第3話 フロントの男
第二章 フロントの男
扉を開けた瞬間、先ほどよりも音楽の音が大きくなる。
そして、あふれんばかりのまぶしい光が私の視界に飛び込んできた。
あまりのまぶしさにしばらくクラクラしながら、目をぱちぱち閉じたり開いたりして慣らし、ようやく部屋の全貌が理解できた。
今さっき入ってきた扉から見て右側に、ホテルのフロントのような大理石の台が置いてあり、フロントの向かい側には誰が座るのか、豪華なソファまで置いてある。
部屋の真ん中はゴージャスなシャンデリアが吊り下げられてあり、このBGMに合わせ煌々とあたりを照らしていた。
どうやら、ここは高級ホテルのエントランスのようなところだった。
しかし人っ気が全くない。
フロントにも誰もいる気配がしなかった。
「本当にここはどこなんだろ…」
奥へ歩いていくと、さらに部屋は続いており細い廊下のような道が続いているのが見える。
しかし電気がついておらず、その道の先は真っ暗だった。
「いらっしゃいませえ」
私が奥を恐る恐る覗いていると、突然後ろからチャラそうな声がする。
びっくりして振り返ると、こちらを見ながらにんまり笑う目がチカチカする服を着た男が立っていた。
誰だろう?と思うよりも先に、その個性的な服に目がいってしまう。
まず、真っ先に目に飛び込んできたのは男の胸元の大きな真っ赤なリボン。
限られた人しか似合わなそうなそのリボンに、左右ちぐはぐなピンクと黄緑色のズボン。そして、丈の低い茶色いブーツを履いている。
なんだか妖精の擬人化みたいな服だ、と思う。
この人の趣味なのかな…?
髪色は、まるで透明な水のウェーブがかかったように透き通った銀髪で、その上にイギリスの紳士が使っていそうな小さくて四角いトップハットが、私から見て右側にちょこんと乗っかっている。
帽子は根元に小さなバラの花びらが細かくついたやつで、なかなかオシャレだ。
極めつけに、その怪しげな男は整った美しい顔をしていた。
――そう。まるで、天使のように。
歳は、おそらく20代前半?
いかにも、女慣れしてそうだ。
一見すると、ド派手な衣装だが、その端正な男の顔には、よく似合っているような気もする。
つい見とれていると、そのメルヘンチックな男が、唐突に人差し指をあげ、ニヤリと口を開いた。
「これ、なんの曲か知っているかい?」