14話 勇者と俺
オリバーと互いに息をひそめるよう形で様子を見る。勇者であるオリバーを相手に気を抜くことはできない。
その時、執事になった際リックさんに言われた言葉を思い出す。
{執事とは主人のことを第一に考えて行動する。執事の恥は主の恥でもある}
負けるわけにはいかない。もし負ければルビアに迷惑が掛かってしまう。それだけはだめだ。
それにオリバーはもう昔のオリバーじゃなくなっている。昔みたいに人を助ける、人のことを第一に考えるような人間じゃなくなってしまった。だったら俺がこいつの目を覚ましてやらなくちゃ...。
オリバーのことは嫌いだ。追放されたとき、今までの努力がすべて否定された感覚だった。そんなことがあってもオリバーには感謝している面もある。オリバーが俺をパーティに誘われなければ俺が俺じゃなくなっていたかもしれない。だったら恩返しを1回ぐらいしてもいいんじゃないか? 今度は俺がオリバーを助ける番。
そう考えている内にオリバーが戦闘を仕掛けてきた。勇者覇気を使い一瞬俺が怯んだ瞬間を逃さずに斬りかかってくる。トニーさんほど振り下ろす速度が速いわけではないが、それを補うほどの勇者覇気であった。流石勇者覇気。誰であろうと一瞬怯んでしまう技。本当に恐ろしい技だ。
ギリギリのところで避けることに成功するが、なぜか腕に擦り傷ができた。
(!?)
なんでだ? ギリギリだったとは言え、よけきれたと思った。それなのになんで...。そう思っていると
「わかっていないようだな。この剣---エクスカリバーは勇者覇気と組み合わせることによって、剣の周辺すべてが攻撃範囲ってことだよ」
「...」
そんなのチートすぎるだろ。エクスカリバーの周りすべてが攻撃エリア内だから避けても意味ないってことかよ...。
(正面で戦うのは分が悪いな)
すぐさま黒風を使ってオリバーの視界をふさごうとする。するとオリバーは剣を振りかざして黒風をかき消した。
「そうはいかないぜ」
「!?」
マジかよ...。黒風が使えないってことは真正面から戦うってことしかない...。だとしたら俺にとって分が悪すぎる。暗殺者にとって正面で戦うことが一番やってはいけないこと。最初の一太刀こそ実力を測るために受けたが、それ以外は俺の戦い方で戦おうと思っていた。
だけどそれができないってことは...。
(魔法で応戦しつつオリバーを倒すか? それとも影魔法を使うか...)
いや、影魔法はリスクがありすぎる。もし影魔法を使ってしまったらみんなにどう思われるか...。そう頭によぎってしまった。
影魔法はいわば悪。死体の影を召喚することもできれば、敵の影を利用して攻撃することもできる。そんな魔法をみんなに見られてしまったら軽蔑されるかもしれない。ルビア個人に、いやローリライ家に悪い噂が流れてしまうかもしれない。だから影魔法はあまり使いたくはない。
するとオリバーが速度を上げて斬撃してくる。
「ッ!」
さばききれない。少しづつだがダメージが蓄積されていくのが分かる。
(やるしかない)
俺は火玉をオリバーにめがけて攻撃しつつ、歩法で残像を作る。すると
「そんな小手先の技しかできないのかよ!」
火玉を避けられながら、残像をことごとく切り裂いていき、俺にめがけてグランドクロスを撃ってくる。
チャンスだと思った。これをうまく利用すれば...。グランドクロスを避けて地面に当たり砂煙が起こる。その瞬間黒風を使い、視界を奪う。グランドクロスを使った後なら黒風をかき消すことはできない。
呼吸しない間足音を消し、存在感をなくす。そこで縮地を使いオリバーの間合いを詰めて後ろから短剣を首元に突き刺す。
まだ黒風がなくなっていない状態だったためオリバーは短剣が首元へ来ていることに気づくのが少し遅れていた。
「お、お前...」
「目を覚ませよ。オリバー」
この状況なら誰にも見られない。だから本音で問いかける。
「は? 何を言っているんだ?」
「昔のお前はどうだった? 人々のことを第一に考えていなかったか?」
「今だってそうさ。でも現実はそんな甘くない。金がねーんだよ」
「...」
この状況ですらダメなのか...? そう思った瞬間、常時使っている円がルビアの近くで感知した。
(!?)
最低でも4.5人はいる。俺一人じゃ無理だ。そう思い
「オリバー。ルビア様たちが危ない」
「は! 何を言っているんだ」
「頼む。信じてくれ」
「この状況でどうやって信用するんだよ」
「...」
言われてみればそうか。今俺はオリバーの首元に短剣を突き付けているのだから。そっと剣を下ろすとオリバーは俺に攻撃をしてきた。
(ッ!)
そんな状況じゃないのに...。エクスカリバーで片腕を負傷した状態の中、オリバーを無視して影魔法でルビアのもとに移動した。
「は? ノアはどこにいった?」
オリバーのことは無視してルビアのもとに着くと全員が驚いてこちらを見ていた。
「え? ノアどうしたの?」
その時だった。一斉に数名の暗殺者がルビアに攻撃を仕掛けて来た。





