2 NPO団体 ダンジョンへの誘い
ダンジョン探索への挑戦から、遡ること三月前。
銀行員から受け取ったパンフレットを手に、ビルの前で立ち尽くしていた。そのビルは、外壁が三色に塗り分けされ、屋上に複数のポールが聳え立ち、ビル街のなかで異常に目立っていた。
「住所はここだけど、OMON会って看板しかないな」
呆然とビルを見上げていると、自動ドアが開き、中からスーツを着た男女が現れ、声を掛けてきた。
「OMON会に御用ですか?」
微笑みとともに男女から差し出された名刺は和紙に樹脂コーティングしたもので、そこには金箔でOMON会ダンジョン部と書かれていた。
「いえ、このビルが住所のNPOを訪ねてきたのですが、ご存じですか?」
男性の目が一瞬パンフレットに留まるのを見て、彼のしているいやに目立つ腕時計が銀行員のしていたものとデザインが同じことに気が付いた。
「NPOダンジョンへの誘いでしたら、確かに入居しております。OMON会ダンジョン部が協力している団体なんですよ。どうぞお入りください。」
微笑みから作り物めいた満面の笑顔に変わった女性からも、
「OMON会員だけでなく、ダンジョンで探索活動をお考えの方なら、厚い支援を受けられます。もちろん、パンフレットに記載されていることは事実ですので、どうぞお気軽に。」
背負った負債の絶望感。払える範囲内とはいえ払い続けなければいけない利子の重圧。建物、人、同じデザインの時計から感じる違和感。覚悟を決めると二人の後に続いた。




