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宵闇のはなし

掲載日:2026/07/23

夏の短編、です

“ぺたり”


一歩踏み出した足が嫌な音をたてた。

ずるり、と滑って転びそうになる。

新月の山道、足元は全く見えないが、かなりぬかるんでいるらしい。


「も、もう帰らない?」

私は隣に居る友人に話しかけた。

「もう、怖がりだなぁ、蛍は!」

隣を歩く古畑莉々華(ふるはたりりか)は、呆れた様に答えた。


「だって何か地面が滑るし、濡れてる⋯」

「昨日、雨が降ったからじゃない?」

言いながら、懐中電灯を持った莉々華は私の手を引いて、どんどん先へと歩いてゆく。


「だって⋯」

「ほらほら、康人に良いところ見せるんでしょ?」

「そ、それは⋯」


私と莉々華、康人は幼馴染。

保育園の頃からの友達同士だ。

今日の肝試しは、私が幽霊なんて絶対に居ないと2人に断言したのが事の発端だった。


「怖いなら謝って、止めれば良かったのに」

「だって⋯康人が楽しみって⋯」

「色気づきおって、こやつめ」

「そ、そんな事⋯」


“ぺたり”


「あれ?」

「ん、どうした?」


“ぺたりぺたり”

背後で裸足でぬかるみを歩く様な、嫌な音がした。


「誰かが後から来てる?」

振り向いて見たが、後方に広がるのは塗りつぶした様な暗闇だった。


「予定ではあと10分は誰も来ないはずだよ」

前を歩く莉々華が答えた。


“ぺたりぺたりぺたり”


「やっぱり誰か来てるよぉ」

私は莉々華に声をかけた。

「⋯⋯」


“ペタリぺタリペタリペタペタペタ”


「莉々華ぁ」


“グイッ”


突然後から浴衣の襟を強く引っ張られた。

前へ進めない!

「やだっ」


思わず後ろを振り向く。

真っ白な手が私の浴衣の襟を掴んでいた。

その手は闇の中から伸びていた。

人間ならば当然見えるであろう、腕の付け根や胴体は闇に溶けて見えない。


「いやああっ!」

思わず叫んだ。


「駄目だよ、蛍、騒いだら。迷惑だから」

前方の莉々華は振り向きもせずに言う。

「だって、手が、手がっ!」


闇の中から、次々に手が伸びてきて、私を後ろに引っ張る。

闇に引き込もうとする。


「莉々華、助けて!」

私は必死で繋いだ手に力を込める。

けど、莉々華は握った手を離した。


「な、なんでっ?!」

後ろに引かれる力に必死に抗いながら言った。

「蛍が悪いんだよ⋯康人を独り占めしようとするから

莉々華は背を向けたまま言った。


「ひ、独り占めなんて⋯」

「嘘。康人と二人で旅行に行く予定立ててたでしょう?」

莉々華の言葉にはまるで感情が無い。


「そ、それは⋯莉々華が⋯補習だから⋯」

「嘘つき蛍、さようなら」

「り、莉々華ぁーーー!」


体中を掴む白い手によって暗闇の中に引き込まれる。

視界が真っ暗に成った⋯⋯。



「おい、蛍、蛍!?」

呼びかけられてはっと気が付く。


街灯が照らす夜道。

ホテルへの案内看板。

何軒かのお土産物屋を覗く観光客⋯。


そうだ夏休み、康人と二人で旅行に来て⋯。

あれ、さっきのは⋯夢?


「あれ?」

「ぼっとして、大丈夫か?」

「莉々華⋯?」

「え、ああ、来れなくて残念だったよな。補習があるなんて」


そうだ、始めから莉々華はこの旅行には来ていない。

だから、一緒に肝試しをするはずも無かった。

どうも一瞬、夢をみたらしい。


⋯罪悪感、かな?

結果的に莉々華を除け者にしたから。

それで、あんな夢を。


「疲れてるみたいだから、ホテルに戻ろうか」

「うん、そうだね」


私達はコンビニの袋を手に、ホテルへの山道を歩き始めた。


“ぺたり”


背後で足音が聞こえた気がした。

作者のやる気は イイね や 感想 で出来てます(笑)

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気に入った部分だけでは無く、ここが“読みにくかった”“分かりにくかった”も、とても参考に成ります。

感想書いて下さる人には本当に感謝です。


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