第二十七話 露天風呂
「アハハッ!温泉!温泉!」
「凛さん!走るのは危険ですよ!」
凛はハイテンションで温泉を駆け巡っている。
それを止める風華、そして先に黒恵は体を洗って温泉に浸かっていた。
「極楽...極楽...」
「黒恵さん。お隣良いですか?」
「...」
コクリと頷いてソソソーっと横に移動して、隣に風華は温泉に浸かるのだった。
「おい...お前...」
「あの!おいとかお前じゃなく、名前で呼んでくれませんか?」
「...なら、風華...なんで魔滅師になるの?」
「え?それは...私の野望がありますから」
「野望?...」
「勇者になりたいのです」
「勇者...確かにおま...風華の神製もあの勇者と同じもの...なんで、そんな勇者が良いの?」
「憧れだからです」
露天風呂、夜空を見ながらそう言った。
風華は子供の時から読んでいた勇者英雄譚の本がたまらなく大好きだった。
「自由と平和の象徴。私はそれが大好きでした」
「ふーん...」
「逆に黒恵さんは、なんで魔滅師になるのですか?」
「...鬼に復讐...この世の鬼を全て殺す...それがボクの野心」
「なるほど...なら、そのあとはどうするのですか?」
「その後?」
「はい。復讐の先ですよ。黒恵さんが本来してみたかった事はなんですか?」
風華の質問に黒恵は固まるのだった。
そして考えて考えて昔の事を少し思い出す。
「...ボクの本当の夢か...多分...」
「キャハッ!温泉!」
ジャブン!!っと温泉に飛び込む凛。
2人は温泉の波にかけられるのだった。
「凛さん!温泉はプールじゃないのですよ?!」
「そうなの?」
「もう、本当よかったですよ。貸切で」
宗一郎が露天風呂を貸切状態で予約してくれ、3人をゆっくりと羽を伸ばせる様にとしてくれたのだ。
「零夜も一緒に入れば良いのに」
「零夜さんは男です!」
先ほど凛は零夜を温泉に誘ったが、顔が赤くなり断りどこか行ってしまった。
「むー、こんな楽しくて気もちいい事、零夜と一緒に味わいたかったよ」
「ダメです!男女が裸で過ごすのは...ま、間違いが起こるかも知れません!」
「間違いって?」
「そ、そ、それは...」
純粋な凛の質問に、返答に困る風華。
2人が零夜の話題を出していると、黒恵はある質問をする。
「ねぇ、お前ら...あの男の事が好きなの?」
「へっ?」
「うん!好き!」
「え?!」
黒恵の質問に風華は驚き、凛の回答にさらに驚き、勢いよく凛の方向へ振り向くのだった。
(た、多分凛さんの好きってラブじゃなく、ライクですよね?)
「ふーん...風華は?」
「え?わ、私は好きですよ?と、友達として仲間としてね」
「そう...あの男の事をどこまで知ってる?」
「え?」
その質問にどういう意図があるのかと首を傾げる。
「そう言えば零夜さんってあんまり自分の事を話さないですね」
「昔から知ってる仲じゃない?」
「はい」
「ふーん...」
黒恵は何か考え事をする。
「変とは思わないのか?...鬼との戦闘経験はないと言ったのに慣れた手付きで鬼を退治...あいつの行動を客観的に観察すると...長い年月をかけて鍛えた戦士と動き...まるで鬼を...いや、生き物を殺すために生きているような動きだった...」
「えっと...」
「簡単に言うと...人間戦闘兵器...亞人...」
その言葉に風華は思わず立ち上がり、その予想を否定した。
「そんなのあり得ません!あの組織は全員捕まっております!」
「どうだろう..お爺ちゃんは全員は捕まえきれてないって...黒幕は誰なのかは...未だ...」
「なら、零夜さんはその亞人の実験台にされた子って言いたいのですか?!だって、亜人は...」
亞人とは
黄金の世代から一つのユグドラシルが攻略されてから、鬼はさらに活性化し始めたのだ。その数に追いつかず魔滅師の数が年々不足する中、ある実験で鬼が人間を倒せないのなら、鬼が殺せば良いと人間に鬼の遺伝子を埋め込み鬼並みの力や能力を持った人間を作り上げてしまった。だが、その実験方法はあまりにも過酷で成功率は1割も満たさないと言う。満たさなかったものは死に行く最悪な実験。
「でも、あり得る話...彼の体の傷は尋常じゃない...気づいてたでしょ?...まぁ、あいつが亞人じゃなくても、地獄を味わった人間には変わらないけどね...気付いてるでしょ?あいつの六道眼を...」
「...」
隠しているつもりだったが、青鬼と戦っている最中に一瞬だけ赤い瞳に光っていたのは見逃さなかった。鋭い目つきの中には渦の様な同心円系の様な赤い瞳。まさにその目の模様が世界最悪七大災害術六道眼の模様と似ていたからだ。
「六道眼って何?」
温泉の中で犬泳ぎをしていた凛はたまたまその言葉を聞いた凛は気になっていた。
「そうですね。稀に人間には特殊な目を持った人が生まれてくるのですよ。その目はあらゆる物を見えたり、遠い物でさえもくっきると見えるのですよ。ですが、その瞳は他の人と変わらなく六道眼だと分からないまま過ごす人もいます」
「なら、どうやって六道眼って分かるの?」
「そうですね。それは...地獄のような環境を味わい、最後に大切な人を目の前で失えば、六道眼の本当の能力が発揮して開眼します。普通と変わらない瞳は、不気味な模様がある赤い瞳に変わります」
「赤い瞳...」
それを聞いた凛は少しばかり考えるのだった。
風華は確かに零夜の目は赤くなったのは見えたが気のせいだと言おうとした時に、凛は何か思い出したかのように言葉を発する。
「赤い瞳なら、零夜と修行中に何回かなってたよ?それの事?」
「やはり...」
「零夜さん...」
零夜がどんな過去を味わってきたのか、風華は気になるのだった。




