に相談したんだよ、白河の事。


もちろん先端の件で。


恥ずかしかったぜ~~~ほんと。


だってさ、俺が白河の胸元覗きましたって自白したようなもんだぜ。


そりゃもう、相当な決意と覚悟で話したわけよ。


そしたら彩乃のやつ、ニヤニヤニタニタしやがってよ~~。


「ふふふ……兄さん何度も見てましたねぇ~~。しかも、トイレでなにしてたんですかぁ? しょうがないですねぇ兄さんったら」


とか言いやがってよ~~!!


トイレに駆け込んだ事情も、ほぼバレてるみたいだし……。



ぎゃあああああああ、兄の尊厳がああああああ!!



くそぉー、妹がこんな鋭いのも母さんのせいか?


まさか自室でこっそりしてる事もバレバレなんじゃ……。


ま…まあこの調子だと、隠してるエログッズはまず見つかってる可能性が高いな。


あいつ俺の部屋、三日にいっぺんは掃除してるし……。


しかも…実は…こっそり白河の写真集も買っちゃったんだよね。


いや全然エロくないんだよ? ちょっと水着があるぐらいで。


まあ…その水着で、俺の砲台はMAXだけどな。


でもさ~、エロ本よりアイドルの写真集の方が見つかるの恥ずかしくない?


特に男友達とかには、見られたくないよな~。


「お前これで抜いてんだ?」


的な目で絶対見られるだろ?


いや……妹にもそう思われてるって事か……。


ああ…もう死にたい……。



コホン―――


話しが脱線しちまったな。


要するに俺の心配―――――もちろん他の男に覗き見されないように、彩乃に頼んだってわけで。


んで、「分かりました兄さん、まかせて下さいっ」って張り切って引き受けてくれた妹は、そのまま白河を連れて土産屋さんに入って行ったんだよ。


俺も着いて行こうと思ったんだけどさ、「君は来ないでっ」と白河に突っ張られてしまい、今の黄昏た俺に辿り着くわけ。OK?


しかも聞いて驚け、なんと空は快晴。


「午後は晴れるんですっ」と言っていてた妹の勘が大的中!


ちょうど時間はお昼時、おかげで午後はこの超空いている遊園地を存分に楽しめるって寸法だ。


いや~~彩乃様様だなこりゃ。


そりゃもう、白河もテンションMAXなわけですよ。


ま、その前に先端対策してもらって飯食わねーとな・・・・・・・。



◇◆◆◇



店から出てきた白河はTシャツだった。


何だか陽気にキャアキャア言いながら出てきた二人は、明るい水色のTシャツを揃って着ていた。


そう、彩乃も全く同じ物を着ていて、いわゆるお揃いってやつ。


でな、俺にはピーンときたんだ。


彩乃の気遣いが。


恐らくこうだ――――直接指摘して白河がショゲないように、無理言ってお揃いの服を着させたんだろう。


大方、「白河さん! お揃いのシャツ着て午後は遊んじゃいましょう!!」とか言って強引に着させたんじゃないのか。


あのシャツなら、首元も開いてないし安全だろ。これで俺の気苦労も無くなる。


しかし、かなり露出が減って残念だけどな。まあしゃーない。


あれ? とすると、何でたかがTシャツ買うのに俺だけハブにされたわけ? 意味分かんないんですけど。


謎だなあ……。


ま、『女の子には秘密がいっぱいあるの』系じゃねーか、どうでもいいさ。



◇◆◆◇



「兄さん、お昼どこで食べましょうかぁ?」


「せっかくだしさぁ~、あの辺の芝生とかぁ~日が当たるとこにしようよ」



今はランチ場所を選定中。


当然、妹が弁当持参だろうから、後は快適に食べれる場所さえあればOK。


んで、白河の主張によると「晴れてるんだからお外で食べよう」という事なんだが……。


このクソ暑いのにか?


マジで太陽光線ジンジンなんですけど。


まあ白河が楽しいなら、それでいっか。



てなことで、手頃なベンチが無かった為というか、噴水が気持ち良さそうだったので、その端に3人並んで食べる事にした。


噴水のシャワシャワする音が涼しげで気持ち良い。



「じゃじゃーん! 今日は彩乃スペシャル! 特製サンドウィッチですっ」



「いっぱいありますよぉ~」と笑顔で弁当を開ける妹。


成程、みんなで摘めるようにサンドウィッチか。


さすが彩乃、考えてんな~。


中身というか、具も豪勢だ。


豚カツにタマゴやツナ、レタスにトマト。



「兄さんの好きな物いっぱい入れましたぁ~~。もちろん、白河さんも食べて下さいねっ」



いつものハイテンションでアピールする妹。


こいつの弁当は毎日食べてるからな。旨いのも知ってるし。


白河はというと、大きな弁当箱を太ももの上に置いて固まっている。


そしてこっちをチラチラ見て、何か言いたげだ。


分かり易いやつだな。


あきらかに一人分とは思えない、そのお弁当。


朝の展開からして、大方彩乃と食べようとでも思ったんだろう。


だけど彩乃から先に3人分のサンドウィッチを出されたもんだから、自分の弁当をアピールしずらくなったと……。


しかも、彩乃の腕は熟練した主婦レベルだし、


見た目からして豪華で、普通に販売してても可笑しくない位の出来だ。


全く…彩乃が持ってくるって考えなかったのか?


しょうがない、俺がきっかけ作ってやるか……。



「お、白河も弁当持ってきたのか? 俺にもくれよ」


「えっ、やだ勝手に……」



呆けて固まっている白河から、簡単に弁当を奪う。


そしてサッと蓋を開ける。


中を見ると、ぎっしりとおにぎりが詰まっていて、四人分位ありそうな量だ。


元々二人で食べる予定だったんだろうに、あきらかに量がおかしい。


さすが天然、しかも持って来るの結構重かっただろう。


でも一つ一つ丁寧にラッピングしてあるし、シャケやゴマがまぶしてあったりと、見た目は綺麗だぞ。


学園で食べた、あの『古いダンゴ風』みたいな面影は全く無いと言っていい。


きっと練習したのかもな。


なんだか普通に食べてみたくなったし、サンドウィッチだけじゃ腹持ち悪いしな。



「お、旨そうだな……貰うぞ」


「や、やだちょっと勝手に食べないでよっ」



ゴマの奴を取ってパクっといく。


うん旨い、中にも昆布が入っててなかなかだぞ。



「旨いじゃねーか」


「と……当然でしょ私が作ったんだから。べ、別にもっと食べてもいいわよ、いっぱいあるし」



ムクレて言いやがって、素直じゃねえな全く。


ま、その照れて赤い顔が可愛いけどな。



「わっ兄さん、こっちも食べて下さいよぉ~。それに彩乃も白河さんのお弁当食べたいですぅ~~」


「うん、彩乃ちゃんも食べて食べてぇ~~」



結局3人で仲良く弁当を食べ合いっこした。


いや~~旨かった。


彩乃はもちろんだけど、白河のおにぎりが良かった。


妹には悪いけど、家族以外の女の子が作った弁当だぜ?


しかも超可愛い白河の。


俺が旨い旨いって食ってたら、「そ、そんなに美味しい?」とか言って心配そうに顔を覗き込んできてさ~~。


「マジ旨い」って褒めると照れてモジモジしちゃうし……か~~堪んねえなちくしょー。


でもそんな事してると、彩乃がいじけちゃうだろ?


食べたさ両方。残さず全部。


さすがにきつかったぞ、特に白河のおにぎりが。


しかしエロパワー……じゃなかった、愛でカバーしたね。


おかげでしばらく動けん。


ていう事で、



「俺、ちょっと寝るから。」



そう言って、近くのベンチへ移動し、背もたれに身体を預けてすぐに俺は落ちた――――



◇◆◆◇



目が覚めたら、太ももが見えた。


どうやら、横向きで寝ていたらしい。


しかも膝枕してくれたみたいだ。


たぶん彩乃だな。


気が利くな、さすが我が妹。


まだ寝たりなかったが、起きるか。


早く遊ばなきゃな。



「彩乃サンキューな」


「・・・・・・・・・」



あれ? 返事がないな。


どうした? 彩乃も寝てんのか?


確認する為、そのまま身体を捻り仰向けになる。



・・・・・あ・・・・・・



すぐ目の前には白河の顔。


寝てる…………。


「すぅすぅ」と寝息が聞こえる、しかも寝息が顔にかかる程の距離。


コックリコックリとする度に、お互いの鼻がぶつかりそうになる。


でも、不思議とHな気持ちにはならなかった。


その訳は、


こいつが幼くなってるのもあるけど、素直に「可愛い寝顔だな」って思ったから。


しばらくその寝顔から目が放せないでいると、ビクッとなり顔を持ち上げる白河。


起きたのかな?


そう思い、俺も顔を上げた瞬間――――――コックリ。



「う…………!!!」



起きてなかった白河は再度急に顔をもたげ、その額が俺の鼻にジャストミート……。



「い……痛え……」


「わ、神崎君……起きたの?」



俺の声に反応して起き上がる白河。


そして白河が顔を上げたせいで、太陽光線が顔にモロに当たる。


眩しい……。


しかも、なんだか太陽をバックに、白河の顔が天使に見える。


ちょっとちっちゃい天使だけどな。


このまま今日はずっと膝枕でいいかも……なんて思いつつ、白河の顔をひたすら眺める。



「……え?…や…やだ…ちょ、ちょっと違うんだからっ!」



何が違うんだろ?


寝起きでぼ~っとしつつ、そのまま見つめていると、鼻の奥から熱いものが込み上げてくる。


白河がなにやら照れて動揺しているが、頭から血の気が引いて更にぼうっとなる気がする……。



「だからっ、彩乃ちゃんがどっか行っちゃって……じゃなくってぇ、変な角度で寝てたから首が痛そうかなって……だ、だからぁ~……」



や…やばい……鼻の奥というか、喉の奥というか何かが……



「ね、ねぇ~聞いてるのぉ~?」


「ゴファッ!! ゲフッ!! ゲフンゲフンッ!!」


く……苦しい…マジで、息できねえ……。


……口の中に大量の血が逆流してきた……



「ブハッッ!!!」



我慢出来ず、そのまま大量の血を噴射!!


堪らず白河の膝から転げ落ち、地面に血を吐き出す。



「キャァ~~~~~~~~~~~!!」

「だ、大丈夫なの!? ね、ねぇ神崎君っ、ねぇってばっ!!」



必死に俺の背中をさすってくれる白河。


血の原因は解ってる。


ただの鼻血。


上向きだったから逆流してきただけで、ただ量が多かったらしく一瞬息が出来なかった。


しかも、気管に入ったのか咳が止まらない。



「ゲフッ! ゲフッゲフン……」


咳と共に血を吐き出す。


「キャァ~~~~~!! な、なにがあったの!? し、死んじゃうの!? 死なないで、神崎君っ!!」



勝手に人を殺すな……ただの鼻血だし、原因はお前のヘッドバッドだろ……。




ぶっちゃけ、その後大変な騒ぎになった。


血を吐く俺、「死んじゃう」と叫ぶ白河。


彩乃まで駆けつけて、大泣きしちゃって。


通りすがりの人は何事かと、どんどん集まりだすし、園内の係員が続々やってくるわで……。


落ち着きを取り戻した頃には、只の鼻血とは言えない雰囲気を醸し出していた。


が、どう転んでも只の鼻血。


無事をアピールして、「なんだよ鼻血位で大騒ぎしやがって」みたいな空気の中、皆さんには解散してもらった。



「に、兄さん……ぶ、無事で良かったですぅ…ぅ…ヒッ…グスッ……」


「ご、ごめんなさいっ!! ほんとにっ! その…私のせいで……ねっ? 許して?」



一度泣いた癇癪かんしゃくが止まらない妹と、必死に手を合わせて謝る白河。


ま、全く白河には怒ってないんだけどさ。


正直、今日は俺の方が悪い事したし。


いわゆる、視姦ってやつ?


謝りたいのは俺だし……。


言ったらもう二度と、口聞いてくれないだろうけどな。



◇◆◆◇



「またこれ乗るのか?」


「うん、乗る」


「やめとけって、お前途中で消えちゃうじゃないか」


「や、やだ乗るのっ。つ、次は最後まで、絶対……」



あの後すぐに復活した俺は、二人で共に絶叫系めぐりに挑戦中。


色々乗ったが、この遊園地最大のスピードとその長さを誇る『ギャラクシーコースター』で問題発生。


勘の良い皆様には、お気付きの方もいらっしゃるかも知れませんが、


白河が始まってそうそうに、スキルを発動させて消えちゃうんですよ、そりゃもう毎度毎度。


毎度っていう位だよ?


まあ既に、5・6回は乗ってるね。


さすがに彩乃はダウン、今はベンチで灰と化している。


俺だってもう限界だって。


今度は血じゃなくて、もっと酸っぱいものが出ちゃうだろっ。



「本当に次は大丈夫なんだろうな?」


「だ、だだ大丈夫よっ、次は……最後まで乗るんだからぁ」



思いっきりどもってんだが……ほんとかよ!?



「分かった、次が最後だかんな」


「う、うんまかせて」



俺は渋々白河と共に、列に並ぶ。


恐らくこのジェットコースターは、ここで一番人気のアトラクションだと思う。


だけど、今日はマジで人が少ない。


おかげで待ち時間5分!!


まあ、そのせいでループさせられてんだけど……。



横を見ると白河が、ワクワクしてるのか、緊張してるのか、瞳を大きく開いてパチクリパチクリと瞬きをしている。


ここでの唯一の楽しみと言えば、そんな状態で、こいつが自然に俺の手を握ってくる事。


たぶん本人としては、あんまり意識してないんだろうけどさ。


本当に自然な恋人握り。


この時間は、うっかり恋人かもって錯覚してしまう。


しかし、その甘い時間はすぐに終わりを告げる。


目の前のゲートが開き、奥へと案内される。


そして次々と、そこに待機している車両へ乗り込む人達。


俺と白河も、列の真ん中ぐらいに乗り込む。


すると安全バーが自動で降りてきて、ガチャンとロックされる。


その後係り員が、ロックの確認を一つ一つするわけだが……。



「あ……また来たんですね」



と、引きつった表情の係り員さん。


なぜ引きつっているか、その理由は明白!


今言った「また来たんですね」を解読すると、


「また消えるですか、その少女?」


が正しい意味なのだ。


そりゃそうだろ、戻ってきたら毎度消えてるんだから。


いい加減やばい。


係り員同士なにやら奥でひそひそ話しながら、全員こっちチラ見してるしよ~~。


やばいよやばいよ、騒ぎになるよ。



「お前さ、今度は絶対消えるなよなっ」


「分かってるってぇ~しつこいなぁ~~」



軽く逆切れしてるみたいだけど、ほんと頼むぜ?


今度こそ、係り員に何か聞かれそうで怖い。



そんな俺の心配など無関心で、「早く早くぅ~~」と安全バーをバシバシしている白河。


はあ~お前が楽しいならいいさ……。



ガタン―――――という音と共に動き出すコースター。


少しずつ、ゆっくりと昇り始める。


この後頂点に達した時、最大級の垂直落下が、まずは襲ってくるってわけ。


んで、今までその落下すら、こいつは体験してないってんだから、どんだけヘタレなんだよ。



「や、やだ……イっちゃう……イっちゃうよ神崎君っ、あんっ! イクっイクぅ~~~」



・・・・・・・・・・・・・・。


もうすぐ落下が始まるから、俺もドキドキしてるんだが……一応突っ込んどく。


今のは、Hな声ではありません。


俺が何度もこいつの我がままを聞く理由、その②。


毎回似たようなセリフを発します、この破廉恥少女。


しかも、本気で「はぁはぁ」と息切らして言うもんだから、臨場感たっぷり娘。


最初は俺をからかってるのかと思ったけど、どうやら天然を発揮しているらしい。


ぶっちぇげ、2回目から携帯で録音させてもらってます……。


ちょっと声が幼い感じだが、充分いけるっ!!


是非、完全体に戻った後に、もう一回乗ってもらいたいっ!!


アイドルだからなんだってんだ!


誘うんだもんっ!



「ってわあああああああああああああ!!」

「キャァ~~~~~なにこれ~~~~!!」



妄想中に落ちた!!


気を抜いてたから超怖い。


そしてMAXパワーの砲台が安全バーに当たって痛い!!


毎度の事だけど、今回はポジションが悪かった!


お、でも奇跡だっ!


白河が生き残ってる。



「キャァ~~~楽しいぃ~~~神崎君っ、ね、今の凄かったね!! ねぇねぇ!!」



流れる髪を押さえながら、大はしゃぎ。


喜ぶ顔、可愛い~~~~!!



と思ったら消えたーーーーーー!!



がくっ



大はしゃぎ中に、音も無く突然消えましたよ、あいつ。


なんでしょっぱいコブを通過中に消えるわけ?


しかも喜んでたのに……。


意味分からん。



シュッ



「ただいまぁ~~~」



って現れたーーーーーー!!!


ニッコリVサインで再登場の白河真琴嬢。



「なにやってんだよっ!!」


「ええ~~? 聞こえな~~い」



本当に聞こえてないのか?


おっと! やべえ3連ループがくる!!



「わ!……凄い…神崎君……こんなの初…めて…あっ……」


「……あ……やっぱり凄い……が…我慢…でき…ない……あんっ……」



物凄いGで、下方向に身体が押し付けられるなか、白河の声をなんとか聞き取った俺。


首が上がらないから顔は見えないが、今のは迫真の演技だったぞ、ナイス!!



「うおっ!!」

「わぁーーーーーきゃははははははぁ~~」



直後、最後の落下を通過し、スタートゲートまで戻ってきたコースター。


カタカタとゆっくり速度を落とす。



「きゃぁ~~~面白かったね!! 神埼君っ!! ねぇねぇ~ねぇ~ってばぁ~~」


「ああ、すげえ良かった」


「うふっ♪ だよねぇ~~たっのしぃ~~~」



ああ、かなり良かった。


お前の演技がな……。



カタカタ……ガッシャンと止まる。


安全バーが上がり、係員が次々と誘導していく。


そんな中、例の係り員と目が合った。


俺は不敵な笑みで、親指を立てる。


それに次いで、係り員も爽やかに親指を立て返してくる。


全く意味不明だが、清々しいやりとりのなか、立ち去る俺達。


もちろん天然の白河は、そんな俺に気付きもしない。


既に俺を振り切って、彩乃がいる場所へダッシュしている。


さすがだな、あいつの行動は理解不能だ。



◇◆◆◇



妹は、呑気にソフトクリームをペロペロしていた。


まあ、こいつは2回しかループしてないからな、だいぶ復活したんだろう。



「白河さんもどうぞっ」


「ありがとぉ~~じゃもらうねぇ~~ペロペロ……あ、美味しいこれぇ~」



仲良いなこいつら……。


なんだか微笑ましくて眺めていると、妹が俺にも突き出してくる。



「兄さんも食べますかぁ?」



じゃあ一口……と思いピクッと止まる。


この角度、あいつ意図的に白河がペロペロした場所を……。


不自然に手首を捻って、ソフトクリームを差し出す彩乃さん。


もちろんその顔はニヤニヤしている。


完全に、妹に翻弄されまくりじゃねーか。


しかし、素直に頂く俺。


うん旨い。


当然、そんな不自然な俺達に白河は気付く事もなく、「次どこへ行こっか?」と既にやる気マンマン状態。



よっぽど楽しいんだな。



「白河さん、遊園地って結構遊びにきたりするんですかぁ?」


「え? あ~うん……じゃなくって、実は初めてなのよねぇ~~」


「へぇ~そうなんですかぁ、実は彩乃も、2回目だったりするんですよぉ~~」



談笑する二人から、少し遅れて歩く俺。


ところどころ、会話が聞こえてくるんだけど……


あいつ……遊園地初めてなのか。


高校生にもなって?


普通、小学校時代に友達同士で行ったりしないか?


ましてや親に連れてきてもらったりだな~。


う~ん、そういえば、あいつのプライベートな事一切知らないんだよね。


まあ、親しくなったの最近だし、聞いてもないけどさ。


なんか気になるな~~。



◇◆◆◇



結局、その後も絶叫マシーン巡りが続いた俺達。


そして俺はげっそり……。


だってさ、あいつの元気っぷりたらないぜ?


妹は早々にリタイヤしたからいいものの、俺が付き合わなきゃならん。


相当ビビッてた『ギャラクシーコースター』がなんだったんだって位、それから絶叫系を乗りまくった俺と白河。


で、最後に締めでギャラクシー乗りたいっていうもんだから、付き合ったけどさ……。


今日の俺は、あれ出したり、鼻血出したりと精魂尽き果てたのよ。


ようやく帰れるかと思ったら、「観覧車って最後に乗る物なんでしょ?」とか言って、また歩き出す俺達。


どんだけ元気なんだよ。


まあいいけどさ。


カゴの中で寝ちゃうよ、俺。



最後は妹を乗せようかとも思ったんだけど、「いいから兄さん行って来て下さい」と結局俺と白河。


しょうがないから、二人でまた並んでるって状況。



「あれってさぁ、回転してる間は何してるのぉ?」


「何って……何もしないけど」


「んん~~もしかして……つまんないの?」


「どうかな? のんびり外の景色を眺めるってのもいいぞ」


「ふぅ~ん、そっかぁ~~」



まあ、本当はカップルでイチャつく為に乗る物なんだけど、そうとも言えないよな。


程なく3分待たずして、俺達の番になる。


先頭きって、中に乗り込む白河。



「うわぁ~~狭~~い」



楽しいのか、狭い事に対する文句なのか、良く分からない。


で、普通に対面に向き合って座る。


はあ~座ったとたんに眠いぜ。


白河は興味津々でキョロキョロしている。


後ろを振り返ったり、窓を覗いたり……。


その度に、太ももの間の奥がチラチラ、チラチラとしやがる。


ピンクか……。


イメージにピッタリだ。うむ。


しかし、ロリ河でこれだけ反応出来るんだから、完全体で来たら俺どうなっちまうんだ?


是非、また誘いたいもんだが、やっぱ無理だよな~~。


如月さんに頼んで、アイドルが目立たない装置でも作ってもらうか?


ま、冗談はさておき、いい機会だ。


気になってる事を聞いてみるか。



「なあ、聞いていいか?」


「うん? なぁに?」


「お前さー、なんで今まで遊園地こなかったんだ?」


「え、あ~~う~~ん……中学の時は、もう事務所に入ってお稽古とか、雑誌のモデルの仕事とかあったしぃ、小学校は……」


「あ~やっぱいいわ。悪い、今の質問無しな」


「わ、悪くなんてないってぇ。そう言う風に、私のこと聞いてくれた人、あんまりいないからぁ……」



たぶん、俺は聞いちゃいけなかった。


こんな歯切れの悪い白河は初めてだ。


それから何度も断ったんだけど……


「言える時に言わないと話せなくなるから」とか言ってさ。


結局、白河は自身の話しを始めた―――――――




ぶっちゃけ言い辛いことを淡々と話してくれた。


白河は、その……孤児だったらしい……。


気付いた時には、孤児院にいたって言うんだ。


なんでも、まだ赤ちゃんだった頃に「この子をしばらく預かって欲しい」と父親らしい人が孤児院を訪ねて、白河を預けていったんだそうだ。


その後も「必ず向かえに来る」って内容の手紙が度々届いたらしいいんだが、小学生になってからはパッタリこなくなったらしい。



「でもね、小学校になる少し前に、お父さんから電話があったらしくて、それから毎月お金が振り込まれるようになってぇ……」



その送金は、今も続いているんだそうだ。


しかも聞いた感じだと、結構な額っぽい。



「だからね、小学校も私立に通わせてもらって……でも、友達あんまり出来なくってさ、あはははは……」



し、白河にそんな過去があったなんて……知らなかった……。



「あ、そのお父さんって人も、私が勝手に思ってるだけだから、実はただの足長おじさんかも知れないんだよね……」



こ、こんないい子に対して……俺は……俺は……パンツ見えたとか……くそっ! 俺のバカッ!!



「あ、あれ? や、やだ……引いた? ごめんね、やっぱり重いよね私の話し……」



う……な、なんだか、目頭が熱くなってきちまった……う……グスッ



「か、神崎君? さっきから黙っちゃってさぁ~何か言ってよぉ~~」



「うおおおおおおおおおおおおお!!!! 白河あああああああ!!!!」

「キャ! キャァ~~~~~~~~!!」



思わず、白河を抱きしめる俺。



「うううう……グスッ……し、白河あああ~~」


「え? え? なに? なんで泣いてるのよぉ~~。ちょ、ちょっと離してよ……」



いやだっ! 離さない! 俺の思いを伝えるんだ!!



「し、白河あああ、お、俺はお前の事が……グスッ…だ……大好きだからなっ!!」


「はいはい、分かったからさぁ~~そろそろ離してよぉ~~」




「俺は……グスッ…うう…お前が好きだあああああああああ!!!」


「分かったってぇ……ありがとね、神崎君。ほらぁ、もう着くよぉ」




「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」




本気で告白したつもりの俺だったが、結局全然相手にしてもらえず、しかも妹から「兄さんはぁ、昔っから涙もろいところがあってぇ……」とか言われる始末。



ああ~いったい俺って……





第13話へ続く…

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