第2話 光る扉
第一章光る扉
私は、真っ暗な暗闇の中にいた。何も見えず、どこにいるかもわからない。
立っているのか、座っているのか…。
ただ、なぜだか私の心はひどく疲れ果てていて、胸の中をずっと激しい後悔のような苦々しい感情が、巨大な海の渦のように、ぐるぐると渦巻いていた。
じゃーん♪たらりらりらりらりーん♪
すると、この真っ暗闇にどこからか、懐かしい音楽が聞こえた。
男の人が歌っているらしいそれは、力強くも完璧な旋律で、素直に綺麗だと思った。
これは…何の曲だったかな?
そんなことを考えていると、一筋の光明が私の入る周りを柔らかく包み込む。
ーーまるで夜の海に降り注ぐ朝陽のようにあたたかな落ち着く光。
それは、私の元にたどり着くとやがて、まっすぐ道を照らし始めた。
ついてこいと言っているみたいだ。
私はさっきまで疲労困憊だったのに不思議と全身に力がみなぎる。そして、促されるままにその光を辿っていく。
その光の正体は、すぐに分かった。
私のいた場所からしばらく行ったところに、誰が通るのかというくらい大きな扉があって、その中の光が、こちら側の漆黒の闇へ漏れていたのだ。
この扉は、いったい何なのかな?
どこから現れたんだろう…
近づいてみると扉の向こう側から、かすかに先ほどの美しい旋律が聞こえた。しかし不思議なことに、先ほど聞いた男の人ではなくちゃんとした音源らしかった。
――さっき聞こえた音は男の人の声だったような…?
聞き間違え?と首をかしげながら、私はそっと、今来た道を振り返る。
真っ暗闇だった。
どうやって辿ってこられたのか、闇が光を飲み込んでいるみたいに、何も見えなかった。
さっきまであそこにいたのだと思うと、少しゾッとする。
再び、光が漏れでている目の前の扉に視線を戻した。
なんで、こんなところにこんな大きな扉があるんだろ………。
――いや、第一なぜ私はここにいるのか。
考えても考えても、その答えは出てこなかった。
なにかしらが原因で記憶ごと失ってしまったようで、今までのことは何も思い出せない。
『答えは、扉の向こうに』
ふと、声が聞こえたような気がした。
その言葉に、私の心も私がその扉を開けるのを待っているようなそんな感覚に陥った。
もしかしたら、この扉の先にいけば、私がなぜここにいるのかも、理解できるかもしれない。
「真実を、見つけるために。」
――ようやく決心がついた私は、力強くそのドアノブをひねった。