9話 白鳥れーこは、転生したら悪役令嬢になってしまった NO.02
私は、白鳥零子。どうやら、死んでしまったらしい。
やたら胸を強調した小さな女の子を前にしていた。
「珍しいですね。地獄行の人以外が来るなんて・・・」
「そんなに珍しいんですか?」
「はい。大体は同意書を見て辞めてしまう方ばかりなので。」
「そうなんだ・・・」
「同意して来ているなら、説明不要ですね。じゃあ、早速、ガチャ回しちゃいましょう。」
「ガチャか・・・」
学生時代からゲームは好きだったけど、就職してからは、ソシャゲを少しかじっただけなんだけど・・・絶望的にガチャ運がなかったんだよね。
「大丈夫ですよ。白鳥さんの場合、SSR確定ですから。」
「そうなの・・・」
ラッキー。どんなチートスキル貰えるのかな・・・ワクワク。
天井からガチャが降りてくる。
「そこのスイッチをバババーンっと押しちゃって下さい。」
バババーンって・・・この子、ノリ軽いなぁ・・・
「じゃあ、ここを押せばいいのね。」
私は、言われるがまま、バババーンとガチャのスイッチを押した。
ガチャから五月蠅い音が鳴り響くとガシャポンっとカプセルが虹色に輝きながら転がり出る。
「白鳥さん。確定演出ですよ!やりましたね。」
やりましたねって・・・確定なんでしょ。おかしいですよ。
『特殊技能【未来視】を覚えました。』
何故か、アナウンスが流れる。
「やりましたよ!白鳥さん。これで、勝るですよ!」
勝るって・・・確かなんかしろのフラグ感、満載なんですがそれは・・・
でも、未来視ってことは、未来が見れるって事よね・・・確かに勝るかも知れない。
「覚えたのはいいけど、どうやって使うんですか?」
「そ、それは・・・転生したら自分で確かめて下さいね。」
なんか、目が泳いでますよ、お姉さん。
「はあ・・・」
わからないなら、わからないって言えばいいのに・・・
「・・・と、とにかく、特殊技能の付与は完了しました。この同意書を持って異世界転生課に行って下さい。」
お姉さんは、同意書になにやら書き込むと私に渡した。
私は言われた通り、異世界転生課に行った。
そこに受付と書かれた小窓がある。そして、通路の椅子に温和そうなお婆ちゃんが座っていた。
私は受付をすますと椅子に腰かけた。
すると、お婆ちゃんが話しかけてきた。
「おやおや、お嬢さんも転生ってのを選んだのかえ?」
「ええ、まあ・・・」
「若いのに大変だねえ・・・」
見た目は若返ってますけど、中身は28なんですよね・・・
「お婆ちゃんもその・・・亡くなって・・・」
「わたしゃ、充分、生きたからいいんだよ・・・」
「お婆ちゃんも転生を選んだんですね。」
「そうよ。わたしゃ、退屈なところが苦手でねぇ・・・折角、なんでねぇ、転生ってのをしてみようと思ってね。」
「私もですよ。」
「ははは・・・奇遇ねぇ・・・・・・」
「武位さ~ん。奥の部屋へどうぞ。」
受付から呼ばれるとお婆ちゃんは、私に軽く会釈をすると部屋の中へと入って行った。
人の好さそうなお婆ちゃんだったな・・・
でも、あのお婆ちゃんも同意したってことよね・・・あの条件を・・・
そうこうしてると、又、一人、通路にやって来た者が・・・
ウゲ、ヤンキーじゃんか・・・目を合わせないようにしなくちゃ。
「あんたも、タライ回しされた口か?」
うわぁ・・・話しかけられたんですけど・・・どうしよ、どうしよ・・・
取りあえず、聞かなかったことにしましょう。
「シカトかよ!」
怒ってらしゃるよ・・・落ち着け私。気にしない気にしない。
「白鳥さ~ん。奥の部屋へどうぞ。」
やったーーーー。これで、ここから離れられるよ~~~。
私は、チラッとヤンキーを見ると、明らかに不機嫌そうだった。
くわばら、くわばら・・・
しれっと私は、奥の部屋に入った。
怖かった・・・でも、なんだろう・・・あのヤンキーどこかで見た様な・・・気のせい気のせい。
中に入ると、太めのおじさんが金持ちのするような笑い声をあげていた。
オーホホホホ・・・
「白鳥さん。ようこそ異世界転生課へ。」
「あ、はい。」
メタボね・・・運動した方がいいですよおじさん。
「余計なお世話です。」
心の声がダダ漏れでした。テヘペロ。。
「そんなことより、これからのお話しをしましょう。」
「そうですね・・・で、異世界ってどんなところなんですか?」
「勿論、剣と魔法のファンタジー世界ですよ。」
「ですよね~~~。」
異世界転生って言ったら剣と魔法のファンタジーよね。
どんな世界かな?イケメンいるかな?
「いますよ、イケメン。それも一杯・・・」
意味深に太ったおじさんは言った。なにか含みがあるようだった。
「あらやだ、やったー・・・」
取りあえず、乗っかておこう。
「これから、白鳥さんが転生する世界は・・・そうですね・・・名付けるなら
『ウェラヴァ』ってとこでしょうか。」
「おじさんが、名付けるんですか・・・」
「あなたの居た世界に名前がありましたか?」
「あ、はい、ないですね。」
「そうです。異世界にも名前なんてありません。あなたの世界での創作物の影響ですね。なのでわかりやすい様に名を付けさせて貰いました。」
「はあ・・・」
でも、『ウェラヴァ』ってなにか聞き覚えがあるんだけど・・・気のせいかしら?
おじさんは、オホホホと笑っている。
「では、これを・・・これは、あなたの転生先の人物の資料です。よ~~~く、お読み下さい。」
渡された資料に目を通す。
え~と、なになに・・・
「カトリーヌ=ディゼル=クロフォード。性別、女、享年8歳・・・・・・
ちょっと待ってよ。これって・・・詰んでません?」
「どこがです?」
「8歳って、どう見ても不利でしょ。」
「大丈夫ですよ白鳥さん。その辺も考慮された転生先ですから・・・」
いやいや、そんなこと言われてもねぇ・・・
「仕方ありませんねぇ・・・白鳥さんには、特別にお教えしましょう。それは、転生してからすぐに始まる訳ではありません。全員が出そろってからになりますので、場合によっては何年も始まるのにかかることだってあるのです。」
「はい!?」
つまり、どう言うことだってばよ。
「つまり、準備期間があるかも・・・知れないと言うことだってばよ。」
このおじさんもノリいいなぁ・・・
と、言うことは・・・十分に対策できる時間があるってことね・・・
「確実とは言えませんが・・・」
「え!?確実じゃぁ、ないんですか・・・」
「私の口から言えないってことです。公平性を守ると言う意味でね。」
まるで、察しろと言わんばかりね・・・でも、これって・・・優遇されてるってことよね。
おじさんは、オーホホホ・・・と肯定とも否定とも取れる態度をしている。
「そ~言うことね・・・」
勿論、これは肯定と私は判断した。それはそうと、確認をつづけよう。
「性格、わがまま、傲慢、唯我独尊、・・・なんか・・・性格悪くない?」
「そこは、気にする必要ないでしょう。」
「性格が変わりすぎたら、バレません?別人って・・・」
「死の淵から生還して、性格が変わるってことは良くあることですよ。」
「なるほどね・・・そう言う体でしらを切れってことですよね。」
「オホホホホ・・・」
死因は、病死か・・・病名が書いてないけど・・・
「安心して下さい。オプションで綺麗さっぱりなくなりますから。」
そう言えば、そんなオプション付けたわね。
えーと・・・後は、家族の情報だけか・・・にしても。
「カトリーヌ=ディゼル=クロフォード・・・なんか覚えが・・・」
「カトリーヌなんてどこにでもある名前ですからね。」
「それもそうよね・・・」
下に弟が3人いるのか・・・にしても、一番上の弟の名前・・・アルフレッド=ディゼル=クロフォード・・・何か引っかかるのだけど・・・。
「もう、大丈夫ですかな白鳥さん。」
「ええ・・・ちなみにもう少し詳しい情報が欲しいって言ったら・・・」
「それは、欲張りと言うものですよ。」
「はは・・・言ってみただけですよ。やだなぁ・・・」
「オホホホ・・・流石、白鳥さん、聡いですね。」
後は、転生先で自分で調べろってことか・・・まあ、私には時間もあるみたいだし・・・
本当に、勝るかも。
「白鳥さんには、必要ないと思いますが、形式なんで一応ね・・・・・・
最期に確認します。同意書は、ちゃんと目を通しましたか?質問はありませんか?」
ぶっちゃけ、質問はあるのだが・・・答えてくれないんだろうな・・・
「オホホホ・・・」
「ないわ。」
「同意とみてよろしいですね。では・・・」
すると、床下から装置が上がってきた。装置にはNO.3と記されていた。
「白鳥さん。ゲートの中へどうぞ。」
異世界転生って、意外に近代的なのね。
私は装置に入った。
「期待してますよ、白鳥さん。」
おじさんがそう言った後、妙な声がしてバシュンっと音がした・・・
その後のことは、覚えていない。気づけば、一人の少女の中にいた。
私が少女の中に入ると、奇妙な感覚に襲われる・・・
何かが抜け出るような感覚が・・・
これは多分、少女の魂が抜け出たからだろうと理解する。
すると、アナウンスが・・・
『自動修復オプション発動します。自動修復オプション発動します。』
大事なことなので2度言いました。な~んてね。
少女を犯していた病が浄化されるのがわかった。
『健康状態オールクリア。』
私は8歳の少女、カトリーヌ=ディゼル=クロフォードに転生した。