4話 阿熊、特殊技能を貰う
俺は、特殊技能付与課に着いた。
そこには、ちっこいが胸がデタラメにでかい女が待っていた。
自然とそこに目がいく。
その女は俺に悪戯ぽい笑顔を向けている。
「あ~小さいと思ってるでしょ?私、大きいですよ。どこがとは、言いませんけど。」そう言って胸を張る。
「凄く、でけぇな。」何がとは言わんが。
胸の話しはここまでだ。
「君が阿熊くん?」フレンドリーな口調だ。
「おお、そうだ。」
「特殊技能付与希望でいいのかな?」
「頼む。」
「・・・わかったわ。では、早速、同意書をこちらに。」
「ほらよ。」
無造作にデタラメに胸のでかい女に同意書を渡した。
「大切な書類なので丁寧に扱ってくださいね。」
「おお、そうか・・・」
「では、説明していきますね。」
又、説明か、眠くなるんだよな・・・
「今から、あなたに付与される特殊技能と言うのは、あなた方が言うチートスキルってヤツですね。」
「・・・チートスキルってなんだ?」
「・・・・・・あれれ、チートスキル・・・知りません?」
「悪いが、世間の流行りは、まるでわからん。」
「ああ、そっか、喧嘩ばかりしていたんでしたね。」
「まあ、そうだ。」
「チートスキルと言うには・・・普通では考えられない、もの凄い事が出来てしまう能力です。インチキとも言えますね。」
阿熊は顔をしかめる。
「インチキ!?そんなモノだったら、いらん!」
女は、慌てた様子で弁明する。
「そのインチキと言ったのは、ものの例えで実際にはそんなことは無いんですよ。インチキみたいに見えるだけだから・・・」
「本当にそうなのか?」
「私、嘘つかなーい。」
インディアン嘘つかないみたいに言いやがって・・・怪しい。
「本当に不正ではないので、安心して下さい。」
「・・・・・・まあ、いい・・・話しを続けてくれ。」
女はホッとした表情をしていた。
「あなたに付与される特殊技能は、自由に選べる訳ではありません。任意のシステムでランダムに選ばれます。」
女は、手にしたタブレット端末を押すと天井からなにやら仰々しいマシーンが下りてくる。
「これは・・・ガチャガチャか・・・」
「はい。ガチャです。」ニッコリ笑顔の女。
俺は、無駄にでかいガチャを眺めながら考えた。
「やっぱ、やめていいか?」
女は、硬直した。が、すぐに気を取り直して話してくる。
「ラ、ランダムと言っても、ちゃんと阿熊くんに最適なスキルが付与されますから。」
あからさまに焦っている事は見て取れた。
「あんたら、何を企んでる?」
「な、何も企んでいませんよ。」
「・・・まあ、いいや。俺はその特殊技能を貰うのをやめたわ。」
その言葉を聞いた女は、血相変えて俺の足にしがみついて懇願してくる。
「どうかお願いします。スキルを貰って下さい。あなたが貰ってくれないと私はクビになってしまいます。」
「クビになってしまいます。」
何故、2度言った。
「お願いします~~~。貰ってください~~~~~。」
泣きながら俺の顔を見て懇願してくる。
「ええい!鬱陶しい。」
俺は、女を振り払い、元の場所へと戻ろうとした。
女は、今度は俺の背中に抱きつき引き止める。
・・・でかい。
「離さんか!」
「嫌です~~。貰ってくれるまで離しません~~~。」
しかし、背中にくるこの、ムニュっとした感触・・・
たまらないぜ、こんちくしょう!
決して女の胸の感触が良かったから、女の言うことを聞いたわけではない。
この女が余りにも必死だったから、女の言うことを聞いてやったのだ。
断じて女の胸が良かったわけではない。ムフ。
「ええと・・・気を取り直してガチャの説明をしまーす。」
現金な女だ。さっきまで、泣きべそ掻いていたのに。
「付与される特殊技能は、阿熊くんの性格、特性に合ったものが、ランダムに選ばれます。」
「特性が合うものが選ばれるなら、自由に選ばせてくれてもいいじゃねえか?」
「ダメです。規則ですから。」
「ケッ!お役人ってヤツわよぉ。」
「さあ、さあ、回しちゃって下さい。」
「う~ん・・・やっぱり、胡散臭いな・・・。」
「ええ・・・さっき貰ってくれると言いました~~。貰って下さい~。」
しかし、おもしれ~女だ。このまま、放置してみるか。
俺が黙って女を見ていると、なにか勘違いしたのか女は言う。
「まだ、サービスが足りませんか?」
サービス?・・・正直、して欲しいと言うゲスな考えが浮かぶ。
「仕方ないなぁ・・・ちょっと、だけですよ。」
女は、俺の手を握ると、その手を胸の方に・・・
と、思いきや。ガチャのスイッチに押し当てた。
ガチャガチャがけたたましく音をたて動き出す。
「この女、何しやがる!」
「約束を守って貰っただけですーー。」
ガチャン!!と音がするとともに、カプセルが転がり出る。
カプセルは、コロコロと転がり壁にぶつかり、パッカっと開く。
カプセルには、紙が入っていて、女がその紙を手に取り、中を確認した。
女は、その紙を広げ、俺に見せつけて言う。
「これを、なんと読む!!」
俺は、目が点になった気がした。
ハズレ・・・
どっかの大陸で、ばらまかれたクイズの問題を開けた時のアナウンサーみたいに言いやがって。
俺は・・・帰ることにした。
「待ってください!今のは冗談、冗談ですってば!」
女は、必死で俺を引き止める。
勿論、密着して・・・。ムフ。
そんなやり取りが3回続いた・・・流石にもう飽きたので本当に帰ろうとした。
「ごめんなさい、ごめんなさい。最高レアの確立3%ありますから。次は必ず、出ますから。」
「最高レアがなんのことかは、わからないが、次は、殺す!」
メンチを切る俺。
「ヒエッ!」
俺はもう一度だけガチャのスイッチを押した。
カプセルが転がり出ると演出が変わった。
「やった~~~。来ましたよ阿熊くん!!」
女は大喜びだ。
出てきたカプセルは、虹色に輝き、パッカと開く。
『特殊技能、【闘魂注入】を覚えました。』
何故か、アナウンスが流れた。
「やりましたね。阿熊くん。これで、勝る。ですよ!」
嫌な予感しかしない。
1、2、3、ダァ!とか言えばいいのか?元気ですか!とでも言えばいいのか?
「なんだか、よくわからないけど、とにかく、凄いスキルですよ。」
「わからないのに、どうして凄いスキルってわかるんだ。」
「そ、それは・・・最高レアは、とにかく、凄いんです!」
女は、都合が悪いのか、そそくさと話しを始めた。
「オホン!阿熊くん。特殊技能の付与は、完了しました。」
同意書になにやら、書き込んで俺に渡す。
「これを持って異世界転送課に行って下さい。それで、全行程終了です。」
「まーだ、あんのかよ!」
「次で終わりですから・・・ね、ね。」
女は、俺の背中を押して、この先に行くように促した。
「このまま、まっすぐですよ!」
俺は、釈然としないまま、異世界転送課へ向かった。