8話 白鳥れーこは、転生したら悪役令嬢になってしまった NO.01
私は白鳥零子。
あだ名は、どこに行っても『ございます』だ。
それは、学生時代、就職しても変わらなかった。
私の日常は、昼間は会社、夜は、婚活だったんだけど最近は・・・
とにかく、私は、結婚適齢期の28歳なの。
周りは、皆、結婚していく中、一人残されたみたいで、正直、焦っている。
その日は、婚活パーティーならぬ、ちょっとした集まりに参加していた。
高学歴、年収三千万以上、イケメンが私の理想だ。
理想は、理想。そんな好条件の男は、婚活には来ない。
そこそこマシな男と話すも、上手くいかない。
自分で言うのもなんですが、私もそこそこの美人だと思う。
でも、男が寄り付かない。
髪が長いのがいけないのかしら?ショートヘアにしてみようかな?
この日も結局、出会いはなかった。
翌日、友人の京香と呑むことに・・・勿論、家呑み。
呑みと言っても、私の愚痴を聞いてもらうだけなんだけども・・・
「もう、よしなよれーこ。飲みすぎよ。」
「飲まずにはやってられないのよ。」
缶ビールをプシュッと開け、グビグビと呑む。
「上司には、嫌味を言われ、後輩にはお局様扱い・・・やってられないわぁ。
いい男もいないし・・・はあ・・・」
「はいはい、そうねそうね・・・」
缶ハイボールをプシュっと開けそれも又、グビグビといく。
「れーこ、やめなよ。飲みすぎ~。」
「これくらい、大丈夫、大丈夫・・・」ヒック。
その後も浴びる様に酒を呑んだ。
大丈夫じゃなかった。
気づけば、私は見知らぬ場所にいた。
しかも、学生時代の姿をして・・・
「やだ、懐かしい・・・これ、高校の時の制服よね。」
これじゃ、コスプレじゃん。ただの痛い人だ。
「大丈夫ですよ。その姿は、あなたの魂を理想の姿を具現化したものですから。」
眼鏡の白髪の男が言う。
「いつからそこに・・・」
「最初っからですが?」
眼鏡をクイッと上げる白髪の男。
聞かれてた。恥ずかしい・・・でも、この人ちょっとイケメンじゃない。
「あの・・・ご職業は?」
「あなたの世界では、公務員にあたりますね。」
ド安定の職業じゃない・・・年収は期待できないけど・・・・・・ん?
あなたの世界?
「あなたの世界ってどう言う意味ですか?」
「ここは、閻魔区役所です。死後の世界と言った方がわかりやすいですかね。」
「死後の世界!?」
え?え?私、死んだの?
「はい。死にました。」
「あれ?私、口に出していました?」
「ここでは、嘘をついても、わかるように心の声は筒抜けです。」
「じゃ・・・年収は期待できないってのも・・・」
「ちゃんと、聞こえてましたよ。」
白髪の男は、ニッコリと答えた。
「ははは・・・」
私は取り繕った笑いでその場をやり過ごそうとした。
白髪の男は、気にせず話しを続けた。
「白鳥零子さんでよろしいですね。」
「あ、はい。」
「本人確認OKっと。では、これを持ってお待ち下さい。」
番号の書かれた紙を受け取り、待合室で待つことになった。
待合室には、利発そうな男の子と、見るからに温和そうなお婆ちゃんが座っていた。
この人たちも亡くなわれたのか・・・
暫くすると、もう一人、ガラの悪い男が入ってきた。
「ああ!なんだ文句あんのか!」
うわ・・・ヤンキーだ・・・関わらない様にしよ。
私の順番が回って来て、私は奥の部屋へと入った。
「白鳥零子さん。端的に言います。あなたは、天国にも地獄にも行けます。」
「え!?選べるんですか?」
「はい。あなたは、善行も悪行も大したことはしてないので、自由に選んで下さい。」
「だったら、普通に天国に行きたいです。」
「ですよね~。でも、こちらは、あえて提案したいのですが・・・」
「提案ですか・・・」
「はい。天国と言うのは、実に退屈な場所でして・・・天国に言った者のほとんどが、退屈に耐え切れず、転生を希望しているのです。」
「そうなんですか・・・で、それがなにか?」
「その・・・元の世界に転生の待ち時間がですがね・・・3億年待ちになってまして・・・」
「3億年!それは・・・・・・」
そんな時間待っていたら、考えるのを止めちゃうわ・・・
「そこで、新規の死亡者に対して、異世界転生をお勧めしているのです。」
異世界転生!?ちょっと前から流行ってる漫画やアニメの設定よね・・・本当にあるんだ。
「ちょっとした、条件があるのですが、説明、聞きますか?」
「聞きます!ちなみに・・・チートスキルが貰えるんですよね?」
「勿論ですよ。」
キラリンと男の眼鏡が光る。
私は、白髪の男から詳しい話しを聞いた。
簡単に言えば、異世界の死んだ人間に私の魂を代わりに入れると言うものだった。
「う~ん・・・どうしようかな。」
「危険も伴いますので、慎重に考えて下さい。」
「危険か・・・どうせ、死んでるんだし・・・異世界転生、行っちゃいますか。」
「そうですか。では、危機管理課へ行ってリスクの説明を受けて下さい。」
私は言われるがまま、危機管理課に行った。
そこには、40前後の御婦人がいた。
目つきがキツくてちょっと苦手かも・・・
御婦人はリスクについて、懇切丁寧に説明してくれた。
「この同意書を読んで納得したら、サインと拇印をしな。」
私は、同意書に目を通した。
書いてあることは、だいたい御婦人が説明した通りのものだった。
ただ、最後の項目だけは、異質なものだった。
「あの、質問いいですか?」
「構わないよ。その為の職員だし。」
「最後の項目のことなんですが・・・どう言う意味ですか?」
「書いてある通りの意味さぁね。」
「詳しく知りたいんですけど・・・」
「別に辞退したっていいんだよ。天国に行けるんならそれがいい。」
「でも、待ち時間が・・・」
「死んでるんだ、3億年なんてすぐさぁ・・・」
3億ですよ、3億。すぐじゃぁありません。
「でもこれ・・・面白そうですね。」
「あんた・・・やろうってのかい?」
「運命を変えつつ、敵とも戦えってことでしょ?」
「まあ、そうだね・・・」
「死んでるんなら、尚更、やってみたい!平凡な人生とは、おさらばよ。」
「わたしゃ、平凡な方がいいけどね・・・あんたが、そう、決めたんなら止めやしないよ。」
「はい。やります。」
「じゃあ、サインしな!その為の同意書さぁ・・・」
私は、同意書にサインと拇印をした。
「だったら、当然、特殊技能も必要だね。特殊技能付与課に行きな。当たりの特殊技能を引くのを祈ってやるよ。」
「ありがとう、おばさん。」
私は、特殊技能付与課に行った。
「馬鹿な子だねぇ・・・自ら、上々のお遊びに参加するなんて・・・」