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彼女

 今日は一年で一番ドキドキする日。

 昨日、お母さんに手伝ってもらって一緒に作ったマカロンを今日、彼に渡す。何回も書き直した手紙も入れた。

 直接渡すのは恥ずかしい。靴箱かロッカー……引き出しは他の人にも見られちゃうかも。


 彼はいつも遅刻をして来る。私はいつも通りに行って彼の靴箱にチョコを入れよう。彼は驚くかな、教室で私に会って何て言うんだろう。断られたらどうしよう。


 ドキドキしてたからいつもより早く学校に着いた。あっ……彼がもう靴箱の前にいる。これじゃ靴箱に入れられない、いつもは遅刻して来るのに何で今日に限って……。

 同じ時間に来たからロッカーにも入れられない。友達は直接渡したほうがいいって言ってたけど……これは直接渡せってことなのかな……でも直接渡すのは怖い。


 彼がロッカーから教科書を取って戻ってきた。でも、そのままどこかに行ってしまった。声をかけなきゃ……。

 直接渡すなら教室よりも彼が1人でいる時がいいよね……。私はカバンからマカロンの袋を取り出して優しくポケットに入れた。

 

 廊下には人が多かったけど彼の頭が見える。私は彼の頭を追いかけた。あれ? 気がついたら彼は居なくなっている。何で……さっきまで真っ直ぐ行ってただけなのにどこに行ったの……。私はしぶしぶ教室に戻った。もう教室にも人が多いから彼のロッカーにこっそり入れるのは難しいな。彼の席は隣だから休み時間のうちに机の中に入れてしまえば誰にも見られないかな……?

 迷ってたら彼が帰ってきてしまった。朝礼が終わって1限が始まった。いつもは楽しくおしゃべり出来るけど今日は少し話したら喉が乾いてしまう。

 休み時間になると彼はまたどこかに行ってしまった。誰かにチョコをもらう約束でもしててそれを貰いに行ってるんだろうか……気になる。

 友達が彼は理科教室の前に居るって教えてくれた。行こうとしたけどもう次の授業が始まる、彼も帰って来ちゃった。


 次の休み時間も彼は教室を出て行った。私は理科教室の前に行ったけど誰も居ない。次の授業ギリギリまで待ったけど来ない。私は教室に戻った。


 その次の休み時間も私は理科教室の方に歩いて行った。理科教室の前には彼が居た。でも彼は単語帳を熱心に覚えている。今日の単語テストの勉強をしてるのか……邪魔したら悪いかな。普段の単語テストの時は直前にしか見てない彼が今日は頑張ってる……やっぱり邪魔できない。私は静かに教室に戻った。昼休みなら渡せる機会もあるよね。


 昼休み、彼は友達とご飯を食べている。私も部活の友達に誘われて食堂に行った。みんなは義理チョコを配ったみたい……私、配ってないけど大丈夫かな?

 中には本命を渡してる子もいた。下の階にある先輩の教室まで行って渡したんだ……私にはそんなことできないよ。気づいたら昼休みは終わってしまった。結局、昼休みは彼と話せてもいない。


 次の時間は単語テスト。私と彼は交換採点をした。彼の答案を見るとなんと満点だった。すごい……! あんなに頑張ってたもんね。

 「おめでとう」って言ったら彼は「ありがとう」って少し嬉しそうに笑った。


 6限の国語が始まった、今日最後の授業。幸い国語の先生は私語をしても気付かないし怒らない。私はこの授業の間に彼にマカロンを渡す。でも自分からは言えない。

 私は鞄のチャックを開けた。わざと、少し大きめに。開いた鞄の1番上にさっき置いたマカロンが見えている。ピンクのリボンがついた小さな袋。

 彼が「そのマカロン誰に渡すの」って聞いたら私は「あなたにあげる」って言うんだ。

 彼が「それなに」って聞いたら私は「あなたに渡すために作った」って言うんだ。


 彼の視線を待った。……気づいた。彼は私のマカロンを見ている。でも、何も言わない。心臓がドキドキして痛いくらいだった。お願い、何か言って、何でもいいから……。

 でも彼は、そのまま視線を逸らしてしまった。私のマカロンは欲しくなかったのかな。


 彼は終礼が終わったらさっさと帰ってしまった。


 今日の部活は全然集中できなかった。部活が終わって私は部室で1人マカロンを食べた。せっかく手伝ってくれたお母さんに渡せなかったって言いたくない。

 でもお母さんにどうだったって聞かれたら私はちゃんと渡せたって言えないと思う、泣いてしまうかもしれない。

 マカロンは甘かった。


 

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