1 為替?ダンジョン
「任せてください。」
錆錆のバールを陶器のような質感のモンスターに叩きつけると、モンスターはぱかーんと粉々に砕け散っていった。
後に残ったのはQRコードのようなものが書かれた紙一枚。
「早速ドロップしたな。ほいっと。」
同行の中年探索者が、紙を確かめながら渡してくれた。
「どうも。ダンジョンによってドロップする物に差があるとは聞いてましたけど・・・これ、QRコードですよね。」
スマホでコードを読み取ってみると、通信表示が始まった。
「ダンジョンのなかでも通信できるんですね。」
画面を覗き込んでいtた中年探索者は首を捻りつつ、
「おかしいな、ダンジョン内部では通信できないもんだけどな。」
「そういえば、ダンジョンに足を踏み入れてから確認してましたね。」
通信が終わるのを待っていると、
「「為替ダンジョンにようこそ。本ユーザーへの通信許可ともに、ダンジョン内部でのアプリ使用権が認められました。」」
「中年さん。これ勝手にアプリ登録されましたよ。不正通信ってやつですか。」
覗いていた中年探索者は、
「今まで通信可能なダンジョンは報告されてないからな。もしかすると【スキル】の類かもな。おめでとさん。」
「「パチパチパチ、ちょーん 50円。」」
狂暴なモンスターが出るダンジョンに不釣り合いなアプリの効果音が響き渡った。
「50円。どう、思います?」
中年探索者は、手拭いで汗を拭いつつ、
「そのまんまじゃないか?【為替】ダンジョンだからな。誰がどうやっているのかはともかく。日本の法廷通貨が円だからな。」
横目で見遣りつつ、アプリの操作方法を試しながら、
「いえ、モンスター探し回ってバール一振り50円。普通のダンジョンと差があるような。」
中年探索者は手拭いをしまうと、
「俺は普通のダンジョンも知ってるが、命の危険も感じない場所では変わらんな。ただ、ダンジョンのなかでも金かね金。どこも一緒だ。アプリは置いといて、ダンジョンを調べよう。」
中年は、ダンジョンの奥を指差して、探索の続行を促してきた。
それに答えアプリの終了ボタンを押し、無事終了を確認すると、
「アプリも問題ないようですし、行きますか。」
中年探索者と更なる探索に足を踏み出した。




