第7話 吸血鬼の国
一悶着あったが何事もなかったように一緒に歩いていた。
「ところで、どっちに向かうんだ?」
「まずは、馬車が会った所に行くわ。」
「了解。」
そうして俺たちは、馬車の場所まで行った。
「うわぁ。」
「血だらけね、さらにひどい匂い。」
そこには、酷く破損した馬車とそこら中に飛び散る血痕があった。
「フィナ、これ何か分かるか?」
そう言い手に取ったものは、ペンダントだった。中には家族写真らしきものが入っていた。
「この写真に写っている小さい男の子は兄上の護衛に少し面影が似ているわね。」
「んじゃ、これ持って行くか?」
「そうね。しっかりと弔わないとね。他にも遺品があるかもしれないから探しましょう。」
そうして、フィナの護衛だった人たちの遺品を持って行くことになった。
馬車のところから王城に向かって道沿いを歩いているとフィナの気分が悪そうだった。
「大丈夫かフィナ。」
「大丈夫、と言いたいところだけど少し気分がすぐれないわ。」
「なら休憩するか?」
「いえ、進みましょう。嫌な予感がするから早く行きましょう。」
そう言いまた俺たちは歩き出した。
「後どれくらいの距離か分かるか。」
「後50キロくらいよ。今日の夜には着くわ。」
「と言うか、場所わかるんだな。」
「ええ、私たち吸血鬼は帰る場所が離れていても分かるようになっているのよ。」
「なら、この道沿いを真っ直ぐ進めば着くんだな?」
「?ええ、そうだけど。」
「ならもっと早く着く方法があるぞ。」
「本当!それなら急ぎましょう。それでどうするの?」
「その方法は、俺がフィナを抱えて走る。ただそれだけだ。」
少し決め顔で言うと、フィナはとても難しそうな顔で考えてる。
「嫌なら、別にいいんだが。」
「い、嫌じゃないわ。」
「んじゃ、おんぶするぞ。背中に乗ってくれ。」
そうしておずおずとフィナは背中に乗ってきた。
「大丈夫?重くない。」
「全然重くないぞ?」
「良かった。」
そう小さな声でフィナは言った。
「何か言ったか?」
「な、何でもないわよ!」
そう言ったフィナの顔は真っ赤だった。
「まあいいか。それじゃ行くぞ。」
そうして段々とスピードを上げて走っていたら叩かれていることがわかったため止まった。
「どうしたフィナ。」
「どうしたって、貴方速すぎるのよ。限度っていうものがあるでしょ!」
「いやまだトップスピードじゃないんだが?」
そう言ったらフィナはとても呆れた顔をした。
「はぁ、貴方ってもしかして非常識?」
「そうかもしれん。」
誰も住んでいない様な場所に住んでる時点でおかしいもんな。側から見たらやばいやつだもん。
「分かっているなら良いわよ、少し言いすぎたわね。ごめんなさい。」
「いや、別にフィナが気にすることじゃないから。そんじゃ少しスピードを落として走って行くわ。」
「ええ、よろしく。」
そうして時速50キロくらいで走っていった。
それから一時間後
とんとん、と肩を叩かれ止まるとフィナが言った。
「ここから降ろしてくれないかしら。」
「わかった。」
そうしてフィナを地面におろした。
「ここから少し変装するわよ。」
そう言いズボンから指輪を取り出した。そうして光ったかと思ったらいきなりフィナの姿が変わった。
その姿はフィナの顔に似た人間の顔になっていた。
「フィナか?」
「ええ、そうよ。貴方と同じヒューマンになったのだけれどどうかしら。」
「可愛いんじゃないか?」
「そ、そう言うことを聞きたいわけじゃないわよ!ちゃんと変装できているかどうか聞きたいのよ!」
「あ、そう言うことね。それだったら普通にできているぞ。でもここ、吸血鬼の国なんだろそれだったら人間なんて目立つだけだと思うが?」
「そうよ、だからこの指輪を使うのは私じゃなくリョウタが使うのよ。」
「は?」
「だから、貴方が使うのこの指輪を。」
「なるほど、確かに俺は人間だから目立つよな。それならその指輪を使うわ。それでどうやって変身するんだ?」
そうなのだこの指輪の使い方が全くわからない事にはどうしようもない。
「そうね、この指輪は魔道具で魔力を込めれば使えるわ。それとイメージもしっかりしないと行けないからね。」
「わかった。」
イメージかそれならフィナを見ればいいんじゃね?
「フィナ、顔を良く見せてくれ。」
「ふぇ?」
「いや、イメージするためにフィナを見れば良いじゃんって思ってさ。」
「わ、分かったわ。」
そうして指輪に魔力を込めながらフィナを見つめていたら指輪が光り出した。
「フィナどうだ?変装できているか?」
そうフィナに聞いたが返事がない。どこかボーッとしている。
「フィナ?」
そう言いフィナの肩を揺らす。
「えっ。」
「いや、どうしたいきなりボーッとし出して疲れが溜まってるのか?」
そうして俺の方を見たら顔を真っ赤にした。
「そ、それ!」
そうしてフィナが指を差したところを見ると翼が生えていた。その翼はとても魔が魔がしかった。
「なんだこれ!えっマジでなんだこれ!フィナ!これをどうにかしてくれ!」
「も、戻りたい姿をイメージすれば良いのよ!」
フィナは顔を背けながら言った。
「人間をイメージすればいいんだな!」
そうして人間のイメージをして変身した。
「元に戻ってよかった。」
「本当、とても危なかったわ。」
フィナは俺が変身を解除すると少し呼吸を整えて元に戻った。
「それでどうだった俺の変装。」
「カ、カッコよかった。」
「かっこよかった?」
「そ、そのね私たち吸血鬼は翼に魅力を感じるのよだから貴方が変身した時その翼に魅了されちゃってね。」
「はぁ、さいですか。それだとフィナは翼を出してないけどどうなんだ?」
「私は眠る時とかじゃまだからしまっているのよ。だから街を歩いていると翼をしまっている吸血鬼やおおっぴらに翼を広げている吸血鬼もいるわよ。」
「それで行けそうか俺の変装で?」
「翼をしまえば多分普通に入れると思うけど。」
「そんなに俺の翼ってかっこいいのか?」
「多分世界一かっこいいんじゃないかしら?私は良くお見合いとかするのだけどその時見た翼よりもリョウタの翼の方がカッコいいわ。」
なんかくすぐったいな。容姿を褒められることは前世で何回かあったけど、こんなふうにベタ褒めはなかったからな。まあ今褒められているのは翼だけど。
「んじゃ変装も完璧だし行くか?」
そうして変身後の変装した状態(翼なし)の姿でフィナに聞いた。
「そうね行くわよ。」
そうして門の前に行くと誰も居なかった。
「どう言うことだ?誰も居ないぞ。」
「変ね、絶対に門番はいるはずなのだけれど。」
門番もいなく、住民も一人もいなかった。試しに索敵してみると家の中には人がいた。
「フィナ、家の中には人がいるみたいだぞ。」
「とりあえず王城まで進んでみましょう。」
そうして道ながら歩いていると店の中から呼ばれた。
「あんたたち、こっちにきな。」
「どうするフィナ?」
「行くわよ。」
そう言いフィナが店に向かったからその後についていった。
「あんたたち命知らずにも程があるよ。」
そう、ザ・女将みたいな人に言われた。
「どうゆう事。」
「あんたたち知らないのかい。第二王子が反逆したって話し、そして王座に着いちまったのさ、んでそれに納得出来ない奴が王子を襲ったわけよ、そしたら物凄く強い側近が第二王子のそばにいて一瞬にして襲いかかってきた奴らを血祭りに上げたのさ、そして第二王子がこう言ったのさ『この私が王だ私に逆らうな、逆らったら殺すぞ』って言ってこのザマさ。」
そう街を見ながら女将さんが言った。
「それで王は殺されたんですか?」
今にも女将に問い詰め用としているフィナの口を押さえながら聞いた。
「さあね、噂でいいなら、王は奥さん人質に取られて牢に閉じ込められてるって話だけど。真実かどうかわからないからねー。」
「なら、第一王子はどうですか。」
そう聞いたら暴れていたフィナがピタッと止まった。
「第一王子も牢に閉じ込められてるって噂だけど、第二王子に殺されたって言う噂も有るよ。第一王子は私たち平民にも気さくで優しいって聞くから王になってもらうなら第一王子の方が私たちはよかったんだけどね。」
「なるほど教えていただきありがとうございます。」
そうして外に出ようとしたら呼び止められた。
「あんたたちどこにいくきだい。外に出るのはやめな。」
「ご心配いただきありがとうございます。ですかぼくたちにも少し用事がありましてね。」
そうして俺の目を見た女将さん。そうしたら何か伝わったのか
「そうかい。ならこれを持っていきな」
そう言いポーションらしきものをくれた。
「ありがとうございます。」
「フィナ聴いての通りだ。どうしたい。」
「お父様とお母様そして兄様を助ける。」
「了解。」
そうして今度こそ王城に向かって俺たちは進んでいった。