第十九話 保健室
「おはよう。凛」
「零夜?」
凛は目を覚めると知らない白い天井だった。
体を起き上がると隣で、零夜が座って本を読んでいた。
「ここどこ?」
「保健室だよ」
「凛さん、目を覚めたのですね。先どの戦いは完敗です。素晴らしい技です。最初は勝つ気まんまんでしたので、本当に悔しいです。お身体は大丈夫でしょうか?」
「うん。風華も大丈夫?結構強く打ちこんちゃったけど」
「はい、大丈夫です。この学園の医療技術が進んでいまして、痛みがすぐに和らげました」
「そうなんだ。だから、あんまり痛くないんだ」
風華の突きをもろに食らったのにも関わらず、痛みなどがあまりない事に不思議に思っていたのだった。
「あっ、そうだ。おい、凛。お前無駄に童子琉の技を使うな。あれは見様見真似で出来るものじゃない。まずは呼吸法を覚えないと無駄な体力を使うぞ」
「なら、教えて欲しい!師匠!」
「師匠って呼ぶ程じゃねぇ。それに俺が教えられるのは初段の呼吸法だけだ。後は俺が指導出来る程の実力はねぇ。俺が教えて変な癖ついたらダメだ。ちゃんとした指導者に頼むべきだ」
「ふむ、お主ら起きたようじゃな」
入り口から宗一郎の声が聞こえる。
だが、後ろには知らないスーツを着た人達がいた。
「ジィさん。後ろの奴らは?」
「ふむ、こやつらは異端審問官達じゃ。神製と契約したお主を見にきたのじゃ。安心するが良い君達には危害を加えない。もしその時があるのならば、このワシが許さないのじゃ」
「アハハ。大仏殿?どうやら、この3人の生徒に贔屓しているようですね。それ程この者達が大切なんですか?」
1番地位が高いと思われる、ロン毛の男が奥から現れて宗一郎の横に立って、零夜達を観察するようにジロジロと見る。
「大切...それはこの学園の生徒達はワシにとって全員が大切な存在じゃ」
「全員大切と言う割にはこの3人には神聖な場所に足を踏み入れさせたのですね」
「パルガよ、何が悪い?」
「悪い?百歩譲って一条家の娘と契約したのは良いでしょう。だが、たかが平民の2人に神製と契約したのですよ?今は上層部達はその貴方が行った行為でお怒りですよ?どう責任取るのですか?」
「そもそも神製はお前らのものじゃなかろう。誰も契約するのもその武器の意思じゃ。だから、いくら経ってもホコリをかぶるだけなんじゃ。武器は飾るものじゃない、鬼を滅するものじゃ。お前ら政府が好きな言葉じゃろう?」
「はぁ、これだから日本人の老害は...正直言います。上からの命令では、君たち3人を殺し神製を取り戻す事です」
「「なっ?!」」
するとパラガとその後ろにいた大人達は、呑気に本を読んでいた零夜を襲うのだった。
「...くだらねぇ、演技だな。凛、風華そこで安静してな...って気付いてるか」
零夜は隣に掛けていた閻羅を持ち上げて鞘から刀を抜いた。
パラガが隠し持っていた2本のククリ刀は零夜の首を襲うが簡単に受け止める。
「へぇ、これを止めるのですか。なら、これはどうですかね?数珠丸流双牙・九頭竜舞」
パルガは2本のククリ刀を高速で回転させ、斬撃を零夜に浴びせる。
だが、零夜は全ての斬撃を受け流すのだった。すると後方からパルガの仲間達が一斉に襲い掛かる
「光世琉壱ノ舞生々流転」
零夜は全ての攻撃を超高速の斬撃で、パルガ達の攻撃を回転しながら打ちのめした。防げば防ぐ程パルガ達に与える反撃の攻撃が威力が増していく。パルガ以外の男達は峰打ちで気絶させられてしまった。
「おい、ここは病室だ。それに凛や風華だって怪我している。試すような真似には相応しくないんじゃないのか?まだ寝ぼけてるような事をするなら、本気で斬っても良いんだぞ?」
「ガキが人を殺す...いや、お前は出来る側の方だな」
「どうする?続けるか?次は冗談でも容赦しないぞ?」
「なら、私も参加します」
「あたしもいるよ」
風華の指輪がガントレットに変わる。凛はベッドの横に寄りかかっている炎龍聖剣を取り、鞘から剣を抜いた。
「なるほど...辞めにしましょう。神製を持つ3人の人間と渡り合う気がしません。皆さん、演技は終了です」
パルガは零夜の冷たい目を見て武器を潜める。
零夜に気絶させられていた、男達は立ち上がり宗一郎の後ろで横一列になって並ぶ。
(渡り合う気がしないねぇ...よく言うぜぇ。もし、本気でお前の部下達が殺しにかかれば...こっちが勝てる気がしない)
「いや〜すまなかったよ、神楽沙殿。それにそこのお嬢さん方もすまないね」
「なーんじゃ。演技じゃったのか?」
「大仏殿。気付いていたのでしょう?」
どうやら宗一郎とはグルではなかったようだ。
パルガは零夜達の顔をジッと見る。
「合格です。君達には神製を扱う器である事を認めます。ですが、まだ弱いですね。上層部が貴方達を殺したがるのは本当の話です。死にたくなければ抗える力を身につけるべきですよ。そして約束してください。大仏殿の許可がない限りは神製を扱う事を禁止します。それ程その武器が危険で強力なものだからです。それでは、失礼いたします」
そう言ってパルガは部屋を後にするのだった。




