第十七話 凛対風華②
「やばっ、凛のやつ押されてるじゃん」
ブーストをした風華に対して防戦一方だった。一瞬の隙を狙うが連撃を繰り広げる風華にはそんなのはなかった。なら、こんなに動き続ければ体力を消耗するまで踏ん張ろうとしたが、風華の顔は疲れるどころか余裕そうに見えた。
「無駄じゃよ。ワシが教えたんじゃ。長時間動いても疲れない方法をな」
「マジか。こりゃ凛負けるんじゃね?...円瞳術を教えなかったら負けてたぞ」
それを聞いた宗一郎は驚いた様子で零夜に振り向くのだった。
「なに?緋村凛君はたったの1ヶ月で円瞳術を覚えたのか?あの修行は速くて半年はかかるぞい?」
「え?そんなにかかるの?」
「...そうじゃった。お主も可笑しいのじゃった...」
そしてとうとう凛はその場から動き、風華から距離を取る。
だが風華は逃がすまいと攻撃しながら追いかけるのだった。この状況をどう打破しようと防御しながら距離を取る凛。
「無駄じゃよ。もう、勝負アリじゃな。一条風華君の体力は1ヶ月前より何倍も増えておるし、それに加えて疲れにくい様にしてあるのじゃ。1時間2時間動いても先に疲れるのは緋村凛君の方じゃ」
「いや、長時間の戦いは凛の方が有利になるぞ」
「ふむ、どういう事じゃ?」
「まぁ、見てみろって。円瞳術を覚えた凛は、自分の本当の才能を目覚めさせちまったんだ。あれには気をつけろ...俺もあれでやられた」
「やられた?」
「剣だけの勝負とは言え、俺が負けちまった。あれにはびっくりしたよ。えっと、こう言うのなんだっけ?」
「なんじゃ?」
一体何の事を言いたいのかと、宗一郎は凛の方を集中する。凛をよく見てみると眼球は風華から一ミリも動いていない。
「うん。風華、反撃の開始だよ」
「なっ?!」
凛を纏っているオーラが赤く変色した。
それを見た風華はブーストに入ったと、まさか凛も取得してた事に驚いたのだ。
「まさか、凛さんも教えられたのですか?」
「いいや、今覚えた」
「どう言う事じゃ!知らないんじゃないのか?!何故緋村凛君がブーストを使えるのじゃ」
ブーストを知らなかった零夜が、どうやって凛にブーストを教えたのか驚いていたのだ。だが、零夜はブーストなどを教えていない。
「生まれ持った才能だよ。凛は1ヶ月前までは相手が動いた部分しか見ていなかった。だが、円瞳術を覚えた凛は相手の全体を見るようになったんだ。元から目が良い凛は、相手の動きや癖を見れば見る程自分のものにしてしまう。闘魂の能力じゃなくて、自分自身の能力だ」
「生まれ持った才能...天賦じゃな?」
「そう、それだ!」
天賦
人間には必ず何かしらの才能を持っている。だが、大抵の人間はそれを見つけ出す事や目覚めさせる事もなく生涯を迎える者が多かった。天賦は生まれ持った才能の為、他の人がそれを真似することは至難の業。そして、凛が待つ天賦はコピーだ。
「変幻自在の眼。それが凛の天賦だ」
「それにしても赤いのう。攻撃力特化って所じゃな」
「他の色にも何か意味あるのか?」
「うむ、簡潔に説明すると、緑色は耐久力、黄色はスピード、青色は防御力じゃな」
「へぇ〜」
「まぁ、もう二つは存在するのじゃがこれはごく稀じゃ」
そしてブーストした凛は防戦一方から抜け出して、反撃に成功した。凛は深い深呼吸をする。
「ふぅ〜」
剣を振り下げた時風華は横に避けるが、振り下げた剣は地面を斬ったのだ。これが童子琉の特殊な呼吸法。
「これはやばいですね」
あまりにの威力に風華は苦笑いするのだった。
元から身体能力が高い凛がブーストした事に、同じブースト中の風華が押され始めていた。風華は打撃攻撃をするが凛には当たらず反撃されるだけだった。
(これは危険ですね。私の攻撃を最も容易く避けられる。しかも防御はしていますが、防御の上からでもこの痛さ...本当この人は凄いです)
「天武三式・羅針」
すると風華の足元の地面に円を描き羅針盤のような模様が現れる。
それを見た零夜は驚き立ち上がるのだった。
「なんだ、あれ?」
「天武琉古武道術じゃ。あまりにもワシが教えたものを飲み込むのが早かったからじゃのう。暇じゃったから、何個か教えたのじゃ」
「マジか...技なんて教えてたんだ」
「ふむ?もしや教えてないのか?」
「当たり前だろ。円瞳術と呼吸法で精一杯だったんだから...」
「まぁ、その修行内容だけ聞いていれば本来は一年はかかる内容だからのう」
そして、超スピードで凛は風華に連撃を喰らわせるが、全て見切って拳で受け流していた。
羅針、それは陣の中に入る物の動きや攻撃相手のオーラを探知することで相手の攻撃を見切ったり、隙を感知する事が出来る。
円瞳術は目で見て見切るが、羅針は感じて見切る違いだった。
凛の攻撃を全て受け流す風華は、たった一瞬の凛の隙を感知してそこに攻撃を入れた。
「ガハッ」
この勝負で初めて有効打を打たれた。
凛はみぞに殴られ、一旦距離を取って体勢を整える。
「ごめんなさい」
「良いよ、勝負なんだから。でも、今の結構効いたね」
「残念です。もし今のまともに食らわせていたら一発KOだったのですがね」
「アタシは負けず嫌いだからね」
風華の攻撃をすぐに気付いてバックステップで威力を和らげたのだった。もしそのまままともに食らっていたら、風華の勝ちだったかもしれなかったのだった。




