第十話 真実の告白
『Bブロック勝者は前回の準優勝。桑原一誠が率いるチームです!今日の午後の部は終了となります。明日の午前の部に行うCブロック対戦でお会いしましょう』
Bブロックはみんながみんな木刀を持って戦っていた。
腕の技術も下ノ段クラスでリーダーは中ノ段クラスの実力。
そして厄介なのは剣の技術ではなくその連携プレイ。その連携プレイで相手は呆気なく負けてしまっていたのだ。
「神楽沙君。いよいよ明日だね!」
「ああ、明日の為に今日はすぐ寝ろよ?」
「あはは、それは本来先輩のアドバイスなのにな。まぁ、ここまで連れてくれてありがとう」
「ここまでって、俺たちは優勝は行くぞ?」
「うん!お互い頑張ろうね。君達のおかげで僕と青果も、まだこの学園で生活できそうだ」
「?...どう言うことだ?」
「殴っても構わない。僕達は...いや、僕は君達を利用しようとしていたんだ」
勝は周りを見渡して、零夜だけしかいないと確認して本当の事を話すのだった。
「...続けて」
「僕達は学年で最下位の成績で、この体育祭で成績を残さないと退学になってしまうんだ」
零夜は今の言葉を聞いて、何故体育祭の競技を必要以上に出場するのか、やっと分かったのだ。それは少しでも成績を残してこの学園に居続けようとしていた。
「僕達は、新入生に学園長のお気に入りがいると聞いて、君達を調べたんだ。もしかしたらチームに入れるかもしれない希望が見えたんだ。でも、最初は自分の事ばかり考えていて、君たちが体育祭の為に努力する姿を見て罪悪感を覚えた。本当にごめん」
「...あはは。なんだよ真面目そうな顔するから、どんな話するかと思えばそんだけの事かよ」
「え?」
利用した事に怒らない零夜に対して目が点となる勝。
「別に良いんじゃねぇか?この世界は利用するか利用されるかの世界だ。俺は利用する行為は悪いとは思っていない。だって、利用できるものなら利用してやる。俺もアイツらの為にならば...いや、これは自己満だがなんだって利用してやるよ。だから、お前が俺らを利用した事は怒ったりする事はないよ」
「神楽沙君...」
「あっ、でも...利用される事は悪くないとは言ったが、アイツらが不幸になる事なら俺は本気で怒るかもね」
「あはは、神楽沙君は本当に彼女達のことが好きなんだね」
零夜の言葉に勝は遠くで楽しそうに話している風華達の方に視線を移す。勝は零夜がどれほど彼女達のことが大切なのか、分かる言葉だった。
「仲間だからな」
「仲間以上の感情はないのかい?」
「仲間以上?」
「ああ、好きってそれは仲間としてか?それとも男として彼女達のことに恋してるのか?」
ニヤニヤと笑う勝の問いに、よく考えるのだ。
確かに風華達と一緒にいると楽しいし心が温まるが、これを恋とは限らない。自分があの3人を本当にどう思っているのか自分自身でも分からなかったのだ。
「こ、恋?分からねぇや。俺にそんな感情はとっくに...あそこに置いてしまったよ」
零夜は昔の事を思い出し勝に聞こえない声で、言葉を漏らすのだった。そんな問いに揶揄ってきた勝にやり返すのだ。
「なら、お前はどうなんだ?倉様の事は好きなんじゃないのか?」
「ば、馬鹿!うるさい!」
「おいおい、分かりやすいな」
顔を赤くした勝を見て、零夜は笑うのだった。
「良いね。青春で」
「神楽沙君って意外とジジィ臭い事言うよね?」
「おい、それ悪口か?」
2人の男は机を囲んで談笑するのであった。
すると、後ろから黒恵が零夜の服を引っ張る。
「レイちゃん...お爺ちゃんが...呼んでる」
「あ?なんだ?」
零夜は黒恵に案内をされ、学園長室に入る。
そこには宗一郎が座って待っていたのだ。だが、その顔はいつもヘラヘラしている顔ではなく真剣な顔になっていた。
「お爺ちゃん...連れてきたよ...」
「ありがとう。来て早々悪いのじゃが、席を外して貰えないか?」
「...うん」
そう言って黒恵は部屋を後にするのだ。
零夜は宗一郎の前のソファに座る。
「天朧...いや、天朧組が今東京で暴れているそうなのじゃ」
宗一郎は敢えて言い直した。零夜が結成した天朧と今犯罪を犯している天朧組は別ものだと言う事に。
「何か、情報は分かったのか?」
「ああ、その者達は2人で行動して、人間の心臓を抜いて回っているそうじゃ。9割は女性の心臓だと言う事じゃ」
すると宗一郎は服の下から写真を取り出して零夜に見せる。
まるで紳士の様なスーツに黒いハット。そして銀色の髪とちょび髭、見た目からして歳を重ねている様に見えるが、これでも青年だと言う事だと語る。
「こやつはジャックザリッパーと名乗っている。この顔には見覚えは?」
「ないな?」
一応天朧のメンバーだったのか確認するが、零夜にとって初めて見る顔だった。
「こやつは猟奇殺人者じゃ。心臓部分以外を体を椅子にしたり机にしたりと狂った様な男じゃ」
宗一郎は数枚の写真を机の上に置いた。
その写真は人間の四肢や体を使って図工の様に椅子の形にされたり、無数の人間を使って蝶々の様な形にされていた。
「へぇ、やはりこういうのは慣れておるのか?ワシじゃったら、お主ぐらいの歳でこれを見てしまったら失神するレベルじゃ」
「くだらない話は良い。こいつが天朧を使って悪さしてる奴で良いんだな?こいつを捕まえれば良いのか?」
「いや、今は体育祭に専念してくれ。もっと情報を探ってから、奴らを捕まえるのじゃ。だが、一応潜り込んでいる可能性も無きにしも非ずじゃ。不審な人物がいたらワシに連絡してくれ」
「ウス。んで、2人居るんだよな?もう1人の写真は?」
「おっと、忘れる所じゃった。こやつは目立った行動はしておらぬが、ジャックザリッパーとよく行動している男じゃ」
「...」
「見覚えはありそうじゃな?」
その写真には中の服を着てなく、褐色の身体の筋肉を見せびらかす様にジャケットを着ているピンク色の坊主。
写真の人物を見て零夜は、拳を強く握るのだった。
「見覚えはあるんじゃろ?」
「...こいつも、知らないや」
「...ふむ、そうか。ワシしか聞いておらんから、今はそうするのじゃ。その瞳も見なかった事にするのじゃ」
「ありがとう」
その写真に写っていたのは、零夜にとって親友でもあり元天朧であった男なのだ。零夜は親友の誰かが天朧の名前を使って人を殺めている北斗の予想が間違っていて欲しかった。だが、北斗の予想は当たっていた事に、悲しさと怒りが込みあがり瞳が真っ赤に染まるのであった。




