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13.遊色効果が魅せる夢

花火大会の前々日、私たちは莉子へのプレゼントを買うために町のデパートに赴いていた。

私と恵、亮平と…そしてなぜか石引君がいる。


「呼んだの誰よ……」


先週大泣きしてしまった手前、こんなに早く顔を合わせることになるなんて思ってもみなかった。

泣いたところを見られたわけでもないのに、胸の奥に残った気まずさだけが、まだ乾ききらずに貼り付いている。


「たまたま会ってよ、思いついたわけよサプライズってやつを。莉子に知られなきゃ別にいいじゃん?」


「ごめんね急にお邪魔して、弓削田さん曽野さん。俺も何かプレゼントしたくてさ」


同じ男子同士でこの雲泥の違いは一体何なのかと思うくらいには、人への気遣いの差が出ていた。


「ま、いんじゃない?莉子も喜ぶでしょ」


恵はイレギュラーなんて日常茶飯事ですと言わんばかりにさらっと流し、デパートへと歩き始めた。


店内は冷房がよく効いていて少し肌寒いくらいだった。

デパートにはいろんな店が入っており、それぞれ目的とする店も違うため集合時間を12時と取り決めて各々買い物を進める方針にした。

現在は10時過ぎなので2時間くらいは買い物できそうだ。結構時間もあるのでゆっくりと選ぶことにしよう。


石引君と亮平は並んでどこかへ行き、恵は私とジュエリーがある3階へと向かった。


3階は入っている店舗のほとんどが衣類やジュエリー、コスメなんかのコーナーで埋め尽くされていて、プレゼントを選ぶのには困らないくらい多くの商品が並んでいた。

ディスプレイが透明なテーブルになっていたり、高級感のあふれるような場所は学生には少し手が届かないことがわかっているので、様相がポップな店舗や雑貨に近いような店舗を中心に見て回ることになる。


恵は大きなぬいぐるみがある店舗に入っていったが、私は少し奥にあるアクセサリー雑貨のお店へと足を運んだ。

そこにはトルコ石や水晶で飾り付けられたブレスレットやバレッタなんかが並んでいた。

一つでも綺麗に見えるそのアクセサリーたちが、木でできたテーブルや壁掛けに華やかで透明感のある彩りを与えている。

透き通って可憐な印象が莉子のことを連想させずにはいられなかった。


一つアクセサリーを掬い上げては、喜んでくれる時の少し高い声を想像する。また一つ掬い上げては、くすぐったそうに笑う笑顔を思い浮かべる。

また一つ、また一つ、と繰り返して、時間の流れもどこかで止まってしまっているような感覚になるまで考えていた。

瞳を閉じるたびにまぶたの裏に映るその刹那の世界だけは、私と莉子だけが笑い合っていた。


どのアクセサリーも似合うなと元も子もないことを考えていると、一つ目を引くものがあった。

そこには白を基調としているのに何色もの光を放ち、煌めきと儚さを宿した宝石が埋め込まれたバレッタがあった。

商品が乗っている木のテーブルの上には、使用されている宝石の簡単な説明書きのパネルがあった。


「オパール…?」


聞き馴染みのない宝石の名前に思わず小さな声がこぼれた。

手に取ろうとして近づくと、角度で小さな色の変化があった。

ずっと見ていても飽きることのないような発色。

説明書きに視線を移すと、そこには特徴的な色の変化を遊色効果と呼ぶことや産地のことについて書き記されていた。


気付けばじっと見つめ続けていて、私はこの宝石にしっかりと見惚れていた。

いつの間にか横には店員さんが立っていて、「ご試着なされますか」と声をかけられていた。


「いえ、友達へのプレゼントなんです。私がつけるわけじゃなくて…」


「そうなんですか。それは素敵ですね。でも、お客様にも大変お似合いになると思いますよ」


柔らかな笑顔を向けられて、これが営業スマイルなんだとしたら本物とどうやって見分けるのだろうか。私にはそれがわからないほどに、作為を感じさせない優しい対応だった。


「実はこのオパールという宝石は他の宝石とは少し違うものもございまして、植物が宝石になるプラントオパール、動物の骨が宝石になるボーンオパールというものもございます。高価なものですので当店では取り扱ってはいませんが、そのどれもが可憐に煌めき、私たちの目を奪ってくれます」


「それは…私たちも宝石になるかもしれないということですか」


思いついた言葉が、そのまま口をついて出た。それはすごいロマンがある話だ。

私たち人間も動物だし骨もある。この指ももしかしたら遠い未来に宝石に変わっているかもしれないのだ。


「そうですね。500万年近くかかるとは言われていますが条件が揃えばあり得る話だと思います。生きているうちでは想像できないですが、普段私たちが使っている手指も足も、遠い未来では生前どんな動物だったかなんて関係なく綺麗な宝石に生まれ変わっているかもしれないなんて素敵な話ですよね」


「どんなものだったか、関係なく…」


もしかしたら500万年後の誰かの手のひらにあるオパールは、私の骨とかだったりするのかな。

私は500円玉くらいの楕円形に加工されたオパールが施されたバレッタを2つ、店員さんに手渡した。


「お買い上げですか?ありがとうございます」


一つはギフト用に包んでもらい、もう一つは化粧ポーチの中に大事に入れておいた。

アクセサリーをお揃いにするくらいは許してもらおう。


雑貨屋を背にし、小さな紙袋を携えた恵の背中を見つけたので小走りで追いかける。

1階まで降りるとアイスを食べてる男二人組が「おーい」とこちらに大きく手を振っていた。



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