第5話 僕が好きになった人に、僕は振られる
第5話ラスト 社会人編
第4話の続きです
書きたい様に書いた結果こうなりました。ひとまず5話完結予定で最後までできたのでよしとします
最後に番外編を書いて完結にします
ー彼女は誰なの・・・
◇
大学を3人とも無事卒業してそれぞれ就職して、僕はなんとか生活ができていた。
彼と彼女はその後もお付き合いが続き、僕も友達として二人と仲良くしている。
彼女と僕は2人でデートをしたこともあるし、彼女の家に僕だけで遊びにも行ったこともある。
彼女のことはもう諦めてはいるが、やっぱり好きなんだよねえ...
彼とも休みの日に一緒に車で泊りがけで出かけたりしていた。
...あれ以降彼女は表に出てはいないように見える。けど彼女の中にはいるのは判ってる。ずっと出てこないければいいんだが。
◇
3年ほど経過し、彼と彼女が結婚することとなった。
彼女が大人数で披露宴をするのを嫌がったらしく、仲のいい人たちだけでこじんまりとした結婚報告会を開いた。少人数だが盛大にお祝いして、調子に乗って彼が彼女に怒られるまでがお約束のいい会だった。
ありがたいことに結婚後も僕との付き合いは変わりなく、僕が電話すると、タイミングがいいのか悪いのか、彼と彼女はいちゃついてる時だったりして、後で文句言われたりして。
◇
彼の転勤が決まり、彼としては、彼女にも一緒に来て欲しかったんだが、事情で単身赴任という形で引っ越していった。
引越しの手伝いに行ったときに、彼が
「何かあったら彼女のことを頼む。というか頼んでくると思うんで助けてやってくれ」
「といっても大したことはできないよ」
僕はそう答え、彼女は、
「私がそんなことになるときは一大事だね。でも君と私の仲だし、問題ないよね!」
こんなことを言っていた。
それが後々大変なことになるとはまだ予想が付かなかった
◇
彼が転勤して数か月後、彼女から、
「彼が浮気してる」
と電話があった。
「彼が言うことを聞いてくれない、相手にしてくれない、女の人のにおいがする」
まさかなあ、と思ったが、彼女があまりにも焦った様子だったので、休みを利用して彼のところへ行ってみることに。
「ちょっと様子見てくるよ。大丈夫何もないよ。気のせいだって」
◇
彼に単身赴任先に遊びに行くことを連絡してから行ってみた。当然彼女の依頼というのは言ってない。
彼の部屋は、まあ男の一人暮らしはこうなるよね、という部屋の散らかり状態であった。
ただし、なんとなくだが、別の人が居た、という感じがあった。
「彼女が浮気疑ってたけど、本当のところどうなの?」
「いやそんなことしないよ」
「他所の女とか連れ込んでないよな?」
「ないない」
部屋を見渡していると布団の隙間に1人ではまず使わないものが見えた。しかも使用済み。
「おい、これなんだ?」
引っ張り出して彼に見せる。
「あっ」
びっくりした彼の目が一瞬逸れるのを見た。それを見逃さず追及する。
「...言い訳を聞こうか」
「同僚の子が酔っぱらって帰れなくなって...それで仕方なく連れてきて、それで...」
「はぁ...一応彼女には結果がどうあれ教えてって言われてるから伝えるよ...」
「えっ...嫁に言うのか?」
「当たり前だろ、その確認に来たんだから。彼女に報告は直接会ってするんで、今は電話はしないけど、覚悟はしたほうがいいね」
友達のよしみだ、色々整理する時間はあげるよ。
◇
次の日地元に戻り、彼女に直接会って報告。
「どうやら会社の同僚の子連れ込んでたらしい」
「やっぱりか。私が付いていけないのをいい事に...わざわざありがとね。この後話し合います」
◇
「今回の件は一応許すけど、次はないよ?ってことで話が付いた。手間かけた」
と彼女が電話してきた。
「それでいいならこっちは何もないよ。仲良くやってくれ」
僕と付き合えばよかったのにとか考えちゃうから、かつて惚れてた相手が揉めるのは正直見たくないなあ。
◇
それからまたしばらくして、彼女から電話が来た。
「ねえ、お願いがあるの」
「彼にも頼まれてるし、聞けることなら聞くけど」
「私とえっちなことしてほしいの...電話でもいいから...」
おいおい、それを僕に言うか?!
「えーと、それは君が浮気することになるけどいいのかな」
「旦那が浮気したんだもん、寂しいの・・」
だから僕と付き合ってれば...いや無意味だな・・・
「・・・いやそれはできない。僕が彼を裏切ることになる」
「君は優しいなあ...」彼女は泣きながらそう言っていた。
◇
彼女の難儀な電話から一か月ほど経った休日の朝、今度は彼から電話が来た。
「すまんが嫁のとこまで行って話をしてほしい」
「そりゃまたどうして」
「嫁が不安定になってる。おかしい。電話ではどうしようもないので見てきてほしい」
「そういうのは本人が行くのが一番いいと思うんだが」
「行けるならすぐ行ってる。明日には行くから先に行ってくれ。こんなの頼めるのはお前だなんだよ...」
「判ったよ、彼女に会ってくる」
ちょっと鼻声でそう言われては仕方がない。ちょっと見に行ってくるか。
◇
彼女は彼が単身赴任なので実家に帰っている。
彼から電話があった日の昼前に彼女の実家に向かい、呼鈴を押す。彼女が出てきた・・・が、
「やあ、久しぶりだねー」
「その口調は...」
彼女ではない。彼女がそこにはいた。
「いま家に誰もいないから入ってお話しよー」
ひとまず家の中に入り、彼女の部屋に案内される。ひとまず向かい合って座って話し始めた。
「彼女、いま落ちてるから彼女が表だよーそいえばー彼女、キミにえっちなお誘いしたでしょー?あれ彼女」
え、どうゆうこと?
「あのときはー彼女と彼女がほぼ一緒になっててー、彼女もそうしたかったみたいーでもキミが断ったでしょー?だから彼女がすぐ消えてー彼女だけになってー」
「そいえばーだいぶ前に2人でデートしたことあったでしょ?あれも彼女だよー。キミは気がつかなかったねー。ここで2人きりの時も襲っちゃおうかとおもったけどー彼女が止めたからねー」
「ちょっと待って、彼に電話するわ」携帯を出した瞬間、飛びつかれそのまま唇を奪われた。
「忘れたのー?彼女が好きなのはキミなんだよー?」
彼女は僕の上に乗ったまま押さえつけている。
しかも変に力が強くて逃げられない。これはやばい。
「キミ、彼女の事好きだよねー。私も好きー。だから...いいよねー」
彼女が僕のジーンズに手をかけた瞬間、部屋の扉がバンっと開いた。
「なにやってんだー!!!!」
大慌てで飛んできた彼が彼女を付き飛ばした。
◇
彼は僕に電話した後、すぐに手を尽くして移動手段を確保し、その日のうちに彼女の家に来れたみたいだ。間に合ってよかった。
「あれ、なんで君と旦那がいるの」
彼に引き離された衝撃で彼女が消え、彼女の意識になっていた。
彼女によると、突然ふっと記憶がなくなって彼女が出てきたとのこと。
過去にも勝手に彼女が出てたこともあったらしい。
彼女は彼じゃなく僕が好きって言ってたから、僕がいるときの彼女は彼女だったんだな。
彼が来たので僕は引き上げることにしたが、彼女に聞いておきたいことがあった。
「言いにくかったらいいけど、僕は大学の時に君が好きだったんだ。けど、彼が君と付き合うって聞いて諦めたんだけど、君は僕のことはどう思ってた?」
「...好きだったよ。もし先に告白されてたら付き合ったよ」
「そうか。僕が遅かったんだね」
◇
その後、彼と彼女は喧嘩が絶えなくなり、彼女も時折出てきて警察沙汰になることもあった。
ついに彼女の両親から彼に、これ以上迷惑はかけられない、離婚をお願いします、と頭を下げられ、そのまま離婚が決まったとのこと。
・・・離婚届を役所に持って行ったのは僕だ...
「いろいろありがとな」
彼が言う。
「まあいろいろあるわな」
僕が答える。
彼女は離婚後入院したと彼に聞いた。僕も彼も彼女とは全く連絡を取っていない。
僕が好きだったのはどっちの彼女だったんだろう。
僕を好きだったのはどっちの彼女だったんだろう。
僕が好きになった人に、僕は振られる
後程細かく修正変更します。感想等頂けると喜びます