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   6話 学院追放

ジータは、夢を見ていた。


それは、見知らぬ場所、見知らぬ男の夢を・・・


男は、黄色いヘンな髪形をしていて、ヒラヒラの服を着て、背中には見たこともない記号の様な文字が書かれていた。

その男は、うるさい鉄の騎馬にまたがり、蛇行する様に走っている。

その後ろには、ガラの悪い連中が続いていた。

赤く光る白黒の物体に追われているようだった。


ジータは、まるで自分が疾走しているような感覚を味わっていた。

見たこともない大きな建造物が建ち並ぶ街を颯爽と走り抜ける鉄の騎馬に心躍った。



   ◇◇◇



僕が目覚めると、全身に激しい痛みに襲われた。

昨日は、なんともなかったのに・・・


聞き慣れた優しい声がした。


ジータ、目が覚めたのですね。

母さん・・・

回復魔法をかけるわね。


ヒール。


痛みが和らいでいく。


まだ、痛い?

ありがとう、母さん。もう、大丈夫だよ。


「おめえの母ちゃん、就ききりで看病してくれてたんだぞ。」


そうか、昨日、帰ってきてそのまま、ダウンしてしまったんだった。


ジータの母は、悲しい顔をして告げる。


ジータ、一人で動けそう?お父さまがお呼びよ・・・

父さんが・・・いったい何だろう?あっ!学校は・・・

ジータ、もう、お昼過ぎよ。それに、もう、学校には・・・

母さん?

早くお父さまのところに行きなさい、大事な話しがあるから・・・

うん。わかったよ・・・


僕は、痛みが少し残る身体を起こし、父さんが待つ書斎へと出向いた。

書斎に入ると、父さんが険しい顔をして待っていた。


ジータ・・・お前、とんでもない事をしでかしたな・・・

なんの事でしょうか?


ジータの父は、ちょっとイラっとした表情をすると話しを続けた。


ブリジット家の坊ちゃんに暴力を振るったそうじゃないか。

それは、僕では・・・


「俺だ。」


言い訳はよさんか!多くの目撃者がいるんだ。見苦しいぞ。

僕は、本当に何もしてないんだ。

お前は、嘘を吐くような子ではないと思っていたんだが・・・


「嘘は吐いてはいないな・・・だが、嘘だ。」


この悪魔は・・・


僕がやったかもしれないけど、僕じゃないんだ。

意味がわからん。

本当に僕じゃないんだ。信じてよ父さん。


ジータの父は、ため息を吐くと、あきれ顔で言う。

本当か嘘かは、この際どうでもいい。問題なのは、暴力を振るった事実があると言うことだ。

ブリジット家は、お前の学院からの除籍を望まれている。

なんで!向こうが先に手を挙げたんだ。

どちらが先かの問題ではない。侯爵家の人間に男爵家が手を挙げたのが問題なのだ。

このままだと、我がジムリス家がお取潰しになってしまう。

・・・・・・

先方は、お前の学院からの除籍と王都からの追放で手を打ってくれると言う・・・

ジータ、わかるな・・・


わからないよ!なんで僕が・・・


残念ながら、これは決定事項だ。お前の意志は関係ない。

そんな、横暴な・・・


「良かったじゃねえか、これで、死なずにすんだな。」


良くないよ!!追放だよ追放!これから、僕、一人でどうすればいいんだよ。


「ジジジ、お前は、一人じゃねぇ。俺がいるだろ。」


もう、この悪魔どうにかしてくれよ。


「俺は、悪魔じゃねえ、阿熊だぁ!」



正式に決まるのは、三日後の学院会議でだ。

私も人の親だ。お前をただで放り出そうなんて考えておらん。

私の知り合いの辺境伯の領地に行って貰う。


辺境伯の領地・・・異民族からの侵略を防ぐ要衝の地・・・つまり、最前線じゃないか。


嫌なら、冒険者にでもなれ。だが、辺境伯のところに行けば、衣食住が保証され、尚且つ、仕官待遇として向かい入れられる。悪い話しではない。


・・・・・・


1日だけ時間をやる。よく考えて結論を出せジータ。


「ちゃんっとお前のこと考えてくれてる、いい親父さんじゃねぇか。」


・・・・・・誰のせいで、こんな事になっていると思ってるんですか・・・


「そりゃ、お前のせいだろ?」


あ・な・た・のせいでしょ!


「はあ!?何を言ってやがる!!どう見ても、お前がヘタレてるのが悪いだろ!」


僕が、我慢してたら、やり過ごせたんだ。


「馬鹿かお前は!その結果、お前が死ぬことになるんだぞ!それだけだったらまだいい・・・ユースって子はどうなる?」


それは・・・


「あのままでいったら、あの子は、辱めを受けた!お前は、それを黙って見て見ぬふりをしようとしていた・・・最低な行為だ!!」


僕は何も言い返せなかった。


「よ~~~く、わかった。お前の性根、俺が叩き直してやる!!」


と言っても、アグマさん何も出来ないじゃないですか。


「口は出せる。」


はいはい・・・



僕が、父さんの書斎を出ると弟たちが待っていた。


兄ちゃん、どっか行っちゃうの?

嫌だよ、兄ちゃんがいなくなるの・・・


一番下の妹キャスリンは、よくわかってない様だ。不思議そうに僕の顔を見ていた。


でも、すぐに戻って来るんでしょ。

うん。母さんが言ってた。辺境伯の所に行って、武勲をあげて戻ってくるって。


ええ・・・なに・・・それ、聞いてないんだけど・・・

もしかして、もう、辺境伯の所に行くことになってんの?


兄ちゃん、頑張ってね。兄ちゃんがいない間、僕が家を守るから。


弟たちは、自分の部屋へと帰っていった。

「慕われてるじゃねえか、頑張れよ兄ちゃん。」



少し、気が滅入りぎみになって、僕の部屋へと戻る。


ジータ。話は聞いたよ。

ユース・・・なんでここに・・・

おばさまが部屋に入れてくれたの。

母さんが・・・


辺境伯の所に行くんですって・・・そこで、武勲をあげれば、英雄として王都に凱旋できるって・・・


あれ?僕の選択肢は?


私・・・待ってるから!ジータが帰って来るのを待っているから。


ユースさん、まだ、行くと決めたわけでは・・・


ユースは、それだけ言うと、部屋を飛び出して行ってしまった。


ガハハと頭の中で笑い声が響く・・・


「お前の母ちゃん、策士だな。もう、これ、行くしかねえよな。」


僕にだって、選ぶ権利が・・・


「じゃあ、お前は、どうしたいんだ?」


それは・・・

・・・・・・

・・・・・・


「答えがねえのかよ!」


だって、いきなりすぎて・・・


「なるほど、そんな、はっきりしないお前だから、母ちゃんがお膳立てしてくれたんだろう。」


そうかな・・・


「家に戻る気があるなら辺境伯のところ、自由に生きたいなら冒険者ってところか。」


僕はどうすればいいのだろう・・・



結局、僕は辺境伯のお世話になることにした。

一人で、冒険者なんて無理。

かと言って仲間を集めるにしても、僕の実力では人は集まらない。

そう考えると選択肢は一つだった。



学院会議で、正式に僕の除籍と追放が決まった。

翌日、僕は、辺境伯の領地に向かう人員と共に馬車に乗ることに。


見送りに僕の家族全員とユースが来てくれた。


別れを済ませ馬車に乗り込もうとした時、少し離れた場所に1台の豪華な馬車が停まってるのが眼に入った。


「金髪ドリルじゃねぇか・・・」


カトリーヌさん・・・わざわざ見送りに来てくれたのかな?

僕の視線に気づいたのか、豪華な馬車は走り出して行ってしまった。


「何しに来たんだあいつは?」


わからない。でも、最後にカトリーヌさんの顔が見れて良かった。


そして、物陰からアルフたち三馬鹿が・・・


ケッ!ざまあぁぁぁぁ・・・




僕はその日、学院と王都から追放された。



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