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カラダがどんどん改造されるわけ  作者: 739t5378
第1章 カラダが改造されるまで
14/45

第11話 休日はデート その②

俺達3人は遊園地にいる。


ぶっちゃげ、妹以外の女の子と来たのなんか初めてだ。


だから俺は、未知の経験に期待を馳せていた。


要するに、楽しみだってこと。


しかし今は、休憩所で3人ともムッツリとしている。


それはなぜか。


見上げれば、一面の雲。


そして土砂降りの雨・・・。


可笑しいと思ったんだよ、めちゃくちゃ空いてるんだもん。



「彩乃、お前さ、天気ぐらい調べとけよ」


「ちょっと、彩乃ちゃんのせいにしないでよ! 男らしくないんだからっ」


「まーまーまー、当然そんなのは調査済みなのですよぉ」



ふっふっふと含み笑いの我が妹。


横では白河が、普通にヘコんで頬杖ついている。



「天気予報では、このまま一日降り続くと言ってましたけどぉ、午後には小雨になるとも言っていましたぁ!」



絶望的な報告に、俺と白河はさらにヘコんで、顔を見合わせる。



「しかぁし!! 彩乃の勘では、午後にはきっと晴れるのですっ!!」



へーへーそりゃ良かったね。


そうだといいね~~。


お前の勘と、天気予報のどっちを信用するってんだよ。


あきれる俺。


いじけてジュースを飲んでいる白河。


そしてボソっと呟く。



「うう・・・絶叫マシーン・・・乗りたかったなぁ」



そ、そんなにしょげんなよ~~。


可愛いこいつが悲しい顔してると、なんとかしてやりたくて堪らない気持ちになる。



「大丈夫ですよ! 彩乃はちゃんと準備してきたんですっ!!」



一人元気な我が妹は、バッグから折りたたみ傘を取り出して「見てくださいっ」と空に掲げた。


成程・・・少しは準備してきたんだな。


えらいえらい。


しかし、それで絶叫マシーンが乗れるわけじゃない。


当然、この雨で動いている乗り物なんかなかった。



「あ~あ、今日乗れなかったら、もう次いつ来れるか分かんないよぉ・・・・」



そうか・・白河は忙しいもんな。


しかも有名人だし、今日はいいチャンスだったんだな。


改めて、可哀相になってくる。



「おみやげ屋さんにでも行こうかなぁ・・・・」



もう帰る気なのかよっ!


やべっ、本当になんとかしてやりてえな。



「チッチッチ、甘いのですよみなさん。なぜ、結構遠いここを選んだのか、それには理由があるのですっ」



あいかわらず、テンション持続中の妹。


しかし、なんかあるのかここ。



「乗り物には乗れませんがぁ、当遊園地には屋内アミューズメントがいっぱいあるんです!!」



へーそうなんだ。


じゃあ一応遊べるんだな。



「これを見て下さいっ」と広げる情報誌。


そこには、この遊園地の特集ページが。


まだ重い空気のまま、目を通す。


なになに・・・『屋内のアトラクションも充実!』・・・ふむふむ。


『君が勇者だ!』『宇宙空間が体験できるスターパラダイス』『最怖との噂でもちきり!サチコの家』などなど・・・・。


確かに、屋内系のアトラクションが結構あるな・・・。


しかも紹介用のカットだけで、なんだか興味をそそられる。


どれも参加型のもので、3人で楽しめそうだしいいかもなあ・・・。


横では、白河がなにやら神妙な顔で、雑誌を食い入るように見ている。


すると記事を読む度に、「あ~なにこれっ」「えぇ~これなにぃ~」「うわっ!すごっ!!」と段々テンションが上がってくる。


ほぼ元気を取り戻したな、彩乃ナイス。


そしておもむろに立ち上がると、目をキラキラさせる白河。



「わはっ♪ 面白そう~~行ってみたい、行ってみたいっ!」


「そうでしょう、そうでしょう~~。」



えっへんといつも通り胸を張る妹。


白河も嬉しそうで、良かった良かった。



「良くやった!」頭を撫でてやると、嬉しそうに目を細める妹。



それじゃ午前中はインドア巡りで、後はこいつの勘を信じて午後を待つか・・・。



妹の準備した傘を受け取ると、まずはここから近い『君が勇者だ!』を目指すべく、第一歩を・・・・



と思ったら、無言で俺の傘に入ってくる白河。



「・・・・・。」



嬉しいやら緊張やらで俺も無言。



「・・・だってぇ・・・彩乃ちゃんが入れてくれないんだもん・・・」



聞いてもいないのに、言い訳してくる白河。


どうやら傘は2本しかないらしい。


そして俺を見て、親指をこっそり立ててみせる我が妹。



う・・・微妙に嬉しいじゃねえか、妹よ。



しかし、白河を雨に晒したくなかった為、身体の半分以上がずぶ濡れになる俺。



「あぁ~神崎君、ずぶ濡れじゃないのぉ~、もっと近くに寄りなさいよぉ」


「お、おう・・・」



白河に一瞬腕を組まれ、引っ張られる。


その反動でぴったりくっついてしまう俺達・・。



「ちょ、ちょっと・・ち、近すぎっ!」


「お、おう・・」



さっきから『おう』しか言えない、しょぼい俺。


近いづいた時のあいつの匂い・・・。


なんだか今日は、めちゃくちゃ良い匂いがするんだよ、マジで。


ああ~俺このままロリに目覚めたら、どうしてくれんだよ。



落ち着こうと、辺りを見廻す。


人が少なく、閑散としている。


そして数々の絶叫マシーンがあるが、どれも稼動していない。


ま、当然だよな。


そんな中、一際賑わうスペースがある。



「あ、あれじゃないですかぁ」



妹が指差すそこには、『君が勇者だ!完全版』とでかでかと看板が建っている。


お~あれか、何が完全版か知らんが行ってみよう。


列に並び、順番を待つ。


幸い、列といっても大した事はない。


立て札には、ここから10分と書いてある。


なんだか、得した感じだな。


入り口には、悪の大魔王みたいな超でかいフィギアがあって、挑戦者求むとある。


なんか面白そうだ。



「うわぁ~~なにするのかなぁ、ここ。ねぇねぇ神崎君、なにか見えるぅ?」



わくわくマックスな感じで、楽しそうに俺の服を引っ張る白河。



かっ・・・可愛すぎる・・・・!!



来て良かった・・・マジで・・。



違う意味でドキドキしながら、順番を待つ。



おっと彩乃はどうした。


後ろで呆けている妹を側に寄せ、手を繋ぐ。


ニコっと嬉しそうな彩乃。


俺は妹思いの兄だからな、こいつにも楽しんでもらわないと。



順番になり、ゲートを潜る。


で、係りの人からの説明が始まる。


内容的にはこうだ。


パーティーごとに、悪の大魔王を倒しに行く…そういうシステムらしい。


一つのパーティーは、最大4人まで。


だから、俺達は3人で遊べる。


そして、最初になりたい職業を決めるらしい。


で、職業とやらは結構種類があってだな・・・


戦士、魔法剣士、魔法使い、僧侶、科学者、風水士、召喚士・・・・など様々だ。


俺は迷わず戦士を選ぶ。


すると、剣のつかのようなものを出されて受け取ると、使い方の説明をしてくれた。


「それは勇者の剣です。その剣でタイミングよく、モンスターを切って下さい。」


はあ、これが・・・。


どう見ても刃の部分がない、ただの柄なんですけど。



二人はって言うと、どれにしようか迷っているみたいだ。



「兄さ~ん、この僧侶ってなんですかぁ?」



その質問には、係員の人が答えてくれた。


僧侶は多少攻撃も出来るが、基本はお祈りを捧げてパーティーの体力を回復をする、といった職業らしい。


「じゃぁそれにしますぅ。」


うむ、癒し系のお前にぴったりだ。


なにやら水晶のような、大きな玉が付いたロッド?を渡される妹。


白河はというと、どうやら魔法使いらしい。


頭にはとんがり帽子。


手には、長い樹脂製の杖。


木に模したデザインだ。


「似合う~これ?」と、帽子を指差す白河。


はいはいお前は美形だから、なんでも似合うよ。


実際、普通に似合ってるし。


係員の人に案内され、広いスペースに到着する。


その先には沢山のドアがあり、幾つもの部屋があるようだ。


そして、「助けてぇ~~~勇者様ぁ~~~!!」どこからか聞こえる叫び声。


『魔王に囚われたお姫様を救い出す』という設定らしい。


なかなかベタな感じでいいじゃないか。



部屋に入ると、中は円形状になっていた。


何が円形かって言うと、360度黒い円形状の壁に囲まれているのさ。


何でかは知らねえ。


床は前面ゴム張りで、ちょっとふわふわする感じだ。



そして突然明かりが消され、真っ暗になった―――――



「キャッ! や・・やだ・・・神崎く~ん、どこにいるのよぉ~~」


「・・・に・・兄さん、なにも見えません・・に、兄さんいますかぁ?」



演出だろうか。


暗闇が続く中、怯える二人が面白いので、俺は黙っている。


周りでは彩乃と白河が、うろうろと彷徨っている気配がする。



「兄さんっ!」


俺を見つけて、ガバッと身体にダイブしてくる妹。



「・・・彩乃ちゃ~ん・・・どこぉ・・・」


「ここですよぉ~。」


「えぇ~~どこなのぉ~~なんで暗いのよぉ・・・」



泣きそうな声で彷徨い続ける白河。


しかも、どんどん遠ざかって行ってるし。



しかし・・・いつまで暗いんだ。


そろそろ声かけてやるか?



すると、突然俺の横で「シュッ」と音がする。


どうやら我慢出来ず、スキルを発動させたらしい。


こんな狭い部屋で・・。


相当テンパってんな、白河。



そして「彩乃ちゃ~~ん」と言いながら、俺に抱きついてくる。



・・・・・・・・・。



瞬間、壁に映像が映し出され、部屋全体が明るくなり、


俺に抱きついている白河と目が合う。



「な、なんかそろそろ始まるみたいだ・・ぞ」


「う・・うん・・そ、そだね・・・」



ぎこちなく離れる白河。



そして室内にアナウンスの声が流れる。



「は、早く助けに来てください! 勇者様!!」



お姫様の叫び声と共に、床が動き出す。



「うおっ! なんだ?」

「わわわ!」

「キャッ、な、なに!?」 



床の動きに合わせて映像が進んでいく。


成程、歩けって事か・・・。


俺達も、その速度に合わせて歩く。


なんだろ。


空港とかにある動く床を、逆走している感じだ。


そのまま草原を進んでいると、遠くから徐々に近づく物体が・・・。


段々とそれが何か分かる。


スライムだ。



「キャァ~~、なにあれ可愛いぃ~~。」


「わぁ、ぴょんぴょん跳ねてますぅ、可愛いですぅ。」



女性陣には、その愛くるしさが人気のようだ。


まずは程よく、あれを倒せって事だろう。


「シャキーン!」


機械的な効果音と共に、俺の持っていた剣の柄に見事な刃が出現した。


す、すげえ~~。


持っていたそれは、今や完全に勇者の剣と言っていい格好良さだった。


ただ、重さは感じない。


手で触ろうとしても、刃の部分は触れられない。


立体映像なのかな? 不思議だ・・・。



そうこうしていると、スライムが目の前まで来て飛び掛ってくる。


3Dなのか、画面から本当に飛び出してきた。


やべえっ、ぶつかる!!


その瞬間――――バシッと効果音が鳴り、揺れる床。


で、今気付いたけど、神崎駿と書かれた、左上に表示されている俺のHPが少し減った。


おお~~システムが解ったぞ。


要するにHPが無くなると、ゲームオーバーなんだろ?


オーケーオーケー。


俺は剣を構える。


スライムがまた飛び跳ねてくる・・・。


目の前に来たその時、タイミング良く剣を振った――――――



「ジャシュッ!」



真っ二つになるスライム。


き、気持ちいいじゃねえか・・・。


そのまま落ちて、徐々に消えていくスライム。


ふっふっふ、もう解ったぜっ!



しかしその後も剣を振り続けるが、なかなかスライムに当たらず、無駄に体力を減らす俺達。


彩乃も、「やぁ!」「とぉっ!」「はにゃ・・」と掛け声付きでロッドを振り回すが、空振りのご様子。


意外と難しいぞ・・・これ。


横では白河が、さっきから全然戦闘には参加せず、なにやら冊子のようなものを見ている。



「白河・・・お前、何やってんの?」


「え? 説明書読んでるんだけどぉ・・・」



そんなものが在ったのかよっ!!



「彩乃も見たいですっ、見せて下さいぃ~~」



彩乃が白河に駆け寄り、熟読を始める二人。


俺も見たいんですけど・・・。



そうこうしているうちに、仲間を呼んでどんどん増えていくスライムの群れ。


まずいぞ、このままゲームオーバーな予感が激しくする。



そんな俺達の事情は無視で、一斉に飛び掛ってくるスライムたち。



もうダメだ――――――



と思った瞬間。



「ファイヤー」



突然、大きな炎が噴き出し、スライムの群れを包み込んだ。


白河の魔法だった。


構えた杖から、軽快に噴き出す炎。


一瞬でちりと化すスライム。



チャララチャッチャチャ~~~ン



効果音が鳴り響き、メッセージが流れる。



勇者白河はレベルが上がった! 

ファイヤーウォールを覚えた!

アイテム『女の子の秘密』を手に入れた!



「やったぁ! なんかレベル上がった! うっふふ~ん♪」



「ファイヤーウォールは・・・」とぶつぶつ呟きながら、嬉しそうに説明書をパラパラめくる白河。



「あぁ~~いいですねぇ白河さん。どんな魔法なんですかぁ?」



妹が食いつき、二人できゃ~きゃ~騒いでいる。


楽しそうだな・・・。


俺も仲間に入れてくれよ。



しかし、『女の子の秘密』ってなんだ・・・?



その後はバシバシと、雑魚モンスターを倒しまくる俺達。


スライムの他に、ゴブリン、ミニ悪魔?、ゾンビなどなど・・・良く知っている、可愛くデフォルメされたモンスター達が登場する。


女子二人にも「や~~ん可愛いぃ~~」と、大好評だ。


あいかわらず派手な魔法で敵を一網打尽にする、破壊力バツグンの白河。


そして倒し損ねた雑魚を処理する、俺と彩乃。


戦う度に体力が減るが、彩乃がお祈りを捧げて回復してくれる。


ナイスなバランスのパーティーだ。



そして映像は進み、モンスターがぱったりと出現しなくなる。


今の内にと、俺も説明書を見せてもらう。


げ! なんだよ、必殺の剣だって・・・。


俺にもカッコイイ技があるんじゃねえか。



「いよいよ魔王の城が近づいて来たぞ! 気を付けるんだっ勇者達!!」



またアナウンスが流れる。


と同時に周りが暗くなり、ダダンダッダン、ダダンッダッダダ~~ンとターミネーターのようなBGMが流れて、魔王城が登場する。


で・・でかい・・。


ギギギイイイィイと扉が開かれ、中に入る。


すると、大量のゾンビが現れた!!


しかし、さっきまでのゾンビとは違って、デフォルメされていない気持ち悪い姿。



「いやぁ~~気持ち悪いぃ~~、神崎君お願いぃ~~」


「キャァ~~気味悪いですぅ~~」



後ろの方に隠れてしまう二人。



マジかよ~~、こいつら斬っても斬っても復活すんだよな~~。


さっきは白河の魔法連発でなんとかなったけど・・・。


白河のMPを見る。


残量が殆ど無い。


仕方ない、あいつが回復するまでなんとかするか。



わらわらと、かなりの数のゾンビに囲まれる俺。


それを次々斬り捨て、真っ二つにする。


気持ちいい~~。


しかし切ったゾンビはそこから再生し、逆に数が増えていく・・・。


マ・・マジでえ!?


くそっ、埒があかねえ。


俺は剣を後ろに構え、溜め攻撃の準備をする。


わらわら集まるゾンビ・・・。


ぎりぎりまで待つ・・・。



よしっ! 今だ!!



「ハイパースラッシュソォォゥゥドッ!!」



掛け声と共に、剣で思い切り横斬りをする。


刃から広範囲に衝撃波が発生し、ゾンビを全て切る!


爽快!!


ふっ、どうだ見たか、俺の必殺剣。



しかし飛び散る破片から、次々に再生を始めるゾンビども。



げっ嘘だろ!?



さ、さすがにこれは終わった・・・。



俺がゲームオーバーを確信したその時、



「チッチッチ、甘いのですよ兄さん。そう、それは昨日食べたケーキよりも・・・ふふふ・・」



何だか、キャラチェンジして再登場する我が妹。



「ここは彩乃におまかせですぅ~~~」



そう言い放つと、お祈りのポーズを取る僧侶彩乃。



「奇跡! 浄化の祈りっ!!」



ですぅ~~とロッドを掲げると、眩い光りが辺りを照らし始める。


そして跡形もなく消えるゾンビ・・・。



「ふっふっふ~~、どうですか兄さんっ」



見ましたかっと胸を張る妹。



すげえな・・・演出も凄かった。


ただ・・・最初からそれやっとけよ。


心の中で突っ込みつつ、先を進む。


広い階段を登ると、『謁見の間』と呼べばいいのか、両サイドの柱が何本も立つ広間に出た。


真ん中にはレッドカーペットが敷かれている。


そのだいぶ先に、恐ろしくでかい魔物が触手をウネウネさせて待っている。


たぶんあれが、魔王に違いない。



「うぅ~~また気持ち悪いのがいるじゃないぃ~~」


「兄さんっ、ボスですよボスっ!! あれを倒せばきっとクリアですっ」



引き気味の白河と、先程の活躍でテンションの高い彩乃。


目の前に現れる魔王。


でかくて気持ち悪い。


爬虫類のような顔をしていて腕は無く、その代わり何本もの触手が生えている。



「お前達が勇者か・・・全員皆殺しだああああ!!」



魔王の地響きを起こすような声と共に、触手が伸びてくる。



「いやぁ~~こないでぇ~~」


「あわわわ・・・こ、これはダメですぅ・・・」



またもや逃げてしまう二人。



「お、おい、俺一人じゃやばいって!」



触手を斬り刻むが、本数が圧倒的に多い。


斬り残しにやられ、どんどん体力が減っていく・・・。


しかし身体が光り、一瞬で回復するHPゲージ。


妹の後方支援だ。



だけど、このままじゃ時間の問題だ。


彩乃のMPが無くなったら終わり。



「白河っ、魔法頼む!」


「えぇ~~仕方ないなぁ~~」



「うわっキモっ」と言いつつ、近寄り杖をかざす。



「ファイヤーウォール!」



声と同時に、目の前に炎の柱が立ち上がる。


これで、しばらく攻撃が防げるみたいだ。


ふ~~どうすっか。


白河のMPは、今のでほぼゼロ。


俺の必殺剣は、触手が邪魔で本体に当たるか分からない。


しかも、一回の戦闘で一度しか使えない。


まさに最後の砦。


どうしたら・・・


すると、魔王が大きく口を開けて空気を吸い込んでいく。


響き渡る地鳴り・・・・。


な、何かやばい攻撃がくる感じ・・・。


まだファイヤーウォールはある。


防げるか?


そして魔王が口を閉じた刹那――――――場が静まり返り、次の瞬間、冷たい豪風が吹き荒れる!



「キャァーーー寒~~い!!」


「か、顔が痛いですぅ~~」



演出なのか、若干氷の粒が混じって風が吹いている。


こりゃ堪らん!!


しかも、ファイヤーウォールは消え、HPが凄い勢いで減っていく。


風が収まった頃には、全員ゲージが赤く点滅していた。


まずい・・・彩乃もMP切れだ。


ああ~、ここまできて終わりかよ~~。



「分かったっ、あれを使ってみる」



ここまで逃げ腰だった、勇者白河が立ち上がった。



「ネーミングが嫌で使わなかったけど・・・しょうがないわね」



そう言って、杖を置き両手をかざす。



「アイテム、女の子の秘密っ!!」



がくっ



それかいっ!!


どうせヘッポコなアイテムだろ。


しかし、予想を覆す演出が始まった。


部屋がまた真っ暗になり、床が揺れ始める・・・。


そして映像が現れると、魔王は電撃のようなものに縛られて動けない様子。


なんだか凄い事が起きそうな前触れ・・・。


すると突然、床から物凄い風圧で風が吹き上がる!!



シュウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!



一体どの隙間から吹き上がっているか知らないが、身体が浮きそうなぐらいの風圧だ。



「いやぁ~~~!! ちょ、ちょっと止めてぇ~~~」


「ダ、ダメですぅうう!! め、めくれちゃいますよーーー!!」



!!!!!!!!!



声に反応して、すぐに白河へロックオン!!



ぐっ! しかし遅かった・・・。


何とか手で押さえちまってる。


俺とした事が・・・。


そのネーミングで気付くべきだった・・・・。



魔王を見る。


風でどんどん切り刻まれ、ボロボロになっていくのが分かる。


よし・・・この後がチャンスとみた!


俺は剣を後ろに構え、必殺技の体勢に入る・・・。


そして風が止んだ瞬間――――――



「ラストハイパースラッシュソォォォゥゥゥゥウウドッ!!」



立体映像に向かってジャンプ!!


そして斬るっ!!!



バシュッッッッッ!!!!!



と豪快な音が響き、魔王から体液が激しく飛び散る。


き、気持ち良すぎるぜ~~~。



「ぐわああああ!! お、おのれ勇者どもめええええ・・・・」



魔王の肉体が崩れ落ちる・・・・。


チャララチャッチャチャチャーーーーン♪


軽快な音楽と共に映し出される、『クリアー!!』の文字。


そして『監修 如月研究所』と流れるテロップ。


成程・・どうも可笑しいと思ったんだよ。


このオーバーテクノロジーと変なアイテム。


その全てに納得する俺だった。


しかし如月さん、こんなところで仕事してたんだな。


さらに謎は深まった・・・・。



達成感と動き回った疲労で、俺達は室内のベンチでぐったりしていた。


手にはクリアの賞品『勇者の証』がある。


なんて事はない、ただの腕輪だ。


銅か何かで出来ているのか、ずっしりと重い。


そして何故か「重いから持っててよぉ~~」と、三人分が俺の手に。


いや俺も充分重いし・・・。


仕方ないので、全部腕にはめてやる。


ずしっ


鉄アレイを持ってるかのような重み。


けっ・・・こうなったら鍛えてやる。


これを次に外した時、俺の本気が出るぜ!!



下らない事を考えている隣では、白河がジュースをゴクゴク・・・。


その向こうで、彩乃もお茶を飲んでいる。



「ふぅ~~暑いねぇ~~」と手でフリフリ顔を仰ぐ白河。


女って、なんで手で仰ぐんだろ?


不思議だなあ~と横目で観察する。


すると、キャミソールの胸元をパタパタし始め、身体に風を送ろうとしている。



「そんなに汗掻いたの・・・・・か・・・」


「え? う・・うん~~結構ねぇ~~」



さらりと答える白河なんてどうでもいい。


驚愕の光景に、俺は言葉が出ない。


教えてほしい?


実はさ、キャミをパタパタする度に、ピンクのブラが丸見えなんだよ。



し・・・しかも・・・しかもおおおおおおおおお!!!!!



あきらかにサイズの合わないブラがカパカパして・・・・・



カパカパして・・・・・



その・・・・



先端が・・・・



チラチラ、チラチラと・・・・



マ、マジデスカアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!



い、いかん。


これはさすがに、見ちゃいかん。


目を反らす俺。


・・・・・・・。


だ、だけど気になる・・・。


そんな俺の気も知らず、パタパタ音が聞こえる・・・。


ああダメだ。


ごめん白河! もっかいだけ!!



再度横目で見る。



薄い色素で赤く染まった先端が、チラチラと見える。


ちょっと胸の大きさに比べて大きめのそれは、そこだけ妙に大人っぽさを感じる。


た・・・立ってるのかな・・・。


い、いやいや・・・何でもない時に立つもんなの?


分かんねえ・・。


しかし・・・あの先端が、完全体の白河にあると想像すると・・・


あああ・・・た、堪んねえ~~~。


ダ、ダメだ・・・興奮してきた・・・。


み、見ちゃダメだ、見ちゃダメだ、見ちゃダメだ。


そうだよ、覗き見なんて卑怯すぎる。


そんな俺を知ったら、絶対白河に嫌われちゃうだろ。


でも、脳裏に浮かぶ先端突起・・・・。


やばいぞ、白河の過去最大イベント発生で、しばらく立てそうもない。


しかもこの熱いたぎりは、尋常じゃない。


妹だけでなく、白河にもバレるかも知れない。


そして俺は、一生ロリの烙印を押されてしまう・・・。



どうすれば・・・・


辺りを見廻す・・・。


白河とは逆方向にお手洗いを発見!


俺は迷ったが、現状復帰する為に手段を選んでなどいられない。



「ちょっとトイレな」



と軽く告げた俺は、お手洗いに駆け込む。



・・・・・・・・・。



そして数分後、何とか落ち着きを取り戻し現状復帰を果たした。


なんて情けない俺・・・・。



「大丈夫ぅ~? またお腹痛いのぉ?」



心配する白河を、まともに見れない俺だった・・・。


お手洗いの中で何があったかは、男子諸君にはご理解いただけると思う。


なんでデート中にこんな事態になってしまうのか。


教えて下さい。


みんなもそうなんですか?



その後は白河と距離を置きつつ、幾つかのアトラクションを楽しんだ。


最初に入ったお化け屋敷『サチコの家』はまだ良かった。


ガチで怖くて、あいつは我慢できず、すぐにスキルを発動。


目の前から消えた。


そして、怯えて動けない妹を抱えたまま、最後まで耐え抜いた俺。


いや、だからそんな事は大した事じゃなかったんだよ。


あいつがパタパタしまくりだから、並んでる時とか周りの男共の目線が気になって気になって・・・・。


なんとか他に見えないよう、死角を作るのに必死だった。


しかも、そんな俺に気付いたのか、彩乃がニヤニヤしてるしよ~~。


はあ~~、溜息でちゃうぜ。



で、問題はその後の『スペースパラダイス』だ。


如月研究所監修と書かれたそのアトラクションとは、なんと無重力空間を3分も体験出来るのだ。


普通の部屋だぞっ。


オーバーテクノロジーにも程がある。


まあ、すげえ楽しかったけどな・・・。


じゃなくて、その無重力で白河の胸元がそれはもう・・・・


全開なわけだったんですよ。


大喜びのあいつは、「神崎く~~ん、ほらほらぁ~~」と無邪気に宙を漂ってくるもんだから・・・


どうしろってんだよ!!


可愛いやら、Hやらで・・・そりゃもう先端祭りですよ・・・。


本人に言った方がいいんだろうか・・・。


言えないでしょ、「先端見えてるよ」なんて・・・。


しかし、このままでは他の男にまで見られてしまう。


それだけは、絶対にさせねえ!


ロリ状態だからといって、甘くみてはいけない。


ちっこい白河は普通に可愛いし、実際すれちがう男性どもの注目を集めているのが分かる。


ロリだろうがおばさんだろうが、取り敢えずチェックする。


それが男のさがだ!!



しゃーない、事情がバレてそうな妹に頼むか・・・。



はあ~~、俺はもうげっそりなんですよ。


何度、お手洗いに行った事か・・・。


恐らく、一日での過去最高回数を超えたかも知れない。


これが悪いんだろうか・・・。


下っ腹に貼り付けた円盤のような装置。


何でも、内臓器官を活発にする装置で、2号の為に開発中だとか・・・。


如月さんの作った装置だ、副作用があっても不思議じゃない。



「次わぁ~~これかなぁ。これも屋内のやつじゃない?」



無邪気に次のアトラクションを検討中の白河。




ああ~~本当に、毎度毎度ドキドキさせられるぜ・・・マジで。






第12話へ続く・・・

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