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第十話 天朧(てんろう)

「どうなんじゃ?別に君達が天朧であっても、人にバラす事は絶対にないのじゃ。君達の正体を知っているのはワシだけじゃ」


「...」


「零夜。隠しても無駄っぽいよ」


いくら惚けても無駄と分かった北斗はすんなりと自白するのだった。零夜も何故バレたのかと考えながら頭を抱えるのだった。


「バレたくなかったけどな」


「確かに零夜のオーラは人と違って特殊な物ですが、何故僕までバレたのですか?」


「ふむ、空条北斗君は、神楽沙零夜君と仲良さそうにしてた事に少し疑っていた。正直さっきまでは疑いだけだったのじゃ。だが、先どの戦いで城ヶ崎明久君のオーラを消した事で疑いから確信に変わったのじゃ。天朧にオーラを消す人間がいるって報告を聞いたからのう」


オーラを消す能力は歴史上で2人しか存在しなかった。

 そんな特殊な能力を持つ人間が天朧にいる事は有名だった。


「そうか、それは失態でしたね。それで、大仏宗一郎校長殿。僕達が天朧だと分かって何をするのですか?貴方は僕達の身柄を狙うとは言っていましたが、別に僕達は強盗まがいや人を殺した事もありません。せいぜい言うのならば、無断で闘魂術を街中で使った事ぐらいです。ですが、それは明確な理由があって事犯罪には成立しないとは思いませんが?」


「...本当か?」


「何疑ってるの?」


「ホッホッホッ、別に疑っている訳じゃないのじゃ。一年前の神奈川百鬼事変で、魔滅師の精鋭部隊が到着する前に人々を守ったヒーロー達を疑いたくないのじゃ。あの時は本当に感謝しておる」


宗一郎は立ち上がり頭を下げるのだった。


「やはり、君達に聞いて正解じゃった。君達の天朧と今世間を騒がせている天朧組が別物だと分かって、それで充分じゃ」


「天朧組?なんだそれは?」


「ふむ、やはり知らないようじゃな。なら、これを見た方が速いのじゃ」


「これは...」


宗一郎が見せたのは今後出る予定の新聞だった。

その内容に書かれているものを読んだ2人は、驚いていたのだ。


「これは予想外ですね。天朧の名を使って、悪事を働いているとは」


その内容は、以前の天朧とは考えられない行動だった。

 強盗、破損、放火そして殺人。それに加えて1番罪の重い、鬼を手引きしてわざと人里に向かわせる行為だった。天朧組の目的は、どうやら市民を殺す事だと推測されていた。

この内容を見た北斗は手を強く握りしめるのだった。


「それで、犯人は特定されているのですか?」


「いいや、以前と同様全員が仮面をつけておるのじゃ」


「そうですか」


「...」


「零夜?大丈夫か?」


ずっとだんまりしている零夜を心配する。


「まぁ、別に怒る事もねぇよ。俺らの天朧はアイツと共に死んだんだ。それを悪事に使われようが、もう関係ない。いや、市民を殺すか...まるでアイツからの呪いじゃねぇか」


零夜はそう言って立ち上がり、何かスマホを気にしながや出口の方は向かう。北斗も後に追うように零夜の後ろに歩くのだった。


「ジィさん。この件他に分かることがあったら教えて欲しい。仮に俺ら天朧と何か関わりがあるのなら、俺らで解決したい」


「ふむ、分かったのじゃ」


「ありがとう」


そう言って校長室から出るのだった。

 2人は静かな廊下で歩く。北斗は赤黒く濁っていた零夜の瞳を見て深くため息を吐くのだった。


「...零夜。昔の顔に戻ってるよ。笑顔は絶やさないのじゃないの?」


「アイツが積み重ねてきた天朧を、人殺しの道具として利用されているんだ」


「零夜、力を抑えろ。また、問題を起こす気か?」


天朧を偽っている者達を考えると、零夜は殺意と怒りが込み上がっていくことから、窓がガタガタと震え出す。学園の窓を破る前に北斗は止めようとするが殺意は収まることはなかった。


「わぁ!零夜!」


赤黒く濁った瞳が黒くなる。

 その声の持ち主は凛だった。凛は零夜に向かって走ってくる。


「おっはよう!」


「凛。今何時だと思ってるんだ?」


スマホの携帯を見ると11時前に針が回るのだった。

 学園の授業が始まるのは9時からして、凛は2時間の遅刻をしていた。


「えへへ、ぐっすり寝ちゃったよ。風華は?」


「今教室だ。一緒に行くか?」


「うん!...えっと」


「ん?あ!僕は空条北斗です」


「あれ?前に北斗みんなの前で自己紹介しなかったっけ?」


凛は隣にいた北斗を見る。

 まだ、自己紹介していないと北斗は自己紹介をする。


「えっと、あたしは緋村凛。ごめん、あの時零夜しか見てなくて...」


「凛、あんまり人を勘違いしそうなセリフを言わないでくれ」


「え?」


零夜は耳を少し赤くするのだった。2人のやりとりを見た北斗は思わず腹を抱えて笑うのだ。


「あははは。零夜から話は聞いてるよ。チームメイトなんですね。これから零夜を頼みます」


「お前は俺のオカンかよ」


「せめて、聞き分けの良い子が息子だと嬉しいな」


「おい、それだと。俺が聞き分けの悪い奴だと言ってるのか?」


「自覚ないのかい?」


「...ちっ」


なんも言い返せなかった零夜は舌打ちを吐いて、教室で待っている風華の所に戻るのだった。


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