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5話 東京

順調に交際を続けていたケンイチとミサキは、結婚も意識しだしていて、船橋の親水公園にほど近いアパートで同棲生活をしていた。既に交際を始めてから2年が経っていた。


お互いの両親や家族にも会っていて、誰しもがそのうちに結婚するのだろうと思えるくらい平和な日々が続いていた。


ケンイチは、ミサキとつき合っていることをメールで台湾にいるエミリーに知らせていた。


そしてある日、エミリーからメールがきた。


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『なんだこれ? なんで弟とそいつの友達と? うーん、どうしようかな』


弟や友達も来ることから、逆にミサキに怪しまれなくて済むと思ったケンイチは、1日だけ、夜に仕事帰りに会う約束をした。



そして、当日になった。



ケンイチは定時に仕事を終え、というより強引に投げ出し、会社を出た。エミリーの弟が携帯を持っていて、日本でも使えるように設定してあったので、弟の携帯から電話がかかってきた。


「ケンイチ!ひさしぶり」


「エミリー。元気そうだね。で、今どこにいるの?」


「えっと、どこだろう、”テレコムセンター”、って書いてあるよ」


『は?そんなとこ、観光するものあるか?』ケンイチは目を丸くした。


「そしたらさ、新橋駅で会おう。新橋だよ」


「わかった。じゃあね」


ケンイチは、職場のある東京駅から新橋駅まで移動し、ゆりかもめの新橋駅の改札で、エミリーと弟、その男友達に会った。


「はじめまして!」


「はじめまして、日本にようこそ」


ケンイチは男性二人に挨拶し、握手した。


「〇▲×◇■.....」 弟がなにやら言い、


「ハハハハッ!!」 エミリーが笑った。


「エミリー、なんて言ってるの?」


「"普通の日本人だね" って」


『なんだって? コイツ』


ケンイチは、ふと、エミリーの弟が、自分の姉に外国から連絡をしてくる男がどんなにイケてるのかと想像していたが、実際は”大したことない”と感じたのでは、と考えた。たしかにケンイチは、スーツや髪型等、見た目はイケてなかった。


「$%&#><¥!」 


弟は何やら言い出すと、友達とゆりかもめの改札内に入り行ってしまった。


「なんか、弟は”トヨス”に行きたいんだって」


『あれれ、気を遣ってくれたのか。意外といいヤツだな』




そして、ケンイチとエミリーは二人きりになった。


「さっきテレコムセンターって言ってたけど、どこに行ったの?」


「”オオエドオンセン”ってところだよ」


『大江戸温泉? 東京観光で行くかなぁ普通?』


「ねぇ、ケンイチ、さっき写真撮ったの。見てみて!」


『マジか? こんなの撮るか?』


デジカメに写っていたのは、標識やマンホールで、可愛らしいキャラクターのロゴが書かれていて、珍しいと思って撮ったようだった。


夜ご飯を食べるのに、ケンイチはエミリーを月島に連れて行った。以前ミサキも連れて行ったことがあった。


ところが、月島にはもんじゃ焼きの店がたくさんあるのだが、詰めの甘いケンイチは、事前にリサーチをせず、テキトーに店を決めてしまう。今まではたまたま当たったのだが、この日はそうはいかなかった。


「どうだい? 美味しいかい?」


「................................」


「あれ、美味しくないの?」


「......... うん」


「ごめん。口に合わなかったね」


「いいよ。ありがとう。」


気まずくなったと感じたケンイチは話題を変えた。


「そういえば、オレさ、東京の観光ガイドをボランティアですることになったんだよ!」


鞄の中から通勤中に勉強しようと入れておいた浅草の英字のカタログを取り出して見せた。


「えー⁈、凄いね。じゃあ、私に案内して、ねぇいますぐ、ハイ、どうぞ!!」


「ちょっ、いやだよ。恥ずかしい」


ケンイチは自信がなかった。勤務先の通訳の女性キミカが、英語とスペイン語が堪能で、休日に観光のボランティアガイドをやっているのを聞いて、しばらく外国人と話す機会のなかったケンイチは、キミカの真似してグループに加入したのだが、まだ間もなかった。




二人は、お店を出て、新橋に向かって、地下鉄に乗っていた。


「そういえば、エミリーは結婚とか、しないの?」


「うん、いい男がいないからね」


「そーなんだ、残念だね。」


弟たちが豊洲から戻ってくるようで、新橋駅でエミリーと別れた。記念にと、弟に最後にケンイチのスマホで、エミリーと2ショット写真を撮ってもらっていた。





船橋のアパートに着くと、時計の針は23時を過ぎていた。


ミサキはテレビも観ず、ご飯も食べていないようで、部屋でじっと待っていた。


「おかえり、遅かったね」


「ああ、時間がかかった」


「台湾の友達と会ったんでしょ」


「ああ、まぁ...ね」


「写真とか見せてよ」


「えっ、ああ、いいけど」


エミリーとの2ショット写真を見せた。


「へー、随分可愛い子ね。ケンイチも嬉しそうだねぇ」


「なっ、違うよ!!」


「ケンイチってさ、いつも優しくしてくれるけど、コソコソメールやったりさ、たまにボーっとどこか遠くを見てたりするよねぇ」


「......していないよ。気のせいだろ!」


「ホントはその子が好きなんじゃないの? 友達に会いに行くって言うから男だと思ってた。」


ミサキは泣いていた。


「違うよ。誤解だよ。その子の弟とかもいたし...」


「もう無理。信用できない!」


「何言ってるんだよ。それは被害妄想じゃ... ただ日本に旅行に来るっていうから、昔からの友達とご飯を食べてきただけだろ? ふざけるなよ!」


両手でドンッ!! とテーブルを叩いて、冷めたみそ汁の入ったお椀がひっくり返って、こぼれてしまった。


ケンイチの逆ギレがまずかった。ミサキの堪忍袋の緒が切れた。


「わかりました。もう結構です。私は明日、この家をでます!」


「なんでだよ。考えなおしてよ!」




翌朝、ケンイチが土下座して謝罪するも、宣言どおり、ミサキは家を出て行ってしまった。




結婚は時間の問題と思われていた二人の関係は、あっけなく終わってしまった。




つづく



ミサキと同棲を始めて楽しく過ごしていたケンイチにエミリーから東京旅行に行くとメールがあり、ガイドを引き受けたのだが、衝撃の結末が。

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