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邪竜の子育て  作者: シンビ
8/10

オリエンテーション

遅くなり過ぎましたすいません。

ーーーールリア視点ーーーー



 今私はグレイさんが作ったという異空間にいる。正直夢でも見ているのではと思っているがどうやら現実らしい。自分の空間を作るなんて神様なのだろうか?



「セルフィ!反応が遅い!相手のどんな動きでも見逃すな!」



 セルフィーナもグレイさんに遅れないように噛みついている。グレイさんはアレで手を抜いているのがまた別次元なのを感じさせてくる。



「そこ!さっきからステップが同じだ!」



 グレイさんは魔弾を正確にセルフィーナの左足に命中させている。動いている的に当てるのは至難の業だ。 私は少し後悔している、こんなにもセルフィーナとの差がこんなにもあるとは思っていなかった。



「そこ!障壁が薄い!」



 おかしい、、、唯の魔弾では最底辺の障壁でも破れるはずが無いのにあっさり破っている。あの魔弾にはどれだけの魔力量があるのだろうか。



「はぁ、、、はぁ、、、」



 セルフィーナを見れば肩で息をしていた。



「今日はここまでだな」



「疲れた、、、」



「大丈夫?」



「なんとか、、、」



「戻って晩飯にしよう」



 グレイさんの料理は相変わらず最高でした。



ーーーーグレイ視点ーーーー



 あれから一週間経って学院の授業を見てきたがやはりセルフィには物足りかったので夜や朝を使って魔術を教えたり模擬戦をしたりと補っていた。



「皆さんは来週にオリエンテーションがあります。内容は参加希望者のみがトーナメント式の模擬戦を行います。剣技科の生徒も参加しますが無論刃がついていない物を使いますので安心してください。ですが当たれば痛いので覚悟はしてください。安全確保のため防魔結界を出場者に張ります。参加したくない人は後ほど先生の所に来てください。では解散」



「セルフィーナは出場するよね」



「うん。ルリアはしないの?」



「そうだね。私は医療魔術が得意だけど攻撃系はどうにも上手くいかないから」



「でも剣技科の人達とは喋ったこともないから緊張するなぁ」



「セルフィーナはグレイさんとあれだけ戦えるなら圧勝できるよ」



「だったら良いけどね」



 実際問題、相手を見ないとわからない。



『今緊張しても始まらないだろう。本番まで鍛えるのみだ』



「だよねぇ」



 セルフィは全身の力が抜けたように机に突っ伏した。今回のオリエンテーションはセルフィにとって勝敗とわずいい経験になるだろう。もっと前向きになってもらわないとな。



『セルフィ、優勝したらなんでも一つだけ願いを聞いてやろう』



「本当!?なんでも!?」



『なんでもだ』



「それなら私頑張れるよ!」



 それから鬼のように特訓した。授業も自主の時間が多くなり各自独自の特訓をしていた。セルフィも例外ではなく魔術の構築速度上昇に力を入れ夜と朝に俺との模擬戦をしてついにオリエンテーションの前夜になり今はソファーに座っている俺の膝にセルフィは頭を置いて寝そべっている。



「お父さん、明日は優勝出来るかな?」



「セルフィなら大丈夫だ」



「でも、あれだけお父さんと模擬戦をしても一撃も攻撃を当てれなかったよ?」



「俺とセルフィでは生きてきた時間が違いすぎる。それに俺は今まで戦い続け無意味に敵を作り、死体の大陸を作り、血の海を作り、何もなし得なかった愚物だ」



「でも最初に私を見つけてくれた時に私を守ってくれたでしょ?」



 セルフィは俺の頬に触れながら優しく言った。



「よく赤ん坊の時の事を覚えているな」



「ぼんやりだけど覚えているよ。お父さんに育ててもらってすごく嬉しい。こんなにかっこいいお父さんなんて他に居ないよ」



 セルフィは次に俺の手を取ると両手で握りしめた。



「俺もセルフィを育てられて幸せだ」



「私、、、お父さんには、、、本当に、、、感謝、、して」



 セルフィを見ると既に眠ってしまった。今日は特訓もしたし疲れたのだろう。ここで寝かせる訳にもいかないので寝室にセルフィを運びベッドに寝かせた。俺は離れようとするとセルフィは寝たまま俺の手を取ってきた。



「お、、、父、、さん、、、」



「おやすみセルフィ」



 今日はこのまま眠るとしよう。だが今日は少し昔を思い出してしまった。



 結局その夜は眠る事はできなかった。



ーーーーセルフィーナ視点ーーーー



 今日は待ちに待ったオリエンテーション当日だ。お父さんは優勝したら何でもしてくれると言ってくれているのでいつもよりやる気が出ている。今は長ったらしい学院長の話だ、正直話の内容は殆ど頭に入ってきていない。



「では学院教師一同皆様にとって有意義な試合になることを願っています」



 最初の無意味な時間が終わりを告げやっとオリエンテーションが開始される。



「それでは早速第67回新入生歓迎オリエンテーションを開始いたします!司会進行を務めます2年生エリーナです!ルールは簡単!相手に降参させるか、試合が継続出来ない状態に落ち込ませるかしたら勝利です!まずブロックごとに分かれていただきます!出場者は各自会場へ移動してください」



 どうやら出場者は思ったより少なく殆どの人が辞退するらしい。全体でA、B、Cブロックあり各30名いるらしくブロックでの上位2名が決勝に進むらしい。ちなみに私はCブロックだ。



 会場に着き待っているとやっと模擬戦が行われた。剣技科の生徒もいる。どうやら剣技科の生徒は魔術科のことを毛嫌いしている人が多いらしくさっきからヒソヒソと囁く声が聞こえる。



「魔術科の奴らは全員ヒョロイな」



「魔術の攻撃なんて近づけは勝てるな」



 どうやら魔術科と剣技科では溝があるらしい。



『あのガキどもに一生腕が動かない呪いでも掛けてやろうか』



 どうやらお父さんは私も含まれているので不機嫌らしい。



「お父さんストップ。私が試合の時に魔術を教えてくる」



 お父さんはやりかねないので止めておく。待っているとアナウンスがかかった。



『Cブロックの次の試合は一年生魔術科セルフィーナ・グレーイ2年生対剣技科レイク・トーリクです』



「移動しないと!」



 急いで入場ゲートまで移動する。



「それじゃ行ってくるね」



『ああ、応援してるぞ』



 残念だがお父さんは一緒に出れないと告げたところ「入場デートで待っている。一番最初に出迎えたいからな」と言ってくれた。私はその瞬間嬉しさで倒れてしまうかと思った。



「両者準備はいいですか?」



「はい」



「行けるぜ」



 相手は片手剣に盾とスタンダードな人だった。剣を使う人と戦うのは初めてだがお父さんに見守られているので負ける気がしない。



「それでは始め!」



「さっさと終わらせてやるぜ!」



 相手は本当に一瞬で終わらすつもりなのだろう一直線で距離を縮めてくる。お父さんの動きを見てきた私には動きが止まって見える。



「魔術なんて間に合わないぜ!『一直絶刀』」



「『雷光(ライジング)』」



「え?」



 どうやらこの距離では魔術は間に合わないと踏んだのだろう。だが私は魔陣式なのでこの距離でも間に合わせれる。



「ぎゃぁぁぁぁぁ!」



 相手は魔術に直撃して感電し煙りを吐いて倒れてしまった。観客席からは驚きの声が上がってきた。



「レイク先輩が一撃!?」



「なんだ!あの一年構築速度が尋常じゃない!」



 審判も今の出来事が信じられなかっただろうか反応が遅れていた。



「、、は!勝者セルフィーナ・ダーレス!」



 そして入場ゲートに戻りお父さんと合流する。



『あの相手は流石に雑魚過ぎたな』



「うん、、、失礼だけど流石に舐めすぎだったね」



 それからの相手は私に警戒してあたってくるがどれも駄目だった。距離を離して魔術を撃ってくる人には出力で押し切ったり相手と私では根本的な差があり過ぎて話にならなかった。気づけばCブロック最後の試合だった。



「それではCブロック決勝戦始め!」



 今回の相手は剣技科の3年だ名前は忘れてしまったがどうやら今までの相手とは違うらしい。武器は大きな大剣で、体格は2mはあるだろう、右手には指輪が2個付いていて黄色と紫の宝石が輝いている。体は全身には筋肉が付いていて並大抵のことでは効かないだろう。



「おい女、ここで降参してくれねぇか?生憎だが俺に女を痛ぶる趣味はねぇんだ」



「私も痛ぶられる趣味は無いですし、引くなんて出来ません」



 今は負ける訳には行かないしお父さんに鍛えてもらって外見だけで怖気ついて逃げるなんて出来ない。



「何でだ?ここで引いても決勝戦には出場できるぞ」



「そこも重要ですが私は大切な人に見守られていて、そこで戦わずに逃げるなんて惨めです」



 すると相手は誰にも聞こえないように聞いてきた。



「成程、、、彼氏か?」



「そうなる予定の人です」



「なるほどな、、、じゃやるしかないな!」



「そうですね」



「行くぞぉ!」



 相手は後ろに下がって試合が再開された。相手は大剣を抜くと走って私に向かってくる。アレほどの大剣を持ったままあのスピードで走れるとは驚いた。このまま接近戦に持ち込まれても面倒なので私は左手を向け魔術を放つ。



雷光(ライジング)!』」



「その魔術はさっきの試合でも見たぜ!」



 するとその大剣を振り抜き私の魔術を切り裂いたのだ。この魔術はそれなりのスピードを持っているのにあっさり切られてしまった。



「オラァ!避けないと潰れるぜぇ!」



 あっという間に相手の間合いに入れられてしまった。私は障壁を構築してなんとか防ぐが振り下ろされる大剣を弾いたと思ったら障壁も崩れてしまった。



「オラァ!次行くぜぇ!」



 また振り下ろされる大剣。障壁を作ったところで破壊される。意味がないので私は右に避け、大剣が石畳を砕いた。振り下ろしたら持ち上げるのにスキが生まれる。その瞬間に左手を相手の頭に向けて魔術を放つ。



「『短縮爆破(ショートボム)』」



「グハッ!」



 魔術の効果で爆煙が出ていて姿は見えないがこの魔術をまともに当たって耐えれる人は居ないだろう。



「イテェなぁ!」



「嘘!?」



 相手は完全に食らったのにピンピンしていた。



「お返しだぁ!」



 すると大剣で振り上げ攻撃をしてきた。私は間一髪その攻撃を避けた。



「チッなかなか決まらないなぁ!」



 そして間合いから逃さないように相手は大剣を振り回して来た。



「反撃はしてこねぇのか!?」



 こんな大きい大剣をこんなに早く振り回してくるとは。油断していると食らってしまう。



「ちょこまかと面倒臭ぇなぁ!」



 大剣の速度が急に速くなり始めた。相手の魔力を見てみるとさっきより魔力が放出されている。どうやら温存をせずに全力で来るらしい。



「もう面倒臭いことはしねぇ!一気に終わらしてやるよ!」



 速度が上がり一気に避け難くなってしまった。



「潰れろぉ!」



 決着をつけるつもりなのだろう大剣を振り下ろしてくる。だがこの攻撃は最初に見ているので対処は容易く振り下ろされると同時に右に避ける。煙が上がり相手は見えていないが場所は掴めている。このまま威力をさっきより上げ一撃で終わらせる。



「『突風(ガスト)』!」



 これに直撃すれば衝撃で気絶は避けられない。魔術が放たれ煙と共に相手を弾き飛ばしているはずだったが。



「悪いな」



 相手は右手をこちらに向けていて指に付いている指輪の片方が魔力を帯びて光っていた。



「魔道具って奴だこの指輪には結界の魔術が入っている。これなら魔力を通すだけで発動するって訳だ。もう一つには『高圧紫電(ハイボルト)』だ。俺が当たっても気絶しちまう品物だ」



「この瞬間を待っていた訳ですか」



「その通りだ。最初で動きの癖を読んだ。ここで降参するか?」



「しません」



「ならこれで終わりだな。誇っていいぜこれは奥の手だったんだ。あばよ!」



 相手は魔力を右手の指輪に通し魔術を発動させる。だが魔術は発動しなかった。



「な!なんで発動しないんだ!、、、なんだこれは!」



 指輪を見ると紫の宝石にヒビが入っていた。



「お前!いつの間にこんなことを!」



「最初の爆発を起こした時です。貴方の指輪が魔道具って事は最初から気づいていましたよ」



「お、お前!最初に気づいてあえて泳がしたのか!」



「そういう訳です」



「はは!まんまと嵌められたって訳か!でもなお前では俺を気絶させる魔術なんて撃てるのか!撃ったと同時に大剣を叩き込んでやるぜ!」



 私は左手から魔術陣だけ展開させる。



「お、、、おいその魔術は、、、」



「はい。貴方が先ほど言っていた『高圧紫電(ハイボルト)』です」



「う、、、嘘だろ、、、」



 相手が引きつった笑みだが私は笑顔で返した。



「これで終わりです」



 魔術を放ち、相手は感電し気絶した。



「勝者セルフィーナ・ダーレス!」



 勝者が告げられると観客席からは大称賛の声が上げられる。



「あの一年すげぇぇぇ!」



「かっこいいーーー!」



 周りが声を上げるが私にはどれもどうでもいい声だった。今一番聞きたいのはお父さんからの言葉だ。




「お父さん!どうだった?今回の試合は少し楽しめたよ」



『見ていて楽しかったぞ。上手く相手を誘導したな、だがセルフィの相手としては少し力不足だったな』



「次は決勝戦か。どんな人が当たるんだろ」



『どんな相手でも落ち着いて見極めろ』



「うん。優勝しないとね!」



 お父さんにいつも以上に甘えるチャンスだ逃す訳にはいかない。

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