episode23・・・市街地にて
今回、シリアスなんだかコメディーなんだか分からないものになってしまった……。
〔Ayana side〕
さて……、街に出たはいいけどどうしようかな……。
「あ、アヤナさん! 起きたんですか」
「アリシア。うん、ついさっきね」
「そうですか。よく寝てましたね」
「まぁね。アリシアは少しは寝たの?」
「いいえ、若いですから」
…………なんかイラッときたわ。
「…………それは、私が若くないと言ってるのかしら~?」
そう言いつつ、アリシアの頭の横を両手でぐりぐりする。そりゃーアリシアからみたら私はおばさんかもねー。ふっふっふー。
「いたたたたたたたたたたた!!! そ、そんなつもりじゃなかったんですぅぅぅぅ!! ごめんなさいぃぃぃぃぃぃ!!」
ふぅ、そろそろ泣きだしそうだからやめてあげるか。それに意外と疲れるわ、この技。
「ま、まだ痛い……」
「そういえば守は一緒じゃないんだ?」
アリシアの恨みがましい視線を無視し、少し気になっていたことを聞いた。ちなみにヴィルトは宿で寝ていた。犬のくせに隙だらけだったから少し悪戯してきた。面白かったわー。
「はい、途中まで一緒だったんですけど、途中からいなくなってしまって……」
「そか。そんなら、探してみようかな~」
「………………アヤナさん」
「なに?」
アリシアは急に声のトーンを落とし、私を呼ぶ。
「少しお話があるので人気のないところに行きませんか?」
「いいけど……」
なんだろう? 急に話したいことって?
~路地裏~
「話したいことって何?」
「…………アヤナさんは、マモルさんのことどう思ってますか?」
……………は?
「ごめん、なんだって?」
「だから! アヤナさんはマモルさんのことどう思っているんですか!」
「……え~と、猪突猛進の大バカ野郎で、お人好しで……」
「違います! マモルさんのことを女性としてどう思うかです!」
分かってるよ! 分かってるけど唐突にこの質問っておかしくない!? なんの前触れもなかったよ!? そりゃ話も逸らしたくなるよ!
「で、好きなんですか? 嫌いなんですか?」
「嫌いじゃ……ないけど……」
「じゃ、好きなんですね?」
「お、幼馴染としてだよ! そんなこと、考えたこともないし……」
「はぁ……、だめですね、アヤナさんは」
目の前の幼児が大げさにため息をつく。なんかムカつく。
「そう言うアリシアはどうなの? 守のこと好きなんじゃないの?」
「好きですよ」
即答だった。そういえば最近はなかったけどアリシアってヤンデレだった。そりゃ即答もするよね。
「じゃ、じゃあ、なんで私にそんなことを聞くのよ?」
まさか私を消すための確認……とか? ヤバい! それはヤバいって!
「それは…………」
「それは…………?」
ごくりと喉が鳴った。この答えによって今後アリシアに対しての接し方(というか殺されない方法)を考えなくてはいけない。というか殺されたくないーーー!
〔Arishia side〕
「それは…………」
そこまで言ったところで言葉が止まった。はたしてこれは私の口から言っていいのだろうか。こういうのは普通自分の口から言うものだから…………。
「それは…………?」
アヤナさんの喉がごくりと鳴った。アヤナさんの顔は真剣そのものだった。
…………言っちゃダメだよね、やっぱり。だってアヤナさんこんなに真剣なんだもん。
「秘密です」
「……え? ちょ、なんでよ!?」
「それも秘密です」
「ひど! ねぇ、教えてよー! 気になるじゃない!」
慌てるアヤナさんはなんか子供みたいで可愛かった。
「いいなぁ、あの二人……」
アヤナさんがマモルさんを探しに行ってしまった後、私は宿に戻り、ベッドの上で軽くぼやいた。
正直、マモルさんの事は諦めてる。だって、アヤナさんと一緒にいるマモルさんはすごく、幸せそうだったから。私には、あの幸せそうな顔をさせてあげられるのは無理だと思う。アヤナさんだから出来るんだ。
『アリシア……』
ウンディーネ、私、泣かないよ? だって、涙は嬉しい時にしか流したくないもん。
『そう……でも、無理しないでね? 私は何時だってあなたの味方なんだから』
うん……ありがと。マモルさんの事はまだ好きだけど、好きだった人に好きでいて欲しいって気持ちは、持っていてもいいよね?
『当たり前じゃない』
そうだよね。ありがと…………。
うう、アリシア……けなげだなぁ……。
ウンディーネ「そうよ。いい子なんだから…………幸せにしてあげないと許さないわよ?」
当たり前だろ! この物語はみんなハッピーエンドで終わらせる……つもり。
ウ「いまいち信用ならないわね……」
でも少なくともアリシアは幸せになるから!
ウ「ホントなのかしら」
ほんとほんと! では次回予告!
ウ「アリシアと別れた綾奈はようやく守を発見する。そこで……次回、『街はずれにて』」
お楽しみに!